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202012,Tsutsumi

研究発表を行った学会;第42回日本分子生物学会年会
2019年12月3日〜6日(福岡)
タイトル; 分裂酵母Ptr8pのセントロメアヘテロクロマチン形成における機能解析.
発表者;堤 優樹氏
(熊本大学大学院 自然科学教育部理学専攻 生物科学コース 谷研究室)
要旨;
我々は、mRNAの核から細胞質への輸送機構に関連する新たな因子の同定を目的として、分裂酵母の温度感受性mRNA核外輸送変異株ptr1~ptr11を単離し、解析を行っている。これら変異株のうち、ptr8-1変異株はその原因遺伝子がヒト転写因子複合体TFⅡHを構成する因子XPB helicaseの相同因子をコードしている(Mizuki et al., 2007)。興味深いことに、ptr8-1変異株では、26℃の許容温度下で、セントロメア領域のクロマチンサイレンシングが解除されること、RNAiを介したヘテロクロマチン形成過程においてsiRNAへとプロセシングされるセントロメアdg non-coding RNA(ncRNA)が蓄積することなどが明らかになり、Ptr8pが転写やmRNA核外輸送機構に加えてセントロメアヘテロクロマチン形成にも関与していることが示唆された。
そこで、ptr8-1変異株におけるセントロメアncRNAの動態を解析するため、dg ncRNAに対する一分子RNA蛍光 in situ hybridizationを行った。RNAiを介したヘテロクロマチン形成に必要不可欠なDicerの変異株では、siRNAにプロセスされなかった一本鎖dg ncRNAの蛍光シグナルがセントロメア領域にドット状に観察された。一方、ptr8-1変異株では、dg ncRNAの蛍光シグナルが核内だけでなく、通常のmRNAのように細胞質にも検出された。この結果から、Ptr8pがセントロメアから転写されたncRNAをセントロメアに保持し、RNAi経路へと導くハブとして機能している可能性が考えられた。
更に、セントロメアヘテロクロマチン形成過程において、Ptr8pがdg ncRNAをセントロメア領域に保持する機能を解明するため、RNA免疫沈降解析(RIP解析)を行い、Ptr8pとdg ncRNAとの物理的な結合の検出を試みた。その結果、予備的知見ではあるが、Ptr8pとdg ncRNAの結合が検出された。このことから、Ptr8pは、dg ncRNAと直接、または他の因子を介して間接的に結合していることが示唆された。今後、Ptr8pとdg ncRNAとの結合が、ptr8-1変異によって影響を受けるか更に解析を進める予定である。

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