第3回 KBRP ワークショップ

「マウス始原生殖細胞から卵を産生する新規in vitro系の確立とその応用に向けて」 

東京農業大学 バイオサイエンス学科 動物発生工学研究室 教授 尾畑 やよい 

 始原生殖細胞(Primordial germ cells; PGCs)から成熟卵を産生するin vitro系の確立は、雌の生殖資源の有効活用や、卵子形成機構を解明するツールとして役立てられることが期待される。これまでにマウスでは、新生仔あるいは幼齢個体の卵巣内に存在する未熟な卵母細胞から卵巣培養や卵胞培養を経て成熟卵を産生するin vitro系は確立されていた。しかし、胎仔のPGCsから成熟卵を産生するin vitro系は、多くの研究者の試行錯誤にもよらずなかなか確立されてこなかった。PGCsからin vitroで育てた卵(様細胞)は、サイズの増加は認められるものの減数分裂を完了できない、受精能がない、あるいは産仔への発生能(全能性)を持たないなど、成熟卵としての機能を著しく損なっていた。我々の研究グループは、その主要因が、in vitroにおける卵胞形成不全にあると考えた。また、体細胞分裂を行わない卵母細胞を長期間に及んで培養するための至適条件の検討が必要と考えた。

 我々の解析と検討の結果、in vitroにおける卵胞形成不全はエストロジェン受容体を阻害することで克服された。また、1ヶ月を超える長期培養を至適化することによって、減数分裂、卵成長、ゲノムインプリンティング、全能性獲得など、PGCから成熟卵が発生・分化するプログラムを完了することが証明された。本ワークショップでその詳細を紹介させて頂く。