2004年度 教養科目
I 自然と情報  生命科学G
−−夢の技術PCR−−

熊本大学
生命資源研究・支援センター
バイオ情報分野
荒木 正健
熊本市本荘2−2−1
Tel : (096) 373-6501, FAX : (096)373-6502
2005年 7月18日更新


2004年度期末テスト

 2004年度の期末テストを2005年2月9日(水)に行いました。ホームページへの掲載について本人の同意を得ています。大変遅くなりましたが、昨年に引き続き公開します。なお、今回は、この講義に対する評価及びアドバイスも公開することにしました。

回答集
<問1について>
<問2について>
<問3について>
<この講義について>

======= 生命科学G 2004年度 定期試験 =======

(問 題)

 下記ニュースA〜Cを読んで、設問に答えて下さい。

(A)ルーマニア、66歳の女性が世界最高齢出産[2005年1月16日(ロイター)]  ルーマニアで16日、66歳の女性が長年の不妊治療の結果、女児を出産した。妊娠は体外受精(注1)で、今回が3回目の試みだった。ルーマニアのメディアは世界最高齢出産と報じている。出産を果たしたのは、大学教授で児童書の執筆も手がけるアドリアナ・イリエスクさん。双子を妊娠したが、1人が子宮内で死亡したことから、医師団は妊娠33週目でもう1人を帝王切開で取り出すことを決定した。ブカレストの産院の担当医師は記者会見で「子供の肺が完全な形となる34週目まで待ちたかったが、15日に1人の女児の心臓が停止したため、2番目の子を救うために手術を決断した」と語った。女児の体重は1.4キロで、母子ともに容体は安定しているという。女児はエリザ・マリアと名付けられ、体重が2キロに達するまで、最高6週間の入院が必要。

(B)「卵子提供が必要」な不妊女性、45%の治療施設に[2005年1月23日(Yomiuri On Line)]  第三者から卵子の提供を受けないと妊娠できない女性患者を抱える不妊治療施設数が、全体の45%あることが日本産科婦人科学会による全国調査で初めて明らかになった。第三者の精子提供による人工授精(注2)は50年以上前から実施されているが、卵子や受精卵の提供は同学会が禁止している。調査は、不妊治療を行う医療機関のうち治療成績を同学会に申告している229施設が対象。このうち173施設が、2002年の1年間に卵子や精子、受精卵の提供が必要とみられた患者数を回答した。その結果、回答した施設のうち45%にあたる78施設で、卵子提供が必要な女性患者が1人以上いた。このうち、患者が「1 5人いる」と答えたのは57施設。また、「6 10人」「11 20人」は各8施設、「21 50人」が5施設あった。一方、精子提供が必要な患者は「1 5人」が52施設、「6 10人」が15施設、「101人以上」が1施設あった。不妊原因の違いで対応が分かれることは以前から問題視されており、1998年には、長野県の医師が近親者の卵子提供で体外受精を行ったと発表し、波紋を広げた。これに対し、厚生労働省の審議会は2003年、第三者からの卵子提供を条件付きで認めたが、法的裏付けとなる新法制定の見通しはいまも不透明だ。

(C)体外受精児10万人超える、02年は出生数の1.3%[2005年1月27日(共同通信)]  国内で体外受精によって生まれた子供は、2002年は1万5223人(前年比15.7%増)で、日本産科婦人科学会が調査を始めた1986年以来の累計が10万189人に達したことが27日、分かった。02年は出生数(約115万人)の1.3%に当たる。調査を担当した東邦大産婦人科の久保春海教授は「実施施設の増加や、治療に対する助成を行う自治体が増えてきたためとみられる。今後も出生児は増加するだろう」と話している。普及に伴い、多胎や未熟児の増加のほか、学会の倫理規定を守っていない施設があるなどの問題点も指摘されており、医療の質の確保が課題となる。

(注1)体外受精;採卵された卵(通常、複数)に培養液中で精子を加え
    受精させる過程。従って胚となった受精卵を子宮内に移植し、
    分娩を期待する。IVF (in vitro fertilization)。
(注2)人工授精;性交以外の方法で精液を膣内に注入すること。
    AI (artificial insemination)。

(問1)66歳の女性は、健康な男女から精子と卵子の提供を受けて体外受精を行い、妊娠しました。つまり、一般的には「代理母」と呼ばれるケースであり、遺伝学的には親子関係とは認められません。(A)のニュースを聞いて、あなたはどう思いますか?。

(問2)日本では、第三者からの精子提供は行われていますが、卵子や受精卵の提供は認められていません。つまり(A)のニュースの様なケースは考えられません。しかしながら、世界的には精子バンクと同様に卵子バンクも存在します。「デザイナー・チャイルド」という言葉も、SFの世界から現実の世界に飛び出してきました。日本で出来ない小児の臓器移植を海外で行う人がいる様に、子供を作るために海外へ行く人が今後現れる(増加する?)可能性もあります。(B)のニュースを聞いて、あなたはどう思いますか?。

(問3)古くから伝えられている「子供は神様からの授かり物」という考え方と、「生殖医療」は、かなり異質です。「体外受精」に関する技術も、自力で泳げない精子を針で卵子に注入する「顕微受精」、卵子や受精卵の凍結保存法、卵割した1個の割球からDNAを抽出してPCRを行う「着床前遺伝子診断」など、飛躍的に進歩しています。(C)のニュースを聞いて、あなたはどう思いますか?。

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<問1について>
<問2について>
<問3について>
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