2006年度 レポート第12回 回答集

熊本大学
生命資源研究・支援センター
バイオ情報分野
荒木 正健
Tel : (096) 373-6501, FAX : (096)373-6502
2007年 9月06日更新

2006年度 最前線の生命科学C レポ−ト第12回(2006年12月17日実施)回答集

[ テーマ ]「遺伝子組換え技術のペットへの応用に賛成か反対か」

[ 回答 ](全17人)

<賛成:3人>

・遺伝子組み換え技術のペットへの応用には賛成です。生命倫理に反するなどの意見などもあるとおもいますが、ペットがショップで売られている時点で生命倫理を反していると私は思います。また、犬などで声帯手術で吠えても声が出ないようにするなどの処置も現在行われていると思います。こういった処置は良いが、遺伝子組換えはダメだという理由が私には特に無いので、私は賛成します。(工学部)

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 「ペットがショップで売られている時点で生命倫理を反している」という意見はかなり厳しいですね。もちろん、ペットショップ反対と言われている訳ではなくて、ペットショップにおける現状を認めるのであれば遺伝子組換え技術だけ問題にするのはおかしいと言われているのだと思います。しかしながら、ペットショップの存在意義を認めた上で、遺伝子組換え技術の応用も含めてそのあり方を議論する事も出来ると思います。 (コメント by 荒木)

・自分は限りなく賛成に近いですが、全てが賛成と言うわけではありません。今までにも交配と言うかたちでブルドックなどの種類をつくって来ました。これらのことから考えると遺伝子組換え技術をペットに適用するのは自然の流れだと思います。ただし、新しい生物を作るとなると話が変わってくると思います。(工学部)

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  「新しい生物を作るとなると話が変わってくる」というのは重要なポイントだと思います。おそらく新しい「種」を想定されていると思いますが、どこからが「新しい生物」で、(人類に)許されない行為なのかも考えてみて下さい。(コメント by 荒木)

・僕は賛成です。元来病弱なペットを遺伝子操作で病気に強くすることができれば(できればですが)、飼い主としては嬉しいでしょうし。ペットってもともと人間の都合で飼いならしたのですから、遺伝子操作に関してのみ、倫理的にどうのこうの言うというのはどうかと思います。  それに、ペットの意義は飼い主を癒してあげることだろうと思うので、都合の悪いところは遺伝子操作でなくしちゃってもいいんではないでしょうか。それに、飼い主の意思でペットの遺伝子に手を加えることで、自分のものだという思いが強くなり、さらに愛着がわくかもしれませんし、僕は賛成です。(薬学部)

<反対:14人>

・私は反対です。ペットというのは人間から見た視点での呼び名です。ペットの動物はよくて人間はダメ、さらに人間が食べる作物もダメなのにペットの動物はいいなんて言うのは理不尽だと思うからです。(教育学部)

・今でさえ年に数万頭とも言われる数の元ペット達が保健所で処分されているのだから、自然界を、命を自分の思い通りに出来ると勘違いさせかねない遺伝子組み換え技術をペット業界に導入すべきではない。ただでさえ低下している現代の道徳観をより低下させる恐れがあるのだから。(教育学部)

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 「自然界を、命を自分の思い通りに出来ると勘違いさせかねない遺伝子組換え技術」という言葉は、私にとっても耳の痛い言葉です。「ただでさえ低下している現代の道徳観をより低下させる 恐れがある」というのも、その通りだと思います。(コメント by 荒木)

・私は反対である。ペットだって生き物であるし、遺伝子組換え技術によって毛を抜けにくくしたり、体臭をなくしたりしないと飼えないような人にペットを飼う資格はないと思う。(教育学部)

・私は反対です。人間の欲求を満たすためにこのような自然の秩序を崩すことは仇として必ず将来自分たちに返ってくると思います。もし遺伝子組み換えのペットを放して野生化してしまって、他の動物と交配してしまったら大変なことになります。自然をいじくることである動物を絶滅に追い込むかもしれないし、人間にとってとても有害な生物を作るかもしれません。自然は繊細なものです。ただでさえ地球温暖化などで傷ついているのに、更に破壊へと誘導することは自分の首を自分でしめているようなものだと思います。そのようにならないためにも、生物はそのままにしておくべきです。(薬学部)

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    立派なレポートだと思います。珍しいもの、貴重なものを追い求め、飽きたら捨ててしまう様な人間が多い時代に、遺伝子組換え生物をペットとして飼育するという事は好ましくないと思います。昨年3月、(財)自然環境研究センターの千石正一先生に「種多様性が生態系を支えている」というテーマの講演をしていただきました。内容をホームページで公開していますので参考にして下さい。[http://gtc.gtca.kumamotou.ac.jp/news/seminar10.html ]  (コメント by 荒木)

・自分はあまり賛成できません。遺伝子組み換えをペットに応用するということは、見た目や性格を自分好みにするというものになるでしょう。確かにペットというのは人間が可愛がるための動物で、自分の好みにあった動物の方がより感情移入しやすいものです。しかし、遺伝子を組み換えてまで好みにあったペットを生み出す必要があるのかと考えるとどうかと思う。動物にも性格があって、その点は人間と共通しているのであり、飼ってから一緒に生活していくうちに理解していくものではないだろうか。もちろん組み換えを行ったペットにしても例えば「大人しい」遺伝子を持っていたとしても微妙に違いはあるだろうし、一緒に生活しないと分からない部分はあると思う。逆に細かい部分まで組み換えてしまうとなれば、オーダーメイドにも限度があるように思う。動物に対してそのようなことを行うにはどうしても抵抗がある。仮にペットへの遺伝子組み換えが認められたとすると、時代を経て人間に対してもそのような考えが生まれるのではないかと考えてしまう。その点でも賛成できない。(文学部)

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   良く書けていると思います。しかしながら、人類の長い歴史の中で「自分の好みにあった動物」を作るために費やされてきた時間とエネルギーが膨大なものであった事も事実でしょう。遺伝子組換え技術を応用する事により、これまで掛け合わせで行ってきた事が短時間に低コストで行えるという見方もあります。(コメント by 荒木)

・直接ペットを生み出すのに応用することは反対の立場をとる。人間の勝手わがままで遺伝子を操作して、好みに合ったペットを生み出す可能性が非常に高い。人間の都合で捨てられた動物を仕方なく処分している場面をテレビで見たことがあり、とてもじゃないが賛成できない。ただ、先生がおっしゃったようにペットに対する薬等に応用するのはオーダーメイド治療と同じようなものなので反対はしない。(文学部)

・私は遺伝子組換え技術のペットへの応用はあまり賛成できません。なぜなら、遺伝子組換え技術を使用したペットが逃げ出す、または飼い主が捨てるなどの行為によって、野性化し、子孫を残した場合、既存の生態系を壊す恐れがあるからです。もし遺伝子組換えをするなら、生態系に影響を与えないものに限るか、飼い主に厳格な監理を義務付けるべきだと思う。(工学部)

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   生物多様性への悪影響を考えると、「飼い主に厳格な監理を義務付ける」必要があるのは、なにも遺伝子改変生物だけではなく、現在流通しているペットも同じだと思います。もちろん、今でさえ危機的状況なのに、さらに危険を増す愚行は避けるべきという意見もあると思います。(コメント by 荒木)

・動物への応用は反対ではないが、ペットへの応用は反対だ。研究の為ならある程度容認できるが、ペットという生活のゆとりには賛成できない。それは自分の好みに生物を作り替える、生命をもてあそぶ行為に他ならないからだ。家族の一員として迎え入れるのなら、妥協も必要だ。自分の生活様式に合った種類を選べばいいし、あれもこれもと望むのはあまりにも身勝手だ。また、そんな動物に見合うほどの飼い主かどうかもはなはだ疑問だ。 (薬学部)

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「家族の一員として迎え入れるのなら、妥協も必要」という意見に賛成します。基本的にペットは弱い立場にあり、人間が守ってあげなければならない存在だと思います。自分のために生きている存在だと勘違いしている人がいるのではないでしょうか。(コメント by 荒木)

・私は、遺伝子組み換え技術のペットへの応用に賛成しかねる。遺伝子組み換え技術という自体は有りだと思う。遺伝子改良によってペットの寿命や体質などを任意に調整することが可能となることで得ることの出来るメリットは少なからず存在するだろう。しかし、遺伝子組み替えペットが流出してしまった場合、周囲の生態系を破壊する可能性は無視出来ない。ペットの取り扱いに無責任な人々(飼い主だけでなく業者も)が近年問題になっている状況からすると、現状において遺伝子組み換え技術のペットへの応用を行うべきではないと考える。また、ペットとは人間に最も身近な動物であり、遺伝子組み換え技術のペットへの応用が一般に浸透すれば、人間への応用に対して抵抗感が薄れてしまう。技術的・倫理的な議論を置き去りにして人間への応用を行ってしまえば今後様々な問題が発生する可能性があるように思える。こういった観点からも、遺伝子組み換え技術のペットへの応用を行うべきではないと考える。(工学部)

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  「ペットとは人間に最も身近な動物であり、遺伝子組み換え技術のペットへの応用が一般に浸透すれば、人間への応用に対して抵抗感が薄れてしまう。」というのは、重要な指摘だと思います。現在は、ヒト生殖細胞への遺伝子操作は禁止されていますが、クローン技術同様に暴走する研究者が出て来る可能性は否定できません。 (コメント by 荒木)

・私は遺伝子組み換え技術のペットへの応用は反対だ。遺伝子組み換えをすると病気にかかりにくかったりよいことがたくさんあるのだと思う。しかし、私はペットの遺伝子組み換えに反対だ。私はペットも家族の一員だと思う。家族はどんな病気をしていても助け合っていくものだと思うし、家族の一員が遺伝子組み換えをしているのはなんとなく不安だからだ。遺伝子組み換えに問題がなかったとしても、私はどうしても遺伝子組み換えというものに抵抗がある。まとまらないがとにかく私はペットにまで遺伝子組み換えをしてほしくない。(教育学部)

・私は絶対に反対です。かわいいペットが欲しいという気持ちはわかりますが、それはただ人間の身勝手な欲望やワガママで動物を操ることにもなる気がします。それによって誰のためのどんな利点があるのでしょうか?遺伝子組換え技術はものすごい事だけれど、それを使う目的が大事なのであって何にでも試そうとするのはよくないと思います。使い方を間違うとせっかくのすばらしい技術もいつか生態系をもおかしくしてしまうことにつながりそうな気がして少し恐いです。(教育学部)

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  確かに、どんな技術も使い方が重要だと思います。生物多様性への影響は無視できません。昨年3月、(財)自然環境研究センターの千石正一先生に「種多様性が生態系を支えている」というテーマの講演をしていただきました。内容をホームページで公開していますので参考にして下さい。[ http://gtc.gtca.kumamoto-u.ac.jp/news/seminar10.html ](コメント by 荒木)

・実際に光る熱帯魚等が売られたりしているようですが、可愛がられて飼われている間はいいかもしれませんが、飼うのが嫌になったり売れ残ったりして川に捨てられたりした時、以前国内に持ち込まれたブッラクバス等が大繁殖して国産魚を駆逐したように、今の生態系にどんな変化をもたらすかわかりません。このように遺伝子を組み替えられたペットが現在の種を淘汰したり、混じったりとどんな事が起きるか分かりません。なので、私は遺伝子組み換え技術のペットには反対です。(工学部)

・私はたとえペットであっても遺伝子組み換えすべきではないと思う。大人しく自分に合ったペットを飼えるというメリットがあるかもしれないが、結局は飼い主の思い通りのペットを作りたいだけにすぎない。それは親が自分の理想通りの子供が欲しいと思う親の身勝手と全く同じだと思う。人間であれ動物であれ倫理的に問題があるので、私はこのテーマには反対である。(教育学部)

・僕は、遺伝子組換え技術のペットへの応用に反対です。確かに飼い主の好みの容姿にしたり長生きできたりすることは、売り手や購入する飼い主にとっては大きな利点だと思います。でも、人間の思い通りにペットを変えてしまうことは倫理的に間違っていると思います。ペットはおもちゃではないし、自然界に存在しない動物が現れることは生態系を今以上に破壊することにつながりそうな気がするので、僕は賛成はできません。 (工学部)


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