2008年度 レポート第4回 回答集

熊本大学
生命資源研究・支援センター
バイオ情報分野
荒木 正健
Tel : (096) 373-6501, FAX : (096)373-6502
2009年 9月30日更新

2008年度 最前線の生命科学C レポ−ト第4回(2008年10月23日実施)回答集

[ テーマ ]中学・高校における組換えDNA実験について

[ 回答 ](全44人)

賛成(36人)

・現在では、遺伝子組換え技術が食品にも応用され、植物の品種改良も多く行われている。毎日普通に生活を送っているだけでも、これらの遺伝子組換え技術に出会う機会は多いだろう。このように、現代人は遺伝子組換え技術には密接なかかわりがあるといえる。そう考えると、若いうちからこういった分野について実体験で学ぶというのは非常にいい体験になるはずだ。テレビなどのメディアを通して学ぶのでは知識が偏ってしまう場合もあるので、正しい知識を学んだり質問したりできる場を設けることには賛成している。今後もこういった機会はぜひとも作っていくべきだと思う。 (工学部)

・私は高校生の頃に生物を学習しています。高校ではほとんど実験をせず、教科書の理論を勉強するだけなので何やら物足りない感じがしていました。ですが、大学では医学部の分子遺伝学実習でDNAの巻き取りを体験しました。透明の糸状のDNAを実際に見て、これが自分の体の設計図だと思うと不思議な感じでした。主にPCR法の実習でしたが、プラスミドを制限酵素で切断したDNAに挿入して培養させる基本的な操作でしたので、講師さえいれば中学生や高校生でも十分できる内容だと思います(実際にはGFPによる蛍光発色ではなく、βガラクトシダーゼをコードする遺伝子による発色コロニー形成を観察するものでした)。知識がまだ不十分で体系化していない頃に学んだことは、後になって分かる喜びがあります。遺伝子についてあやふやだった私も大学での勉強を通して遺伝病やDNA鑑定まで分かるようになりました。遺伝子組換えという言葉を耳にすることはあっても、よく分かっていない人にとって、実際に実験に触れることで遺伝子組換えに対する印象が変わってくると思います。ですから中学校・高校でもっと積極的に実験ができると良いと思います。ただ授業時間的にきついと思いますので文部科学省によるカリキュラムの検討・見直しが必要です。 (医学部)

・高校生ならまだしも、中学生には退屈な実験になるんじゃないかと思っていたが、組換えDNAを使ったお絵かきみたいなのもやっていたので、すごく興味がわくものだと思う。また、実験をやった学生さんが結果だけにとらわれずに、しっかり内容を学習できるようにレポートを書かせているのもよいと思った。少し厳しすぎるかもしれないが、小テストをやってみてもよいのではないかと思った。 (医学部)

・遺伝子組み換え食品に対する、根拠のない漠然とした不安を取り除くのに一役買うのではと思います。しかし器具、設備の点から考えると予算的に難しいのでしょうか。 (医学部)

・私はDNAは本当に万能なんだなと思いました。実験することでDNAを身近に感じ、遺伝子治療などが日常的に行われるのも近いと思います。 (工学部)

・ニュースやテレビの番組等で遺伝子組み換え食品などについて取り上げられることで中高生でDNA に興味を持っている人も少なくないのではないかと考える。適切な管理のもとで実験が行われれば、中高生に良い刺激を与えるのではないかと思う。私自身、高校で生物を学びクローンや遺伝子組換えなどに興味があった。しかし、こういう実験をする機会はなかったため少し羨ましく感じた。興味がある人がその興味を追求できるような場があることはすごくいいことだと思う。 (教育学部)
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 確かに、テレビやニュースでは当たり前のように取り上げられる遺伝子組換え食品について全く学校で教えないというのは問題があると思います。もちろん、レベルに応じた教育が必要だと思いますが、正しい知識が教えられず、ウワサやマスコミ報道のみで伝えられるというのは、一昔前の性教育の様であまり健全な姿ではないと思います。 (コメント by 荒木)

・中学・高校で組換えDNA実験をするのは早い時期から、DNA組換えを身近に感じて、今後入ってくるDNA組換えに関する情報に関心を持つようになるいい機会だと思う。 (薬学部)

・僕は生物を選択していないのでDNA実験をしたことがありません。ですが実験を行い学習する必要はあると思います。早いうちからDNAについて学ぶことで、DNAに興味を持つ人が増えるだろうし、倫理についても学ぶことができると思うからです。 (工学部)

・高校では生物を選択してなかったので、具体的にはどのようなことなのか分かりません。しかし中学・高校の時に組み換えDNA実験に関われることはとても魅力的です。早い内にDNAについて学ぶことで興味,関心が膨らむと思います。正しい知識を得た上で向上心,追究心をもてたらとても素晴らしいと思います。 (工学部)

・私は中学高校と物理を取っていたので、DNAなどの実験などは見たことも行ったこともありませんが、非常に興味があります。DNAだけに限った話ではありませんが、小さい頃からさまざまな問題をとりあげて、扱っていくことは大切なことだと思います。 (工学部)

・自分は中学校や高校などで遺伝子組み換えの実験をやったことがなかったので、そんな体験ができるなんてうらやましいと思った。これからさらに出てくるであろう遺伝子組み換え食品などを身近に考えるきっかけにもなるいい企画だろうと思う。 (薬学部)

・私は、中学・高校生のときにこういう実験を行うことに賛成です。DNAや遺伝子とは何なのか、そして組換えるとはどういうことか、を早くに学べるからです。私は組換え食品なるものが恐いものだと思っていました。意味も分からずに、自分の遺伝子がどうかなってしまうのではないか、のように思っていた気がします。完全に、遺伝子やタンパク質に対する理解が曖昧な証拠です。早くに組換えDNA実験を学ぶことで、DNAや遺伝子というもの、そしてその組換えに対する誤認がなくなると思います。
 ※ゴールデンライスの話がありましたが、糖尿病対策米や花粉症緩和米なども研究されていると聞きました。すごいです。 (薬学部)

・DNAは前に見せていただいた被爆の話にもあったように体にとっての設計図となるものです。その設計図を失えばどうなってしまうのかも、実例を通して知りました。ただ、ハエと人は一見大きさもちがうし、生態系の頂点にたつともいわれるほど、人は高機能にできているのにゲノムはハエのほうがはるかに多かったり… 不思議なことばかりな気がします。私の遺伝子配列のどこかたった一つ違うだけで他の生物になってたのかなと思うと不思議だし大変興味があります。 (薬学部)

・私は、この取り組みはとてもいいことだと思います。中学・高校のときに遺伝子組み換えのちゃんとした知識を学ぶという機会はほとんどないので、とてもいい経験になると思うし、実験まで行えるというのはとても貴重な経験だと思います。 (工学部)

・DNAとは、あまり聞きなれない中学、高校生にとって実に創造しにくいものであるが、現実的には誰にでも必ず身近に存在しており、生物という存在を語る上で重要なキーワード担っていると思われる。そのなかで、実験という(人の気が惹ける)形でそのような存在に触れることができるというのはとても良い方法であるし、受ける側から見ても興味からのDNAに関する学習が可能である。DNAの実験で組み換えを教えることにより、何気なく聞いたことのある"組み換え"に関する誤解の解消、そしてさらなる利点を知るという点はもちろん、実際にどのような食材、物に使われているかを身近なものを交えながら少しずつDNAとは自分とは近いものなんだぁ、と学んでほしいと思う。 (薬学部)

・DNAの組換え実験を中学や高校で行うことは、生徒にとって、生物を始めとする理科に興味を持ってもらういい機会になると思います。実験を行う上で、安全面やその他問題はあると思いますが、知識だけの授業よりも実際に実験をすることで、組換えDNAをより詳しく正確に知ってもらえる気がします。また、生徒自身が組換えDNAについて考えて判断することが出来るようになると思います。高校ではあまり実験はしませんでしたが、小・中学校ではいろいろと実験をさせてもらいました。その中で、道具の使い方を学び、授業に対して積極的になれました。実験を通して学ぶことはたくさんあると思います。 (薬学部)

・私は今まで組み換えDNA実験を授業で行ったことがなかったので、調べてみたところ、パン酵母を利用した組換えDNA実験キットを実際に授業で扱った高校生の感想が載っているサイトを見つけました。そこには『DNAの実験なんてめったに体験できるものでは無いから、とてもうれしかった。』、『遺伝子組換え食品への抵抗が無くなった。』など、実験を通してしか得られないような感想がたくさん載っていました。DNAという言葉はよく耳にするけど、実際にどういうものか具体的に分かっている学生はそんなにいないはずです。しかし、遺伝子組換えの技術はいろいろなところで活用されています。中学、高校での遺伝子組換えDNA実験は私たちの生活に密接に関わっているこの技術がどんなものか知るためのいい機会になると思います。 (教育学部)

・私は中学・高校で組換えDNA実験を行うことに賛成である。
 中学生や高校生には少々高度な実験になり、実験の原理の理解もいにくいかもしれないが、中学・高校のうちに組換えDNA実験を通してDNAへの興味をほんの少しでも持たせることが、これからのゲノム科学の発展を促すことに繋がるのではないかと思います。
 ただ、実験の器具の準備や実験を指導する教員への教育、授業数の調整など、実際に行うには障害が多々あって難しいだろうが。 (工学部)

・DNAの組換え実験ってもっと大掛かりなものだと思っていました。中学ではDNAは名前聞いた事あるかなというくらいだったし、高校では生物選択じゃない人もたくさんいるのでそういう人達がDNAに触れるいい機会になると思います。 (理学部)

・私の中学・高校高校のときは、遺伝子という言葉は知っていたが、それは自分たちの生活からはかけ離れているものであり、まして実験で扱えるものとは全く思っていなかったので、中学生、高校生にDNA実験の機会を設けるのは生徒の刺激にもなり、とても良いことだと感じた。ただ実験に使われる物質についてはかなり慎重にならなければならないと思う。また全国どの学校でも行われるのは少し無理があり、今回の講義のなかであったように大学からの専門の人がいるのが良いと思う。 (薬学部)
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 確かに中学校や高校の先生だけで行うのは無理があるということで、サイエンス・パートナーシップ・プロジェクトという試みが進められています。[ http://spp.jst.go.jp/ ] 私達が天草の本渡東中学校で講義を行っているのも、このプロジェクトのお陰です。 (コメント by 荒木)

・中学・高校における組換えDNA実験についてですが、実際に実験をしている高校を調べてみると、「この実験が高校生にとって生命科学や遺伝子に興味をもつことに役立つ」と思った生徒が全体の87%に上ったということでした。たしかに、安全管理はしっかりしなければならないと思いますが,生徒達の生命科学に対する興味が強くなると思うので,高校や中学校でDNA実験をすることはとても良い試みだと思います。 (文学部)

・中学や高校でDNAの実験を実際にすることがスゴいと思いました。機関長に申し出なければならないとか、いろいろな決まりがあるんだなぁと思った。PCRといい、プラスミドに関する研究を荒木先生はなさってるんだなぁと思った。熊大はAIDSの研究で先駆しているので、日本で有数の実験室を持っていることを知った。中学や高校生で遺伝子や酵素などを考えて実験することは難しいと思うけれど、それを契機に興味を持って、将来の研究や発見につながればと思います! (教育学部)

・最近では、私たちにおいて遺伝子組換えという言葉をよく聞くようになった。しかしそんな中、遺伝子組換えの仕組みまで知っている中学・高校生は少ないと思う。大人でも、その仕組みについて知っている人は多くはいないのではないのだろうか。だから、絶対的な安全性のもと、中学・高校でも組換えDNA実験等を行い、その仕組みについて知っておくべきだと思う。 (工学部)

・中学や高校でたくさんの実験を行い若いうちから多くのことを学ぶことが必要だと思います。 (薬学部)

・遺伝子のことについて、早い時期から触れることができるのは、大変良いことだと思います! (薬学部)

・自分の中高時代の記憶によると、中学ではメンデル遺伝、高校では組換えについて制限酵素やプラスミドといった言葉も交えて授業があった様に思う。実験することでこれらの知識の理解が深まるとは思う。
 しかし同時に遺伝子組換えという技術の怖さというものを生徒に伝えなくてはならない。個人的には非常に面白い分野であると思うし、現代、国際的にもっとも活気のある分野でもあると思うので早い時期からこういった技術に触れておくのはこの国の未来にとっても有意義だと思う。  ただ繰り返しになるが(これはあらゆる知識についても当てはまると思うが)技術を教えるなら、その危険性についても教えねばならない。 (医学部)

・これから、遺伝子技術がますます発達する社会を生きる上で、遺伝子について知識を身につけることは、あらゆる分野において有益なことだと思います。そして学習の一環として実験を取り入れるのも、とても良い方法だと考えられます。ただ、私も高校の時に大腸菌の実験をしたのですが、その時は大半の人が生物選択者にもかかわらず、その実験の意味や仕組みを理解していない、といった状態でした。
 遺伝子を学ぶ方法として実験は有効な方法かも知れませんが、前提として、十分な事前学習をとり、実験の概要や手順だけでなく、なぜこの実験をするのか、遺伝子を学ぶのか、といった目的を生徒に意識させる必要があるように感じました。 (薬学部)
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 貴重なアドバイス、ありがとうございます。 (コメント by 荒木)

・将来の社会、特に食糧自給率の低い日本では、遺伝子組換え食品などに関わっていく可能性はあります。だから、早いうちから興味を持っておくことは必要だと思います。 (工学部)

・僕自身、高校生の時に生物の授業の一環としてDNAを使った実験を行いました。遠心分離機や、電気泳動装置などといった珍しい機械を実際に扱い、すごく楽しかったことを記憶しています。  日本は、最先端の分野の技術の研究については、欧米などに遅れを取れをとってしまいがちな印象があります。いくつかある原因の一つとして、中高生に対する専門分野の初期教育の不備を考えます。
 遺伝子について完璧に理解させることは無理にしても、実験を楽しんでもらうことを通してこの分野に関心を持ってもらうことは、将来有能な科学者をつくり出すための大きな原動力になるのではないでしょうか。
 そういった点で、DNA実験を積極的に授業の中に取り入れることは重要であると思います。 (薬学部)

・遺伝子組換えには倫理的な問題もあるかもしれないが、食料不足などの問題を考えると、早くから遺伝子組換えなどに興味を持つことも必要になると思います。 (工学部)

・現在、組換えDNA技術はわれわれの生活を支える重要な技術となっている。各産業に大きな影響をもつ技術ではあるが、この技術に直接携わらない人にとってはなじみのないものである。そこで、技術が浸透している割に具体的な姿が知られていないというこのギャップを埋めるために、中学や高校で組換えDNA実験を授業の一環として行うのがよいと考える。 (医学部)

・アメリカは日本と違って専門科目を重視する傾向がある。なので各分野でスペシャリストを輩出しやすい。私は日本もそういう風になって欲しいので、中学や高校の時から、遺伝子組換えなど専門分野の深い内容の実験をもっとして欲しい。 (工学部)

・中学、高校の理科の実験でDNAを扱うことができるようになったことに驚きました。これも科学の進歩だと思います。大腸菌のコロニーの観察や遺伝子と病気の関係など、とても興味深い内容ばかりだと思いました。 (工学部)

・DNA組換え技術は医療などの分野に既に使われている。例えば糖尿病患者の治療に使われるインシュリンなどの物質を手軽に作ることができる、有用な技術だ。医療に詳しくない人達は組み換えDNAと聞いて頭から拒否するよりも、現在この技術が欠かせないものだと知って欲しい。 (医学部)
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 『医療に詳しくない人達は組み換えDNAと聞いて頭から拒否するよりも、現在この技術が欠かせないものだと知って欲しい』という意見に賛成です。 (コメント by 荒木)

・まず中学・高校で組換えDNA実験が行われていることに驚いた。私はDNA実験は非常に高度な技術を要するもので、科学者などしか行えないと思っていたので、そんな身近で行われているとは思わなかった。正直私も中学高校の時にこのような実験ができたら良かったと思うが、このような実験を行う際は、DNAの重要性、組換え実験の危険性を十分理解した上で行ってほしい。 (工学部)

・私は高校のころには生物を選択してなかったため、DNA組換え実験を経験したことはないが、早いうちから学べることは、とても良いことだと思う。早いうちから学ぶことで医療に興味をもち、将来につながることもあると思う。 (工学部)

反対(8人)

・自分は中学・高校でのDNAの実験はすごく危険だと思います。それは十代の前半からこのような実験を行うと、「科学は何でもできる」という錯覚が生まれることを危惧しています。また、最も危惧しているのは、まじめに宗教を信仰している人々への影響です。DNAの実験により、神が存在しないことがはっきりと学ぶことにより、信仰者への差別や偏見が生まれてしまい、信仰ができなくなってしまうのではないかと思います。DNAの実験を中学生、高校生のときにする場合、同時に信仰すること、また宗教について、勉強しなければ、最終的には生命倫理が次第に薄れていき、科学が暴走するのを抑止する人がいなくなることを最も心配しています。 (薬学部)
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 貴重なご意見、ありがとうございます。そういう考え方もあるということを覚えておきます。(コメント by 荒木)

・中学高校における組換えDNA実験は画期的であり一部の生徒には有益なものになると思う。しかし遺伝子の知識が十分でない生徒にとっては楽しい実験の1つという感想で終わってしまう。そしてさらに問題なのはこの実験を生徒が生命の操作という観点で見れないかもしれないということである。「遺伝子組換えが自分にも簡単にできてしまう」という感想は生徒の中で無意識に歪んだ生命倫理観を育ててしまうのではないだろうか。作業は中学高校でできるくらい簡単であっても、内容は人間がたどり着いてしまった生命操作の領域であると受身の実験から認識することができるのだろうか。生命操作実験が興味を持たせるためという安易な理由だとしたら私は恐ろしさを感じる。 (薬学部)
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 興味深いご指摘ありがとうございます。大腸菌を扱う実験では、私自身も「生命操作」という実感はあまりないのですが、言われていることはもっともだと思います。単細胞生物である大腸菌にも確かに「生命」がある訳で、それを人間が「操作」しているのは事実です。しかしながら、「生命」を「操作」しているのは遺伝子組換え実験に限ったことではありません。小学生が昆虫採集をするのも、養鶏場でニワトリを飼っているのも生命操作の一種だと思います。ヒトを含めて生物は他の生物の「生命」に影響を及ぼさずに生きることは不可能だと思います。私達が食べている物は、そのほとんどが生き物由来です。 (コメント by 荒木)

・私は中学高校からこのような実験を行うことに反対である。
 はっきりいって、日本人の理科への関心の低さは「異常」である。※
 なぜこのような結果になったのか、私は体験を踏まえて考えると「幼いころに憧れた技術と自らが習っていることとのあまりの違い」にあるのではないかと思う。
 たとえ、遺伝子組換え実験の授業を行ったとしても、将来あんなことをしてみたいと、そのときは思うだろうが高校や大学の受験では難解な化学式や用語をただ詰め込むだけの授業が待っているだけである。このような授業が楽しいわけがない。いっときの喜びはその後の苦しさに転嫁してしまうのである。
 良いイメージ作りを低年齢から行うことはひとつのメリットだと思うが、実際、大腸菌を光らせて絵を書く時は楽しんでいる子供達も、その説明を受けているときは、はたして理解し、集中して聞いているのだろうか。私はそうは思えない。
 極論をいうならば、大腸菌を光らせて絵を書いて、どうするのだろう。実際の授業とは全く関係のないことなのだから、授業計画も見直さねばならず、ただでさえ少ない時間を実験に割くこと、実験を行う教師の育成にかかる諸費用、安全対策の徹底への苦労などを勘案しても、到底中学高校からこのような実験をしている時間はないと考える。特に、高校の時など大学進学をする生徒にしか遺伝子組換え技術は必要のないと思われるが、受験勉強に追われる高校生に実験の為に数時間時間を割くのは現在の、いわゆる「受験競争」によって1分でも授業や演習を行いたい高校側の意向に沿わないであろう。さらに、最初からこの技術に全く興味ない生徒がいることも忘れてはならない。
 たしかに、DNAに関する実験をすることにもメリットは多々あるし、理想としてはこのような実験をどんどん行うことは望ましいと考える。が、現実問題として、実験を行うより、もっと効率的な方法(ビデオでの紹介、課外での自由参加型での実験の実施等、デメリットがあまり大きくない方法)も模索していくべきだと考える。
<※:毎日新聞2007年12月5日記事 国際学力調査:「理科に関心」最下位数学的活用力も低下より> (工学部)
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 立派なレポートだと思います。でも反論したいことはいっぱいあります。ひとつだけ挙げると、日本人の理科への関心の低さが異常なほどである原因のひとつは「受験戦争」だと思います。それなのに「受験戦争」を前提にして、高校や大学での詰め込み授業を前提にして、中学高校での実験の重要性を否定するのは納得出来ません。また、実験を行うことは、理科への関心を高める上でビデオを見せるよりも効率的だと思います。 (コメント by 荒木)

・私は中学や高校での遺伝子組換えは少し困難なのではないかと考えます。遺伝子組換えをするためには勿論そのための機械が必要です。機械のような設備面の問題だけでなく、危険性もあると思います。遺伝子組換えした動植物や食品を外界へと出してしまう可能性が大いに中高では有り得るからです。中高生は組換えが駄目と言ってしまうのはいけないと思うが大学や研究所に入ってからする事がやはり最善であると思います。 (工学部)
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 良く書けていると思います。ただし『遺伝子組換えした動植物』と、それを原料として製造された『食品』との間には大きなギャップがあります。『食品』(加工品であって、生物が残存していないもの)そのものは外界に出ても特に害はありません。その辺も誤解している人が多いと思います。 (コメント by 荒木)

・中学生や高校生に遺伝子実験を勉強させるのは難しいことだろうと思った。高校のころ生物で遺伝子について習ってとても難しく感じたので、中学生はもっと難しいだろうと思った。 (教育学部)

・小中高校での遺伝子の組換え実験についてですが行うことに賛成です。まず、新しいものに触れることによって見識が広まりますし、次に話題になっている遺伝子組み換えの実状について知ることができるからです。将来を決めることなどに対する判断材料になりますし、実状を知ることで遺伝子組換えに関しての捉え方が見近になり変化すると思うからです。 (工学部)

・今回の授業で中学校で遺伝子組換え実験がおこなわれているのに驚いた。中学校からそのような分野に興味を持つ事はいいことだと思うが、何か事故が起こるのではと心配になった。 (工学部)

・私はまず中学・高校でDNA実験をしていることを知らなかったので驚きました。私は遺伝子のことをあまり聞いたことがないので中学・高校のときに実験を行うことで、興味をもっていたかもしれないと思った。
 しかし実験をするときは遺伝子組換え生物が自然へ放出しないようにしないと自然のバランスを崩すかもしれないので、そんなことがないように安全にしてほしいと思いました。 (工学部)


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