2004年度 レポート第12回 回答集

熊本大学
生命資源研究・支援センター
バイオ情報分野
荒木 正健
Tel : (096) 373-6501, FAX : (096)373-6502
2006年 5月19日更新

2004年度 最前線の生命科学C レポ−ト第12回(2005年 1月26日実施)回答集

[ テーマ ]『出生前診断について』

[ 回答 ](全8人)

賛成(5人)
・生まれてくる前に診断をされることでの問題点も多いのですが、それは倫理面からであって当の本人からしてみれば生まれてくる子供が先天性疾患を持っていたならば、親は大きなショックを持つだろうと思います。そしてネガティブな考えに陥ってしまい、中絶してしまうのでありますが、では出生前診断を行わずに生んでしまったらどうなるかと考えたところ、自分の子が疾患を持っていることにショックを受け、精神が不安定になったり虐待を行うかもしれませんが、例え疾患を持っていても自分の生んだ子だからしっかり育てていこうという人も現れるかもしれません。それは中絶を行うのは子供は生まれてくる前であり、一つの命であるという実感を抱くことができないできないからでありますが、生まれてきたならばすべての人がネガティブな考え方をするとは限らないので、結局のところ診断することがいい事だとはいえませんが断固として否定することもないので、これから先行っていけるなら行っていいのではないかと思います。 (医学部)

・出生前診断については、とても難しい問題だと思う。生命の発生において、どこまでが人間といえるのか僕は詳しく知らないし、中絶が正しいことなのかどうかも分からない。ただ、むかし間引くということは普通に行なわれていたらしい。それについて少しふれた小説を読んでから、どうもそういうことに悪いイメージが持てなくなってしまった。その場合、間引く方にも慈悲があったからだ。そしてまだ完全に、人としての意識も薄いただの肉に近い段階で、処理をしてしまう方がよほど人道的だと言われてしまっては、僕には返す言葉がなかった。
 出生前診断が行なわれると、そういうことがありきたりに行なわれていくのだろうか? どんな不具の人であれ、生きていく権利はあるし、その人の幸せは確実にあると、僕は思う。だから他人がどうこう決め付けて、生まれても不幸になるだけだからと、子の生をとめてしまうのはおこがましい。そういった考えは障害者にも失礼だ。
 でも、その子が本当に生きていけるかどうかは、その子次第になってしまう。支えることは出来ても、そのこの生に責任を持つことは誰も出来ないのだ。代わってやることも出来ない。生まれてきた生命は受け入れるべきだと思う。ただ生まれる前に、そのように生命を判ずることは、一体どうすれば良いのだろうか…?
事前に知ることで、親が覚悟をして子を迎えることが出来るのなら、遺伝子診断も有効だろうが……
 僕の今の段階では、社会で自由意志が尊重されているように、個々人の判断で対処していくしかないだろうな、としか言い様がない。その結論が、自らにも、そして誕生する用意のある生命にも、幸せで、良きものであってほしいと願う。 (医学部)

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 確かに、生まれてきた子供を間引く行為と比べた場合、出生前診断の結果に基づいて中絶する行為の方が、親の精神的負担は軽いかも知れませんね。しかしながら、そういう「口減らし」や「弱者差別」という悲劇を出来るだけ無くすために現代社会は努力してきたと理解しています。出生前診断による中絶は、その流れに逆行しているような気がします。 (コメント by 荒木)

・「先天的異常の保因者を社会から排除しようとする優生政策につながるとして、障害者団体などから反対意見が出されている。」や「ナチス的な優生政策につながるとして批判は多い。」のようにあまり世間受けはよくないみたいです。
 でも賛成です。障害で苦しむ人が少なくなるからです。確かになんか自分みたいなのは胚の時点で殺されるって先天的異常による障害者は思うでしょう。だけど、障害によって苦しむ人やその家族を考えるとつらいので。障害者の人も自分と同じ苦しみを持つ人が減るの喜ばしいことと考えて欲しいのですが。(その技術を用いて、好みの遺伝子を持つ子供をつくることについては賛成できませんが。) (医学部)

・私は出生前診断には賛成です。出生前の診断は命の選別になるという人もいますが、私はそうではないと思います。人の親ならば子供に期待をするのは当たり前で、他人よりも少しでもすぐれた能力を持ってほしいというのは当然の考えです。最初から障害を持った子供を望む親はいないと思います。人生の途中で障害を負ってしまったのなら仕方のないことですが、生まれる前から障害をもつことがわかるならそういう子供をわざわざ産む必要はないのではないかと思います。 (医学部)

・現代は医療技術の発達に伴い、出生前診断の技術が向上しており、胎児の状況を出生前に診断することが可能になってきました。しかし、治療が可能な場合もあれば治療が不可能な場合もあります。このため、治療不可能な障害を持つと出生前に診断され中絶という選択をとると、障害のある胎児の出生を排除し、現在生きている障害のある者に対して命の尊重を否定することになるような懸念があります。
 母体血清マーカー検査は、胎児が21トリソミー、神経管欠損等である可能性を「確率」で示すものです。確定診断を希望する場合には、別途羊水検査等を行うことが必要となるそうです。専門の授業で染色体についてを学んだ時にも「出生前診断」についての話題があがりました。先生の奥さんが出産する際に実際に羊水検査をしたそうで、実際に染色体を並べた検査結果の写真を見せていただきました。染色体はトリソミーなどの異常はなく、お子さんは無事健康に生まれてきたそうです。
 このように障害がないと証明されたり、健康に生まれてきた場合は良いですが、障害をもっている可能性が高いと診断された受診者はどうでしょうか…。そのような結果が出た時の説明の仕方やアフターケアが重要だと思います。
 また、確率が高いとされた場合にもあくまでも「確率」なので、必ずしもそうなるとは限らず、確率が低いとされた場合にも胎児が疾患を有する可能性は0とは言えません。可能性を確率として数値化しただけなのですから…。もしこの検査の特質の十分な説明と理解がないままに検査を受けた場合、妊婦が検査結果の解釈を誤解したり不安を感じる場合があるかもしれません。あくまでも「確率」にすぎないという説明が必要であると思います。
 現代の医療では、「インフォームドコンセント」、受診者に適切な情報を提供し、十分な説明を行った上でその治療を受けるかどうかを受診者自身が選択することが原則となってきています。出生前診断をするかしないか、その結果をどう判断するかは受診者一人一人の選択なのです。障害はその子どもの個性の一側面であり、障害という側面だけから子どもをみることは間違っていると思います。障害の有無やその程度と本人及び家族の幸、不幸は本質的には関連がないと思っています。しかし、もし自分自身や、自分の家族が子供をつくろうとする場合、「出生前診断」をすることを選択するだろうと思います。その時子供が障害をもつ確率が高いと診断されたら一体どのような気持ちになるか、どのような判断を下すか、そのような状況になってみないとわかりません。
 出生前診断の技術や診断結果後のそれぞれの判断についてどんなに議論を重ねても答えの出ない問題であると思いました。 (理学部)

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 確かに「インフォームドコンセント」が重要であり、この問題の鍵になることは間違いありません。しかしながら、『どんなに議論を重ねても答えの出ない問題』を、それまでそのような議論をしたことが無い人、医学的知識の無い人に説明し、決断をせまることが本当に必要かどうかも考えてみて下さい。 (コメント by 荒木)

(反対:2人)
・出世前診断というのは、妊娠の初期に胎児の染色体異常が発見されれば優生学上の対策をとるとか,卵子や精子の段階でそれがわかれば未然に奇形児や、障害者、病気にかかってる子の誕生を防ぐとか,男女を自由に産み分けられることまで可能になることを意味しています。
 病気を理由に中絶することは納得できるのですが(どうせ生まれても子ともが苦しく、家族や、社会にも迷惑かけるからです)。ただ男(女)が欲しいという理由で中絶したり、”好み”の遺伝子を選び出して子宮に移したり、気に入っていないのを廃棄したりするのにはどうも納得できません。つまり、負担の回避をするのにはいいんですが、胎児を遊んだりすることには反対します。 (文学部)

・出生前診断でダウン症と判明したら過半の親が中絶するという状況に悲惨な感じがした。ダウン症と言っても、同じ人間なのに、産まれてくる前に間引きされるのはやはり人権が無視されてるとしか思えない。障害者団体が怒るのもわかる。今まで、人に迷惑がかからなければ良いと思っていたが、このように倫理的な問題を抱える診断はそれだけでは済まされないなと思った。 (医学部)

(分からない:1人)
・中々答えをだすことができません。やはり障害をもつことがわかって、それがその子供にとってマイナスになるのならおろすのが子供にとって幸せかもしれません。でもそれを判断するのは子供でありそして、それはおろしてしまっては答えがわかることが出来ません。やはり、障害者を差別する社会をなくすことが一番の解決策だと私は思います。この問題は倫理的にも特に難しい問題だと思います。 (理学部)


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