2005年度 教養科目
I 自然と情報  最前線の生命科学C
−−夢の技術PCR−−

熊本大学
生命資源研究・支援センター
バイオ情報分野
荒木 正健
熊本市本荘2−2−1
Tel : (096) 373-6501, FAX : (096)373-6502
2006年12月28日


2005年度期末テスト

[回答集]
<問3について>

(問3)今回の研究成果はねつ造だった訳ですが、仮に『Therapeutic cloning』の技術が確立し、再生医療の一般的な手法になった世界を想像して下さい。当然ながら、ヒトの卵子が大量に必要になり、『体外受精治療の余剰卵』では不足すると考えられます。もしかしたらヒトの卵子が売買されるかも知れません。(C)のニュースを聞いて、あなたはどう思いますか?

・私は他の授業で、「日本は研究のために、中国で死刑になった人の臓器を買い上げている」という話をききました。それが本当のことかどうなのか、情報が少ないためまだ確認できていないのですが、それが事実だとすると、ヒトの卵子の売買はもしかすると案外普通に社会に広まってしまうかも知れないな、と思いました。臓器を売買するのは大変ですが、卵子は毎月排卵されてしまい、必要になる時の方が少ないと思うので、むしろ手軽な人助け感覚で売買できてしまうかも知れません。ただ、「女性の尊厳」を考えると、卵子の売買というのは、売・買春にも似た不快感をともないます。女性としての自分の体を守る気持ちがあるので、私はしたくないです。(文学部)

・実際に金銭がからんでいたことは確かなように思われる。前に、金銭トラブルに巻き込まれた人は最終的に臓器を売るという話を聞いたことがある。こうなると、いったい命とか幸せとか何であるのか分からなくなる。人の幸せ=長寿であるのだろうか。お金があることが幸せなのか。もしも、人の卵子が売買されることになったら、犠牲となるのは女性であると思う。(教育学部)

・もし、そのような世界になったら必ず人の卵子の売買が行われるようになると思う。しかもそれは、若い人(中学生、高校生)がお金欲しさに卵子を売ったりするのではないかという気がします。しかし、簡単に卵子を売買するのは倫理的に命を売買しているのとあまり変わらない気がします。だけど、その卵子のおかげで助かる人もでてくると思うから、完全に悪いことだとは言いきれないと思います。(工学部)

・真っ先に思い付いたのは、臓器売買の問題です。以前、新聞記事で、貧しい地域で子どもを誘拐し、臓器を売買したとして逮捕された団体がいたとの報道がなされていました。これと同じく、(まだ未受精卵であるのは分かるのですが)貧困地域から金銭と引き換えに卵子販売を行う女性が増えるてしまうのは、法で指摘されている通り、倫理上許されることではないと思います。(文学部)

・当事者間の同意があれば売買を禁止する必要はないと思う。もし自分の卵子が研究に役立ち、その上お金までもらえるなら私なら売買すると思うからだ。しかし、売買に関する法制度の整備は必要だと思う。(法学部)

・恐らく再生医療が一般的になるとこの問題は、必ず起こるだろう。卵子目的で殺人が起こるかも知れない人間は技術が進歩しても未熟な部分が多い。やはり、法律を定め取り締まっていくしか方法はないと思う。再生医療は素晴らしいメリットがあるけれど、それに伴う問題も忘れてはいけない。しっかり決まり事を守ってこそ本当に意味があるので利益最優先にならなければいいが、難しい問題だ。(医学部)

・何かのテレビ番組で、貧しい国に住む貧しい少女が、自分の血液を売ってお金をもらっている場面を見て、「これはいけない」と感じました。設問の仮定が現実となったら、貧困国の女性が、お金のために自分の卵子を売る、という悲しい事態が生じてしまうかも知れません。(文学部)

・技術には賛成ですが売買には反対です。医療の提供は善意であるべきではないでしょうか。私は献血をしたことがありますが、お金をもらいたいとは思わないし、自分がけがをした時に使われたりするだろうから、「困ったときはお互い様」という気持ちが大事と思います。
 卵子提供も献血や臓器移植と同じように、金銭的な目的でやるべきではないと思います。卵子であれ体の一部であり、人としてそれをお金に換えるのは良くないと思います。(法学部)

・人々は、何にでも金に結びつけようとします。今や腎臓などの臓器も悲しいことに、お金で買われています。今後、卵子が売買されるのも時間の問題であると思います。華やかな成功の裏には、何らかのリスクも共についてくる時代です。私たちがどんなに反対だと主張しても、お金につられる人々を止めることができないのがとても悲しいです。そういう世の中になってしまったのだと私は半分あきらめています。(医学部)

・卵子を売買の対象とすることを考えると、道徳的に間違っていると答えると思います。だけど、その目的が人間の命の保全となると、話は変わるような気がします。誰かの命を救えるなら、自分には必要のない卵子を他者に譲ることは、絶対的に否定されることではないと思います。ただ、この考えは、このようなことが善意の上で成立することを前提としていて、現実には、これから生まれる悪意に関して考えなければいけないと思います。(法学部)

・売血行為が禁止されている点から考えても、卵子に限らず人体に関わるものにお金が関係するのはよくないことだと考えます。ただ、一番いいのは献血、臓器のドナーのように無償での提供を募ることでしょうが、無償にした場合せっかく技術があっても現在のように提供者不足におちいることは目に見えています。その点を考えると、金銭が関わるのも仕方のないことなのではないかと思います。(文学部)

・人体の売買はあってはいけないと思います。人体の売買により卵子が手に入りやすくなったとしても、その裏では、「排卵誘発剤」を意図的に大量に投与し、体を壊したり、子供を産めなくなる体になる人が出てくるかもしれません。
 人の体を壊してまで人体の売買をし、その上に医療が成り立つという構図は本来の医療とは逸脱しており、そのようなものは医療とは呼べないと思います。(理学部)

・大げさに言うと生命の売買になる気がします。もし自分の家族の病気の治療に必要なら卵子を提供だろうが売買だろうがしたいと思うでしょうが、触れてはならない聖域とも言えるような部分が世間で当たり前に売買されることは、想像すると恐ろしいです。(教育学部)

・仮にも、将来「一人の人間」になるであろうモノを、そう易々と金で売買していいものかなぁと私の中にいる良心的な私が言っています。ただ、昔は(今でもされているでしょうが)人も売り買いされていましたし、今では臓器もお金で売り買いされてしまう時代です。いつか、ヒトの卵子も売買される時が来ると私は思います。しかし、わたしは、仮にそういう時代が来ても、私の大事な”半分”を、お金のために売りたくはないです。(文学部)

・上の質問(問2)で卵子提供もありだと述べたが、売買となるとちょっと許せない行為になる。卵子が足りないから卵子を売買するなんてことは、してはいけないと思う。これは完全に生命をモノとして考えていると思うからである。生命に値段なんてつけられないし、もし売買が始まったりしたら歯止めが効かなくなることも予想される。黄教授が、もし本当に卵巣提供を強制していたとしたら、考えられない。医療にたずさわる人なら、もう一度「生命は何か」を考えて欲しい。(工学部)

・そもそも『体外受精治療の余剰卵』をあてにしている点が、これらの研究の障壁であると考える。研究コストが高く、研究環境が恵まれていなければ全く研究は進まない。コストは金銭の問題だけではなく、実験が失敗すればそれだけ“ヒトの生命”が無駄になるという点も重要である。非常に難しいとは思うが、ヒトの卵子を培養するという技術が完成すれば、この問題は解決するのでは?(医学部)

・倫理的なあやまちがおきないようにするには、金銭による取引を認めるのは難しい。お金に困って自分の臓器を売るという行為は一般的にするには危険すぎると思う。これをさけるにはあくまで献血と同じようにボランティアで募るようにしなければならないが、手間、危険性が献血と比べようもないため、十分量は決して集まらない、それを広告などを通していかにアピールするかが重要だと思う。(医学部)

・ヒトの卵子は売買されるべきではないと考える。提供する側もされる側も、卵子提供は献血と同じような概念を持って行動していかなければならない。そうでなければ、臓器売買のように貧困層が、お金を得たいがために、体の悪影響を無視して、(あるいは、体への悪影響の知識がないまま)卵子提供を繰り返してしまう可能性があるからだ。(薬学部)

・とても難しい問題だと思う。倫理的な問題からジェンダー的な問題まで多岐に渡るんじゃないかと感じる。臓器の切り売りに賛成か反対か、という質問に似て、いる。私は、やはり売買には反対である。ドナー制の方が好ましいと思う。しかし、ドナー制よりも金銭売買を行う形の方が多くの卵子が確保でき、助かる人が多いかも知れないと考えると、現実のジレンマとキレイごとだけではない何かが顔をのぞかせてくると思う。(法学部)

・今回の研究が捏造でなく再生医療の一般的手法になっていたらそれは素晴らしいことだと思うけれどもヒトの卵子が売買されることについては反対です。やはりヒトの卵子というものはそのような扱いをするようなものではないと思うし、他にも関連して問題が発生するような気がします。(理学部)

・病気で苦しんでいる人を救うためと考えるとやむをえない事だという気がしますが、その場合は「法」などでしっかりと基準を作って理想論ではあるけれども「金銭目的」ではなく「本当に苦しんでいる人を救いたい」という気持ちを持っている人の協力があるといいと思います。正直金銭を使った取引はしてほしくないし、社会的に大きな問題になると思うので、してほしいとは思いません。(理学部)

・難しい問題である。しかし、技術が開発されれば必ずいつか誰かがそれを使うようになるのだから、国が先んじて対策法を整備するべきである。(例えば○○病と○○病にしかTherapeutic Cloningは使ったらいけない、それを破った場合罰金○○円以下叉は懲役○○年、など)(医学部)

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[問題]
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<問1について>
<問2について>
<問3について>
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