2004年度 レポート第3回 回答集

熊本大学
生命資源研究・支援センター
バイオ情報分野
荒木 正健
Tel : (096) 373-6501, FAX : (096)373-6502
2004年12月 1日作成

2004年度 最前線の生命科学C レポ−ト第3回(2004年10月27日実施)回答集

[ テーマ ]ゲノム科学に期待すること

[ 回答 ](全12人)

・ゲノムの解析により、オーダーメイド治療といった医療の発達を促進できるのには驚きましたが、それは一体どのくらいまで実用化されているのか、また実用化のめどがたっているのかとか、いかなる問題点があり、犯罪とかに利用されないのかという疑問点があり、興味をもちました。(医学部)

・高度に発達した科学文明は魔法のようだといいます。昔、魔女が使っていた世の中の出来事を知る水晶玉はインターネット。空を飛ぶ箒は飛行機、ヘリコプター。フクロウやテレパスは携帯電話。こんな感じに実現されています。
 ゲノム科学はその最たるものかもしれません。オーダーメイド医療や組織の再生などその結果はまさに魔法っぽいです。しかしながら、その魔法のような技術は使い方によっては最悪になるかもしれません。
 今年のアテネオリンピックではワイドショウで遺伝子ドーピングなどが騒がれました。まぁこれくらいならいいけどこれから先しようと思えば、遺伝子毒物もありえます。例えば、ヒトラーがそのような技術があればユダヤ人にだけ毒性のあるガスをつくるでしょう。また、ユダヤ人にだけ病原性を持つ寄生虫を大量に放つかもしれません。
 たいていの技術は戦争に結びつくものが実に多いです。そして政治家はそいうものにお金をかけようとします。それはとてもかなしいことです。だから自分はゲノム科学、そしてそれを扱う技術者たちにはその技術が正しく人々のためにつかわれることを期待したいです。(医学部)

・現在科学の最前線でゲノムの解析が進められているとよく耳にする。しかし、もし何年後、何十年後に完全に解析が成されたとしてそれが我々に好影響ばかり与えてくれるものとなるのだろうか。確かにゲノムの仕組みを明らかにすることで未だ克服されていない遺伝病の一部が治療可能になるかもしれないとも言われているし、遺伝病とまでは言わなくとも身体的な悩み、例えば頭髪の毛量を調節したりできるようになったらそれは現在の人間の技術を爆発的に躍進させる結果に繋がることだろう。だがそううまくいったとしていいことばかりだと言えるだろうか。ゲノムの解析によって遺伝子というブラックボックスが明らかになってくると問題だって出るはずだ。犯罪者特有の遺伝子があるという話を聞いたことがある。ちょっと胡散臭い話だが、もしそういったおかしな定義がなされて犯罪を犯していないのに捕まる人が出てきたりすればどうなるであろう。私達が知っている世界とは全く違う世界になり得るとは思えないだろうか。ヒトラーの暴挙のように生まれの問題で人が裁かれるに留まらずクローンなどといった技術も合わさり世界がより複雑化してしまい、SFに出てくるような混沌とした世界が形成される引き金となるとしたら‥。妄想のような想像だが、我々のよく知る世の中とは全く違った未来となる、というのはわりと有り得る話ではなかろうか。人類のかつての数々の失態に懲りて今度こそ取り返しのつかない失敗をしないよう気をつけて行くことが我々の今後の課題となってくるのだろう。(医学部)

・ゲノム研究の進めにつれて、どのようなタンパク質が作られるのか、いつ、どこで、どれだけといったその調節の仕組みが明らかとなれば、それと対比させる形で、病気では何が、どのようにアンバランスになってるのかを明らかにすることが可能になり、さらに違う遺伝子を持っているため、治療法も個別化になってきた。その研究の陰で病気を予防したり、発症を遅らせたり、早期発見早期治療をしたりすることも可能となった。
 でも、癌や、白血病などのいろんな治りにくい病気に対する研究は大きな進展がまだなさそうで、残念だと思ってる。 (文学部)

・今回の授業での映像では、特にタンパク合成の過程が分かりやすくあらわされていたと思います。実際、イメージがしやすかった。タンパクは立体構造をとるものが多いので、合成されればされるだけ、あんな風にねじれて立体的な構造をとっていくものなんですね。その構造が正しくなされていなくても、アミノ酸配列だけでそうなる傾向をもっているわけですから。
 しかし、あれはコンピュータグラフィックで、実際に明確に目で見えるものではないと思います。電子顕微鏡を使えばまだしも違うのかもしれませんが、それでもあそこまで捕らえるのは、おそらく不可能です。そういったところで、ゲノム科学にはどうも頼りなさを感じるのは、僕だけなのでしょうか。
 実際、手の届くところに分子があるわけではなく、その分子自体を手で変革できるわけではありません。酵素や、機械に任せて行います。うっかり処置が間違ってしまったとしても、確認するにも時間がかかります。それで被害が出たとしたら、その生命は取り返しがきくのでしょうか。
 まあ、実際は、僕らの体の中でそのような反応が正確に起こっているわけですから、単に悲観的になって、目に見えにくい所へ不安を持っているだけなのでしょう。確かに医療関係・薬剤関係では、ゲノム科学からの成果が大きく反映している点を見ることが出来ます。授業で紹介のあったオーダーメイド医療などは、本当に期待できる面の一例だと思います。特に、昨今は患者のカルテが電子化されているらしいですから、記録しておけば患者の体質情報を即座に参照できます。可能になれば、本人も知らなかったアレルギー反応などを、病院側も避けることが出来るようになるでしょう。
 ゲノム情報が明らかになったことで、その情報を改変したり、改良したりすることが将来できるようになるのかもしれません。ですが、僕はあまりこの方面には期待していません。人間で言うならば人体実験をするわけにはいかないから、ある遺伝子を改変しての結果を、正確にトレースできる人はいないでしょう。あまりするべきではない、と僕は考えています。遺伝子に手を加えた生物は、時間をかけて進化してきた種や、育種からゆっくりと創造された生物と違って、生態系に与える影響も知れません。それに無責任に、失敗作を生じさせたり、不完全な生物をあえて作り出すことも研究の中では出てくるでしょう。あまり感心できることだとは思えません。
 僕は、ゲノム科学はこれまで解明されていなかった病態や、生体内の化学反応を明らかにすることで、薬剤の発達や、病気の治療といった分野に大きく貢献をするだろうと思います。それともそれは、むしろそっちの方面で、その科学が用いられてほしいという僕の願望でしょうか…(医学部)

・初めに、先週の授業から出席させていただきましたが少々不安と驚きを隠せませんでした。シラバスを参照した際、「夢の科学技術」というフレーズに興味を抱き出席しましたが周りが医学部や薬学部などの生徒ばかりで居場所を間違えたような感じがしました。しかし授業内容を見て少し安心いたしました。昔、某テレビ局の「たけしの万物創世記」やNHKの「生き物地球紀行」というテレビ番組が大好きで毎週見ておりました。そういった地球・宇宙の誕生や最先端の科学技術といったものに小さいころから興味がありました。授業のほうもその番組に似通ったところがありやっていけるかなと感じました。
 さて本題のほうへ入りたいと思います。今回、ゲノム科学に期待することということですが私の中ではこのゲノム科学というものに不安を抱きました。もちろんこのゲノム科学は現在の科学技術の最先端をいっており目を見張るべきものがあると思います。このゲノム科学が人間にもたらす恩恵も計り知れないものになるのでしょう。例えばゲノムと病気の関連性である。病気を起こす仕組みが分子レベルまで解明され危険因子や決定因子を見極めることができれば、より多くの病気が治癒されより多くの命が助かるようになるでしょう。しかし非常に恐ろしいことを言っているような気がしてなりません。そもそもこの「危険」「決定」・因子という名前が私は気になります。危険因子を持つ人間=危険な人間あるいは不完全な人間という発想にいたりはしないでしょうか。ヒトゲノムが完全に解明された未来、赤ん坊が生まれ、もし何らかの危険因子を持っていることがわかるとどうなのでしょう、わかったことで病気などの改善に役立つのであればとてもすばらしいことなのですが改善することのできない因子や思想的に危険な因子を持っている場合「危険因子持つ子ども」といった差別的な烙印を押されることはないのでしょうか。現在すばらしく発展した科学技術はわれわれにとても多くの恩恵をもたらしている。しかしその半面で科学技術の発展で失ってきたものや犠牲にしてきたものが多いことも事実である。ヒトゲノムは人間の知識や知恵を結集したすばらしいものである。今までの科学技術にも類を見ないほど傑出したこのゲノム科学、類を見ない犠牲を生まないとは言い切れないと私は考えます。(教育学部)

・自分の遺伝子を調べることで、将来いつ、どれくらいの酷さの疾患が発症するかがわかったり、自分にどれくらい薬が効きやすいかを調べることも出来るようになる、将来の医療が本当に楽しみです。
内容は非常に興味深かったものだけに、音が聞こえにくかったのが残念です。(医学部)

・ゲノム情報を利用したオーダーメイド医療ができるようになり、個人にあった創薬ができるというところでしょうか。 (医学部)

・ヒトゲノムが解読され、生命の設計図であると言われている「遺伝子」の機能が次第に明らかになっていくにつれて、それを医療に応用しようという動きが起こり始めた。遺伝子多型を明らかにし、病気になりやすいか等を判断し、個人に合った「オーダーメイド医療」を実現しようというのもその動きの一つだ。「オーダーメイド医療」が実現すれば、「予防医学」が発達していくと思う。1人1人が自分はどのような病気になりやすいかなどを自分で把握し、自己管理することができれば、極端に言えば、環境因子が大きく関わるような病気が激減するだろう。そうすれば国民の医療費の大幅な削減につながると期待される。しかし、これを実現するためには様々なハードルがある。病気になりやすいと診断された人が保険に加入できなかったり、入社試験で不利になったりなどの社会的な差別をうけないかどうかは大きな問題である。また、病気になりやすい因子をもっていると診断された人が劣等感を感じ、マイナスの方向に考えてしまったら「オーダーメイド医療」のメリットはなくなってしまう。遺伝子の情報を管理する体制も大きな問題である。遺伝情報が漏れてはいけないし、他人のものと間違えたりすることは絶対に許されない。確実に正しい情報を安全に管理するシステムが必要になってくるだろう。また、遺伝子診断を行うために、遺伝子を判定する技術者が必要になってくるだろうし、情報を管理する人も必要になってくるだろう。医療従事者はその情報を判断できる知識が必須となるだろう。
 今現在はまだ「オーダーメイド医療」の実現には至っていないが、その動きは文部科学省の「オーダーメイド医療実現化プロジェクト」などで見てとれる。バイオバンクへ約30万人のDNAおよび血清試料を集め、それらを利用してSNP(遺伝子の個人差)と薬剤の効果、副作用などの関係を明らかにしたり、病気との関係を調べたりするオーダーメイド医療実現基盤を構築するもので、この事業に平成15年度から19年度までの5年間に、リーディングプロジェクトとして約200億円の予算が予定されているそうだ。
 これからも「ゲノム科学」は発展し、様々な遺伝子の機能が明らかになっていくことだろう。それが医療の現場へ応用され、多くの人にとって役立つものとなることを期待する。(理学部)

・前回の授業では、ゲノム研究が遺伝性疾患の治療・予防に非常におおきな可能性を秘めている、ということが最も印象に残りました。私の友達のひとりが、遺伝的に糖の値が高いということで、毎朝かならず血糖値をはかったり、またそのほかにもいろいろなことを常に気にかけておかなくてはならないので本当に大変だ、ということを以前言っていたのを思い出しました。遺伝性疾患の場合、本人の日ごろの努力だけではどうにもならなかったり、またそれが報われなかったりということがとても多いと思うので、ゲノム研究がもっと進んで、遺伝子工学による安全な治療ができるだけ早い時期に可能になることを期待しています。(文学部)

・ゲノムというのは言葉は知っていたがどのようなものかはあまり理解していなかった。しかし、前回の授業ではじめは戸惑ったがとてもわかりやすかったしよく理解できたと感じた。遺伝子操作などを医学の今までにできなかったことへ利用しているのは知っていたが具体的にはよく知らなかったのでとても役に立った。病気の予防につながるというのが魅力的である。今まで以上により深く自分のことを知れるという意味でもいいんじゃないだろうか。しかし遺伝子操作という言葉を聞くと不安を覚えるのも事実である。もっと研究内容等を公にしてなおかつ安全な研究を行なって世間に広めていってもらいたいと感じた。(教育学部)

・やはり世間一般にゲノム解析により期待されることは、遺伝子と病気との関係の解明だろう。
 このことは現在行われている医療(レディメイド医療)を一段階上のレベルの医療(テーラーメイド医療)に発展させることができることを意味している。また、ゲノム異常によって引き起こされる病気今までは治療の施しようがなく、死を待つだけしかない病気の画期的治療法が開発される可能性も秘めている。しかし、現段階においては塩基配列の決定はできているものの、遺伝子のコードするタンパク質の機能やそのタンパク質同士の相互作用などはまだ解明されていないと聞いた。テーラーメイド医療が取り入れられるにはまだまだ時間がかかりそうだ。だが、導入によって医療の飛躍的な発展が見込めることは間違いないだろう。(理学部)


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