******** GTC On Line News No.635*******
2005年10月 6日
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 大学院医学薬学研究部 代謝内科学分野から、下記セミナーの案内がありましたので お知らせします。
 なお、このようにGTC以外が主催するセミナーの案内に関しても、施設利用者に有用と考えられる情報をこのメーリングリストに載せることは問題ありません。何かありましたら、GTCスタッフまで御連絡下さい。

   ====代謝内科学セミナーのご案内====
       (第15回熊本分子病態研究会)
演 者:Steven E Shoelson, MD, PhD
Section Head & Associate Director of Research, Joslin Diabetes Center
Professor of Medicine, Harvard Medical School

演 題:Inflammation in the pathogenesis of insulin resistance
    and the metabolic syndrome
   (インスリン抵抗性並びにメタボリックシンドロームの病因としての炎症)

日 時:2005年10月31日(月)、17:30〜18:30

場 所:基礎研究棟1階 基礎セミナー室

 Shoelson先生はインスリン抵抗性発症の分子メカニズムとその治療、特に肥満や2 型糖尿病に代表されるインスリン抵抗性病態における炎症性サイトカインの役割につ いて最先端の研究を行われています。今回の講演では、最近の御研究から下記の内容 について御講演されます。

[講 演 要 旨]

 2型糖尿病の主病態の一つであるインスリン抵抗性は、過体重、欧米流の食生活、 デスクワーク中心の生活スタイルなどによりもたらされる。さらにインスリン抵抗性 に関連する高血圧、脂質代謝異常が積み重なり、心血管障害のリスクが増大した病態 はメタボリックシンドロームと称される。我々の研究の目的は肥満とインスリン抵抗 性、2型糖尿病、メタボリックシンドロームを結びつける分子を同定することで、特 に炎症反応に着目している。疫学的研究により2型糖尿病や心血管障害患者では血液 中の炎症マーカーが増加していることが報告されており、炎症がこれら疾患の進展に 関与することが示唆される。加えて、実験モデルではTNFαやIL-6などの炎症性サイ トカインがインスリン抵抗性を誘導することが示されている。以前から抗炎症薬であ るサリチル酸が糖尿病患者の高血糖を改善することが知られていたが、我々は、サリ チル酸がNF-κB転写経路をターゲットに血糖低下作用を発揮すること、さらにこの経 路は肥満や高脂肪食摂取下の脂肪や肝臓で活性化されることを明らかにした。NF-κ Bは自然免疫(innate immunity)と宿主防御時の炎症のマスターレギュレーターであ るが、慢性代謝疾患における役割は十分に解明されてはいない。体重増加は肝臓や脂 肪におけるNF-κBの活性化をもたらすが、これにより炎症メディエーターの産生を介 してローカルなあるいは全身のインスリン抵抗性を引き起こす。予備的検討では、こ の経路の阻害薬が2型糖尿病やおそらく糖尿 病予備群、メタボリックシンドローム患 者の治療の新たな道筋となりうることが示唆されている。

参考文献:
1) Reversal of obesity- and diet-induced insulin resistance with salicylates or targeted
disruption of Ikkβ. Science 293, 1673-1677, 2001
2) IKKβ/NF-κB activation causes severe muscle wasting in mice. Cell 119, 285-298, 2004
3) Local and systemic insulin resistance due to hepatic activation of IKKβ and NF-κB.Nature Medicine 11, 183-190, 2005

多数の御来聴を歓迎します。

連絡先:医学薬学研究部 代謝内科学 荒木 栄一(内線5169)

  


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熊本大学・遺伝子実験施設; E-mail:www@gtc.gtca.kumamoto-u.ac.jp