第4回 KBRP セミナー

「マウス凍結受精卵を用いたゲノム編集個体の作製 〜超過剰排卵誘起法による体外受精卵の利用〜」 

  熊本大学 生命資源研究・支援センター 資源開発分野 特任助教 中川 佳子

 現在、遺伝子改変マウスを利用した研究は世界中で行われており、効率的な遺伝子改変マウスの作製は、各研究機関において重要な課題である。私達はこれまでに体外受精により作製した凍結融解受精卵を用いて、TALENやCRISPR-Casシステムによる効率的な遺伝子破壊マウスの作製が可能であることを報告した(Nakagawa et al., 2014、2015)。昨年は、インヒビン抗血清とウマ絨毛性ゴナドトロピンを同時投与することにより、1匹の雌マウスからより多くの卵を採取することが可能な超過剰排卵誘起法(Takeo and Nakagata, 2015)を用いて体外受精を行い、作製した凍結受精卵とCRISPR-Casシステムを利用した遺伝子破壊マウスの作製が可能であることを報告した。しかしながら、gRNAとCas9を発現するプラスミドベクターと近交系マウスであるC57BL/6の受精卵を用いて遺伝子破壊マウスを作製する際には、産子への低発生率が問題であった。そこで、合成gRNAとCas9タンパク質を用いた遺伝子破壊マウスの作製を試みたところ、産子への発生率が改善され、変異導入効率も良好であった。さらに、1本鎖オリゴヌクレオチドとCRISPR-Casシステムを用いたゲノム編集個体の作製も可能であった(Nakagawa et al., 2016)。これらのことから、超過剰排卵誘起法による体外受精由来の凍結受精卵は、様々なゲノム編集個体作製においても利用可能であり、生殖工学技術を活用した遺伝子改変マウスの作製は、実験動物の福祉や作業効率化において有用な方法であると考える。