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202003Kuroshima

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研究発表を行った学会;令和元年度卒業論文発表会
2020年 2月28日(熊本)
タイトル; 細胞培養分析装置による組成分析に基づいた体外受精培地の機能評価.
発表者;黒島 星利菜氏
(熊本大学 生命資源研究・支援センター 資源開発分野、薬学部 創薬・生命薬科学科)
要旨;
体外受精技術は、不妊治療、家畜の繁殖、実験動物の作製に幅広く使用されている。体外受精培地の組成は、バイオアッセイに基づいて経験的に決定されてきたが、体外受精における受精率や産子への発生率を向上させるために、さらなる培養液の改良が求められている。近年、細胞培養分析装置を用いた組成分析が可能になり、培養前後の培地組成を解析することで、培地組成の最適化や品質管理が行われている。そこで本研究では、細胞培養分析装置を用いて精子前培養培地および体外受精培地の組成分析を行うことで、各種培養培地の組成変化を明らかにし、変動が認められた成分が精子の機能や体外受精の成績に及ぼす影響を評価した。以下に本研究から得られた結果を要約する。

1.精子前培養培地および体外受精培地において、培養および体外受精前後の培地組成変化を評価した結果、グルコースの変化量が最も大きく、顕著な低下が認められた。
2.精子前培養培地において、グルコース量の低下に伴い精子運動性が低下した。
3.精子前培養培地において、過剰なグルコースの添加により精子運動性が低下した。
4.精子前培養培地において、グルコース量の不足により体外受精率が低下した。
5.体外受精率は、精子前培養培地あるいは体外受精培地に必要量のグルコースが存在することにより回復した。
6.胚盤胞期胚への発生率は、精子前培養培地あるいは体外受精培地にグルコースが存在することで、高い値を示した。
7.精子前培養培地グルコース濃度が高濃度および低濃度での培養精子由来の二細胞期胚は、胚移植により正常に産子へと発生した。

以上の結果より、培養培地のグルコースの不足は、精子の運動性を低下させ、体外受精における受精率および発生率を低下させることが示された。本知見は、安定して良好な受精率や発生率を得るためには、必要量のグルコースを培地に添加することが必須であり、培養培地の品質管理としてグルコース量の定量が有効であることを示している。今後、グルコース以外の成分についても、組成分析を行うことで、受精率や産子への発生率の向上を可能にする培養培地の開発や体外受精培地の品質管理における分析法や測定基準の構築が期待できる。

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