2007年度 レポート第6回 回答集

熊本大学
生命資源研究・支援センター
バイオ情報分野
荒木 正健
Tel : (096) 373-6501, FAX : (096)373-6502
2008年 1月27日更新

2007年度 最前線の生命科学C レポ−ト第6回(2007年11月 22日実施)回答集

[ テーマ ]治療法が確立されていない遺伝病の 出生前診断に賛成か反対か

[ 回答 ](全27人)

賛成 16人

・私は治療法が確立されていない出生前診断にはどちらかというと賛成です。どちらに選択するかというのはとても微妙な所だと思います。どちらにしてもメリットもデメリットが存在しているので本当はどちらがいいかと言うのは難しいと思います。命の大切についてもどのようにとらえるかでも考え方が変わります。
子供の健康に育ってもらいたいという気持ちを尊重するならやはり賛成するという考えになりました。とても考えさせられる内容でした。 (工学部)

・私は遺伝病の出生前診断に賛成です。やはり、生まれてくる子供が障害をもって生まれたら、親も子もツラいと思うからです。どんなにきれい事を言っても、誰もが健全な体で産まれたいはずです。しかし、産まれる前から胎児を殺してしまうといった倫理的に問題があるかもしれません、でもそこは、両親の遺伝子情報を調べて本当に遺伝病を持つ可能性のある親子のみに出生前診断を受けられる、といったきちんとした法律を作るなどして、ちゃんと管理すればなんの問題もないと思います。(工学部)

・自分は出生前診断について賛成である。生まれてくる子どもが何か先天的遺伝子疾患を持っていたとして何らかの対処法を考えられるからである。(工学部)

・僕は出生前診断について賛成です。理由は、子どもになにかしらの障害があったら育てるのに苦労すると思うので自信がなかったら分かった時点でおろしてもいいと思う。 (工学部)

・結論:原則賛成
 理由:
 診断をすることによりその事実を知ることは問題ない。しかし出生前とはいえ、どの段階で「生命としての人間として認められるか」と言う問題に答えが出ていない。
 30年も前から世界の各国の宗教者、科学者、倫理学者、法律学者、社会学者などが世界の知恵を集めて議論しても結論が出ない(中村桂子著 食卓の上のDNA より)。
 このような現在の段階で、出生前に性急に生命を抹殺するような行為は避けるべきだ。
 ただし、治療法が確立された遺伝性疾患が判明すればありがたい。治療法が分からぬ遺伝性の疾患が成長とともに発生してきたとしてならば、それは運命として積極的に受け入れることも必要ではないでしょうか。(生涯学習)
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 出生前診断そのものには賛成であるが、その結果として堕胎するような行為に対しては反対するというご意見だと思います。確かに、医師が、クライアントに対して説明を行う際に、例え遺伝病を発症することが予想される結果になっても堕胎しないという方針を示してインフォームドコンセントを得ることは不可能ではないと思います。また、遺伝性疾患を発症しても、それを運命として積極的に受入れることが必要という考え方についても賛成します。(コメント by 荒木)

・自分は出生前診断に賛成です。出生前に調べることによってその親が安心して子供を産むことができるし、その子供にとっても遺伝子病があるかないかが分かるので、後で役に立ってくると思うからです。 (医学部)

・とても難しい問題だと思います。ただ、今の自分が親の立場にあると考えたとき出生前診断を望むと思うのでこの問題に関しては賛成です。やはりどの親も元気で健康な子供が生まれてくることを願うとも思うからです。 (医学部)

・私は治療法が確立されていない遺伝病の出生前診断に賛成です。
 というのは、遺伝病にかかった子供が生まれてきたとして、その人のことを一生を通じて面倒を見てくれる、支えてくれる人がいればいいと思うのですが、全ての人がそういう環境にあるわけではないので、そうなってくると、どうやって、その人が生きていくか、ということになります。残念なことに、日本には障害をもった方に対して冷たい、厳しいという現状があります。
 たしかに、従来ならわからなかったことがわかるようになって、このように出生前診断をすることは、自然の流れに反していることなのかもしれないのですが、今が障害者に対して厳しい社会である以上は出生前診断をすることは、生まれてくる人、あるいはその周りの人の幸せのために、ある程度やむを得ないことなのではないかと思います。 (医学部)
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 良いレポートだと思います。私も、日本が障害者に対して冷たい、厳しい国であるということは、「障害者自立支援法」という天下の悪法に象徴されていると思っています。しかしながら、この現状を肯定し、その前提に基づいて議論しなければならないということは、大変悲しいことだと思います。(コメント by 荒木)

・治療法が確立されていない遺伝病の出生前診断に私は賛成です。その理由は、もし治療法のない遺伝病を持つ子供が産まれ、さらに生きていくためにはその子供の親は一生看病していくことが必要な場合、その親には肉体的にも精神的にも相当な負担を抱えて生きていくことになると思います。だから出生前診断でそういった遺伝病があるか診断するべきだと思います。先日テレビのニュースで障害を持った40代の女性とその女性の介護をしていた父親が無理心中をしたというニュースを見ました。もし親が介護の必要な遺伝病を持った子供を途中で育てていくことに疲れ、上のニュースのように無理心中してしまうようなことになれば、それが一番の最悪の結末だと思うので、そういった結末を引き起こさないためと考えれば出生前診断は行ってもよいのではないかと思います。(工学部)
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 非常に説得力のある意見だと思います。(コメント by 荒木)

・遺伝病の出生前診断に賛成します。出生前に遺伝病が将来的に発症するとわかっていると、子を産まない親が出てくると思う。確かに命を選別することはいけないと思う、しかし育てる親の負担というものも計り知れない。子育てに負担がかかるのは当たり前だけど、治療法の確立されていない病気を抱えた子供の場合より負担がかかると思う。その場合子育てを放棄するような親が出てくるのではないだろうか。そのようなことを防止する意味でも出生前診断に賛成です。(教育学部)

・私は良いことだと思います。遺伝子組み換えというものが一体どんなものなのかということが理解出来きていれば、実際に遺伝子組み換えにおいて、何をしているのか、どのような危険性があるのか、利点は何かということが中学生、高校生といった早い段階で理解することができます。身近な食品問題に関わるものなので、確かな知識を経験的に植え付けることは良いことだと思います。 (医学部)

・いいと思います。産んでから育てられないという問題が起きるよりいいと思うからです。(工学部)

・私は賛成です。治療法が確率されていないので、その遺伝子を持って産まれた子供が発生した場合に、治療することができない。できないのであるならば、その子は病気と一生つき合っていき、つらい人生を送るかもしれない。そのようなつらい思いをするぐらいなら、出生前に調べて、生まれてこない方がいいのではないかと考える。(工学部)

・私はこれに賛成である。治療法が確立されていない遺伝病の診断を受けることは、その児の意に反して行われることになる。しかし、児を育てていくのはその親であり、生む前に知っておき心構えをしておくことも必要と思う。前回の講義で、遺伝病の診断にはインフォームドコンセントが大事であると言われていた。確かにその通りであると思う。しかし、児の意志決定ができない状態では、親による判断が必要である。(工学部)

・賛成です。子どもを生むということはとても大変なことです。その子どもが健康であって欲しいという思いは親としての本能であり、病気の子どもを生むことを未然に防ぐことができるならば、誰だってそうしたいと思うのではないでしょうか。「障害者を生ませないための技術であり差別を助長する」との反対意見も強いようですが、障害者の方たちも健康な子が欲しいと思うのであり、それは差別に対してあまりにも敏感だと思う。(理学部)

・私は、出生前診断に賛成です。治療法が確立されていない遺伝病を持つ子どもが生まれ、子どもも、両親も本当に幸せと思えないと思うからです。病気を持った子どもの親は「なぜ、うちの子が…」と、テレビなどでよく聞きます。私も、もし、病気を持って生まれたら、絶対に悩んだはずです。遺伝病を理由に中絶を行ってはいけないと思う方もいると思いますが、出生前診断するかしないかは個人の自由と思うので、出生前診断が出来る環境があることはいいことだと思います。(工学部)

反対 8人

・私は、治療法が確立されていない遺伝病の出生前診断に反対である。もし出生前に遺伝病と診断され、それを理由に中絶を行うことはあってはならないことであると考える。なぜなら、この考え方は、遺伝病の子どもの人権を尊重していないと考えるためである。私は、一人ひとりにそれぞれ様々な個性があって当然であり、その個性には遺伝病も含まれると考えるためである。また、治療法が確立されている遺伝病であれば、出生前診断により早期発見・治療を行なうことが期待できる。しかし、治療法が確立されていない遺伝病の場合は出生前診断で遺伝病を早期発見できたとしても治療できないという現状がある。したがって、やはり治療法が確立されていない遺伝病の出生前診断は行なう必要はないのではと考える。 (医学部)
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 「一人ひとりにそれぞれ様々な個性があって当然であり、その個性には遺伝病も含まれると考える」という意見に賛成です。しかしながら、「治療法が確立されていない遺伝病の出生前診断は行なう必要はない」とは考えません。例え治療法が無くても、家族や社会がサポートする体制を作ることが出来れば、出生前診断の結果をポジティブに活かすことも可能であると考えます。(コメント by 荒木)

・私は治療法がないのに出生前判断を行うのは反対です。医療は人間の生活をより豊かにするためにあると私は考えています。病気にかかっていることによる不安はできる限り少なくすべきであり、発症するまで知らない方が家族と生まれてくる赤ちゃんの気が楽であると思います。それにもし出生前判断をおこなうとご両親が赤ちゃんへの期待を損ねてしまうかもしれません。どんな赤ちゃんも楽しみにされて生まれてくるほうが理想的です。しかし発症を抑える薬があるなど病気を治す可能性があるのなら教えるべきです。 (医学部)
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 「医療は人間の生活をより豊かにするためにある」という考え方は重要だと思います。誰のための医療か、常に考える必要があると思います。(コメント by 荒木)

・反対の立場をとりたいと思います、現在の子どもを巡る状況を考えますとこの診断の結果が個々のケースで理性的、倫理的に運用される環境ではないと思います。
 嬰児の放置、虐待 身近で「赤ちゃんポスト」などなど、生命に対する冒とく的行動が散見される今日、出生前診断まで発展いたしますと恣意的、身勝手な利用の方が危惧されます。
 もっと、一般社会で、生命、出産、子ども、に関する議論、世論を経る必要があると思います。(生涯学習)
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 「もっと、一般社会で、生命、出産、子ども、に関する議論、世論を経る必要がある」という意見に賛成です。(コメント by 荒木)

・僕は出生前診断に反対です。世の中には障害を持っていても精一杯生きている人が沢山いるのだから,自分の子の命を産まれる前から絶つようなことは,あってはならないことだと思います。(工学部)

・私は、治療法が確立されない遺伝病の出生前診断に反対です。例え、産まれる前に異常が見つかったからといって、堕胎するのは命をあまりにも軽視していると思います。生まれてから苦しむのならいっそのこと、産まなければ良いという考えはあまりにも残酷すぎると思います。世の中には、産みたくても産む事の出来ない人や、生きたくても生きることが出来ない人がいるのに親の判断で子供を堕胎するのはあまりにも悲しいことだと思います。(工学部)

・私は反対です。まだ治療法が確立されてない遺伝病なのに出生前診断しても、結局は治療できないからです。もしなかったらいいけど、あった場合にどうしようもできないし、だからと言って人工中絶をすることは人を殺すことと同じだと思うからです。(工学部)

・私は治療法が確立していない出生前診断には反対です。異常がなければ一安心でいいかもしれないですが、異常が見つかったら堕胎するのがほとんどなわけですし、そんな風に異常のない子ばかりを取り続けるのも遺伝子が似たようなものばかりになって、個性なんてもののない世の中になりそうで、あまり好ましくないと思います。(工学部)

・私は出生前診断には反対です。障害があるかないかであればまだよいのですが、だんだん技術が発展していくと、優秀な子供だけが生まれるようにする優性主義になっていきそうです。障害があっても幸せにはなれるはずだと思います。 (医学部)

どちらとも言えない 3人

・遺伝病の出生診断に賛成か反対かという結論を出せずにいるというのが今の私の正直な気持ちです。治療法が確立されていないとなると、生まれてきた時点でその子供は病気を背負って生まれてくることになる。親の方も、またそれを背負うことになる。どの親も、やはり健康な子供が無事に生まれますようにと、特に母親は自分のお腹の中の赤ちゃんに語りかけて過ごす。私の場合は、四年間ではあるが大学病院に子供とともに通院したことがある。一生のうちで四年間は短いかもしれないが、この期間はとても辛く長いものに感じられた。精神的にも、肉体的にも、落ち込むことが多かった。その中で、子供には随分助けられた。現在はその期間をのりこえたことで、ごくごく普通の生活をおくれることがとても幸福に感じる。しかし私の場合はゴールが見えていたことで頑張れた。子供も今、一社会人として生きている。治療法が確立されていなければゴールが見えない。自分はそれでも頑張れただろうか、子供はどうだろうか。けれど、親の考えで堕胎することになったら、胎児はそれをどう感じるだろうか。もし胎児にそれを感じる心があったら、どんな体になるにせよ生まれたいとさけんでいるのではないか。生命を親の方で決めてしまっていいのか。自問自答している。(生涯学習)
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 立派なレポートだと思います。(コメント by 荒木)

・もし検査を受けて何らかの遺伝病が見つかったら、きっとその人はその子供を産むのを諦めてしまうだろう。すると、障害を持った子供はこの世に生まれてきてはいけないのだろうか、それは優生思想につながるのではないかといったことが問題になると思う。それに、今障害を持ちながら生きている人にとってこのことは自分の存在を否定されているようで辛いことだと思うし、生まれてきて人生を送る権利を奪うことは出来ないと思う。客観的に考えるとこのように思った。でも、正直なところ、やはり健康な子が生まれてきてほしいという感情があるのは事実だし、もし障害を持った子供が生まれたとして、自分がちゃんと育てられるのかどうかすごく自信がない。だから、親の立場で考えると出生前診断に一応賛成する。実際に頭で考えることと心の奥にある感情とが異なっているから本当に難しい問題だと思った。 (医学部)
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 立派なレポートだと思います。客観的に考えた場合と、親の立場で考えた場合で結論が違うということですね。では、子供の立場で考えたらいかがでしょうか?難しいと思いますが、他の人の意見も参考にしてもう一度考えてみて下さい。(コメント by 荒木)

・一概には、反対はできません。しかし、これは遺伝病の出生前診断が全て正しいという訳ではありません。遺伝病を持つか、持たないかはその子にとって重要なことであり、その親もまた知る権利があると思います。よく周りの赤の他人は、命の大切さやその子にも生きる権利はあると言いますが、育てるのはその子の親であり、親がそういったことを知ること自体は多分重要な権利の一つだろうと思う。本当に生まれてくる子が愛しいなら、ほとんどの人たちがそうだと思いますが、選別のような事態にはならないと思います。 (医学部)


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