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202203Miyamura

研究発表を行った学会;第44回日本分子生物学会年会
2021年12月1-3日 (横浜市/オンライン ハイブリッド開催)
タイトル; グローバルFOXO1転写解析に基づく内皮特異性及び Tip/Stalk 遺伝子発現制御.
発表者;宮村 優里氏
(熊本大学 生命資源研究・支援センター 分子血管制御分野)
要旨;
成熟した血管網を構築する上で重要な血管リモデリングは、既存の血管から新たに血管が出芽し伸長するプロセスを伴う。その先端部 (Tip/Stalk) の内皮細胞ではVEGFシグナルとDll4を介したNotchシグナルの適切なバランス制御が必要である。FOXO は細胞周期、アポトーシス、エネルギー代謝、老化を含む様々な生物学的プロセスに関与するフォークヘッド型転写因子である。特に FOXO1 欠損マウスは血管リモデリング異常によりE11付近で胎生致死となることから、FOXO1 発現が血管成熟に不可欠と考えられている。しかし内皮細胞におけるFOXO1のゲノムワイドな発現制御は未だ深く解明されていない。そこで我々は、FOXO1を安定発現させた内皮細胞での RNA-seq を試みたところ、内皮特異的因子 ESM1, ANGPT2 を始め、CXCR4など多くのTipマーカー遺伝子が下流標的であること、FOXO1がVEGF刺激に応答し18時間後に最も強く核内移行することを見出した。更に、VEGF 18時間刺激下でのFOXO1抗体を用いたChIP-seqを行った結果、H3K4me3 転写活性化マークと連動した各々の Tipマーカー遺伝子の制御領域で FOXO1 結合の特異的な濃縮が認められた。中でも、血管新生に関与するESM1の転写開始点近傍とその8.5kb, 17.5kbp上流 (H3K27Ac-positive) エンハンサー領域にFOXO1の濃縮が顕著に認められたことから、本領域での ESM1の発現制御をプロモーターアッセイにより検討した結果、ESM1のプロモーターとエンハンサーは内皮特異的に、かつFOXO1結合により転写活性化されることが明らかとなった。以上より我々は、VEGF 刺激内皮でのゲノムワイドな発現制御の可視化、及び ESM1の新規プロモーター/ エンハンサーの同定と FOXO1 を介した内皮特異性を特徴付けることに成功した。本結果を踏まえ、VEGF 刺激初期と持続期を比較し、更にFOXO1が内皮特異的な遺伝子発現を制御する仕組みをもとに、血管の分岐から安定化までの血管構築の全貌について議論したい。

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