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201904Koga

研究発表を行った学会;第12回 エピジェネティクス研究会年会
2018年 5月24日〜25日(札幌)
タイトル; ロイコトリエンB4第一受容体により規定される新規樹状細胞サブセットの同定.
発表者;古賀 友紹氏
(熊本大学 発生医学研究所 細胞医学分野)
要旨;
 ロイコトリエンB4 (LTB4) 第一受容体BLT1は、好中球やマクロファージなどの白血球に発現し、多様な炎症・免疫反応を発揮する。我々はこれまでにBLT1遺伝子欠損マウスでは、腹膜炎、接触性皮膚炎、喘息、多発性硬化症など様々な炎症・免疫疾患が減弱することを明らかにしてきた。しかしながら、免疫応答の司令塔である樹状細胞におけるBLT1の機能については未だ不明な点が多く残されている。
 本研究では、生理活性脂質による免疫制御機構を理解することを目的として、樹状細胞におけるBLT1の役割を解析した。近年我々が樹立したマウスBLT1単クローン抗体 (7A8) を用いて解析を行ったところ、樹状細胞にはBLT1陽性(BLT1hi DC)と陰性(BLT1lo DC)の樹状細胞が存在することがわかった。これらの樹状細胞は、T細胞の分化と増殖において異なる機能を発揮し、BLT1hi DC はTh1分化を強く促進する一方で、BLT1lo DCはT細胞の増殖を促進した。それぞれの細胞集団のDNAマイクロアレイ解析から、上述の機能的差異は、IL-12とIL-2の発現量の差により生じていることが示唆された。さらに興味深いことに、BLT1lo DCはリンパ節への遊走因子であるCCL21への走化性が強く、BLT1hi DCは、LTB4への走化性が強かった。したがって両樹状細胞は、①炎症部位または所属リンパ節への遊走能、②T細胞増殖能、③T細胞分化能の点において、異なる機能を有する新規樹状細胞サブセットであることが明らかになった。本研究は、生理活性脂質による免疫制御機構の一部を明らかにしたと同時に、近年、相次いで報告されている誘導性末梢リンパ組織の形成にBLT1hi DCが関わる可能性を示した有用な知見である。現在、これら新規樹状細胞サブセットのエピゲノム基盤を明らかにし、機能的差異を生み出す機序を解析している。

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