第14回生命資源研究・支援センターシンポジウム

「卵子透明帯を介した正常な初期胚を担保するための分子メカニズムの解明」 

  National Institutes of Health, National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases, Laboratory of Cellular and Developmental Biology 徳弘 圭造 先生

 受精において、精子は卵子の周りを覆っている透明帯に結合し、通過した後に卵子と融合する。哺乳類の透明帯は3〜4 種類の糖タンパク質(ZP1, ZP2, ZP3, ZP4)より構成され、種特異的な受精や多精子受精の阻止において重要な役割を担っている。また近年ZPタンパク質の変異により透明体の形成に異常が起こり、不妊の原因となる症例が報告されており、透明帯はヒトにおいても受精から着床までの正常な発生を担保するために機能している。

 これまで遺伝子改変マウスを用いて精子の透明帯結合メカニズムの解析が試みられてきた。マウスの透明帯は3種類のタンパク質(ZP1, ZP2, ZP3)より構成される。ZP1欠損マウスは透明帯が通常より薄く、壊れやすいため、産子数が減少するものの、精子の結合や通過は正常に起こることから精子の結合タンパクではないと考えられた。一方、ZP2とZP3は透明帯形成に必須の分子であり、いずれの欠損マウスも透明帯を形成することができなかった。現在所属しているJurrien Dean研究室では、透明帯を形成できないZP2欠損マウスにhuman ZP4を発現させることでmouse ZP1, mouse ZP3, human ZP4から構成される透明帯を持つマウス(human ZP4 rescue マウス)を作成し、このマウスが雌性不妊であることを明らかにした。また、ZP2のN末端領域を欠損するタンパク質を発現させたマウスも同様に雌性不妊を示すことから、ZP2のN末端領域が精子の結合部位として機能していると考えられる。

 我々はさらに、gain-of-function のアプローチからmouse ZP2のN 末端領域を融合タンパク質として発現するマウスを作成し、受精に必要な領域を明らかにするとともに、受精後の精子の通過を阻害する分子メカニズムも解析した。本講演では、これらの解析によって得られたZP2 N末端領域依存的な透明帯結合メカニズムと非依存的な透明帯通過阻害メカニズムに関する結果を中心に話したい。