2007年度 レポート第8回 回答集

熊本大学
生命資源研究・支援センター
バイオ情報分野
荒木 正健
Tel : (096) 373-6501, FAX : (096)373-6502
2008年 7月26日更新

2007年度 最前線の生命科学C レポ−ト第8回(2007年12月 6日実施)回答集

[ テーマ ]プリオンは生物か非生物か

[ 回答 ](全24人)

生物(3人)

・私はプリオンは生物だと思います。その根拠は、たしかにプリオンはDNAもRNAも持っていないけれど、病原型プリオンタンパク質(PrPsc)は正常な細胞型プリオンタンパク質(PrPc)を変化させて増殖していき、ほかの生物と方法は違えど、自らを複製する性質がプリオンにはあり、そういう性質をもつものは生物としてくくっ ていいのではないかと考えるからです。 (工学部)

・自分は狂牛病は聞いた事があり、多少の知識はあったがプリオンの事は全く知らなかった。 プリオンと言うのは大まかな分類によるとタンパク質の一種である。でも自分は講義の内容を聞いてみて最初に持っていた考えが変わった。最初はタンパク質なのだから非生物だと思っていた。それはDNAや核を持っていないからだ。しかし、普通の菌なら煮沸すれば簡単に殺菌する事ヘヘ出来るのに殺菌出来なかったりする生命力から生物としてみていいと思う。  また、プリオンは遺伝するのかという疑問が湧いた。 (工学部)
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 「プリオンは遺伝するのか」という質問を、「プリオンタンパク質は遺伝するのか」という形に置き換えれば、答えはYesです。プリオンタンパク質遺伝子も、他の遺伝子と同様に親から子へ、子から孫へ伝わります。基本的に人は誰もが自分の体の中に、正常型プリオンタンパク質を持っています。ただし、孤発性(散発性)のヤコブ病や、狂牛病などは、病気としての遺伝病ではありません。 (コメントby 荒木)

・プリオンは生物だと思います。たとえDNAやRNAを持っていないとしても、人や動物を死に至らしめることが出来る存在である。死に至らしめることができる存在はやはり生物だと思う。 (工学部)

生物非生物(18人)

・プリオンは、一種の糖蛋白質でDNAやRNAを含まずウイルスではない。このことから、私はプリオンは非生物ではないだろうかと考える。やはり、DNAやRNAを持っているものを、生物と捉える考え方が妥当であると考える。 (医学部)

・プリオンは非生物なのかもしれない。遺伝子がなくたんぱく質からなりたっている。まだまだ理解できないことがたくさんある。人間が本来の食物連鎖を組み替えた結果の病原菌なのかもしれない。 (生涯学習)

・プリオンは生物ではないと思う。プリオンはたんぱく質であって、遺伝子を持たないので増殖できないからだ。ただ、普通のたんぱく質と違って高温でも変性せず、ウイルスのように次々に感染すると聞いたので、特殊なたんぱく質なのだとは思う。どのような仕組みで異常な構造が伝わっていくかなどよくわからないけれど、本当にたんぱく質で感染するのかなと少し不思議に思った。 (医学部)

・講義を受けてプリオンの存在や特徴等を知りました。確かに増殖・感染を行ったりしていますがプリオンがタンパク質であると定義されていることから非生物だと思いました。 (医学部)

・自分は、焼き肉店でバイトしているので、狂牛病の恐ろしさが分かる。プリオンは、生物か非生物かということで自分は非生物だと思う。なぜなら、生物は生きるために何かを食べなければならないからである。プリオンにはそれがないので非生物であると思う。 (工学部)

・私はプリオンは生物でないと思います。BSEは動物のタンパク質が変形して蓄積したのが原因 で、生物として生存競争しているのではありません。なんだか化学物質と似てると思います。また、プリオンは突然現れることがあり、分裂に母細胞を必要とする生物にはならないです。生物は自他と集合体を作る必要もありますが、基本的には自活する能力をもっている気がします。 (医学部)

・私は遺伝子がなかったら生物とは思えない気がします。いろいろなものがこれからも見つかっていくと思われるので、その度に生物の定義をかえなければならないのかもしれません。(医学部)

・私はプリオンは生物ではないと思います。生物とは何かと調べたら、自分と同じ種を生み出すこと、エネルギーを変換することができること、恒常性維持能力があることと書かれていました。プリオンはウイルスと同じような性質をもっているので、生物というものにあてはまらないのではないかと思う。(医学部)

・今回の講義を受けてプリオンとは生物ではないと思う。たんぱく質の集合体が生物であるので、一つのたんぱく質としてのプリオンは生物ではない。 (工学部)

・本件について講義以前は、生物とは「生きているもの、生命のあるもの」との単純な認識でした。
 講義当初に「ウイルスは生物か?」の問いから今回の命題に至り、多少調べてみましたが、なおわからなくなりました。
 科学は「一つのことがわかるとわからないことが10コ見つかる」と発言している記事を見ましたが、私の場合一つのことで迷宮入りのようです。
 命題に、あえて結論を記すならば、生物とは、「自己増殖、複製能力を持つ細胞を有するもの」と定義つけて、プリオンはその能力がなく、単に生命体を構成する一酵素のたんぱく質である、よって生物にあらずと言えると思います。 (生涯学習)

・プリオンはタンパク質であり、生物はタンパク質の集合だと考え、タンパク質自体は生物ではないので、非生物だと思う。 (工学部)

・私はプリオンは非生物だと思います。まず生物にあるはずの核も持たないし、元々は体の中にあるたんぱく質の折り畳み方が変わっているだけなので、生物とは思えないです。でもそれと同時にみんながプリオンを体に持っていることを知り恐ろしくなりました。アメリカなどでのBSE検査はずさんなもので、何度も日本に狂牛病の肉を送ってきました。これが人の体に入ってきたら大変なことになるなと思いました。一番怖いのは潜伏期間が長いことで、病気にかかった人が子どもを産んでしまったらその子にもしらない間にうつってしまうだろうし、日本に一気に広まるだろうと思いました。今回の講義でプリオンの恐ろしさがよく理解できました。 (工学部)
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 核を持たない生物もいます。ウイルスについてはいろんな意見があると思いますが、原核生物(大腸菌など)については異論はないと思います。また、これまで知られている知見から判断する限り、妊婦から胎児へ、あるいは母親の母乳を介して子供への感染というのは、かなり可能性は低いと思います。もちろん、福岡伸一教授(青山学院大学)の様に「プリオンタンパク質は病原体が感染する際のレセプターである可能性はあるが、病原体そのものは別に存在する可能性が高い。従って、何が起こるか分からない。」という考え方もありますので、注意は必要だと思います。ただし、コレラやインフルエンザの様な「流行」を引き起こすような物ではないことも事実です。福岡教授は「脆弱性の窓」(外部からのストレス等に対してダメージを受けやすい期間、狂牛病の場合は生後間もない子牛)があり、病原体の感染だけでなく、様々な要因が複合して「海綿状脳症」を発症すると考えています。[参考図書:「もう牛を食べても安心か」福岡伸一著、文春新書、242ページ、720円、(2004年12月)]。(コメントby 荒木)

・プリオンが生物か非生物かと議論する上で、そもそもどういったものが生物かという定義が分からなかったので調べてみると「細胞を構成単位とし、代謝、増殖できるもの。」とありました。このことからプリオンはたんぱく質そのものであるからどちらかと言えば私はプリオンは非生物であるという意見に賛成です。 (工学部)

・非生物であると思います。自己増殖機能は持っているけれど、核がないし、恒常性等が欠如していると思う。また今のところ無生物だとされているが、感染症の病原体としてとらえられているが、しかし他の細菌やウィルスなど、ある程度検証されたものと比べると曖昧だということ。 (教育学部)

・私はプリオンは非生物ではと考える。今回の講義でもあったようにプリオンというものはタンパク質が変性したものであり、生物とは考えにくい。仮にプリオンが生物だとすれば、癌細胞や多くの病原体も生物と考えなければならなくなる。 (工学部)

・プリオンはバクテリアやウイルスのように締め出しや禁止措置を取れば病気の拡大を抑えられるものではないので、私はプリオンは非生物だと思う。特にプリオンは、自然に発生するという点から他の生物には見られない繁殖形成なので、非生物であると考えられる。 (工学部)

・プリオンは非生物であると思います。講義を聞いていても、やはり、プリオンはたんぱく質であり、生物とはいいにくいと思います。 (医学部)

・プリオンはたんぱく質なので、私は非生物だと思います。 (工学部)

・私はプリオンは非生物だと思います。
 物殊かもしれませんが、やっぱりたんぱく質はたんぱく質であって生物ではないと思います。 (工学部)

どちらでもない(3人)

・私はプリオンは生物か非生物か、よくわかりません。核酸を持っていないけれど、ウイルスと違って自然発生して、しかも増殖できるという、奇妙な性質を持っているということを考えると 、プリオンはどちらにもあてはまらないのではないかと思います。 (医学部)

・自分はどちらかというと非生物だと思っています。しかし一番感じたことは、生物と非生物以外に新しい新しいグループをつくるべきではないかということです。ウィルスやプリオン、それ以外にも生物か非生物どちらにも定義しにくいものがこれからも見つかると思います。なので生物、非生物以外の新しいグループが必要だと感じました。 (理学部)

・プリオンはDNAやRNAをもたないので生物とは言い難いです。ただ、自ら複製する性質を持っていて 非生物とは断定できないです。新しい区別のしかたが必要だと思う。 (医学部)


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