2008年度 レポート第12回 回答集

熊本大学
生命資源研究・支援センター
バイオ情報分野
荒木 正健
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2009年10月29日更新

2008年度 最前線の生命科学C レポ−ト第12回(2009年 1月22日実施)回答集

[テーマ]マイクロキメリズムについて

[ 回答 ](全34人)

・自己に母親由来の細胞を持っていることは生きる上での知恵だと思います。免疫は生体防御に重要で、自分に無い免疫細胞を強化することは長い年月をかけて進化した生命の神秘です。マイクロキメラリズムは初めて知りましたがとても興味深いので、日経サイエンスをもっと読んでみたくなりました。免疫学については来年詳しく専門で受講するので頑張ります。後期お世話になりましたm(__)m。 (医学部)
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 「自己に母親由来の細胞を持っていることは生きる上での知恵だ」というのはおもしろい意見ですね。 (コメントby 荒木)

・まず、マイクロキメリズムという言葉、その意味を初めて聞き、面白い考えだと思いました。このような考えから、新しい治療法が見つかりそうな気がしてとても興味深い事実であることだと思いました。 (薬学部)
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 確かに、新しい治療法の開発に結び付くことが期待されます。 (コメントby 荒木)

・マイクロキメリズムの話は全く初めて知ったことなので純粋に驚いた。自分の体内にも母親の幹細胞もしくはそれに似たものが含まれていて今尚、生き続けているかもしれない。これが本当だとしたらある意味ロマンチックである。私にはミトコンドリアDNAなどの例外を除いて自分のDNA以外のDNAを体内に留めることはできないという認識があった。それは完全に改められることになった。自分の中に母親の細胞が生きていてその細胞が良い働きと悪い働きをしている。そんなことを考えていると本当に不思議な気持ちになる。
 日本には母親と子が1つに繋がっていた証として「へその緒」を大事にとっておく文化がある。そんな温かい一体感を大切にする文化に育ったせいか、マイクロキメリズムを考えるときおそらく他の国の人以上に深い意味を見出すのかもしれない。
 マイクロキメリズムは医学分野でさらに期待が高まるとも考えられが、問題も様々であるように思う。例えば代理母出産である。もともと代理母出産にネガティブな日本ではまず代理母出産は行われなくなるだろう。子に出産する人間の細胞が含まれてしまい、出産する人間にも子の細胞が含まれ、それが出産する人間や子の体で良い働きや悪い働きをする。それがもし遺伝的に共通性の更に少ない代理母だったとしたら悪い働きの方が多いのではないだろうか。例えば代理母は遺伝子の全く異なるDNAを有する細胞の流入により自己免疫疾患の可能性を高めてしまうなどである。もしそうだとしたら十分に注目されるべき問題であるように感じる。
 マイクロキメリズムは女性に自己免疫疾患患者が多いことにも説明がつく。これから研究が進むであろうマイクロキメリズムには宗教的観点からの問題も考慮された上での慎重な解明が期待される。
 短い間でしたがご講義ありがとうございました。生命、DNA、最先端科学技術など理解を深めた上でのレポートという考察の仕方で自分なりにゆっくり考える機会も設けられて楽しかったです。ありがとうございました。 (薬学部)
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 私もマイクロキメリズムの話を初めて知り、一種のカルチャーショックを受けました。「代理母は遺伝子の全く異なるDNAを有する細胞の流入により自己免疫疾患の可能性を高めてしまう」という仮説も、充分検討する必要があると思います。 (コメントby 荒木)

・母親の細胞が胎児に紛れ込むとは初めて知った。血液はしばらく母親から流れているし,血液中の赤血球も細胞の1つであるが…。重い複合免疫不全の子どもに母親の細胞が残れるにしても,一般に残れるのは驚いた。 (教育学部)

・マイクロキメリズムは、非常に興味深いものだと思います。病態生理学などのさまざまな授業の中で、膠原病というものが出てきますが、その男女比は男:女=1:4など、おおよそ女性の方が多いということです。妊娠経験がある女性とない女性などでの膠原病発症率をくらべて、もしもそれに差があるとしたら、マイクロキメリズムが膠原病にも関係があるということがわかり、研究もより発達していくと思います。
 肺などでは、100万個中に母親由来の細胞が約760個、胎児由来の細胞が約3700個というデータがありましたが、そうすると男性は約760個、女性は約4500個あるということになります。男性:女性=1:6ほどあるということになるので、これは膠原病の発症比率に近いものがあり、やはり関係があるかもしれないなと思いました。 (薬学部)
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 昨年度の受講生には薬学部の学生さんは1人もいなかったのですが、今年度は14人受講されています。医学部からも7人受講されていますが、このマイクロキメリズムの話題は基礎医学や医療の現場で、今後重要な意味を持ってくると予想されます。 (コメントby 荒木)

・とても魅力的な内容だと思いながらプリントを読みました。
 マイクロキメニズムに関する研究はまだ始まったばかりですが、今よりもっと多くのことが明らかになれば、医療分野へ応用できる今までには想像もしなかった画期的なアイデアがもたらされるかもしれません。それと同時に、今まで当たり前のように使ってきた言葉である「自己と他者」について、新たな定義づけを考える必要が出てきそうだと思いました。 (薬学部)
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 「自分」とは何者なのか? 「自己」とは何を意味するのか? とっても考えさせられる問題ですね。 (コメントby 荒木)

・母親の細胞が自分の体の中にあるなんて、驚きでした。しかも、その細胞が免疫疾患を引き起こしたり、または良い作用を起こしたりしている可能性があるのは面白いと思います。確かに自己の細胞を非自己と見て細胞攻撃する際、母細胞の免疫機構が働いているとすれば納得がいきます。まだちゃんと解明はされていないようですが、これからの研究発表に注目してみたいと思いました。 (薬学部)

・臓器移植を受けた人が、臓器提供者に対して特別な感情を抱くことがあるという話を聞いたことがあります。異性であれば恋愛感情ということもあるようです。提供者の詳細な情報は移植を受けた人には知らされない制度になっていると聞きました。マイクロキメリズムですが、例え細胞一つでも自分とは異なるものが体内にあると言われると複雑な心境になります。
 とはいえ、マイクロキメリズムを通じて未知の免疫の仕組みを解き明かすことによって、免疫疾患や移植による拒絶反応に苦しむ患者さんを救えるかもしれません。今後、重要な研究課題として位置づけられることでしょう。私も将来医師になる身としては臨床での応用を心待ちにしています。
 最後のレポートとなりましたが、荒木先生、また他の学部の学生の意見を幅広く知ることができ非常に有意義な時間を過ごさせていただきました。これからも様々な人の意見に耳を傾けることで自分の人生を豊かにしていきたいと思います。半年間ありがとうございました。 (医学部)
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 臓器移植の場合は確実にキメラな訳ですが、その様なキメリズムとマイクロキメリズムの関係も興味深いですね。もしかしたら、全く別のメカニズムが働いているかも知れません。 (コメントby 荒木)

・私はマイクロキメリズムについて初めて聞きました。他人の細胞が生き続けてるのはなんか信じられないです。他人の細胞を分化させて治療に役立つのならもっと広まってほしいですが、悪用する人が現れないでほしいです。 (工学部)

・マイクロキメリズムについて,今まで全く聞いたことがなかったので,こういうことがあるのかと,とても驚いた。そしてとても不思議な感じがした。親子のつながりを強く感じることができた。 (工学部)

・もしマイクロキメリズムが世間に知られるようになったら、子供を産む=危険と思ってしまう人がでてくるんじゃないかと思った。そうすると、ますます少子化が進んでしまうと思うので、できるだけ早くマイクロキメリズムを解明して正しい知識をみんなに与えるべきだと思った。 (医学部)
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 産婦人科医が不足しているというニュースをよく耳にしますが、子供を産むという行為が危険を伴う命がけの行為であることは間違いないと思います。従って、マイクロキメリズムの話を聞いても、おそらくあなたが心配しているようなことにはならないのではないかと思います。むしろ、出産という神聖な行為への関心が深まることを期待します。 (コメントby 荒木)

・自分の体の中に母親の細胞が今でも生きているということに驚きました。この細胞が、害を及ぼすということは非自己だから攻撃するのかなと何となくわかったような気がしますが、有益に働いている部分もあるとわかり、親と子のつながりってすごいと改めて感じた気がします。 (教育学部)
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 私は、この話を最初に読んだ時、15年前に死んだ母の細胞が今も私の体の中で生きている(可能性がある)と知り、胸が熱くなりました。 (コメントby 荒木)

・母親と胎児との間で、胎盤を通して細胞が行き来しているという話は聞いたことがあったが、その後もずっと体に残り続けるという話には驚いた。自分の中に他人の細胞があり、なおかつ受け入れられているなんてとても信じられない。どこまでが自己なのか、根本的な考え方が変わってきそうな面白い発見であると思った。また、どうして親子とはいえ他人の細胞を受け入れる仕組みがあるのか、非常に興味深い。この要因が分かれば、移植などによる拒絶反応をなくすことが可能になるかもしれない。そういった面からもこれからの研究に注目したい。 (工学部)

・普段の生活の中でキメラという言葉を聞くことは少なく、さらに非現実的な話だ、と勝手な先入観を持っていた私はとても驚きました。しかし授業を通して、母親もそして自分にも関係のないということを知り、とても身近なものに感じるようになりました。 (工学部)

・今回の講義でマイクロキメリズムのことを初めて知りました。母親の細胞が自分の体に存在しているというのはなんだか不思議な気分です。この現象によって外来の細胞が損傷を受けた本人の組織を再生しようとする作用は素晴らしいと思います。しかし、逆に外来の細胞が本人の組織を攻撃することもあるそうです。
 これからもっと研究が進んで、マイクロキメリズムが有益に働く時と有害に働く時で何が違うのか、はっきりと解明できたら、医療の場面で非常に役立つと思います。 (教育学部)
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 母親の細胞が自分のからだの中に生き続けているだけでなく、自分の細胞も母親の中で生き続けている(存命であれば)ということも考えてみて下さい。 (コメントby 荒木)

・私はこのマイクロキメリズムという現象が存在する事にとても驚きました。他者の細胞が自分の体内で生きているというのはやはり最初知った時には良い気はしませんでした。しかしこの現象の存在が分かった事により科学技術を発展させていく事が出来ればいいと思いました。親の細胞が自分の中で生きているというのは神秘的だとほんの少し思います。 (工学部)

・マイクロキメリズムという存在を初めて知りました。誰もの身体に母親由来の細胞を宿しているのにも関わらず,大半の人がマイクロキメリズムという言葉を知らないだろう。とても興味深いと思いました。多くの人に話してみようと思います。 (薬学部)

・このマイクロキメリズムによって引き起こされる病気の解明やこれによって緩和されるメカニズムを利用して新薬が開発されることを期待します。 (工学部)

・マイクロキメリズムという言葉は今まで聞いたことがありませんでしたが、その言葉の指すものについては少し考えたことがありました。つまり、子供はまず母親の胎内でへその緒を通じて育ち、出でくるわけですから、母親の細胞が子供に定着する可能性はあるのではないかということです。しかしマイクロキメリズムには”母系マイクロキメリズム”(母→子)だけでなく”胎児マイクロキメリズム”(子→母)もあるという話は意外でした。少し面白そうなので、このマイクロキメリズムについてはこれからも注目していきたいと思います。 (医学部)

・母親には子供の、子供には母親の細胞を持っていると知ってびっくりしました。こういう細胞は自己の細胞に破壊されると思っていたのでなおさらです。ならばこのメカニズムを解明したら、臓器移植の拒否反応を押さえることができるのではないでしょうか。将来に期待です。 (工学部)

・マイクロキメリズムの話を聞いて自分の体の中に自分以外の細胞があるということにびっくりした。なんとなく父親よりも母親の方が絆が深い気がしていたけれど科学的に証明されて感動した。 (教育学部)

・私は、マイクロキメリズムの話を聞いて私のなかに母の細胞があると聞いてすごいと思いました。現在わからないことがたくさんあるので、是非早く解明できればいいと思いました。 (教育学部)

・この講義を聞いてとても驚いた。母親も子もお互いの細胞を持ち続け、一生消えることはない。そして、この体内にある母親の細胞は、子を病気などから守っている。母とその子の間には不思議な絆があるのだと思った。 (工学部)
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 亡くなった人のことを記憶の中で生きているとよく言いますが、15年前に死んだ母の細胞が現実に私の中で生きていると考えることは感慨深いものがあります。 (コメントby 荒木)

・母親の細胞が胎児の体内に、胎児の細胞が母親の体内に移動したりしているときいて、最初とても驚きました。それに胎児の細胞が母親の癌の予防にもなっている可能性もあるということも知り、なにか神秘的なものを感じました。 (工学部)

・母親の細胞が自分の中に潜んでいて、身体を治すのに役立つこともあると聞いて、神秘的だと思った。本当の意味で親子の絆ってあるんだなぁと思った。 (薬学部)
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 確かに、「親子の絆」ですね。この話は、もっと多くの人に伝えたいと思います。 (コメントby 荒木)

・私は今回の講義で初めてマイクロキメリズムの存在を知りました。この研究が進めば、有益な他人の細胞を移植するようなことがおこるかもしれません。ただ、倫理面の問題が残っていますが...。
 追伸、先日、足利事件に関するニュースが放送されました。再鑑定が行われるそうです\(^O^)/これまでの対応を見ると、まだ今後どうなるかは分かりませんが、前進であって欲しいです。 (工学部)
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 追伸、ありがとうございます。再鑑定が始まったことは知りませんでした。先程ネットでニュースを検索して確認しました。 (コメントby 荒木)

・マイクロキメリズムという言葉を聞いた時難しいイメージしかなかった。しかし内容を見ると母系マイクロキメリズム、胎児マイクロキメリズムと興味深いものだった。有害な面があるが有益な面もある。もっと研究が進んだら活用する方法が見つかるかもしれない。医療の面で活躍出来ることを期待したい。 (工学部)

・生命の神秘を感じた。また、原因が解明されて、医療に役立てられることを期待したい。 (工学部)

・子供生んだら変わったとか、今まで聞いたことがありましたが、理由がわかって驚きました。他人の細胞がそのまま根付くことがあるなら、将来人工的に他人の細胞を根付かせて病気を治療するなど応用も可能になるかなと思いました。 (工学部)
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 確かに、子供を産んだら体質や好みが変わったという話をよく聞きますね。 (コメントby 荒木)

・「他者」の細胞というキーワードがとても印象的でした。他者といっても母親由来の細胞ですが、それでもとても不思議でした。その細胞が健康に影響するということに驚きました。母親がかかった病気にかかる可能性が高くなるということでしょうか? (工学部)
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 「母親がかかった病気にかかる可能性が高くなる」という訳では無いと思います。健康への影響としては、(1)移動してきた母親の免疫細胞が子供の組織を攻撃する。(2)母親由来の細胞が子供の免疫系の標的になる。(3)母親由来の幹細胞が分化して、破損している子供の組織を修復する。(4)母親由来の細胞が子供の発達・成長を促す。などが考えられます。もちろん、子供の細胞が母親に影響を与える(胎児マイクロキメリズム)ことも忘れないで下さい。 (コメントby 荒木)

・マイクロキメリズムについては未知の部分が多いが、自己免疫疾患との関係性や、免疫による自己と他者の区別の方法の解明などが期待される。 (医学部)

・今回初めてマイクロキメリズムという言葉を聞いたが、本当に将来期待できるものだと思った。他者の細胞が体の中で様々な影響を与えるなんてとても驚かされた。今は良いほうにも悪いほうにも働いているようだが、これを良いほうにだけ働くようにできたら医学はとても進歩すると思う。これからのマイクロキメリズムの解明に注目していきたい。 (工学部)

・マイクロキメリズムにおいて、母親由来の細胞は年をとっているので、悪性化しやすいと考えられるが、そうなっていないならば、悪性化を抑えているメカニズムを解明することで、がんの予防につながるという考えは面白いと思った。 (薬学部)

・いくら血がつながってるとはいえ、免疫系からみれば母親と子は他者であるが、今回の講義を聞いて母親と子の深いつながりを感じた。他者の細胞である母親の細胞が病気の一因になるのは仕方ないと思うが、健康の手助けをしていることもあるのは不思議に思った。(たぶん違うと思うけれど)細胞レベルでも母親が子を守ろうとしているとしたらすごいと思う。 (教育学部)


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