2008年度 レポート第10回 回答集

熊本大学
生命資源研究・支援センター
バイオ情報分野
荒木 正健
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2009年10月29日更新

2008年度 最前線の生命科学C レポ−ト第10回(2008年12月18日実施)回答集

[テーマ]遺伝子組換え技術のペットへの応用に賛成か反対か

[ 回答 ](全28人)

賛成 <4人>

・遺伝子組み換え技術がペットにまで応用されていることを今回の講義で初めて知りました。世間的には、遺伝子組み換え技術を施された農作物のほうがよく知られていると思います。遺伝子組み換え作物については、摂取した場合に健康に及ぼす影響や生態系に与える影響に対する懸念から、既に多く議論がなされています。
 ペットへの応用についても基本的には同じだと思っているのですが、ペットの場合は去勢手術を施すことにより生態系への影響を最小限に抑えることができると思うのです。もちろんこれは猫などの大型動物の話であって、メダカなどでは難しいかもしれませんね。飼い主に思わぬ健康被害を与える可能性ですが、致死的、後世にまで影響を与えるものではないでしょう。
 授業中に賛成の人は手を挙げるように言われたときは少し迷いもあり、手を挙げませんでしたが、レポートとしては限定つき賛成とさせて頂きます。 (医学部)
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 立派なレポートだと思います。確かに、遺伝子組換え作物と同様に『カルタヘナ法』に基づいて慎重に審議を行い、安全性が確保されたら認定するというのが、冷静かつ合理的な判断かも知れません。貴重な賛成意見、ありがとうございます。 (コメントby 荒木)

・遺伝子組み換えペットの応用は認めても良いと思います。現に犬は昔から色々な種を人工的に掛け合わせられていたわけで、遺伝子組み換えペットと同じようなものだと思います。だから遺伝子組み換えペットと言っても珍しいものではなく、身近なものではないでしょうか。遺伝子組み換えによってペットが病気に強くなったり、人への病気の感染が防げたりすれば、もっと動物を飼いやすくなり、有益だと思います。確かに遺伝子組み換えペットは人間の遺伝子組み換えを助長することも考えられ、動物の命を操作することでもありますが、動物と人間の利益のためだという考え(但し人間の方が最も尊厳すべき存在)をもとに倫理的に正しく行えば科学の恩恵を被ることができると思います。 (医学部)
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 「犬は昔から色々な種を人工的に掛け合わせられていた」のは事実ですし、ペットだけでなく、家畜もヒトに都合の良い様に長い時間をかけて人工的に改造されてきた歴史があります。ウシやブタなどの家畜に関しては既に遺伝子組換え技術やクローン技術の研究が進められており、ペットに関してもそうなる可能性が高いと予想されます。 (コメントby 荒木)

・組み替え種が正常な同種と交配し繁殖して予測不能な事態を招く事も考え得るので、作るなら全ての個体に不妊手術を施すべきだろう。 (医学部)
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 条件付きながら賛成意見と判断します。 (コメントby 荒木)

・これまで、より理想的なペットを作り出すために、人為的な交配が行われてきて、今のかわいいペットができている。これが許されているのだから、遺伝子操作をして、より理想的なペットを作るのも同じことだと思う。環境への悪影響が無いと確認しさえすれば、遺伝子操作技術のペットへの応用に賛成です。 (薬学部)

反対 <23人>

・遺伝子組み換え技術をペットへ応用することには反対です。人類の存続のために必要不可欠なものならばしょうがないとはいえ、単なる商業利用目的で開発するというのはあまりにも軽率すぎると思います。いくら繁殖能力を非常に弱くしようと、自然界へと放たれたときにどのような影響を与えるか予測することはできません。こういった技術の利用にはもっと慎重になるべきだと思います。 (工学部)

・僕は、遺伝子組み換え技術のペットへの応用に反対です。確かに光る犬や猫とかいたら面白いと思いますが、この遺伝子とこの遺伝子を組み合わせて自分のお気に入りを作ろうとし、その結果思い通りにならなかったら捨てるというゲーム的な考えが生まれてきたら嫌だな、と思いました。だから、倫理感の点から反対です。 (薬学部)

・私は反対です。遺伝子操作してまで人間に都合のいいように動物を変化させるのはおかしいと思います。それにいちいち遺伝子操作してたらキリがないとも思います。好きでペットとして飼うだけなのなら、汚点も含めてありのままで飼うべきだと思います。 (工学部)

・遺伝子組換え技術のペットが生まれることで、これまでアレルギー症状等の問題で飼えなかった人達の悩みが解消されるかもしれません。まさに『理想のペット』です。しかしそのペットが自然に放たれた時、生態系にどのような影響を及ぼすのかは現状では分かりません。『100%自然には放たない』ということであれば賛成であるが、ペットを捨てる人間がいる以上まずそれは不可能なことだと思います。したがって私は反対です。 (工学部)
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 立派なレポートだと思います。 (コメントby 荒木)

・僕はやはり遺伝子組み換えを行ったペットの流通は行うべきではないと思います。遺伝子組み換え技術というのは元々こういったことのために使う道具ではなかったはずです。医療の分野などでの研究対象としてバイオ技術が扱われるのは歓迎しますが、ベンチャー企業などによって積極的に商品化されるのは危惧すべき流れだと思います。 (薬学部)

・授業では猫アレルギーを起こさないですむ猫をとりあげていたせいか、別に反対することでもないんなんじゃないかと思っていたが、いろいろ調べてみると、蛍光色の猫などが開発されていることを知って、やはり許されることではないと感じた。理由は、ただの好奇心で動物が遺伝子組換えされていくようになったら、「何でも変えてしまおう」という考えにエスカレートしていくかもしれないと考えたからだ。これはなかなか危険な考えだと思う。 (医学部)
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 遺伝子組換え技術を「ただの好奇心」で利用してはいけないという意見はもっともだと思います。しかしながら、現代の科学が「ただの好奇心」の積み重ねによって築き上げられてきたのも事実です。 (コメントby 荒木)

・私は遺伝子組み換え技術をペットに利用する事に反対です。そもそもペットに対する遺伝子組み換えは動物愛護法にひっかからないのでしょうか。ちなみに私はペットを去勢する事にも反対です。人は神じゃありません。 (工学部)
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 実験動物及び動物実験の専門家である浦野徹教授(生命資源研究・支援センター長)に調べてもらったのですが、ペットに対する遺伝子組換えは動物愛護法には抵触しないということです。もちろん、遺伝子組換え生物の使用に関する『カルタヘナ法』で管理することになります。 (コメントby 荒木)

・私は遺伝子組換え技術のペットへの応用は反対だ。確かに、人間にしてみれば授業であったような「光る魚」、「猫アレルギーの人でも安心して飼える猫」などがいたら、面白いし便利かもしれない。 しかし、それは人間側の欲であって、動物側からすれば、いい迷惑である。遺伝子組換えを行った動物は、人間が都合よく作り変えた、いわば改造動物である。このような改造された動物を飼うことに何の意味があるのだろうか。動物には、その動物ごとに本来持っている様々な性質がある。遺伝子改造をしてしまってはその動物の本来の性質が失われてしまう。人間は、動物のその本来の性質をペットとして楽しむべきではないのだろうか。 (工学部)
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 「改造された動物を飼うことに何の意味があるのだろうか」という疑問を投げかけられていますが、現在飼育されているペットや家畜の大部分は、長い年月をかけてヒトに都合の良い様に作られた「改造動物」です。好き嫌いに関係なく、現代人はその様な動物達に支えられて生きていることを忘れてはならないと思います。 (コメントby 荒木)

・私は遺伝子組換え技術のペットへの応用に反対です。確かにアレルギーのせいでペットが飼えない人にとっては画期的なことなのかもしれませんし、ペットショップに行って光る魚がいたら欲しくなるかもしれません。しかし、結局それは私たち人間のわがままに過ぎないと思います。また、そのペットが管理外に出てしまったときに自然界に大変な影響をもたらすことになると思います。 (教育学部)

・私は人間には何に関しても色・形が美しいものを好む本能があるように思う。しかし私逹はその欲を発揮して良いときと、してはいけないときの区別を自然と心の中で行っている。この本能との葛藤はペットをどう観るかに関わりがある。もしある人が本当にペットを家族の一員と考えるのであればどんなものでもありのままに受け入れようとする。つまり選択欲よりも“個体その物への愛情"が強くなる。その人にとってはペットの改造は必要無いものに感じるだろう。
 逆にペットを、自分の欲を満たしてくれる“生きモノ"として考えるならその人にとってはこの遺伝子組換えは大いに意味のあること感じるだろう。
 重要なことはペットも生きているということである。人間が自身のみを中心に置いてものを考えるのではなく、ペットにも自身を中心とする世界があり、決して飼い主の為に生きているのではないことを考えるのはこのテーマを考える時大きな意味があるように思う。 (薬学部)
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 立派なレポートだと思います。「ペットにも自身を中心とする世界があり、決して飼い主の為に生きているのではない」という認識は重要ですね。明記されていませんが、反対意見であると判断します。 (コメントby 荒木)

・私は反対です。ペットは家庭の人々を癒したり、接したり一緒に過ごせるならば十分ではないでしょうか。…と言えど、私たちが知らないだけで意外と出回っているものなのでしょうか。動物たちにも子孫を残す宿命があるし、動物の寿命を縮めたり、動物の一生の生活を侵すことはしたくないです。 (教育学部)

・私は遺伝子組換えペットについては反対です。それは除草剤に耐性を持った遺伝子組み換え作物によって、雑草までも耐性をもったため、問題になったことを覚えているからです。同様に、遺伝子組換えペットでも周りに影響を与える危険性が少なからずあれば、私は容認すべきではないと思います。 (薬学部)
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 確かに遺伝子組換え生物の第一種使用(拡散防止措置をとらない使用)は、相当慎重に行わないと問題が起こる可能性があると思います。 (コメントby 荒木)

・動物に関する遺伝子組み換え操作には基本には反対である。アレルギーのおこらない猫。色のきれいな魚。今のところはそこまで問題になることはない。しかし,技術が進んでいき遺伝子組み換えを濫用するような事態が起きたとき,ペットは愛玩動物とは言えないような変化しているような気がする。動物が動物らしくあるために,遺伝子の操作などおこなってはいけないと思う。 (薬学部)

・私はペットの遺伝子組み換えに反対です。遺伝子組み換えは、確かにアレルギーやペットが大きくなり過ぎたりしないという点では効果的かもしれませんが、昨今ペットを飽きたから、という理由で飼う事を放棄する飼い主が増えています。遺伝子組み換えによって飼いやすくなったら、あまり考えずに気軽に飼い始める人も増えるでしょう。ということはペットを捨てる人も増えると言う事が起きるでしょう。ペットを放棄する現状がある限りこの議題に賛成することはできません。 (工学部)

・私は遺伝子改変マウスを作ることには反対です。動物の遺伝子を操作して人間にとって良いものを作り出すという考えはすごく人間の勝手な気がするからです。特に今回の講義の中であった遺伝子改変のペットは確かにかわいいけれども、生物多様性にも少なからず影響を与えるだろうと思います。人間の欲求を満たすだけのために動物の遺伝子を操作するのは軽すぎると思います。 (教育学部)
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 「遺伝子改変マウス」の話と、「遺伝子組換えペット」の話は全く別の話です。「遺伝子改変マウス」は実験動物として厳密に管理され、利用されています。その目的は基礎医学の発展や生命現象の解明であって、人間にとって良いもの(例えばペットなど)を作り出すということではありません。
 遺伝子組換え生物を取り扱う際に適用されるカルタヘナ法では、拡散防止措置(自然界に出ないようにすること)をとりつつ行う使用を「第二種使用」と言います。これに対して拡散防止措置をとらない使用を「第一種使用」と言います。ペットの場合、まさしく「第一種使用」です。第一種使用の場合、生物多様性に与える影響が危惧されるため、全ての使用に関して大臣確認が必要です。つまり国が安全性を確認したペットでなければ、自宅で飼うことは出来ません。アメリカは「カルタヘナ議定書」に参加しておらず、日本のカルタヘナ法に相当するような法律はありません。従って、アメリカでは遺伝子組換え猫をペットとして自宅で飼うことは合法(州によって違いますが)なのですが、その猫を個人輸入したり、帰国する際に連れてきたりして日本で飼うことがあれば、それは法律違反になり、厳重に処罰されます。
 また、遺伝子組換えではなく、一般的な「動物」の話として、人間が飼育している動物を「家畜」、「愛玩動物(ペット)」、および「実験動物」に分類することが出来ます。人類は、その長い歴史の中で自分達にとって都合の良い動物を作りあげてきました。ブタやイヌの存在を考えてみて下さい。私達が生きていく際に、私達の祖先が作りあげてきた動物達に、いろんな意味で支えられていることは間違いありません。例えば医薬品等の開発において、「人体実験」が許されない以上、「動物実験」は不可欠であり、実験動物の重要性は増すばかりです。ヒトの病気を反映している「疾患モデル動物」の存在も非常に重要であり、この疾患モデル動物を効率良く作製するためにも遺伝子組換え技術が利用されています。 (コメントby 荒木)

・私は、ペットへの応用には反対です。遺伝子改変した実験用のマウスや動物とは違って、目的が商用的だからです。
 確かに猫アレルギーが起こらないとか光る魚とか魅力的ではありますが、遺伝子改変で人間に都合の良い動物を創ってしまうのは、あまりに自分勝手な行為だと感じます。また野生化した場合、資料にもあった通り影響が測り知れません。生体実験のためのノックアウトマウスなども、結局は人間の手により殺されてしまうのでやはり可哀想だとは思います。私も薬学部なので、実習で使用します。しかし、実験室のみで使われ、また薬物開発に動物実験は欠かせないものであるため、殺すのは最小限に抑えるべきですが、利用は仕方ないと考えます。この点において、実験用とペット用では目的が違い、単なる商用目的で遺伝子改変動物を創るのは反対です。 (薬学部)
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 立派なレポートだと思います。 (コメントby 荒木)

・私は、遺伝子組み換え技術をペットに応用することについては反対です。生態系を崩してしまう危険性は常に伴うので、取り返しのつかない事態になる前に、早く厳しい規制を敷いたほうが良いと思います。人間のペットにするために遺伝子を操作する、というのはあまりに驕りが過ぎるのではないでしょうか。 (医学部)

・私は反対だ。講義の際にも猫アレルギーの方で猫を飼っておられる方がおられた。猫が好きで好きでたまらない猫好きの方はきっと、我慢してでも猫を飼えるだろうと思う。確かにアレルギーが起きない猫がいれば、そういう方々の猫ライフは快適になると思う。しかし、その猫が一たび自然界に放たれたときどうなるか? 遺伝子組み換え技術の最大の怖さはリスクがどの程度あるかの評価が極めて困難であることだと思う。何が起こるかだれにも分からない。(もちろん企業は否定するだろうが・・・) そうである以上、この技術の安易な利用には危惧を覚えざるをえない。 (医学部)

・遺伝子組換え技術のペットへの応用には反対です。組換えを行ったペットが逃げ出したり飼い主によって捨てられた場合自然界に被害がおこるとおもうからです。 (工学部)

・私は遺伝子組み換え技術のペットへの応用には反対です。万が一自然界に放たれた場合、環境を破壊してしまうかもしれないからです。 (工学部)

・ペットに遺伝子操作をすることについては反対だと言いたいところですが、突然変異などが絶対に起こらず、100%安全だということが証明されれば、もしかしたら買ってしまうかもしれません。今のところは反対です。 (工学部)

・私は遺伝子組み替え技術のペットへの応用は反対です。他の生物を人間の好き放題いじくりまわすのはあまり良いとは思えません。 (工学部)

・私は遺伝子組み換えを行なったペットには反対です。いくらかわいかったり,綺麗だからと言って,絶対にしてはいけないことだと思います。人間の赤ちゃんを小さいほうがかわいいからといって赤ちゃんのままでいさせるのと同じだと思います。今度そのようなペットを見つけたら,すぐに飼い主に厳重な罰を与えるべきだと思います。 (文学部)

どちらとも言えない <1人>

・僕は遺伝子組み換えペットの賛否に関しては一概には言えるものではないと思います。自分の好きな遺伝子配列にしたいというのには賛成できませんが遺伝病のペットの遺伝子配列を換えるというのには倫理的には問題かもしれませんが賛成はできます。ただ、1つだけ言えることは考え方としてはペットとして見るのではなく人間と同じ生物として見るべきだと思うことです。 (薬学部)


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