2004年度 レポート第8回 回答集

熊本大学
生命資源研究・支援センター
バイオ情報分野
荒木 正健
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2006年 5月19日更新

2004年度 最前線の生命科学C レポ−ト第8回(2004年12月 15日実施)回答集

[ テーマ ]『遺伝子組換え技術のペットへの応用に賛成か反対か』

[ 回答 ](全8人)

賛成(2人)
・私は遺伝子組換え技術のペットへの応用には賛成です。人間は今まで品種改良によって様々な犬を生み出してきました。今流行のチワワなど、祖先であるオオカミに比べたら信じられないほど小さなサイズです。サイズの変化や毛色の変化などを遺伝子組換え技術によって行っても構わないのではないかと思います。
 今日のペット市場はとても広大で、ペット産業だけでも様々な業種があります。それだけペットにお金や時間を費やす人が多いということです。
 2003年7月12日の朝日新聞に「遺伝子組み換えの「光るメダカ」台湾から輸入・販売」という記事がありました。このメダカは、観賞魚販売業のタイコン社が01年に開発したもので、発光クラゲの緑色蛍光たんぱく質の遺伝子を組み込み、全身が蛍光色を帯びるメダカだそうです。日本の輸入総代理店のアズージャパン社(神奈川県大和市)が今年5月、約100匹を輸入、全国の観賞魚店などに卸したそうです。「エメラルドフィッシュ」の商品名で1匹6000円前後、「癒やしを求めるサラリーマンらが買い求めていく」と掲載されていました。
 市場にはめずらしいペットがほしいという人がたくさんいます。多くの需要があると思います。
 今はまだ研究の現場と産業の場や一般の市場との間にギャップのある時期だと思いますが、これから少しずつ「遺伝子組換え」が身近なものになってくると思います。そうなるとペット業界もそれを応用しないはずがないと思います。そこに技術があってそれを求める人が存在すればすぐに実現される思います。
 様々な模様、様々なサイズの動物が作りだされるかもしれません。 (理学部)

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 貴重な賛成意見、ありがとうございます。また光るメダカの情報もありがとうございます。メダカ1匹6,000円ですか。高いと思うのは私だけでしょうか。最初に開発した時にはそれなりに研究費が必要だったと思いますが、一度安定な「家系」を樹立すれば、増やすのは普通のメダカと一緒ですので、販売している業者にはかなりの利益があったのではないかと思います。こういう前例があれば、ペット産業へのLMO導入はますます加速しそうですね。もちろん、 2003年7月にはまだ規制法が施行されていなかった訳ですが、今このメダカを売ることは(買うことも)規制法の対象になります。 (コメント by 荒木)

・どちらかというと賛成ですね。自分は正直なんで。やはり面白い動物を見てみたいです。昔からやってきていることを少ない時間でやるのだからたいして変わりはないと思います。しかし、変に恐ろしい動物が現れたら怖いですけど。手乗り豚とかもかわいいし。動物たちには可哀想かもしれませんが・・・ (理学部)

条件付きで賛成(1人)
・光る熱帯魚のような、人の興味や好奇心を満たすためだけに遺伝子組み換えを行うのには反対です。でも、もしこの技術が犬や猫などの人が身近に飼っているような動物の病気などのリスクを減らすようなものなら賛成です。動物は人より寿命が短いので病気などでその寿命をさらに短くしてしまう危険が回避されるのならペットを買っている人たちにとってとてもうれしいことだと思います。 (工学部)

反対(5人)
・私は反対です。人間と同じ生き物であるペットを好きな形に変えるなんてどうも納得できないのです。 (文学部)

・私は反対です。なぜなら食料危機のようなさしせまった問題があるのならまだわかりますが、ただ人間の娯楽のために生命を操作するというのはどうかと思います。 (医学部)

・光る金魚など遺伝子組み換え技術のペットは見た目もかわいく人気が出ると思いますが、もし捨てたりしたならば一体どのようなことがおこるのでしょうか。前回の授業での遺伝子組み換え食品において環境や生態系をぶち壊すかもしれないだの言っていましたが、このようなペットが流出したら、場合によっては確実に生態系を壊すのではないかと思います。実際にある業者がある生物を海外からとりよせて養殖して売ろうとしたが、売れ残ったので余った分を川に捨てたのですが、それが増殖して環境面でも生態系面でも甚大な被害をこうむったというニュースがありましたが、このようなことが起こりうるのではないでしょうか。興味本位で飼って飽きて捨てることもありうると思います。だからこそ私は遺伝子組み換え技術のペットは反対です。 (医学部)

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 ペットの取り扱いに関して無責任な人が多いのは事実だと思います。また取り扱っている業者の方にもいろいろ問題があると思います。そういう意味では、『規制法』の罰則規定の見直し(例えば1年以内の懲役、100万円以内の罰金から、20年以内の懲役、100億円以内の罰金にするとか)なども検討する必要が出てくるかも知れません。 (コメント by 荒木)

・遺伝子組み換えペットは確かに大きな市場になるかもしれない。でも普通に考えてみて、自分が遺伝子を組み換えられて、体が発光したり、腕が阿修羅のように6本あったり、放電したり(ラムちゃんじゃあるまいしねぇ。)するのは、どうだろうか、、、まぁ多少、便利かも知れないし、多少は不便かもしれない。とりあえず、幼少期から虐められることは必死だ。「なんで、お前は羽があんだよ。早く飛べよ〜」とか「気持ち悪いなぁ、向こうに行けよ」とか数々の暴言に耐えなくてはいけないだろう。就職の面接でも「遺伝子組み換えの方はお断り!」とかだったりするかもしれない。あと普通に結婚相手とか見つからないと思う。
 完璧に親(作った人)のエゴだ。ホンとに酷いと思う。ヒトはそれを動物にしようとしている。ヒトと動物を一緒にするなという方もいるかもしれない。でもヒトは動物にそんなことをする権利はあるのだろうか。ヒトは一番偉いわけじゃない。だから、遺伝子組み換えの技術のペットへの応用は反対だ。 (医学部)

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 とってもおもしろい意見だと思います。また極めて仏教徒的な考え方だと思います。日本では、私もそうですが、あなたの意見に賛成する人はそれほど少なくないと思います。しかしながら、キリスト教徒やイスラム教徒は、全く別の考え方をする可能性が高い気がします。つまり、誰もが納得するような反対理由としては弱いという気がします。 (コメント by 荒木)

・ペットへの遺伝子組換え技術応用は、僕は反対します。
 ディベートでの植物への技術なら、先生のおっしゃっていたように将来のための一つの技術として、僕はまだ理解も出来ます。ですが、この場合は、はなから愛玩動物用としての技術です。それは単に、ものめずらしさを売りにするためだけの市場戦略にしか見えません。それでは、最近一時期だけ流行った「アイボ」と変わりがありません。しかもこの場合は相手が生物になりますから、飼い主が飽きてしまった場合、お互いが不幸になります。その飼い主が、ものめずらしさだけでペットを飼うのでないならばいいのですが、そうでない場合、飼い主にとってもペットにとっても良くありません。なまじ普通と違うだけに、かえって悪い結果になる恐れもあります。
 おとなしいライオン、といった例のように、動物の気性を組換え技術で変えることも、やはり僕は疑念を持ってしまいます。オオカミとイヌの例が出されていましたが、今いるそういったペットは、植物の育種と同じで、長い年月の中で生まれてきたものです。その長い年月の中には培われてきたノウハウがあります。そのノウハウもなく、いきなり組換え動物を作り出しても、問題が多く出てくるだけではないのでしょうか?
 そのノウハウとは、調教とか、訓練といった過程も含まれます。そういった過程をまったく省いた動物がいきなり人間社会に放り込まれることになります。組み換えを行ったことにより、まったく新しい性質がその動物に芽生えているかも知れません。そして、その性質に対する知識や訓練法が、組み換え動物にはないのです。なんと言うか、人間の愛玩物のため、と言うより、技術にはもっと利用するべきところがあるように思うのですが…… (医学部)

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 遺伝子組換え技術の使用目的に関して、ある程度の歯止めが必要だということですね。クローン人間の作製など、常識では考えられないようなことでも世の中には本気で希望している人達がいます。ペットのクローン作製に関しては、実際に商売になるようです。その意味でもLMOペットは荒唐無稽な話ではなく、真剣に議論する必要があると思っています。 (コメント by 荒木)

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参考図書
『死の病原体 プリオン』
   リチャード・ローズ 著、桃井健司・網屋慎哉 共訳、
   草思社、286ページ、1,900円 [1998年7月]
 ノンフィクション。現在の医学・生物学の常識では理解できない驚異の病原体プリオン。1997年度のノーベル生理医学賞を受賞したスタンリー・プルシナーなど、狂牛病で一躍有名になった各種感染性スポンジ状脳症の研究者へのインタビューに基づくドキュメンタリーです。牛肉だけの問題ではなく、ベジタリアンでさえ安全ではありません。現在、静かに進行しつつある人類の危機を警告する本。


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