2003年度 レポート第1回 回答集

熊本大学
生命資源研究・支援センター
バイオ情報分野
荒木 正健
Tel : (096) 373-6501, FAX : (096)373-6502
2004年 5月 5日作成

2003年度 生命科学G レポ−ト第1回(2003年10月8日実施)回答集

[ テーマ ]教育目的組換えDNA実験について

[ 回答 ](全12人)

<賛成> (9人)

・現在では遺伝子組み換え食品など多くの遺伝子技術が生活の身の回りにも見られるようになっているので、「遺伝子組み換えというと嫌な感じがする」ではよくない時代に今後ますますなっていくと思います。なので、教育的遺伝子実験で若い人たちに遺伝子技術を理解し、身近に感じてもらうことは大変重要なことだと思います。また、大学で簡単な遺伝子組み換え実験をしたのですが、操作も簡単で結果が目に見えるので、中高校生も十分に楽しんで学べるものでした。教育的遺伝子実験はどんどん取り入れていくべきものだと思います。(医学部)

・現在、あちこちで遺伝子に関連したことが話題になり、新聞雑誌にも取り挙げられている。確かに遺伝子組換え作物により、農産物の生産効率は確実に上がり、これから来ると言われている人口爆発に対してかなりの効果があると思われるし、遺伝子治療により今まで直せなかった病気の治療も可能になると思われ、遺伝子に関した研究が関心を呼ぶのは当然のことと言える。しかし、それに対し、世間一般の人はあまりにも遺伝子組換えについて知らなすぎると感じる。私も中学校時代に遺伝子についてわずかに習った記憶があるが、その後高校では物理と生物のどちらか片方を選択する形であったため、大学に入り授業で習うまで遺伝子組換えの方法やその発現に関して全く知らない状態であった。けれども先に述べたようにこれからの時代遺伝子組換えは最も必要なものの一つであることは間違いない。例えば、将来買い物に行くと遺伝子組換え食品が主流として置いてある可能性は非常に高い。そのとき、遺伝子組換えに知識がないと、その安全性も危険性も全く分からず、不安を感じるかもしれない。また、病院に行き、遺伝子治療を受けるとしても、全く分からない治療はいくら治ると言われても、不安だろう。特にインフォームドコンセントが重視される時代になればなおさらで、医師の説明を最低限理解する知識は必要なはずだ。こういった点において、教育的遺伝子組換え実験というものは大変素晴らしいことだと思う。まさに現在叫ばれている生きる力を与える教育ではないかとさえ思う。しかし、それを実行するためには教育者がそれ相応の知識と経験を持つ必要がある。これは一番の問題ではないかと思う。そのためには予算もかかるし、年月もかかるからだ。とはいえ、やはり必要ことには変わりないはずである。そのためにも、政府が協力し高校段階において生物必修の実現化と教育的遺伝子組換え実験の実現化をしていって欲しいと切に思うところである。(医学部)

・一般に、専門的に学ぶつもりのない人にとって生物の知識というものは、中学や高校で習うそれ以下に限られていると思われます。私が学んだ中でも、遺伝子・DNAなどに関する分野は他に比べごく一部に留まっていました。しかし、現実に遺伝子が関係する話題などは、医療や食品においても最近更に増えてきています。例えば大豆などの遺伝子組換え食品が挙げられますが、遺伝学について殆ど知識のない層、おそらく大半がそうだと思いますが、彼等はただ遺伝子組換えという言葉の表面的な部分だけしか見ていないように感じます。正しくは、深くは見ることができない、なのかもしれません。私はある事柄を批判するにも受け入れるにも、それを良く知ることが第一だと思っています。とかく倫理的な問題などで批判されることも多い遺伝学ではありますが、何も知らずにただ異質なものとして排除しようとしている人が多いように見えるのです。遺伝学の分野はその性質ゆえに中学や高校の授業では実験が難しいといいますが、これから更に重要となってくるであろう遺伝学について、その基礎をより多くの人に知ってもらう、興味をもってもらうということは必要といえるはずです。どちらかといえば記号的で、実感がわかず馴染みにくい分野だと思いますが、興味をもってもらわない限りはじまりません。しかし、ただ実験をして遺伝学に興味をもってもらう、知ってもらう、理解してもらうというだけではいけないでしょう。遺伝子を操作する、人の手で加えるということがどういうことか、どのようなときに必要なのか、どのように役立たせることができるのか、それらを併せて考えてもらうことが大切だと思います。正しく使えば、人類にとって大いに役立ってくれる可能性のある学問なのですから。(法学部)

・組み換えDNA実験については学部の授業でしっていたが一般授業に浸透しつつあるという事は初めてしった。この様な最先端の技術をそのような年から学べるのはとてもいい事だし、そこからいま人類のDNA技術がどれくらい怖いものになったか理解するべきだと思う。(医学部)

・組み換えDNA実験を教育の一部に取り入れることに、私は賛成です。最先端の科学技術に実際に触れることでDNAの世界に興味を持たせ、DNAを組み換えることのメリット・デメリットを生徒によく考えてほしいからです。そのためには、指導者も常に最新の知識を得るように心がけ、賛否両方の意見を受け入れる気持ちとしっかりした持論を持つことが大事だと思います。(工学部)

・最初は遺伝子組み換え実験と聞くと何か複雑な操作や実験器具が必要なイメージがあったので、中高校でそんな実験が扱えると聞いた時は驚いた。白衣着用の必要もなく設備として最低限、流しとガスバーナーさえあればよいというのは簡単で危険も少ないと思った。自分は前期の授業で実験があったが、実験結果そして考察というのは大変重要なものだった。そういう意味でもやはり中高校で受験のための勉強だけでなく、実験をもっととりいれていって欲しいと思う。(工学部)

・賛成。以前遺伝子組み換え大豆が問題になったとき、あまり理由がわからなかったが学校の実験でそういうことをやっていればその問題をもっと理解できていたと思う。(工学部)

・自分は安全であればいいと思う。(工学部)

・教育目的組換えDNA実験について思うことは、教育目的で使用する際に、特に環境に悪影響を及ぼさないのであれば、その考えはよいと思います。(理学部)

<反対> (2人)

・DNAについての実験は進んでいて研究も盛んである。様々な用途が考えられているこの実験が諸外国の教育の場で行なわれている事は素晴らしい事だと思う。しかし未だDNAの組換えには多くの問題が残っている。組換え作物の安全性の問題や、クローン動物の死亡率や成長度等の問題だ。学問として盛んだとはいえ未だ未知の部分が多いこの分野の実験を教育現場で行なうのは時期尚早ではないかと思う。(教育学部)

・私個人の意見としては少し反対である。本来なら人間の自然治癒能力などで少しずつその病気などに対応していくことが理想だと思うからだ。このようなことを繰り返していくとやがて人間は進化するのではなく進化される存在に変わっていきそうな気がして恐い。

 [この意見に対し、「よく分からないのですが、科学全般を否定されているのでしょうか?それと     も医療行為の否定でしょうか?」という質問をしたところ、次のような返事が届きました。]

 医学を否定する気はありません。むしろすばらしいことだとは感じています。嫌だと思うところはリミッターの部分のことです。広くその技術が使用されれば、たくさんの人を救うが、同様に悪用や暴走もできるということです。これができるなら次はあれもというように、その技術が広がることが恐いです。例としてはインターネットです。始めはだれも使えなかったが、それが犯罪にまで発展しました。だれかが制御するのだろうけど所詮人間のすること。先のことはだれにもわかりません。だから恐れをもったのです。語弊がありすみませんでした。(工学部)

<その他> (1人)

・今日の授業は、導入ということだったが、結局PCRが何なのかがよく分からなかった。生物は高校の時から興味があったのでとても楽しみにしている。しかし、先生のカリキュラムを見ると、3年程前からこの授業はあったようで、そう新しい技術ではないことに驚いた。これからの授業が楽しみです。(法学部)

=== 返信の一部 (by ARAKI)===

・時期尚早ということですが、「この分野」という言葉の使い方は要注意だと思います。「遺伝子」を否定することは「生命」を否定することにつながります。また、「組換え」技術は、もはや研究段階ではなく、医薬品や化粧品など身の回りで既に実用化されています。それから、クローン技術は組換えDNAとは別物です。これから講義の中で少しずつ説明していきたいと思います。

・医学部の学生さんにとって、この講義は簡単すぎるかも知れません。しかしながら、生命倫理に関係した話を多くするつもりですし、文系の学生さんが、どういう考え方をするのかを知る良い機会になると思います。

・私も「ある事柄を批判するにも受け入れるにも、それを良く知ることが第一」という意見に賛成です。

・「常に最新の知識を得るように心がけ、賛否両方の意見を受け入れる気持ちとしっかりした持論を持つことが大事だ」というのはその通りだと思います。少し耳が痛いですが。

・私も、受験のための勉強だけでなく、実験をしながら生徒が自分で考えることは重要であると思います。今年の夏休み中に開催した「理科教員のための組換えDNA実験教育研修会」の模様を、ホームページ[../../news/DNAkensyuu15.html]に掲載しましたので参考にして下さい。

・「遺伝子組み換え技術」についても、使い方次第で良くも悪くもなるというのは正しい認識だと思います。


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