2002年度 レポート第7回 回答集

熊本大学・遺伝子実験施設
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2003年 1月 3日

2002年度 生命科学G レポ−ト第7回(2002年11月20日実施)回答集

[ テーマ ]PCRという技術を自分なら何に使うか

[ 回答 ](22人)

・今日の授業で、チミン2量体生成による突然変異があることを知りとても驚きました。本日のテーマについてですが、PCRの技術自体はDNAを複製、増殖させるものなので私は医療関係で使用したいです。というのは、未だ解明されていない病気を持つ人のDNA、または病巣のDNAを採取、PCRによって増殖する事で多くの研究機関、大学に原因解明を依頼したいと考えたからです。治療法のある病巣のDNA配列と未解明のDNA配列の照合から治療法、特効薬の開発は可能ではないでしょうか。(工学部)

・PCRという技術を自分なら医療の分野で活用したいです。同じ薬でも人によってよく効く人とあまり効かない人がいます。PCRを使えば個人の体質にあった薬を作ることができるのではないかと思います。実際そういった個人にあわせた薬の開発があっているようですが、それはPCRを利用しているのでしょうか?まだそのような薬の開発はリスクが大きいかもしれませんが、自分に必要な薬があまり効かない体質のひとには必要なのではないでしょうか。あと、過去のレポートを見て関心をもったのは環境工学に利用するというものです。PCRが環境工学にどのように利用できるのか詳しいことが知りたいです。(薬学部)

・恐竜を復元するのは今のところ難しいということでしたが、絶滅してしまった植物の復元ができたら興味深いと思います。地層や岩石などの中に保存されている未知のDNAをPCRで増やして(その後どのような操作をすればいいのかは分かりませんが)復元し、今まで発見されたことがないような植物がよみがえったりするとします。すると、地球や生物の歴史がさらに詳しく解明されるきっかけになったり、復元された植物が観賞用にも販売されたりして、植物が好きな人々の生活がにぎやかになったりするかもしれません。ただ、自然の流れに逆らって未知のDNAから人工的に植物を復元させることは、遺伝子組換え技術と同様に、予測できない危険性を含むことでもある思うので、これも実現はなかなか難しそうです。(法学部)

・まずはじめに、PCRというのは、簡単にいえば、微量のDNA断片を増やすことのできる技術、であると思うので、大きな個体を複製することはできないのだろうと思います。さて、私が思い付いたPCRの使用例ですが、生体内に超微量にしか存在しない生理活性物質を大量に作って、例えば医療の現場で使用するというのはどうでしょう。ここでおことわりしておきますが、PCR技術の応用の現状について知らないので、すでに実用化されているかもしれません。もう一つ思い付くのが、一般的な病原遺伝子というものがあるのならば、それを大量に複製して研究材料にできるということです。ただし、人の遺伝子を使う場合は個人が特定できるような使い方にならないよう十分な配慮が必要です。(薬学部)

・わたしはやっぱりPCR技術を使って自分ってものを調べてみたい。わたしには弟が一人いるので両親のどの遺伝子をどううけついだのか弟とくらべるのもおもしろいと思うし、自分のルーツを探るのもいいかもしれない。自分とはまったく似ているとは思えないいとこたちと遺伝的にはどのくらい同じなのかとか。そうなるとみんなを巻き込むことになってしまうか・・・。PCRによって解明される遺伝子の情報のなかには知らないほうがいいこともあるかもしれないけれど、私個人としては自分自身のことならどんなことでも知っておきたいという気持ちのほうが強くあると思う。(教育学部)

・世界中にはいろんな特異体質の人が存在している。例えばポルタトーリと呼ばれる人たちである。彼らは血管にコレステロールがたまりにくいという性質を持っている。彼らのような人たちの遺伝子のうち特異性質を示す遺伝子をPCR技術を用いて培養して医療の現場に用いればいいと思う。(工学部)

・まず質問からしなければいけないのですが、DNAを分析することで、その個体の色までわかるのでしょうか。わかるのならば、私は恐竜がいた時代の動植物の色を調べて、当時の風景を(絵でもいいので)できるだけ正確な色で見てみたいです。いろんな本や図鑑でティラノサウルスは赤に、トリケラトプスは緑に描かれているけれども、本当にあんな鮮やかな色をしていたのかと疑問に思っています。植物も、図鑑のように暗い緑色だけでなく、もっと様々な色があってもいいような気がします。そのような今は衰えたり絶滅したものを、個体自体を創り出すまでしなくても、PCR技術を利用しながらいろんな色を調べ、自己流の恐竜図鑑を作りたいと思います。(教育学部)

・自分はPCRという技術が果たしてどんなことに活用できるだろうかと考えたがまったく考えつかなかった。しかしシラバスに書いてあることを思い出して、恐竜を現代に蘇らせることが可能な技術(不可能らしいが)だというふうに書いてあった。そんな夢みたいなことが実現することはこれからも無理なんでしょうか?無理だとしたらどうしてですか?(理学部)

・DNA鑑定からあまり考えに進歩が無いのですが、もしもDNA鑑定が相当な短時間で出来るようになれば鍵のような使い方が出来るようになると思います。コンピュータなどにあらかじめアクセス出来る人のデータを入れておいてアクセスするときに鑑定すればかなり強固な鍵になるのではないでしょうか。(薬学部)

・自分にとって「PCRそのものを何に使うか」という問いには、答えづらいものがある。しかし、PCRは、DNA鑑定における遺伝子捜査で使うものらしいので、自分は、今の両親とは血がつながっていると分かりきっているけれども、あえてDNA鑑定して、自分の遺伝子情報と両親の遺伝子情報の違いを調べたい。というのは、現段階ではなかなか身近でないことなので、そのためにはPCR技術を今後ますます普及してゆくことができればよいと考えている。(理学部)

・私ならPCRの技術を使って自分の遺伝子情報を全て調べて両親や家族のそれと比べて顔のどの部分はだれの遺伝であるとか自分の特徴が誰からきたものなのかを調べてみたい。私の運動神経の悪さは遺伝なのか、この性格は誰ゆずりなのかを知りたい。もしかしたら両親ではなく私の知らない遠いひいひいひいおばあさんあたりからきたものかもしれない。そういうことに思いをめぐらせていたら自分が今ここにこうして存在することがとても不思議に思えてきた。(教育学部)

・特に思いあたらないが、遺伝子学には興味がある。将来、使うことがあるかもしれな い。耐熱性ならば使いやすそうだからだ。(工学部)

・1986年、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法という画期的な方法が開発された。この方法は目標とする特定のDNA領域を短時間で一〇万倍以上に増幅することができ、人類進化の研究にも大きな転機をもたらした発明である。以下少し難しいかもしれないが、その原理を説明しておこう。  DNAは4種類の塩基(A,G,C,T)が連なった長大な二本鎖からなる分子で、必ず一方の鎖のAと他方の鎖のT、また一方のGと他方のCが対合している。こうした性質があるため、生体内で一個の細胞が分裂して2個になるとき、元のDNAを鋳型にしてコピーをつくることができる(DNAの複製)。こうして複製されてできた二つのDNAが2個の細胞に分配されるのである。このDNAの複製時には、鋳型のコピーを作るのにDNA合成酵素(DNAポリメラーゼ)を必要とする。  従来の組換えDNA技術では、大腸菌の力を借りて人工的にDNAの複製を行い、必要なDNAを増やしてきた。この方法では複雑な操作を繰り返して、目的のDNA領域を回収するのに数日を必要とした。PCR法は、この複製過程を試験管内のみで、2〜3時間で行うことができるという方法である。  PCR法は、その後分子生物学、基礎医学、遺伝学、育種、薬学、臨床診断、犯罪捜査、考古学などなどの幅広い分野で利用され、これらの分野の研究手法に一大革命をもたらした。1993年、その功績を讃え、Mullisにノーベル医学生理学賞が与えられた。 (理学部)

・私はPCRを使って、昔の生物や絶滅種を作ってみたい。ジュラシックパークじゃないけど、生きた恐竜とかを見てみたい。が、これは容易ではないだろう、第一に再生したい生物のDNAを必要とする。いくらDNAが安定とはいえ、あったとしてもDNAはバラバラになってたり、かけていたりするだろうからほかの生物のDNAで補わないといけない。第二にプライマーの必要性です。DNAに対応したプライマーがないとPCRはできないのでうまい具合に合うものが無いとキツイ。(理学部)

・僕がPCRを利用するとすれば、一つのDNAゲノムからその生物を完全な生物へと復元させたいです。現在は各遺伝子のパーツの分析作業をしています。これが終了したとき、もし構成元素から組み立てることができる鍵となるような発見がされたならばPCRで凄まじい数のDNAが培養されるでしょう。そのような研究に使用すると思います。ジュラシックパークのように恐竜を復活させれたらいいなぁ…(工学部)

・僕がこの技術を使うなら、病気の診断に役立てたい。ある人の細胞を取り出してPCRにかけ、それを検査すれば、その人の遺伝子にどんな病気が潜んでいるかがわかる。などと考えてはみたが、前にも議論した様にこれにはかなり問題が生じるだろう。なので生まれてくる赤ちゃんの性別が知りた〜い! なんて時に使うのはどうでしょう?そんなモン生まれてくりゃわかるなんて言われたら終わりだけど。 (理学部)

・遅くなりました。いろいろ考えたのですが、私はやっぱり自分のDNA鑑定をしてみたいです。DNA鑑定の存在を知ってからずっと自分もしてみたいと思っているからです。(法学部)

・僕がPCR法を使うとしたら、やはり医療に役に立てたいです。なぜなら僕は遺伝性の病気ほど辛いものはないと思うからです。それを唯一解決してくれる技術は遺伝子治療しかないと思うんです。(理学部)

・PCRという技術を自分なら何に使うかだがまだ詳しくしくみがわからないためにちょっと考えがうかびません。今一般的になされている技術を理解することも難しいです。 (工学部)

・私ならPCRという技術を他人の遺伝子と比べて、自分の遺伝子と他人の遺伝子どこがどのように違うのか、またその結果、体にどのような違いが表れているのかをを一人一人調べてみたいと思います。顔を変えたいとき、整形をするのではなく、なりたい顔の人の顔の遺伝子と自分の遺伝子を同じにすることができれば整形しなくても、顔が変えれたり、体を変えれたりできるのではないかと思います。(教育学部)

.自分の遺伝情報と他の人の遺伝情報をとにかく見比べてみたい。(法学部)

・PCRを私なら古代生物や絶滅した生物の解読に利用します。それは、琥珀の中の恐竜の血を吸った蚊から取り出し恐竜を再現するためではなく、絶滅の理由などを探る材料として利用し、今絶滅しかけてる生物の保護に生かすためです。そういう、とにかく役に立つようなものに利用したいです。(法学部)

===== レポートについてのコメント (by ARAKI) =====

・「個人の体質にあった薬」や治療法などを「テーラーメイド医療」と呼び、現在盛んに研究が行われています。

・現在、様々な生物のゲノムが解読されています。特にバクテリアに関しては、ゲノムサイズが小さくて簡単に解読できることもあり、ものすごいデータが蓄積されています。細菌では、様々な植物のゲノムに関しても研究が始まっていますので、「地層や岩石などの中に保存されている未知のDNA」にスポットが当てられる日も遠くないかも知れません。

・PCRを利用して個体の色を再現するというのは、非常に面白いアイデアだと思います。おそらく実際に研究している人もいるのではないかと思います。例えばマウスについては、毛の色に関する遺伝子は既に明らかになっています。

・生きている細胞(生命体)を使わずに、試験管の中だけで生物を再生することは不可能です。ジュラシックパークのように、遺伝子組換え技術を駆使して、少しずつ恐竜に近づけていくという作業が必要になると思います。現実に、マンモス復活プロジェクトというものが存在します。興味があれば、インターネットで調べてみて下さい。

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