第14回生命資源研究・支援センターシンポジウム

「細胞内小胞輸送に関わるVPS52タンパク質複合体の発生制御因子としての役割」 

  熊本大学 生命資源研究・支援センター 発生遺伝分野 杉本 道彦 先生

 哺乳類では発生過程において様々な細胞間相互作用によって複雑な組織・器官が形成されていく。哺乳類の発生を制御する新たなメカニズムを解明するうえで、胚性致死の表現型を現す変異マウスを解析することは、ゲノム情報が整備された現状においても非常に有効なアプローチである。

 かつてニューヨークで捕獲された野生マウスより発見された胚性致死変異tw5は、ホモになると着床直後にエピブラストの発達不全により致死になることが知られていた。そこで初期発生を制御する新規遺伝子の発見を期待して、tw5の責任遺伝子の同定を行ったところ、哺乳類での機能が全くわかっていないVacuolar Protein Sorting 52 (Vps52)であることを突き止めた。そして、VPS52は細胞間相互作用を介して哺乳類初期発生を制御する役割を担っていることを示唆する結果が得られた。酵母を用いた研究よりVps52は細胞内での逆行輸送に関わると推定されていたが、発生制御に関わっていることは全く想定されていなかった。VPS52タンパク質は機能ドメインなども全くわかっておらず、また結合因子も完全には解明されていなかったので、哺乳類においてVPS52と結合する新規因子の探索を行ったところ、既知の結合因子(VPS51, VPS53, VPS54)に加え、VPS52と強く結合する因子としてCoiled-Coil Domain Containing 132 (CCDC132)、弱く結合する因子としてTumor-Suppressing Subtransferable Candidate 1 (TSSC1)が検出された。新規に同定された因子も含め、VPS52と結合するタンパク質をコードするすべての遺伝子の変異マウスを用いて表現型解析を行ったところ、予備実験の段階ではあるが、いずれも胚性致死であるものの、その時期に大きな差があることが判明した。この結果は、VPS52タンパク質複合体は、VPS52をコアとして、目的に応じて結合因子を変換することで時期・組織特異的に役割を変化させることを示唆している。

 本講演では、未発表データも含めこれまでに得られた研究成果を紹介する。