レポート第3回 集計結果

熊本大学・遺伝子実験施設
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2001年 3月31日

生命科学G レポ−ト 第3回・問題2 回答集
2000年10月25日実施

************************ 問題2 ************************

 前回紹介したように、現在広く受け入れられている「全生物の系統樹」では、地球上の生物は、真正細菌・古細菌・真核生物という3つのグループに分れると考えられています。この場合の「生物」は、『細胞』を基本としています。さて、ゲノムサイズの説明をしたときに、最も小さな「生物」としてファージを例にしました。ファージやウィルスには『細胞』が無く、何かの『細胞』に感染しないと増えることは出来ません。しかしながら、それぞれ独自のゲノムを持ち、一度『細胞』に感染すると宿主の機能を乗っ取り、自己を複製することが出来ます。あなたは、このような物体(例えばインフルエンザウィルス)を「生きもの(生物)」だと思いますか? ちなみに、「遺伝コード」は、ウィルスでも共通です。

************************ 回答[全86人] ************************

 回答は、「生物派」「非生物派」「中間派」「色々と悩んでる派」の4グループになりました。代表的意見には、下記のようなものがありました。(順不同)

生物派[68人]

  • 何かの「細胞」に感染しなければ増えないとしても、感染すれば自己を複製できる能力があるのならば、「生物」であると言えるのではないかと思う。
  • 自己の遺伝子を複製し、また、変化する余地があるという点で生きものらしいと思います。ただその場合同様のふるまいをするコンピュータープログラムは生物かという疑問を感じます。個人的にはまとめて生物と呼びたいです。
  • 物質ではないので「生きもの」だと思います。私は「細胞」があること、無いこと、の重要性があまりよく分らないので、「細胞」が無い=「生物」ではない……と言うことを考えていませんでした。でもあえて「細胞」にこだわるのなら、他の「細胞」を乗取った時に「生物」と分類される「特殊生物」なんじゃないかなと思います。
  • ファージやウィルスも生物だと思う。なぜなら、細胞はなくとも遺伝コードは人間やその他の生物と同じであるので、ファージやウィルスも進化の中で生まれてきたものであると思うから。また自己複製することが出来なくても、何かの細胞に感染して、子孫を残すことが出来るし、残そうとして細胞に感染するのだから、やはり生物だと思う。むしろ生物の基本単位が細胞であるという考えに少し問題があるのではないかと思う。
  • 感染するということは、ウィルスの行為であり、その行為は生きていくため種を残すためのものだと思う。この点では、我々と全く変わらない。ウィルスの感染はとても強いし、それだけ生物なのであると思う。
  • 遺伝コードは、全てにおいて共通であり、自己に細胞が無くとも、寄生することで自己を増殖し、その存在を確立しているため、私は、生物であると思う。
  • 生き物だと思います。むしろもしかしたら最も進化した生物ではないかと思います。無駄なものは一切ありません。自分の遺伝子を伝えるという面では最も効率的(寄生する生物がいるという前提で!)で、進化していると思います。
  • 説明は難しいけれど、一般的な意味での「生物」(細胞を持つもの)と同種ではないけれど、「生物」であるという印象を受けた。特に良く「このウィルスは死滅した」というような言葉を聞くが、死滅したというものがどういう意味を持つものか分らないが、死があるのなら生物だと思う。
  • 細胞を持つ=生物だということらしいので、まだ細胞を乗取っていないものは「生物」ではなく、細胞を乗取ったときから「生物」だと言えると思います。
  • 私は、生き物だと思います。ファージやウィルスは独立して増えることは出来ないが、独自のゲノムを持ち「細胞」に感染すると増えることが出来る。ある意味では、機械と違って人間の手を加えずに独自に「子孫」を残すことが出来るから「生き物」だと思います。
  • 私は今までインフルエンザウィルスが、生き物であるか生き物でないか、なんて考えてもみなかった。私の中では生き物というのは、自分の考えを持っていて、生きようとするものと考えていました。そして今まで、知らなかったファージやウィルスなどの増え方などを知ってみて、こいつらの方が人間なんかより上手く生きているんじゃないかなぁと思ってきました。そしてこのような物も、生き物ではないかと考えるようになりました。でも、我々人間が下等だとしているこのような物によって、人間が死んだりすることがあるのが不思議だ。
  • 生物は基本的に自己の遺伝子を増やそうとします。意味もなく増えて何をしようとしているのかは判っていません。私は自分の遺伝子を増やそうとしている物は生物だと思います。そこにただの化学反応だけでなく、『自分』というデータを残そうとしている物を生物と思っています。それゆえに私はファージやウイルスを生物と思います。
  • 私はウイルスも生物だと思います。手段がどうあれ自らの遺伝情報を残そうという行動をとっているからです。自分の存在した証とも言える、自らの遺伝子を継いだものを残そうという本能を、すべての生き物は共通して持っているからです。
  • 古細菌の話の様に、新たな発見があると今までの定義が見直されるのだから、インフルエンザウイルスなども生物と呼ばれるべき。なぜなら、ウイルスには細胞が無いが、何らかの細胞に感染すると増えることが出来るから。
  • 「生き物」だと思う。生物は他の生物によって生かされている。ヒトも他の生物を食べることによって生きている。ファージやウイルスは生きていく術として何かの「細胞」を用い、宿主の機能を乗っ取ることで環境に順応している。また自己を複製したりもしている。私には「生き物(生物)」として考えられる。
  • 生物だと思います。ウイルスは昆虫や単細胞の生物のように繁殖するからです。きのこや虫のように何かに寄生して繁殖をするのなら、物体として認識できないと思います。
  • 生殖の仕方は違うけど、これらの物体は生殖行動(?)をして子孫を増やそうとしている意思があるので生物のうちに入ると思う。
  • やっぱりそういう生物がいてもおかしくないと思います。貝を変えていくやどかりみたいです。
  • 一応「生き物」だと思う。ただし、細胞がない点から見ても普通の生物とは違うと思う。自分が思うにウイルス等は我々とは違うものを祖先とするものではないか。つまり「始原生物」ではなく、いん石についてきた地球外生命体とか。もちろん逆にそれが我々である事も考えられるのだが。

非生物派[10人]

  • 生物は、細胞を基本単位としていて、ファージやウィルスは細胞が無いなら、それは生物と呼べないと思います。しかし、ウィルスが「生きている」「死んでいる」というように、ウィルスはよく生物として扱われることが多いと思います。
  • 生き物だとは思わない。やはり生き物は、細胞があってこそ「生き物」だと思う。遺伝コードがウィルスでも共通だからと言っても、ウィルスは生き物とは別のものだと思う。
  • 私は、細胞ではないのでやはり生き物ではないと思いました。
  • 生物ではない。どちらかというとプログラム?
  • 「生き物」というよりも、パソコンのバグに近いものだと思う。退治できるが地球上から全部なくなることはなくて、どこかに潜んでいるものだと思う。
  • 実際に自分の目で確かめてみないと、やはり生物として実感がわかないので生物と思えません。
  • 私は生き物だとは思わない。生物である一歩手前の段階で止まってしまった状態でずっと現在までやって来たものだと思う。「生物」が生きていくための過程の一つの歯車としてあると思うし、複製することでかろうじて存在できるのもそのためだと思う。
  • 生き物だとは思わない。なぜならウイルスがいてもいなくても生物の食物連鎖には関係無さそうだから。
  • 自分には生物だとは思えない。自分の中では、生物は目に見えて動いたり呼吸したりするものだと思っています。こんなに小さなものを生物と思えない。しかし、ファージを作っている物が自分達と同じだと思うと、何か変な感じがします。

中間派[4人]

  • 僕は、ファージやウィルスは生き物でも物質でもなくその中間の物体だと思う。生物とは思えないし、かといって物質でもないし。ウィルスってこんな物体だったことを初めて知りました。
  • ウィルスは生物ではないと思う。理由は、細胞膜や外部からエネルギーを取り入れるシステムを持たない ためである。ただ複製するだけならば「生物」とは言えないと思う。かといって完全に「鉱物」とは言えないと思う。ウィルスは「生物」と「鉱物」の「中間的なもの」だと思う。
  • 自己を複製することが出来るという点では「生き物」と言えるけれど、細胞を持たず、宿主に寄生しないと生きられないという点では、「生き物」と言えないように思える。どのようにして、ファージやウィルスが、自己を複製するか知りたいし、その複製する方法は複雑なのかなと思った。

色々と悩んでいる派[4人]

  • 私の中での「生物」は細胞を持つものという考えだったので細胞が無いファージは「生物ではない」と思う。ファージは別の存在のような気がする。でも遺伝コードがウィルスでも共通であるということで、そういった点を考えると、もしかしたらファージも「生物」なのかもしれません。
  • 生物というのは細胞を基本単位としているので、独自のゲノムだけで生きている物体を生き物だとは思わない。しかし、感染することによって自己を複製することが出来るので、そのような物体は一体何なんだろうかと不思議に思う。
  • 実感としては「生き物」という感じがしません。しかし、細胞を持たないとしてもゲノムを持ち、増殖(という言葉が適当かどうか分かりませんが)するという点を考えると「生き物」なのかもと考えてしまいます。でもやはり、ウイルスと聞いて「生き物」という気はしません。たとえ遺伝コードが同じでも。
  • 高校の時、それらを生物だと習って、勉強の為に覚えたけど、今考えると何かきもち悪い。ホラー映画みたいではないが、何か幽霊みたいだ。しかし将来、いや、今もあるかもしれないが、そうなったなら、人間に宿ってコントロール出来るため、とても恐い物であるなあと思う。

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