レポート第7回 回答集

熊本大学・遺伝子実験施設
熊本市本荘2ー2ー1
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2002年 3月19日

平成13年度 生命科学G レポ−ト 第7回(2001年11月28日実施) 回答集

[ 質問 ]

PCRという技術を、自分は何に使いたいかを書いて下さい。

[ 回答 ](24人)


・絶滅危惧種の動植物のDNAをクローニングすることにより、繁殖させることができるのではないだろうか。一個体のクローンを作り出すことには抵抗があるのだが、技術的には可能なのではないかと思う。仮に繁殖に成功したとしても、繁殖させた人間はその動物に対して責任を負わなければならないと思う。しかし、「管理する」のではなく、生態系に対して迷惑をかけないという姿勢が必要になってくると思われる。技術の進歩に伴って、人間の思考も変えていかなければならない。技術に対して制御を行うことも人間の義務であり、そのようにして技術を利用しなければならないと思う。(教育学部)
  コメント;クローン技術そのものは、DNAを直接扱うことはありませんので、PCRは使いません。 しかしながら、本当にクローンなのかどうか、どこも異常は無いのかなど調べるためには、PCR が必要になります。

・僕はこの技術を歴史学の分野に利用したい。現実に例のある事だが、例えば三内丸山遺跡では大量に古代の栗が発掘され、それらが皆同一遺伝子であることより栗の植林が行われていたことが解かった。現在議論となっている日本人はどこから来たのかというテーマも、遺伝子情報をたどれば日本人が北方か、あるいは南方か、いずれから移住してきたかが解かるだろう。現在の人類が猿人や旧人の子孫に当たるのかどうかも興味深い。これまで発掘資料と文献資料によって明らかにされたことを証明していくのもよい。このようにPCRを取り入れ、ある学問の幅を広げるためには文系も理系も言ってられない。もはや何をするにしてもPCRの可能性を知る必要があると思う。(文学部)
  コメント;そのとうりです。

・正直PCRの技術が意味するところを理解しきれてないので応用まで頭がまわらない。ただ、有望な反面危険も大きいので慎重に開発を進めてほしい。この技術が倫理を飛躍しないようにすべきだ。(工学部)
  コメント;PCRそのものに危険はありません。もちろん、PCRのお陰で様々な生命現象のメカニズ ムが解明され、その応用としてクローン技術も出てきたわけですが・・・

・最近テレビのニュース番組を何気無く見ていると、種痘病のことが報道されていた。一度滅亡したはずのものが生物兵器として再び姿を現したという。したがって今ワクチンが不足しているらしいのだが、このようなワクチンがこのPCRの技術によって容易に複製できれば、と思う。私の父の知人にヤコブ病になってしまった方がいるのだが、今の医学では特異な病として扱われているらしく、大変困難な状態におかれているようだ。このヤコブ病ならず他にもエイズなどといった様々な病の解明がPCRによって進歩できるのではないかと思う。また、発展途上となっている国々の農作物を培養したり、砂漠地帯に緑をもたらす運動にも、PCRは一役かうことができるのではないだろうか。私はあまりバイオテクノロジーの知識はないので、些か的外れな発想であるかもしれないが、しかしなんらかの形でPCRはこのような問題に対して活かせるのではないかと思う。(文学部)
  コメント;決して的外れではありません。いろんな問題に対してPCRは活用されています。

・全く見当違いかもしれないが・・・。病気の抗体を作る際、動物に感染させて作ると聞いたことがある。それにこの技術を使えば、もっと早く大量に抗体を作れるのでは。そのことにより、病気が広まるのを抑えることができればいい、と思ったのだが。(工学部)
  コメント;抗体作製に、動物を使わず、培養細胞や、試験管の中で作る技術は既にあります。しかしコ ストが高くなります。現在の技術で抗体を作る際にも、さらに研究を進めるためにも、PCRは必 要な技術です。

・PCRをどのような事に利用できるかという質問でしたが、PCRは目的とするDNA分子を増幅する技術であるから、例えば医療への応用ができると思う。現在、遺伝性疾患として癌などがあるが、PCRならわずかなDNA分子を採取すれば発病の可能性を予測できると思う。また、臓器不全で苦しんでいる人に合う臓器を創りだすことも可能かもしれない。けれども、倫理的にはどうなのか良く分からない。(工学部)
  コメント;このような研究を行う過程で、PCRは頻繁に使用されます。

・専門的な知識がないため的外れなことを書いてしまうかもしれないが、PCRはきっと医学に活用できると思う。身体の一部が事故などで失われたりしても、あらかじめ取っておいたデータから細胞を複製し、本人に移植すれば、また問題なく生活ができるようになるのではないだろうか。たとえ自然に再生することのない器官であっても関係なく作り出せるのだから大変に役立つ技術であると思う。(理学部)
  コメント;PCRそのものは、細胞や組織を複製することは出来ません。しかしながら、現在、再生医 療の研究も進んでおり、研究過程ではPCRは頻繁に使用されます。

・PCRの技術について、前回の授業で何となく分かったと思います。しかし難しい言葉ばかりでなかなかすんなり受け入れることができません・・・。やってみたいことは、自分に発癌遺伝細胞があるかどうかを調べることです。具体的な方法は・・・と言われても簡単に思い付きません。すみません。(教育学部)
  コメント;まず、癌遺伝子や癌抑制遺伝子を調べることで、直接的な癌の危険率を知ることが出来ます。 また、もう少し研究が進めば、どんな癌にかかりやすいか、どんな薬が効果的か、副作用がでやす いかどうかなど、個人個人の体質についても、PCRで分かるようになると思います。

・PCRの実用化によりゲノム情報を全て解読できるということで、これから産まれてくるであろう自分の子どもが将来どんな病気におかされるのであろうか分かるということを聞いたことがあるので調べてほしいと思ったりもする。しかし自分の子の将来が解ってしまうのも恐い・・・。やっぱり知りたくないかもしれない。それよりもエイズを治せたり癌を克服したりできるとも聞いた事があるのでもし自分がこうなったりしたら是非とも活用したいです。(教育学部)
  コメント;自分がどういう遺伝病の保因者か、PCRで調べることが出来ます。従って、結婚相手の遺 伝子情報と合わせれば、生まれてくる子供が遺伝病を発症する確立を知ることが出来ます。

・私はPCRの技術自体が理解できたかどうかわからないのですが、PCRを利用してできたらいいと思うことは恐竜の遺伝子でPCRで増やすことが可能なくらい完全なものがあると仮定してそれを利用して恐竜の明確な絶滅原因が知りたいです。様々な説が存在していても決定的なものがないと思うのでそれがやってみたいと思いました。(法学部)
  コメント;映画『ジュラシックパーク』では、琥珀に閉じこめられた蚊が吸っていた恐竜の血を取り出 し、その血液細胞からDNAを抽出していました。もしそういうことが出来れば、PCRでDNA断 片を増幅し、塩基配列情報を解読することは可能です。しかしながら、その情報から「恐竜の明確 な絶滅原因」を知ることは不可能に近いと思います。

・遺伝子を増殖させるということは細胞をつくり出せるということなのでは。受精卵が胎児になっていく過程で、細胞それぞれはおのおのの役割をはじめからきっちりと分けてはいない。遺伝子が細胞を筋肉細胞や神経細胞に分担させていると思われる。ということは、細胞それ自体は本当はどんな細胞にもなれるんじゃないか。ならば、それこそ各臓器の遺伝子を増殖させて細胞を各臓器の細胞に変化・増殖させて、臓器をつくり出せると思う。元は自分の体、拒絶反応も起きない。倫理が関わってくるだろうか。しかし、臓器を待つ人にとってはそれは意味を成さないことであろう。ここで疑問に思った。人工皮膚というのが2回目の授業で見たビデオに出てきていた。あれはどうやって作られているのか。(法学部)
  コメント;PCRは、DNAを増幅するだけなので、細胞は出来ません。ただし、この意見のように、 既に分化した細胞(筋肉細胞など)を脱分化させ、別の細胞にする研究が、現在急ピッチで進んで います。細胞の分化や増殖のメカニズムを解明するためにも、PCRは頻繁に使用されます。

・不可能かもしれないが、人間の体にとって何が有益で何が有害なのかを調べ、副作用のない薬や癌を作らせないようにするための薬などを作ることに使用したい。(工学部)
  コメント;現在研究が進んでいます。もちろん、PCRは頻繁に使用されます。

・PCRを自分なら何に利用しようと思うかであるが、まだPCRが利用出きる範囲がどこまでなのか、具体的にわからないので考えにくい。そのような中で、私が思うのは、ゲノムを解析できるのなら、男と女のカップルのゲノムについて知りたい。例えば、数学が得意な男性は、国語が得意な女性にひかれるなど。カップルのゲノムにはなにか共通性がみられるなど、調べられるのだろうか。 (教育学部)
  コメント;???

・PCRという技術をどういった使い方をしたいか、というのは少し難しくてよくわかりません。今までこんなことを考えたこともなかったですが、とにかくPCRを使えば少ない試料でも複製して増やす事ができるので微生物のDNAを研究したり事件の犯人を少ない証拠でも明らかにすることができるのだとおもいます。それからPCRはDNAを増やしますが、RNAを増やすことに応用することは不可能なのでしょうか?そうしたら逆転写するエイズウイルスの研究などに貢献できたりしないのかなとおもうんですけど。もしかしたらよくわかっていなくてすごく変な質問をしているかもしれませんが、どうなんでしょうか。(薬学部)
  コメント;RNAの場合は、まず逆転写酵素を用いて、cDNAという形にします。それからPCRを行う ことをRT-PCRと言います。この方法は、RNAウイルスの研究だけでなく、ごく微量なRNAを調 べる方法として、広く利用されています。

・PCRの技術を使って琥珀から採取した昔の生物や絶滅した動物のディーエヌエーを培養しその生物を生み出すとゆうのはどうでしょうか?ありきたりですが…(工学部)
  コメント;DNAの断片を増幅することは出来ても、その生物を蘇らせるためには、全ゲノムを再構成 する必要があり、ほとんど不可能です。現代の科学では。

・正直に言って、根っからの文系人間であり、PCRという技術の重要性はおろかその概念自体を掴み損 ねている私にとっては、その技術を自分であればどう使うか、ということすら「どういう使い道がある のか」という非常に初歩的な疑問よってに考えが及ばない。ただ、説明を聞くだけでも、このPCRという技術が親子鑑定や、また遺伝子診断といった遺伝子分野の可能性を一挙に広げた技術だというのは何となく理解が出来た。私は、例えばそれが可能だというのなら、遺伝子治療に使ってみたいと思う。ガン治療、エイズ治療には遺伝子治療が有効ではないかということは現在既に言われている(寡聞にして私はそれが現実に行われているのかどうかまでは知らないが) 。私の母はガンで亡くなっており、末期だからと手をこまねいてみているようなことしか出来なかったのが非常に悔しかった。だからこそ、この「夢のような」技術を、ぜひ医療において活用して貰いたいのだ。(文学部)
  コメント;一部実用化されていますが、まだまだ遺伝子治療は開発段階の技術です。もちろん、その研 究過程で、PCRは頻繁に使用されます。

・私はPCRの技術を医療で活かしたいいと思いました。PCRで特異的なプライマーを使うと病原体やウイルスを検出することが出来ます。HIVの例では免疫応答が現れずに抗体検査では見逃されてしまうような感染者の場合でも、PCRならウイルスの存在を確認することが出来ます。(薬学部)
  コメント;そのとうりです。

・PCRという技術を、自分だったら医療の分野で使いたいと思います。特に、医薬品の開発や研究に役立てたいと思います。(工学部)
  コメント;PCRは、医薬品の開発や研究だけでなく、治療効果の確認や、病気の予防にも役立ってい ます。

・私がもしPCRを使えるとしたら、まず、遺伝子治療に応用したいと思います。特に、現在でも不治の病と呼ばれるエイズや、末期がんを治療できたら、どれだけの人々が助かるでしょうか。
 逆に、自分が使いたくない使用法は、食品など、安全面に問題があることに使用することです。また、クローンなど、悪用される恐れのあることにも使いたくありません。PCR自体が悪用されたらどうするのかと聞かれたらそれまでなのですが…(教育学部)
  コメント;原爆や生物兵器などのような意味での、PCRそのものの「悪用」というのは考えられませ ん。「悪い研究」(?)に使う事は可能だと思いますが・・・
・ゲノムのデータベース作成。(薬学部)
  コメント;現在、チンパンジーの全ゲノム情報を読むプロジェクトもスタートしています。ヒトとチン パンジーの違いを探す目的で。もちろん、PCRは頻繁に使用されます。

・遺伝子技術を用いた医療品の大量生産に使うと思う。(薬学部)
  コメント;これまで生体成分(胎盤など)から精製されていた医薬品も、順次遺伝子組換え技術を用い た医薬品に置き変わっています。その研究・開発過程で、PCRは頻繁に使用されます。

・私はPCRを環境工学に役立てたいと思う。例えばある汚染物質を分解する遺伝子の配列があれば、それを何倍にも増やして、その汚染物質を分解するといったものだ。(工学部)
  コメント;環境工学にも応用できます。ただし、現在の技術では、DNAで直接何かを分解することは 出来ません。実際に働くのはタンパク質(酵素)です。有用な酵素を遺伝子組換え秘術で作製する ために、PCRは活躍します。

・難しい質問でなかなか思い浮かびませんでしたけれど、一つのDNAから次々と増やせるわけなので最初のひとつが壊れたまたは使えなくなったときのためにあらかじめ増やしていたものと取り替えるということを行えばよい状態が保てると思いました。(工学部)

・具体的に何ができるか想像できないが、ある単一の物質を増やすというのは、重要で凄い技術だと思う。研究で使う機会があれば積極的に使うべきだと思う。(理学部)

・私はPCRの技術を医療の現場で使っていけたらいいとおもいます。今の技術では治療が困難な病気が沢山あり苦しい治療を受けている人も沢山いるので、遺伝子レベルの治療が実現すればもっと簡単に治療ができるのではないかと思います。またその病気の遺伝子を調べる事によって、病気が発生する前に予防ができる。そのようにして人々が健康に生きるための技術として利用できたらいいと思います。(文学部)

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