レポート第10回 回答集

熊本大学・遺伝子実験施設
熊本市本荘2ー2ー1
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2002年 3月19日

平成13年度 生命科学G レポ−ト 第10回(2002年1月16日実施) 回答集

[ 質問 ]

あなたは、臓器を目的としたクローン技術の研究について賛成ですか? 反対ですか?その理由も書いて下さい。

[ 回答 ](23人)

<賛成> (14人)


・移植を目的としたクローン技術について賛成である。受精卵を人とみなすかという問題もでていたが、実際自分や身近な人が病気で移植が必要になった場合はそのような倫理的な事は考えていられないのではないか。今の医療では、他人の臓器を移植しているがドナーと患者が合わなかったり思わぬ病気を移されてしまう場合がある。私は冬休みに<死の病原体プリオン>を読んだのだが、ヤコブ病についてもいえる。また臓器が不足しているため動物の臓器を移植に使うための実験も進められていると書いてあり、種を越えての異種移植によって新たな感染症が引き起こされる危険がある。それを考えると自分と同じ臓器を移植できればより安全だと思う。(文学部)

・まとまるようにはじめから結論を言えば、自分は現在の状況に限れば臓器におけるクローン技術の活用に賛成する。現在の状況、と限定するのはこれが以前のレポートにも書いた科学技術の中立性にもとづく考えだからである。
 例えば、将来的にはあらゆる分野におけるクローン技術の活用が認められるだろう、と言えばクローン人間の問題などを振りかざし反対をする人もいる。確かに、現代においてその考えは妥当であり、正常だと自分も思う。クローン人間による人体実験などが予想されるからだ。だが、クローン人間に関する人道的、技術的問題が解決されたとしたら、不妊性の人がその活用を訴えたとしたら、クローン人間は人権を持った人として生まれてくるかもしれない。同様に絶滅危惧種をこうした技術で繁殖させられるかもしれない。こうした有益なものへの活用は精神的、技術的問題の解決にかかわっているのだ。ただそれが解決されないまま、無理に技術を利用すれば必ず有害な結果をもたらす。原子力技術に対するチェルノブイリ、これは技術面での問題を抱えたがための事故だし、性転換手術者への偏見、これは倫理的な問題が社会的に未解決のままであったため起きることだ。逆に技術的にも人道的にも解決されたものの例としては大陸系の西洋人に対する生魚の摂取などがあり、これは生で魚を食べる技術の克服、食べることへの文化的抵抗の克服が合わさって実現されたものだ。魚を生で食べるというのが果たして科学技術なのかは疑問だが例としては分りやすいと思う。このように、科学技術は二つの障害によってその活用を制限されるがその本質はあくまでも中立なのである。
 自分はクローン技術も二つの障害によって制限される中立のものであると思う。したがってその技術が必要で、かつ障害を解決した範囲においてはその活用に賛成する。人道的な問題にすれば、授業でのディベートで分かれた人数比が社会においてクローン臓器への抵抗がなくなりつつあることを証明するだろう。また技術的な問題にすれば自分は専門家ではないが理論的に可能らしい。しかも、クローン細胞を必要とする人は多い。この三つの状況を根拠として自分は臓器を目的としたクローン技術の活用に賛成するのである。(文学部)

・クローン人間を作るのは問題があるが、臓器ならばよいと思う。人間を作った場合、世の中のありとあらゆる場所で奴隷の様に使われる可能性があると思う。しかし、臓器の場合はその様な問題も生じない。今回のディベートで、一つの生命を殺しているみたいな意見があった。確かにそれはそうだと思う。しかし、もし、自分や家族が重い病気にかかり臓器移植が必要になった場合、生命を殺すといって死を選ぶであろうか。クローン移植に反対する人の多くは移植に関わりのない人が言っていることで、自分がその立場になればクローン臓器移植に賛成すると思う。(工学部)

・私は臓器提供のためにクローン技術を研究することに賛成です。なぜならば、今日明日の命がわからない人がいて、そのことをしっている私たちは、何の手助けもしないということができないからです。だから、今は非常に危険を感じる技術であったとしても、将来の可能性にかけるために今は毅然としてこの生命の難題に立ち向かうべきだとおもったからです。(工学部)

・僕は臓器だけをつくるんだったらそういう技術を発展させていくためにも賛成です。臓器移植をしなければいけないはめに陥って、もし臓器提供者がいなければ、その技術を使わずにいるのがもったいないと思うからです。やはり倫理的問題などが出てくると思いますが、患者の立場になればそんな問題よりもまずその技術の開発を進めて欲しいとおもいます。(工学部)

・私は臓器へのクローン技術開発に賛成だ。現在、臓器移植待ちの患者が全国にたくさんいると聞く。これは、言い方を変えれば、あまりいい言い方ではないが、脳死などのドナーが現れる、すなわち誰かが死ぬのを待っている人が多い、ということだと思う。倫理的な問題などが、今回のディベートでもとりあげられたが、こういった面から見れば、現状が倫理的には優れている、とは言い難い。その上、移植を待ちながら死んで行く人も多いと聞く。だから私は、クローン技術の開発が進み、受精卵を使わない、胚などを使わないで臓器を作り出すことができるようになるのを願っている。(工学部)

・臓器移植を目的としたクローン研究に関して、私は賛成の立場を(一応は)とっている。現状ではドナーが見つかるのを待つか(それも日本では難しいから海外へ行くしかない場合が多いと聞く)、もしくは脳死判定を受けた人からの提供を待つしかない。医学が助けられるべき人を最大限助けることを目的とするのであれば、クローン技術もその発展の過程にあると考えてもいいのではないのだろうか。(文学部)

・臓器を作れるのならばクローン技術を使ってもいいと考えます。
 まず、受精卵の問題が有りましたが、受精卵を1つの生命体としてはみれるでしょうけれど、1人の人間としてみる事は出来ません。なぜなら、受精卵には顔が有りません。人間の顔、社会の顔、人格を表す顔がないのです。私は中絶の様子をスキャンしたVTRを見て非常にショックを受けた経験が有ります。既に出来上がっている赤ちゃんをぐちゃぐちゃにして液状にし、どうしても壊れない頭を器具で割るという壮絶なものでした。あの光景と受精卵を脱核させて新たな遺伝子を入れる行為とは、生まれていない生命を奪うという意味で同じものとは到底思えないのです。望まれていない子どもと言う点では両方とも同じなのですから、中絶を許して受精卵の利用を許せないのはおかしいと思うのです。
 また、臓器を作ると言う行為に関しては多いに賛同しています。臓器を待つ人、また逆に提供する人、提供する人の家族にとって臓器の提供とは、血液や皮膚提供などと違って多くは一つしかないかけがえのないものを提供すると言う事です。それはとても嬉しい事で素晴らしい事なのだろうけれども、とても辛い事なのだと思います。心臓ともなると提供者は生きていられません。脳死者からの提供はとてもきつい行為と考えます。まだ暖かい眠っているような状態の人から臓器を取り出す事は本当は有って欲しくない。けれど、待つ人の苦しみを考えるとそれでも提供者が有ればいいと悩みます。そういう意味でもどちらも精神的に負担になる移植よりは、当然臓器を作ってしまった方がいい。臓器を欲しいと思う人やその家族にとっては、多くは奇麗事ですまされるような批判なのではと、実際に苦しみを知らない自分を思う。そんな苦しみは無ければいい。臓器を作ってなくせるならば使える技術は使っていくべきです。
 拒絶反応と言う恐ろしいものにならなくてすむのも、臓器を自分の細胞で作る利点ですし、たとえ自分の遺伝子に異常が有ってもともと臓器が健康に作れないとしても、それこそ遺伝子治療技術を使って補強してあげればいい。私はそう考えます。(法学部)

・今回のディベートの中で、臓器移植関連の意見が出ていました。臓器移植を待つ人は、数万人に一人と いう提供者を待たなければなりません。その間病気が悪化する危険性もあると思います。また、臓器の提供を受けたとしても、拒絶反応や合併症、感染症の恐れもあります。それならば、本人のクローン臓器を移植した方がよいのでは、と考えます。なので賛成です。(教育学部)

・自分の基本的な考えとして「科学は人間の素晴らしい叡知の結晶である」というものがあるので、クローン技術も他の様々なテクノロジーと同様に活用されていくべきだと思う。専門的な知識がないため正確な理解はできていないにしても、クローンによって大小様々な問題が起こりうるらしいことはなんとなく分かる。しかしそういったものを努力と機転によって解決していくことも人間の素晴らしさであると信じたいので、ほとんど不安がなくどこからも文句が出ないような優れた技術に育っていってほしいと思っている。(理学部)

・私は、クローン臓器に対して、賛成です。なぜかというと、現在では臓器の移植を必要としている患者が大勢いるからです。そして、そのうちの多くが臓器の移植ができないまま亡くなっています。このような人々を救う一つの手段として、クローン臓器は必要だと思います。(工学部)

・クローン技術の研究・開発には賛成意見です。特に臓器を作り出す技術ですが、生まれようとするヒト胚に倫理があるなら、死にゆく人、もちろん生きたいと願う人にもあるはずです。視点をもっと低くすると見える苦しむ人たちのことを考えると結果は別として研究・開発に賛成です。(工学部)

・僕は賛成側の席についてディベ-トに参加したわけですが、その理由はクロ-ン技術を利用するれば多くの人が助かるようになるだろうと思ったからです。しかし受精卵を利用して行うのには抵抗があります。僕自身受精卵は人間であるという考えを持つからだと思います。ですので受精卵を使わずにクロ-ン技術を利用して欲しいと思いますがその際もそれを行ってる人の頭の中に生命を用いているのだと強く思っている必要があると感じます。(工学部)

・臓器を目的とするクローン技術の研究には賛成です。クローン技術を使って生命体を生み出すのは倫理的に考えて人間が行なって良いことなのか分からないし、すべきでないと思う。しかし、臓器を目的するクローン技術の研究はして良いと思う。現在、臓器移植などによる臓器の需要は大きい。臓器を物質としてとらえた時、臓器は必要なものであるので研究には賛成です。しかし、臓器を単なる物質と考えてよいか、という問題もあると思う。(工学部)

<反対> (5人)

・前回のディベートについてですが、クローンによって臓器移植のための臓器を作ることには反対です。何人かの人も言われましたが、認めるか認めないかは生命はどの時点から始まるかによると思います。やはり私は生命は受精卵ができた時点から生まれると思いたいので、生命を破壊することには賛成しません。(教育学部)

・クローン技術で一部組織を作ることは可能だと思うが、臓器を作るためにはクローン個体を作らなければならないと思うので、賛成できない。例えば心臓。クローン(個体)から臓器である心臓を摘出することがどうなのか。クローンの人権はどうなるのか。受精卵や卵細胞を利用する場合、自分の知らないところで自分の細胞を使われることに対して抵抗はないのか。そういった点にまだまだ納得いかないことが多い。(薬学部)

・私はディベートをしたとき、反対の席にいた。私はクローン技術が生命そのものを操るようで、そうなると生命の大切さとかがなくなるように感じたのだ。今もそれがやっぱり大きいと思う。(教育学部)

・ヒト発生前と後を明確に区別できるのは受精の瞬間をおいて他にないと思う。ヒトに形が似ていなくとも、胎児は命を与えられたヒトとしての権利を持っていると思う。だからクローンを用いた移植用臓器の研究には賛成できない。(薬学部)

・臓器を目的としたクローンに賛成か反対かというのはとても難しい問題でした。臓器移植の順番を待っている人たちこことを考えると、今私たちが持っている技術を何とか役に立てたいと思いますが、倫理的なことを考えるとどうしても賛成はできないのです。この技術には卵子や受精卵を使います。特に受精卵の場合そこには既に一つの命が誕生しているのだからそれを殺して臓器づくりに使うというのは少しおかしいのではないかと思います。私の身近に臓器に何らかの異常をもっちいる人や、臓器移植をしなければならないような人はいません。だから言えることかもしれませんが、私は反対です。(薬学部)

<どちらとも言えない> (4人)

・私はクローン臓器に賛成である部分と反対の部分とがあります。今回のディベートに参加していろいろと考えさせられましたが、やはり賛成、反対どちらかとははっきりは言えません。クローン臓器により不治の病や臓器移植が必要な人が助かるのであるならば賛成なのですが、その反面その臓器を自分の細胞から作るため遺伝性の病気であった場合はまた病気が再発する確率がかなり高くなります。その場合、クローン臓器により苦しむ可能性が高くなります。そうなると、クローン臓器を作り出し使うことには賛成しかねます。このクローンに関する問題はまだこれからいろいろと出てくると思います。そして人それぞれの考えが生じ、議論されると思います。(理学部)

・臓器を目的としたクローン技術の研究に賛成かどうかということにたいして私は賛成とも反対とも判断できない。現在の脳死からの臓器移植は技術的にも倫理的な面からも問題があるので、クローン技術によって臓器が作られ使用されるようになることは、臓器の移植を待つ患者にとっては良いことなのかもしれない。
 だがクローン技術による臓器にはまた別の倫理的問題が含まれていると思う。授業の中でそれは時間の経過によって解決していく問題だという発言があったが、私はそうは思わない。どんなに便利で安心な技術であってもすぐにとびつくのはどうかと思う。(法学部)

・前回私は、何も知らない状態で簡単に賛成とか反対とか言えないといいました。いろいろ他の人の意見を聞いたら「臓器までなら良いのでは」、「臓器移植の革命となる」、という風なことを言っていた。私もそれを聞いていて納得していた。しかしこれを認可してしまうと、今後クローン人間までも認可されそうで怖い。そう思いました。(教育学部)

・私は臓器移植を目的としたクローン技術の研究には一概に賛成できません。確かに拒絶反応の点で有利かもしれませんが、臓器が必要になった人がそれから臓器をつくりはじめてものすごく短縮された期間と普通ではない状態でクローンとしてできた臓器はそれだけでなにか自分の体とは異常な反応を示す感じがします。狂牛病のときも自然の摂理に反した食事をとっていて直接の関係があるかはわかりませんが、異常なことがおきました。とても進歩している科学に見えてもまだまだわからないことがたくさんあると思います。また、倫理的問題もあります。ただ、なにか臓器の病気に関してどうしても他の道にいきづまるなら、研究する必要があるかもしれませんが、人のクローンが作られないように細心の注意が要求されると思います。(薬学部)

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