GTC On Line News No.799

2007年 3月 5日


=== 遺伝子組換え生物等規制法について・Part20 ===
 〜〜〜 遺伝子組換えマウスの逃亡事件について 〜〜〜
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 先週金曜日(平成19年3月2日)、遺伝子組換えマウスの逃亡事件のニュースが 流れました。

遺伝子組み換えマウスが逃亡 成田空港で(asahi.com)
http://news.goo.ne.jp/article/asahi/nation/k2007030203300.html
遺伝子組み換えマウス、一時逃走ノ成田空港で1月(YOMIURI ONLINE)
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/life/20070302i216-yol.html?C=S

 この事件に関して、文部科学省の報道発表がホームページに掲載されていますので お知らせします。

遺伝子組換え生物等の不適切な使用等についての厳重注意について(文部科学省)
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/19/03/07030113.htm

 以下にホームページに掲載された報道発表の内容を転記します。遺伝子組み換えマ ウスの取扱いに関して、これを機会にさらに御留意戴ければと思います。

<遺伝子組換え生物等の不適切な使用等についての厳重注意について>
         平成19年3月2日 文部科学省
 この度、財団法人実験動物中央研究所において遺伝子組換え生物等の不適切な使用 等があり、文部科学省として同法人に対し厳重に注意しましたので、お知らせしま す。

1.文部科学省においては、「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様 性の確保に関する法律」(平成15年法律第97号。以下「法」という。)に基づく適切 な措置を執らずに遺伝子組換え生物等の使用等を行っていた、財 団法人実験動物中 央研究所(以下「実中研」という。)に対し、その経緯等について法第30条に基づき 報告を求めてきたところ、別添1のとおり経緯、原因及び再発防止策が取りまとめら れました。

2.文部科学省では、実中研に対する現地調査等により、
  (1)法に基づく適切な措置を執らずに遺伝子組換えマウスを運搬したことから、
     当該マウスの一時的な逃亡があったこと、
  (2)当該マウスは速やかに全頭回収・不活化されたこと、
  (3)逃亡の間の生物多様性及びヒトへの安全性は極めて高いこと、を確認して います(別添2)。

3.文部科学省では、実中研に対し、再発防止のための措置を徹底するよう文書で厳 重に注意するとともに、今後一定期間、再発防止のための措置が適正に履行されてい るかについて報告させることとしています。

4.さらに、関係機関に対し、同様の事態が起こらぬよう、周知を行っていくことと しています。

<別添1;財団法人実験動物中央研究所より提出された経緯、原因及び再発防 止策 の概要>

1.経緯
(1)平成19年1月23日、輸出のため、遺伝子組換えマウス40匹を5匹ずつ計8箱の動物 輸送箱に梱包し、成田空港に運搬した。成田空港到着後、当該マウスは保管のため動 物室に搬入された。
(2)平成19年1月24日、飛行機への積み込みのため、動物輸送箱が動物室から輸出エ リアへ搬入された後、動物室においてマウス1匹が発見・捕獲された。また、動物輸 送箱に穴が開いていることが確認されたため、捕獲されたマウスを箱に戻した上で、 ガムテープによる応急処置が講じられた。その後、速やかに財団法人実験動物中央研 究所(以下「実中研」という。)に全ての動物輸送箱が戻され、殺処分の上、匹数を 確認したところ、実中研から搬出した遺伝子組換えマウスと同数(40匹)であった。

2.原因
 遺伝子組換えマウスの輸出に用いている動物輸送箱は、本来であれば、上面に金網 状の内蓋を設置する必要があったが、この内蓋の設置を作業員が失念したため、当該 マウスが内側から動物輸送箱を食い破ったことによる。この原因としては以下の通り である。
  (1)動物輸送箱の組立に当たっては、経験者からの伝承によりその習得が行わ れており、
     作業手順書が現場で十分に活用されてないこと
  (2)作業手順書が、人為的なミスの排除に効果的なチェックリスト形式になっ ていないこと
  (3)動物輸送箱が、外部からの確認が困難である内蓋の設置を必要としている こと
  (4)作業に対する教育訓練が不十分であったこと

3.再発防止策
  (1)作業手順書を改訂し、各工程毎にチェックシートを設け、作業員がチェッ クを入れながら
     作業を行うこととする。また、作業工程を複数人で行うことにより、相互 監視の下で作業
     を実施することとする。
  (2)内蓋の設置を必要としない、上面に金網を貼り付けた様式の動物輸送箱を 採用することとする。
  (3)所内関係者に対し、教育訓練を定期的に開催することとする。

<別添2;文部科学省の対応の概要>
 文部科学省では、事態発覚後、速やかに成田空港及び財団法人実験動物中央研究所 (以下「実中研」という。)に職員を派遣し、事実関係の調査を行うとともに、事実 関係の調査後、再度、実中研に職員を派遣し、生物多様性への影響等について調査を 実施してきました。これらの調査により確認した事項の概要は以下の通りです。

1.逃亡の事実
    一匹のマウスが動物室で捕獲されたことから、逃亡の事実があったことを確 認した。

2.全頭回収の事実
  (1)回収・殺処分したマウス40匹に対し、実中研において遺伝子解析を行った ところ、
     全てのマウスが、実中研から搬出した遺伝子組換えマウスに特異的な遺伝 子パター
     ンを有してること、
  (2)成田空港における保管時に、実中研から搬出された遺伝子組換えマウスと 同タイプ
     のマウスは保管されていなかったこと、
  から、実中研から搬出された全ての遺伝子組換えマウスは回収されたことを確認 した。

3.遺伝子組換えマウスによる生物多様性及びヒトへの影響
 (A)生物多様性への影響
  (1)遺伝子組換えマウス(今回の遺伝子組換えマウスの特性については参考 3)が保管
     されていた間、保管庫に他のマウスの保管はなかったことから、当該マウ スが一時
     的に逃亡していた間に、交尾のおそれがないこと、
  (2)万一交尾したとしても、全ての遺伝子組換えマウスはメスであり、全頭回 収・不活
     化されていることから、子孫を残すおそれがないこと、
  により、生物多様性への影響はないと考えられる。

 (B)ヒトへの影響
  (1)今回の遺伝子組換えマウスは、通常のマウスに比較して免疫機能を著しく 低下させ
     たものであり、そもそもヒトの病原体を体内に有していないこと、
  (2)今回の遺伝子組換えマウスは、人為的にヒトの細胞を移植した上でヒトの 病気を感
     染させない限り、ヒトの病気に感染することはないため、ヒトへ病気を感 染させる
     ことはないこと、
  により、ヒトへの影響はないものと考えられることを確認した。

<参考3;今回の遺伝子組換えマウスの特性>
 今回財団法人実験動物中央研究所が運搬した遺伝子組換えマウスは、免疫機能をつ かさどる重要な細胞を欠損させたマウスであり、通常、NOGマウスと呼ばれている。
 NOGマウスは、免疫機構を変化させることにより、免疫力が非常に低く、
  (1)マウスの病気にかかりやすく、人為的に作られた清浄空間(SPF条件)で のみ生育が可能、
  (2)異種(ヒトなど)の細胞・組織を移植しても拒絶が極めて少ない、
 という特徴を有する。
 こうしたことから、例えばヒトの細胞を移植した後、ヒトの病気(成人T細胞白血 病など)を細胞に感染させ、その病気についての研究を行う際などに利用されてい る。