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201907Araki

研究発表を行った学会;第66回日本実験動物学会総会
2019年 5月15日〜17日(福岡)
タイトル; 常染色体優性遺伝性 GH1 遺伝子異常症モデルマウスの樹立と解析.
発表者;荒木 喜美氏
(熊本大学 生命資源研究・支援センター 疾患モデル分野)
要旨;
【目的】優性遺伝性 GH1 遺伝子異常症 ( 以下 IGHDII) は、成長ホルモン (GH) 遺伝子のイントロン 3 のスプライスドナーサイトに変異が生じることで発症する。変異により 120bp の exon 3 が skipping され、in frame に40 アミノ酸が欠損した変異型 GH( 以下Δ 3 GH) が産生される。1 アレルが野生型であるにもかかわらず GH分泌不全となるため、変異型Δ 3 GH による優性阻害効果が提唱されているが、その分子生物学的詳細は不明である。我々は、この優性阻害効果のメカニズムを in vivo で検討するため、遺伝学的に最も IGHDII に近いモデルマウスを作製し、解析をおこなった。
【方法】変異 lox を有する exchangeable vector を用い、第1段階としてマウス Gh 遺伝子 ( 以下 mGh) 座に置換可能な PGK-neo カセットを導入した。次に、第2段階で、 Cre/ 変異 lox 部位特異的組換えシステムを用い、PGK-neo をヒト GH1 遺伝子に置換することで、mGh 遺伝子座の両アレルがヒト野生型 GH1 遺伝子 ( 以下 WTGH1) と変異型Δ 3 GH1 遺伝子に変換された IGHDII モデルマウス樹立に成功した。
【結果および考察】WTGH1/ WTGH1 は野生型マウスと同様に成長したが、 WTGH1/ Δ 3GH1 は生後 3 週齢より有意な成長障害が認められた。この成長障害は PGK-neo をホモに持つmGh ヌルマウスよりマイルドであり、ヒトにおける病態と酷似していた。下垂体を用いた RT-PCR の結果、 WTGH1/ Δ 3GH1 マウスでは GH1 mRNA 量が有意に低下していた。下垂体の組織学的な解析では、マイルドな ER ストレスは生じていたがアポトーシスは認められなかった。GH1 の発現調節に重要な Ghrhr (GH 放出ホルモンレセプター ) の発現も低下しており、これが GH1 発現低下の原因と考えられた。今までΔ 3 GH の優性阻害効果は、野生型 GH タンパク質との相互作用によるものと考えられていたが、Δ 3 GH 単独の効果でGH や Ghrhr の発現減少が引き起こされることが示唆された。

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