2006年度 レポート第4回 回答集

熊本大学
生命資源研究・支援センター
バイオ情報分野
荒木 正健
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2007年 9月06日更新

2006年度 最前線の生命科学C レポ−ト第4回(2006年10月25日実施)回答集

[ テーマ ]「地球上の全生物が共通の遺伝暗号表を利用していることについて」

[ 回答 ](全22人)

・全生物が共通の遺伝暗号表を利用していると知り驚いた。しかし、この先もし仮に異なる遺伝暗号表を利用している生物が発見された場合、科学者の皆さんはいったいどういう結論を導き出すのか非常に興味がある。ただの突然変異としてかたづけられてしまうのか、それとも地球上に存在する生物から進化して誕生したのではなく、宇宙から隕石などと一緒にやってきたものなのかなど、異なる遺伝暗号表など存在しないのかも知れないが、もしかしたら存在するかもしれないということを考えることも面白いと思った。 (工学部)

・地球上の生物が元を辿れば一つの生物から発生していることを考えれば、同じ暗号表を使用していることは納得できる。言い替えれば、生物が誕生してから現在まで生物がいくら進化をしても変わらないものがあるということである。4つの塩基の組合せであるDNAから遺伝情報を引きだし、生物を形作る。それは種に限らず同じであり、自分にも生物が生きてきた時間が息づいていると考えると興味深いことである。 (工学部)

・地球上の全生物が共通の遺伝子暗号表を利用していると聞いて、考えてみれば当然のことなのかな、と思いました。地球上の生命がある1つの生命から枝分かれして今のような、多くの生命が生まれたのだとすれば、その事実は不思議なことではないように思う。むしろ、それはその1つの生命から進化してきたという説を裏づける事実ではないかと思う。生物の進化も遺伝子の違いから来るものである。また、違う基準において遺伝子は、その意味をなさない。だから、世代間での遺伝が遺伝子によって行われている限り、その基準自体が変わるようなことはないだろう。このように、遺伝するたびに同じ暗号表を使うなら、今の生物すべてが同じ遺伝子暗号表を使っていることにも納得がいく。 (薬学部)

・ウィルスは生物かどうか?から始まりかなり複雑な内容になりました。高校のときに生物を習ってたけど、そこでは教えてもらえないこといっぱい学べてよかったです。 (教育学部)

・遺伝子の実験のために日本はチンパンジーを選びフランスは他国からボランティアを募ってヒトを使ったとのことだが、私たちの生命の為の開発には必ず犠牲になる生物が必要だということを少し恐く感じた。フランスがフランス人からボランティアを見つけない事については倫理的な問題も含まれると思う。また、遺伝暗号表が全生物共通なのにこんなに多くの種類の生物が存在していることが不思議に感じた。 (教育学部)

・ウイルスは生物か?と問われたとき、迷わず生物と考えたが話を聞いていくうちによくわからなくなった。セントラルドグマやDNAの構造は初めて知った。そして生物のすべてが同じ遺伝暗号表を使っていると知り、やはり私も祖先が同じものから来てるからかなぁと思いました。おおざっぱにですがPCRの事も理解できたかなと思います。すばらしい技術なのでさらに進歩していけばいいなぁと思いました。 (教育学部)

・地球上の全生物が同じ暗号表を使っていることは非常に興味深い物だと感じた。これは、全生物が元々は同じ生物から進化を続けていって今に至っているのではないかと思った。これほど多くの種類の生物が一つの生物から進化しているとしたら、生命の進化というものは非常に面白いものだと思った。 (工学部)

・人間だけは例外的に特別な遺伝暗号表を持っている、というわけではないことが分かった。全ての生物は進化の過程を辿っていけば、地球上で始めて生まれた生物に行き着くため、遺伝暗号表が共有されている方が自然だと感じた。 (工学部)

・遺伝子の暗号はとても難しそうでした。しかし、この暗号があるからこそ現在のバイオテクノロジーが発達していったんだなと思いました。地球上の全生物が共通の遺伝暗号表を利用していると聞いたときには驚きました。 (工学部)

・地球上の全生物が共通の遺伝暗号表を利用しているなんて知らなかったのでかなり驚きました。ということは人と他の生物との違いは暗号の順番とか数になるということだと思うので本当にすごいと思いました。 (薬学部)

・全ての生物が同じ遺伝暗号表を使用しているということはちょっとした組み合わせの違いでも違う特徴を持った生物がこの地球上に存在しているということになる。ちょっとした違いで違いが生まれるんだなという驚きもあるけれど、少し見方を変えてみると、私たち人間も含め地球上の生物はそんなに違いはないんじゃないかというふうに思えるようになった。 (文学部)

・地球上の全生物が共通の遺伝暗号表を利用していることはとても興味深いことだと思います。遺伝子が少し違うだけで、外見的にも体の機能的にも大きく変わるので不思議です。これから遺伝子の分野が進んでいくと思うのでなぜこのようなことが起こるのか知れるかを楽しみに待ちたいと思います。 (薬学部)

・有益な働きを持つ生物の発現部分のコドンが解明できれば人にも応用できるので、これからの研究成果に期待したい (薬学部)

・今回は遺伝子暗号について学んだが、その以前に遺伝子のコードという言葉を耳にしたことはあったが、難しい、というイメージしか頭になかった。今回の授業で実際にコドン表を使って遺伝子暗号の解読をやってみてこのようなやり方で解読されているということを知り、暗号解読を編み出した人はどれだけ優秀な人なのかと思った。今、人間の手によって遺伝子暗号の解読がますます進められているわけだが、この解読の進歩によって第一回の講義のゲノムにおける医学の進歩に期待したいと思う。 (教育学部)

・全ての生物のDNAが同じアミノ酸の塩基で構成されていると初めて知った。多種多様な生物が存在しているが、根源はとてもシンプルなものだろう。とても驚いたと同時に、納得できる部分もある。基本構造が単純なものほど、進化・複雑化する余地が存在し得ると考えられるからだ。 (教育学部)

・実際に暗号解読などをしてみてなるほどと思った。全ての生物が共通の遺伝暗号表を利用しているということでもとを辿れば同じ生き物だったんだろうなと考えることもできた。これを利用してどんな生物でも作れたら面白いと思う。 (工学部)

・今回の講義では暗号表から言葉を作る作業があり、とても興味深く講義を受けることができた。上の題材については全て同じ地球上にいる生き物だから納得できないこともないと思いました。 (教育学部)

・地球上の全生物といっても、姿かたちは千差万別であり、何も知識が無ければDNAのわずか数パーセントの違いがこの差を生み出しているということには気づかないと思う。しかし、DNAにわずかな違いしかないことが、共通の遺伝暗号表を利用しての解読を可能にしているのだと思うと、とても不思議である。
 このように共通の遺伝暗号表を用いることで、全生物の遺伝子を解読できるということは、これから先の例えば医療面などではとても有効である。しかし、同じようにヒトの遺伝子をも解読できるので、遺伝子情報による個人情報流出の危険性などを十分配慮しなければならないと思う。 (教育学部)

・私は地球上の全生物が共通の遺伝暗号表を利用していると聞かされても、あまり実感を持てない。遺伝子は各生命を構成する一要素であり、それの暗号表が同一であるというのはあらゆる生命が何らかの繋がりを有している事を証明しているだけにすぎないだろう。ただし、生命が約40億年近くの歴史と現存種だけでも1億を越える多様性を持ちながら、遺伝暗号表はほぼ全生物種において共通している。この事から、遺伝暗号の進化が不可能であったことを物語っているように思える。 (工学部)

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 「遺伝暗号の進化」というのは、おもしろい視点だと思います。そういう意味では、遺伝暗合も変化(進化?)しています。例えば、64種類のコドンが20種類のアミノ酸に対応しているため、「標準の遺伝暗号表」ではひとつのアミノ酸は1個(Met, Trpの場合)から6個(Leu, ser, Argの場合)の同義コドンを持っていますが、そのコドン出現頻度(使用頻度)は生物種ごとに偏りが見られます。また、「標準の遺伝暗号表」から部分的に外れる例も知られています。例えば、ミトコンドリアの遺伝暗号はいくつかの点で標準遺伝暗号と異なっており、標準遺伝暗号でUGAは終止コドンですが、動物ミトコンドリアDNA(mtDNA)ではトリプトファンになります。 (コメント by 荒木)

・一言、『嘘っ!?』と思った。
“元を正せば、全生物の祖先は同じ”という理屈は分かる。でもこれまでの気の遠くなるような長い進化の過程で、生物は各々に能力の取捨選択をしてきた筈なのに、このコドン表が一様に生き残ってきたということが、不思議でならない。きっと奇跡のような確率だろう。
 だが、説明を聞くに従ってこのコドン表の凄さを知った。たったひとつの遺伝子や発現タンパク質の違いがここまでの違いを生むと分かった時、何とも言えない壮大な気持ちになった。まさに『人類皆兄弟』それどころか『生物皆兄弟』である。ところで、『PCRで遺伝子実験が容易になった』ことについてふと思うのだが、同じコドン表を使った生物なのだから、映画・ジュラシックパークの様に恐竜を生き返らせる事は出来ないだろうか? 映画では琥珀に閉じ込められた、恐竜の血液を吸っていた蚊が使われたが、そんなことが可能になるかもしれない、と期待に胸を膨らませている次第である。 (文学部)

・今回の授業にて初めて「遺伝暗号表」というものを知った。しかもそれが全生物に対して利用されていることに驚いた。構造が複雑な生物も単純な生物も同じ「遺伝暗号表」を利用できるということは、遺伝子自体は大して差がないということを表しているのかなと思った。 (教育学部)

・ヒトとは形も性質も全く異なる細菌から、チンパンジーのように大変ヒトに類似した生物まで、地球上には本当に様々な生物がいます。また今日の授業で学んだように、ウイルスまでも生物に取り込もうという考えがあり、“生物”という概念が広がっているように感じます。そんな中、私たちは普通に“生物”という言葉を使っています。しかし、すべての生物を“ヒトと同じ”生物だと思えているのでしょうか。私は正直思えていません。ゴキブリやムカデを見ると、「気持ち悪い」と思って敬遠しています。確かに生物だと認めていますが、“ヒトと同じ”とまでは思えません。これは冷静に考えるとすごくおかしい事だと思います。なぜならヒトの視点からでしか生物をとらえられていないからです。他の生物からみればヒトだって気持ち悪い、ただの敵でしかないかもしれません。ヒトの考えは、大げさに言うと「ヒトは最も優れた生物だ」という考えに支配されているように感じます。テーマである「地球上の全生物が共通の遺伝子暗号表を利用している」という事実は、このような考えを変えるのに非常に有効だと思います。同じ祖先を持つのだと考えれば、多少なりとも他生物を見る目が変わります。
 ヒトは今までの経験に強く影響を受けると思います。そんな固定された偏見を一気に取り除くのは難しいです。しかし、今回学んだような新しい刺激を受ければ、偏見を持ってはいけないという“意識”を持つ事ができます。その意識が大切だと私は考えます。
 広がる生物の概念に合わせて、さらに他生物への偏見が大きくなるのではないかと思います。それを食い止めるためにも、今回学んだ事をもっと多くの人に知ってもらって生物について考えて欲しいですし、また自らもしっかりと考えたいです。 (文学部)

・人は誰でも20個以上の遺伝病の保因者であるという事実について、僕はこのことはとても恐ろしいことだと思う。最近は遺伝子を診断することによって、生れつきかかる可能性のある病気がわかるらしい。ということは、子供ができる前から子供がかかるであろう病気がわかるということだ。となると結婚した時に子供をつくれないとかいうことにもなりうると思う。いままで僕はクローンとかを嫌い、遺伝子を操作するのは危ないことだと考えていたが、このことを学び、遺伝子をも操作するような医学が必要なのかもしれないと思った。 (教育学部)

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「従兄弟同士では大丈夫なのか?」という質問ですが、是非自分で確率を計算してみて下さい。 (コメント by 荒木)

・遺伝病と聞いても自分とはほとんど関係のないものと思っていた。遺伝病の数はほんの少しだと思っていたからだ。しかし、実際は5,000もの発病しうる遺伝性疾患があると聞いて、大変驚くとともに自分の体が少し心配になった。
 ほとんどの遺伝病は劣性であり、環境要因もあるので、自分の生活次第では、病気にかからずに済むのだろうが、20個あれば、どれか1つは発病するような気もする。不安になる。
 また逆に、今回の授業でゲノム科学に希望を見出すことも出来た。最初の授業で学んだように、1人1人のゲノム解析を進めれば、あらかじめ何の病気の保因者かが分かる。それはすごく安心な事だと思う。その病気になりにくい生活習慣を考え、身につけることができるからだ。
 プライバシーの問題など様々な問題があると思うが、病気を発病させにくくするという観点においては全面的に奨励すべきだと私は考える。 (文学部)

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立派なレポートだと思います。私も同感です. (コメント by 荒木)


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