******** GTC On Line News No.528*******
2004年 6月 16日
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=== 遺伝子組換え生物等規制法について・Part10 ===
    〜〜〜 アデノウイルスの取扱い 〜〜〜
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 前回(「GTC On Line News No.522」規制法について・Part9)レトロウイルスの取 扱いについて説明しました。今回は、アデノウイルスについて説明しま す。
 アデノウイルスは、10種以上の構造タンパク質と線状2本鎖DNAを持ってお り、広範囲の細胞種に感染できるという特徴から、遺伝子を導入するためのベクター としてよく用いられます。アデノウイルスベクターは、力価の高いベクターが作製で き、特に接着性の細胞に非常に効率良く遺伝子導入できること、非分裂細胞にも遺伝 子導入できることなどの特徴があります。ただし、導入した遺伝子は染色体DNAに ほとんど組込まれずエピソームとして存在するため、遺伝子の発現は一過性となりま す。

 さて、アデノウイルスベクターを用いた実験の拡散防止措置の区分は何かという と、告示第7号の「別表第2」の「2(2)」に

「Adenovirus (Fowl adenovirus1型から3型まで及び5型から11型まで、 Equine adenovirus、Pocine adenovirus1型から4型まで並びにTurkey adenovirus1型及び2型を除く。)」

という記載があります。トリ(Fowl)、ウマ(Equine)、ブタ(Pocine)、及 びシ チメンチョウ(Turkey)アデノウイルスに関しては、「別表第2」の「1(2)」に 記載されていますのでクラス1ですが、それ以外のアデノウイルス はクラス2とい うことになります。従って、ヒトアデノウイルスを用いる場合の宿主の実験区分はク ラス2です。核酸供与体の実験区分がクラス1またはクラス2の場合、『P2レベ ル』の組換えDNA実験ということになります。

 しかしながら、ここで注意しなければならないのは、『自立的な増殖力及び 感染 力を保持したウイルスで、その使用等を通じて増殖するもの』かどうかで す。アデ ノウイルスは、バキュロウイルスやMammalian retrovirusと違って、告示第7号の 「別表第3」には記載されていません。従って、「規制法について・Part8」で説明 した様に、省令第1号第4条の例外規定である「別表第一(第4条関係)」が適用さ れます。宿主である組換えウイルスが、『自立的な増殖力及び感染力を保持したウイ ルスで、その使用等を通じて増殖するもの』 に該当する場合は、大臣確認が必要で す。

 ただし、一般的に基礎研究で使用されているアデノウイルスベクターは、 E1a遺伝 子およびE3遺伝子を同時に欠損した「非増殖型」ウイルスベクターですので、P2レ ベルの機関承認実験になります。




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熊本大学・遺伝子実験施設; E-mail:www@gtc.gtca.kumamoto-u.ac.jp