2008年度 レポート第2回 回答集

熊本大学
生命資源研究・支援センター
バイオ情報分野
荒木 正健
Tel : (096) 373-6501, FAX : (096)373-6502
2009年 9月30日更新

2008年度 最前線の生命科学C レポ−ト第2回(2008年10月 9日実施)回答集

[ テーマ ]『被ばく治療83日間の記録 〜東海村臨界事故〜』を見て考えたこと

[ 回答 ](全42人)

・東海村の臨界事故は発電所の杜撰なシステムが必然的に引き起こした不幸な事故である。
 被害者の方は多量の放射線により全身の染色体を破壊され皮膚の幹細胞や造血幹細胞を失った上に体内に放射線が残留し、治療は不可能な状態となった。
 約90兆個の細胞の染色体の修復と体内に残留した放射線の除去が理論的にしろ可能なら治癒の可能性もあるが、体中で連鎖反応的に増加する放射性物質など体中の細胞を捨てる以外に取り除く事は無理だ。実際骨髄に造血幹細胞を移植しても放射線に破壊されてしまったように、時間稼ぎにしかならない。
 医療に携わらない一般の方達は技術さえ進歩すれば全ての病が治ると思いがちだが、原理的な医療の限界というものを知るべきだろう。
 こういう悲惨なケースで医療従事者に可能なのはできる限りの対症療法、その場凌ぎと死を看取ることしかない。
 原発における被爆は治療不可能だが予防は可能な事だ。
 二度と痛ましい事故が起こらないように、原発には万が一にも被爆者が出ないよう厳格な管理体制を敷いて頂きたい。
 また、できるならテレビ局も被害者の方が治癒しなかった事が医療者の能力不足で、いずれ技術が進み治療できるような錯覚を起こさせる内容の番組を作らないで欲しい。(NHKの立場上、国の発展を支える原子力発電の否定はできないだろうが) (医学部)
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 とても重いレポートですが、良く書けていると思います。 (コメント by 荒木)

・放射線を浴びるとDNAがRNAに変化し、染色体が正常に並ばなくなり新たな細胞が作れなくなるということがわかった。遺伝子の重要性がわかり、放射線の恐ろしさを改めて感じた。自分は、将来、創薬関係の仕事につきたいと考えているので、少しでもこのような患者さんの為に役に立てる薬を開発できるように努力したい。 (薬学部)
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 「放射線を浴びるとDNAがRNAに変化」する訳ではありません。放射線の影響でDNAが損傷すると、その場所に存在する遺伝子からmRNAが作られなくなり、結果的に新たなタンパク質が合成されなくなります。タンパク質には寿命がありますので、生存に必須なタンパク質が供給されなくなるとその細胞は死んでしまいます。 (コメント by 荒木)

・まず思ったことはすごい恐怖だったであろうと言うことでした。被曝された方は被曝の直後は元気だったのに、日に日に自分の体がボロボロになっていくの見るのは、僕らが外から見ている以上に本人にとってはすごく耐え難いことだったと思います。肉体的なことはもちろん、精神的な面でも日に日にボロボロになっていったんだろうと思いました。授業のコメントでも言いましたが、ゲノム医療にはリスクなどマイナス面も多いと思います。でも、遺伝子的な病を治せるのもゲノム治療だけだと思っています。映像を見て、よりゲノム医療の必要性を感じました。 (工学部)

・私は放射線の影響が思っていたよりひどくて驚きました。まず、臨界事故というものもよく知らなかったのですが、今回のビデオを見て、放射線の恐ろしさがよくわかりました。事故が起こらないようにするのが一番ですが、早く効果的な治療法が確立されるといいなと思います。 (工学部)

・当時私は東京に住んでいました。茨城県から比較的近いこともあり不安に思っていたところ、海外から来日していたスポーツ選手の一団が事故の報道を受けて急遽離日したとの新聞記事を目にし、動揺したことを覚えています。
 今回番組を見て一番印象に残ったのは、引き裂かれバラバラになってしまった染色体の顕微鏡写真でした。事故当時には知識がないために漠然と不安を感じていただけの私でしたが、その当時の不安をあの一枚の写真が全て説明してくれます。治療など無意味だったでしょう。
 医師はともかくとして、被爆した大内さん、そのご家族、また看護婦さんの中に、大内さんの状態を正しく理解していた人が一体どれだけいたでしょうか。
 何の知識も与えられず、ただ職務として大内さんの治療に当たっただけではないでしょうか。それは、被爆した大内さんが何も知らされずに臨海事故を起こしたのと本質的には同じことではないでしょうか。末端の人間の無力さを感じます。 (医学部)

・医療に関して言うならば、現在は実現されていないが、医療は患者の生命を維持するものではなく患者のヒトとしての存在を維持できるものであってほしいということある。ビデオの中で取り上げられていた『これは誰なんだろうではなく、これはなんだろう。』と看護師が発言してしまうほどの状態、患者の親族の気持ちや、患者本人の気持ちを考えてもこれからの医療においてのヒトの尊厳のありかたについて考えさせられました。 (薬学部)
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 『これからの医療においてのヒトの尊厳のありかた』については、一人一人が充分に考える必要があると思います。是非、次のふたつのホームページを両方ともチェックして下さい。
「日本尊厳死協会」[ http://www.songenshi-kyokai.com/ ]
「安楽死・尊厳死法制化を阻止する会」[ http://soshisuru.fc2web.com/index.html ]
(コメント by 荒木)

・放射線というものはこんなにも人体に影響を与えるものとは思ってもみませんでした。他人の細胞を入れてもことごとく染色体は変形してしまい使い物にならなくなってしまいました。ある意味放射線という物質は死に追いやる兵器だなと思い鳥肌がたちました。またこれは防げた事故に違いないとも思いました。防げる事故は防がないと永遠に事故は無くならないと強く思いました。 (工学部)

・DNAの破壊による影響があっという間に体中を侵食していくさまを見て、これほどにもひどい症状があるのかと目を疑いました。体中の皮膚が剥がれ落ち、抵抗力は大幅に低下し、臓器からは出血が起こり、とても直視できないような状態でした。治療がほとんど意味をなさず、逆に悪化の一途を辿っていく様をみれば、医師達が治療に苦悩を感じるのも分かる気がします。
 大内さんの場合はとくにひどいケースでしょうが、たとえ症状が軽くても、一度被ばくするともう完治は非常に難しく、子供にも染色体異常が現れる場合があるそうです。
 病原菌やウイルスなどによる病状ではなく、DNAが破壊されたことにより被害者自身の体が火種になってしまうというのは、患者の立場から考えるととても恐ろしいことだろうと思います。
 現在原子力はさまざまな用途で使われていて、私たちの生活には必要不可欠です。いくら原子力事故に対する対策を行ったとしても、完全に事故をなくすことは不可能でしょう。この先いつどこで大きな事故が起こらないとも限りません。だからこそ、被爆経験を持つがん患者のゲノム研究などを少しでも進め、回復に向けた治療方法の発見に尽力してほしいと思います。 (工学部)

・本当にいろいろ考えさせられるビデオでした。今まで原爆のビデオなどを見たことはありましたが、外傷ばかりを見るものが多く細胞内で染色体があんなにバラバラになって機能を果たせなくなっている知りませんでした。見ている間、医療従事者の人たち、家族の人たちの頑張りは分かっていましたが、こんなになってまで人として生きなければいけないのか…という疑問に駆られました。
 人が作ったものが、人の力以上の威力を発揮しどうしようもなくなるのではいけないと思います。もちろん未知の領域を解明していくには研究が必要でしょう。こういう事故が起こらないことを第一に望みますが、医療がもっと発達し、事故に対処できるよう医療技術が発展してほしいと思います。 (教育学部)

・今日のビデオは衝撃的だった。放射線が日本で実際にあんな被害を与えたことを初めて知った。チェルノブイリの原発事故は有名だが今日のビデオのような悲劇が多発していたと考えると恐ろしい。放射線は生物の染色体をボロボロにして身体中での正しい器官形成や維持に異常をきたす。PCR法であらかじめ多くのDNAをつくり、保存していたらこのような事故発生時に被害を受けた遺伝子を補うことができるのだろうかと考えたが被曝した多くの細胞一つ一つに遺伝子レベルの治療をすることはやはり不可能だと思った。このような事故は医療ではどうすることもできないのだろうか。あんな事故が二度と起こらないことを願いたい。 (薬学部)

・放射能による悲惨な被害を目の当たりにして、原子力や難病治療について深く考えさせられました。DNAが損傷すると体の設計図が壊れ、正常な生体機能が働かなくなります。それが放射能によって一瞬で起こるのです。現在、原子力によって消費電力の多くをまかなっている我が国において、放射能汚染は身近に潜んでいます(玄海や川内に原子力発電所有り)。チェルノブイリのような事件を起こさないためにも原子力の管理を徹底し、地域ぐるみで利用を検討する必要があると思います。私は医学部の人間なので将来、遺伝子に損傷を持つ患者様に接する機会が多くあると思います。治療法が確立されていない場合に、どのように最善を尽くすべきかを考えると、まだまだ医療が発展途上であることを実感しました。ですが、臨床研究を通して少しでも治療法の確立に近づいていく地道な努力と根性を持っていきたいです。 (医学部)
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 立派なレポートだと思います。 (コメント by 荒木)

・原子力発電所は人間の豊かな生活には必要です。しかし、その使い方を誤ると、このような恐ろしく悲しい出来事が起こることを実感しました。ナノレベルで破壊されたDNAは無残で最高位の医師たちにも、手の施しようのないほどの出来事が数多く起こり見るに耐えませんでした。犠牲になった方々、その遺族のためにも、二度とこのようなことが起こらないようにしていかないと思いました。 (薬学部)

・今回のビデオを見て、染色体の重要性を改めて知ったとともに、放射線は本当に怖いと感じた。ただの怪我とはわけが違う。生きる術がつまっている染色体がずたずたになっていては、助かる可能性もかなり低いだろう。私は放射線専攻で、今回見たビデオに関係がないわけじゃなかったので、放射線を扱うことは本当に責任の重いことなんだと再確認できた。 (医学部)

・今回このビデオを見て考えたことは、最後に奥さんの手紙にもあったように、医学の分野の進歩がさらに進めば、染色体を元に戻すことや、誰にでも利用できる培養皮膚を作ることができ、より多くの人の命を救うことが可能になるのではないかと思います。 (工学部)
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 現在の科学では、損傷した染色体を元に戻すことは出来ません。どんなに医学が進歩しても、おそらく限りなく不可能に近いと思います。治療法の可能性があるとすれば、ES細胞やIPS細胞を利用した再生医療・移植医療ではないかと思います。 (コメント by 荒木)

・私は1度同じビデオをみました。放射能の被害がここまでひどいとは知らなかったです。それもあるけど、人の命の重さを感じました。家族身内や病院の先生たちが一生懸命最後まで治療に励んで精神的にも肉体的にも苦しい戦いだったと思います。大内さんの奥さんがずっと泣かずにお見舞いに通ったのはきつかっただろうなぁと思ったけれど、この世で1番美しいのは愛だなと感じました。 (教育学部)

・ビデオを観て、染色体によって、自分であることが維持されているということを痛感した。
 染色体が全て破壊されると設計図を失うので、死に至るということは十分予想はできる。しかし、しばらくはいつもの状態であることや、医学の力を借りつつも83日間も生きていられるのは、少し意外だった。
 また、心臓の筋肉だけはほぼ正常であるということも不思議だった。 (薬学部)

・我々人類は、ともすれば自分たち人間を簡単に破壊してしまうものを作ってしまった。その前では医学などちっぽけなものに感じた。医学には限界があることを痛感し、その事実を悔しいと思った。 (医学部)
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 立派なレポートだと思います。今のその気持ちを、いつまでも忘れないで欲しいと思います。(コメント by 荒木)

・最初に「被ばく」という言葉を聞いた時、原爆のイメージしか浮かびませんでしたが、今回の講義で見た映像によってかなりの衝撃を受けました。目に見えない放射能をあびてしまったことによって、人間の身体はあそこまでボロボロになってしまうのかという驚きとショックでいっぱいです。人が人でないように感じました。
 確実に悪くなるということを知っていても、できる限りのことを行った医師や看護師はとてもすごいと思います。そして何より、家族が一番すごいと思いました。
 今回のような事故はあってはならないことだと思うし、患者への対応もとても難しかったと思います。しかし、これからこのような事故は起こらないとも言いきれないと思います。だから、この事故を無駄にせず、当時治すことができなかったことへの対処法を考えなければならないと思います。
 染色体に影響があったことから、前回の講義にも出てきた「ゲノム科学」を研究することが一番大事なのではないかとあらためて感じました。 (工学部)

・ビデオを見て、とても衝撃を受けました。あんな風に体がボロボロになるなんて…。今まで遺伝子についていろいろなことを習ってきたけど、遺伝子が壊れるとどうなるかなんて考えたこともありませんでした。遺伝子は本当に大切なものなんだな、と思いました。
 現在遺伝子組替え等が行われていますが、もしこれが突然変異をしてビデオの様になってしまったら…と考えると、やはり遺伝子の世界は私たちは踏み入れてはならない領域なのかな…と思いました。 (理学部)
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 遺伝子組換え技術で突然変異が起こりビデオの様なことになるというイメージを持たれた様ですが、それは間違いです。ビデオの場合は臨界事故による放射線が原因ですし、他にも突然変異の原因としては紫外線や化学物質などが知られています。むしろ遺伝子組換え実験では何が起きているかを確認しながら研究を進めますので、突然変異による事故の脅威は少ないといっても過言ではないと思います。「遺伝子には触らない」と言って何もしないよりも、放射線障害や発癌物質による遺伝子のダメージを正しく理解することの方が重要だと思います。 (コメント by 荒木)
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そうなんですか!勉強不足でした(・ω・;)  (返信への返信)

・放射線が恐ろしいということは何となくしか理解できていなかったが、その具体的な恐ろしさが今回の講義で理解できた。何より恐ろしいのは60年前から存在する技術による症状であるにも関わらず現代の最先端の医療が敗れ去ったという事実だと思う。よく言われることだが壊すことは容易く直すことは難しいということを痛感した。 (医学部)

・今までの私は、「放射線被ばく」というものがどれだけ恐ろしいものか、全然分かっていなかった。染色体をずたずたに切り裂き、人体を担う設計図を失ってしまう、ということにとても衝撃を受けた。今までだったら、恐いなぁかわいそうだなぁという感想にとどまっていたかもしれない。
 しかし、先週の授業で、遺伝子とは何なのかということを知ったので、今回は分子レベルでビデオを見ることができた。そのことにより、今生きている人体の不思議さ、神秘さを感じ取ることができた。遺伝子によって生命活動をしているのだということが、本当にすごいことだと思うし、本当におもしろい。今まで目を向けなかったようなことも、分子レベルで考えてみたいと思うようになった。 (薬学部)

・私は「被曝治療83日間の記録 〜東海臨界事故〜」の大内さんの体調が悪化していく描写を見ていて、亡くなった祖父のことを思い出しました。亡くなる直前の見舞いでは、祖父はベッドに何種類ものコードやチューブをつながれて横たわり、目は白濁していて意識が無い状態でした。私は小さい頃から祖父にかわいがられていたので、そのような姿になった祖父を見るのは非常に辛かったのを今も覚えています。それよりもひどい状態になった大内さんを見舞い続けたご家族の方や、治療を続けた先生や看護士の方々の心情は想像を絶するものだったでしょう。
 また、杜撰な管理体制を敷いた会社に怒りを感じました。きちんと核燃料の取扱いにおける危険性を社員に徹底して教えて、作業工程を安全なものにしていれば、こんな事故は起きなかったのではないかと思います。
 完全な人間はいません。だから、今後も原子力に少しでも頼り続ける限り、東海臨界事故のような悲惨な事態も起こり得ることだと思います。同じような事故が起きたときのためにも、早く被曝治療法が確立されることを望みます。 (工学部)

・今回のビデオを見るまで東海村臨界事故のことを知りませんでした。そして放射能の悲惨さを改めて実感しました。
 人間のDNAはひとりひとり違いその人をつくりだす重要かつすばらしいものです。その一方,放射能を浴びたらたちまち崩れる脆いものだということを知りました。また,放射能を浴びることによって人間の皮膚は細胞分裂が行われなくなり,新しい皮膚ができなくなるという恐ろしい事実も知りました。
 東海村臨界事故について少し調べたのですが,二人の犠牲者がでたみたいでそのうち一人はすぐに亡くなられたそうです。今回のビデオで取りあげられた大内さんという方は83日間も苦しみと闘い亡くなられました。日に日に悪くなっていく病状に大内さんはもちろん家族も苦しんだでしょう。もし自分が大内さんまたは家族の立場ならいっそのこともう一人の犠牲者のように早く死んだ方がよかったと思っていたかもしれません。しかし,大内さんがいたからこそ事故から時間が経った今でもこのように臨界事故について考える機会があるのだと思います。この犠牲を無駄にすることなく,将来の医療に役立っていってほしいと思います。 (薬学部)
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 少し調べたということですが、事実誤認があります。茨城大学地域総合研究所のホームページを転記しますのでご確認下さい。
http://wwws.hum.ibaraki.ac.jp/~comm/tokai/index.html

 ウィキペディア「東海村JOC臨界事故」にも記載されていますが、臨界事故(1999年9月 30日発生)で直接致死量の中性子線を浴びた作業員3人中、2人が死亡しています。事故から 83日後に大内さんが、211日後に篠原さんが亡くなられました。もうひとりの方は、大内さんが亡くなった前の日(1999年12月20日)に退院されています。大内さんは、日本の原子力行政が始まって依頼初めての犠牲者でした。おそらく「どんなことをしても良いから死なせるな」というプレッシャーがあったのではないかと予想しています。 (コメント by 荒木)

・私は長崎市出身で、被爆体験の話を何度か聞いたことがありますが改めてこのようなビデオを見て、放射線被爆とは本当に恐ろしいものだと実感しました。放射線被爆したことによって、体の設計図が破壊され新たな細胞を作り出すこともできなくなり、最後は生きているのがつらくなるほどの体にしてしまうとは本当にむごいものだと思いました。 (工学部)

・今回の授業で放射線被ばくの悲惨さを改めて実感しました。
 昨今の医学界ではゲノム治療など、画期的で夢のある治療法が発明され、実際多くの病気が、いわゆる不治の病ではなくなりました。こうした医学の発展が著しい中、妹さんの血液や人工皮膚の移植などに全くと言っていいほど成果が出なかったことが非常にむなしかったとともに、また情けなくもありました。
 これだけ悲しい事故が起こる可能性があるなら、原子力発電など廃止した方が良いと思っていましたが、大内さんの奥さんの手紙の内容を聞いて、少し考えが変わりました。原子力発電に医学が追い付いていないのではないかと思ったのです。
 放射線被ばくに対して非常に有効な治療法・予防法があり、臨界事故などが起きても健康になんの影響もないならば、大内たちのように悲しむ人はいなくなるはずです。それでも問題はいろいろと残るでしょうが、人への危険がなければエネルギー問題はかなり前進すると思います。また、そんな技術があれば他にも様々な病気などにも応用できるでしょう。
 夢みたいな話で現実的ではないのかもしれませんが、今後の医学の発展に期待してしまいます。 (医学部)

・ほんの少しだけの被ばくで、DNAが損傷し、細胞の再生が出来なくなる…そのことは理解できても、実際に映像を見るまではその悲惨さは分かっていませんでした。
 どんなに最初は元気でも、確実に死に向かっていく。自分が薬剤師として働くようになった時に、必ず目のあたりにする現実で、その時自分はどうするんだろう、ということを考えさせられました。まだ具体的には考えきれませんし、ずっと考えていかなければならないことだと思います。
 また、他の細胞を破壊する一方で、心臓の細胞のみ被ばくされなかったことは、やはり不思議でした。この番組を見たことをきっかけに、いろいろ自分で調べてみたいと思います。 (薬学部)
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 「ほんの少しだけの被ばく」と書いてありましたが、そんなことはありません。「臨界」事故というのは、言ってみれば小型の核爆弾が地上で爆発したようなものです。中国やアメリカの地下核実験がニュースになりますが、地上で核実験をやったようなものです。絶対にあってはならないことが起きてしまったという事実を認識して下さい。大内さんが浴びた放射線量は、致死量と言われている1グレイをはるかに超える16〜20グレイだそうです。この放射線量は核爆発時の爆心に匹敵する線量です。(コメント by 荒木)

・原子力が莫大な力を持っていることは知っていたが、生命にあれほどの影響を及ぼすものとは思わなかった。私たちが普通の生活を送るためには、誰かが命をかけて原子力に携わっていかなければならない。それなのに、いざ被爆したら治療法もない現実。設備がいかに整えられようとも、100%の安全が保障されることはない。きれいごとかもしれないけど、このままでいいわけがない。私は原子力に対抗する治療法は今後も発見されない気がする。それほど原子力は恐ろしいものなのだ。一刻も早く原子力にいっさい頼らなくてよい方法を探さなくてはならないと思う。かといって水力や火力、ましてや太陽光などといった自然エネルギーでは原子力ほどの発電力もない。これ以上新たな犠牲者が出る前に、原子力に代わる何か合理的な方法が見つかることに期待したい。 (教育学部)
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 「原子力」が悪いのではなく、その使い方が悪いのだと思います。例えば「水力」なら安全かというと、洪水や水の事故で亡くなる方もいらっしゃいますし、「電気力」で感電される方もいらっしゃいます。重要なのは使い方だと思います。と言っても物には限度というものがありますから、私も、現在研究がスタートしている「ブラックホール」の有効利用などはいかがなものかと思います。 (コメント by 荒木)

・放射線でDNAの損傷があるというのがどのような仕組み化理解できないので、調べようと思いました。
 また、DNAが損傷することによってなぜ死にいたるかがわかり、勉強になりました。患者さんが闘病中に何を感じていたのかがとても気になりました。医師や看護士の、何を相手にしているのだろうという言葉がとても重く感じ、放射線障害のひどさが実感されました。 (薬学部)

・広島・長崎の原爆については小学生のころから学校で教わったり、考える時間を与えられたりしていました。被爆者に対しての、苦しみや家族の痛みをそれなりに知って、学んできたつもりです。私にとって原爆とは、毎年8月に学ぶ歴史のようなもので、痛々しく悲しい事実なのにどこか遠いものとして感じていました。
 しかし、今回の話を聞いて、被爆者に対してまた違った感覚をおぼえましたし、看護婦や、家族、医者の話を聞いていて情景が目に浮かびました。放射線が染色体自体を破壊するなんて初めて知ったし、それを聞いて私はもうどうしようもないんじゃないかと思いました。しかし、医者や看護婦たちはあきらめずに、たくさんの可能性を試しているところに考えさせられました。被害者の男性が救われなかったのは、本当に残念でしたけど、これからこのような被害者がまたでないことを仮にでてしまったとしても助かる医療に発展することを祈ります。 (薬学部)

・今まで、長崎・広島の原爆などで放射線の恐さは多少知っていたつもりでしたが、映像で染色体が破壊された様子を見て、改めて恐ろしい物だと感じました。 (工学部)

・今回の授業を受ける前は被爆治療とDNAに何の関係があるのかわからなかったけれど、DVDを見て細胞の中のDNAを破壊して細胞を作ることをできなくする放射線の恐ろしさを知った。
 私たちが生きていく上で原子力は欠かせないものだけれど、現在の医療ではどうすることもできないので、もう二度と犠牲者を出さないように安全に取り扱ってほしい。 (教育学部)

・今回の授業では放射線被曝の影響がとてつもなく大きいものだと実感しました。治療法が分からない病気に効果的と思える未承認の薬剤の投与や,ES細胞や、iPS細胞などを用いた治療も患者等に不安を与える要因にもなるという事も感じました。将来,過激な言い方かもしれませんが医療の発展のためにモルモットになるか、尊厳死を選ぶかという選択の自由を得る事が重要になると私は思います。 (工学部)

・これまで何度も耳にしてきた被爆でしたが、被爆に因る人体への影響は初めて知ることになりました。このことで実感したのは被爆の酷さと遺伝子の大切さでした。被爆による体内での二次被爆により一部だけが健康な状態に成っても仕方がないというのに驚いた、ゲノムで望むのは健康時の遺伝子の保存により体内の遺伝子を健康な状態に戻す方法か、影響がある状態から健康な状態を何らかの方法で解析するというのが思いつくがどちらの方法でも生体の遺伝子に手を加えるという事なので、悪用された場合に被爆とは比較にならない被害がでるかもしれないためとても複雑だとおもった。 (工学部)

・過度の放射線被爆が人体に有害でであることは知っていましたが、 DNAを破壊してしまうということまでは知りませんでした。また、世界中で数多く原発が稼働し、さらにその数が増え続ける中で、現在に至るまでに、具体的な治療法が確立されていないことにも衝撃を受けました。これからも原発がある以上、事故が起こる可能性はあります。それだけに大内さんのような人を二度と出さないためにも、早く有効な治療法が確立して欲しいです。 (工学部)
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 「有効な治療法」が確立されていないということに憤慨されていますが、日本は世界で唯一原子爆弾を落とされた国であり、被爆された方の中には今でも放射線の影響で苦しんでいらっしゃる方が大勢います。しかしながら、国は被爆者の健康維持に努力するどころか、被爆による影響であること自体を否定するような態度を示しています。この様な態度は原子力行政への理解を求めるという態度とは矛盾すると考えます。 (コメント by 荒木)

・今回の講義で科学の面で思うことはもちろん、また「患者と医療」という面でも考えさせられることがあった。遺伝子というものがいかに生命にとって重大なものか症状から分かることができた。またしだいに蝕んでいく症状に最終的にはどうすることもできなかった医療の限界を感じた。 (薬学部)

・今回の講義で見た映像は忘れられないと思う。私の出身は長崎なので小学生の頃から原爆についての講話を聞いたり、映像を見たり、小説などを読んだりして、放射線被ばくをすると、いろいろな症状がでることを知っていたが、生命科学として考えることはなかった。染色体が破壊されて、結果としてタンパク質が合成されなくなることは、説明で理解できた。心臓だけが放射線の影響がなかったのに驚いた。もちろん投与した薬などの影響を受けたのかもしれないが、心筋の細胞を研究して新たな治療法が発見できないだろうかと思った。 (教育学部)

・今回の被爆者の闘病生活では、何が正しいことなのかを考えさせられた。治療を続けて行く事で患者が苦しむ事になり、延命治療を行っても患者が回復するみこみが無いのに治療をしていく事はしない方がいいのではないかと思っていた。しかし最後の家族が言っていたようにこの経験を生かし、もし次に被爆者がでてしまった時にその方を助けるためには必要な事だったのかとも思った。 (工学部)

・放射線を浴びて染色体が壊れたときの「体の設計図を失った」というナレーションが印象的でした。染色体という存在の重要性がわかりました。染色体が壊れてしまうと人は皮膚の再生とか普段意識もしてないようなことから全く何もできなくなることを知って、とても怖くなりました。 (工学部)

・僕は一度放射能を浴びただけで、人体にあんなに恐ろしいことが起るなんて思いもよりませんでした。

 放射能は人間にとって最悪のものだと思います。世界的にも原子力が注目されている中、早く放射能に対する治療方法をみつけることは必須だと思います。一人でも多くの患者を救って欲しいです。 (工学部)

・今回のビデオを見て、医療の世界の辛さを知った。放射線の恐ろしさはすさまじいものであると感じた。はいだテープの後が残ったりなど、現実ではとても考えられないことであり、現代の発達した医療でも対応できないのか、と悔しく感じた。やはり、医療の発達のためにはゲノムなどの力も必要性も感じた。 (工学部)

・色々なことを考えさせられました。患者の気持ちもわかるし医者の気持ちもわかり非常に複雑な気持ちになりました。また、染色体の重要性や何故心臓の筋肉だけが無事だったのかを詳しく調べて今後の被爆治療に役立ててもらいたいと思いました。 (工学部)

・被爆によって染色体が壊され、それがどんどん人間の体を蝕んでいく姿にとても驚きました。しかし,心臓の筋肉だけは最後まで正常であったということは人間の生命力の強さを表していると思います。このことが今後の被爆治療に何か良い影響を与えていくのではないかと思いました。 (文学部)
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 「心臓の筋肉だけは最後まで正常であったということは人間の生命力の強さを表している」という意見に同感です。きっと、何か重要な鍵が隠されているのではないかと期待します。 (コメント by 荒木)

・被害者の方は不慮の事故により放射線被害を受けた。外見で分かる被害はそれほど分からなくても染色体の破壊、各臓器の機能の低下など、体内は異常なほどに傷ついていた。再生されることのない皮膚は剥がしたテープの後が残るほどに腐っていた。放射線被害について考えた機会はほとんど無かったが、この講義を通して改めて考えようと思う。 (工学部)

・今回この映像を見て、この事故に対して興味が湧き、インターネットで調べてみたところ被爆者は犠牲者2人を含めて669人いることがわかり、驚愕しました。そしてその原因になる核分裂を起こしたウランが1mgだったということにも、原子力の力というものがどのようなものなのかが見てとれました。 ナースの人達のインタビューからも被爆というものの恐ろしさが伝わってきました。このような映像などをもっと積極的に見て、さまざまな事故などについて、しっかりと知るということが大事だなと思います。 (工学部)

・放射線が人の体をあんなにまで傷つけるものだと思わなかった。 染色体が破壊されると、皮膚や細胞が再生されなくなる。これは体の破壊を意味するものである。日本は今までに、放射線被爆に対する研究があまり行われていなかった。このような状態で、放射線被爆者を治療することは、あの時点では困難であったのかもしれない。しかし、放射線を扱う人達がいる以上、再びこのような事故が起きるかもしれない。私たちの生活のために、命を懸けて働いているこのような人達のためにも、新たな治療法を生み出し、再び同じような事故があった時には救ってほしいと思った。 (工学部)

・前川医師が最後に言っていた「我々の技術が破滅的な影響をもたらすかもしれない」という言葉が印象に残っている。
 私たちは科学の恩恵を受け日々生きているが、その科学が私たちに悪影響を与えないとも限らないし、将来的には人類や地球に文字通り破滅的な被害を与えてしまうかもしれない。
 実際、そのことは誰もが薄々感じていることではないだろうかと思う。しかし、だからと言って引き返すことができる訳でもない。とにかくがむしゃらに進んで、極限まで科学を進歩させるのが人類の道なのか。その先に在るものは一体何なのだろうか。 (工学部)

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