2002年度 レポート第12回 回答集
熊本大学・遺伝子実験施設
熊本市本荘2ー2ー1
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2003年 2月 6日
2002年度 生命科学G レポ−ト第12回(2003年 1月22日実施)回答集
[ テーマ ]クローン人間の誕生について
[ 回答 ](22人)
賛成 3人
・先日テレビのニュースで、人間のクローンを研究するために多額の寄付をし、また不慮の事故で亡くしてしまった幼い息子のクローンを頼んでいるという夫婦を見ました。その夫婦は本当に子どもを愛していたように見えました。ディベートのときに子どもができない夫婦の気持ちはわたしたちにはわからないという意見があったけれど、彼らの話をきいてから確かにそうなのかなぁと思うようになりました。クローン人間を誕生させたあのグループには疑問な点が少々ありますが、クローン人間の誕生を頭ごなしに悪いことだとするのはいけないと思います。もっといろんな人から話をきいたり、いろんな立場、状況の人と議論し決まりのようなものを作っていかなければならないと思います。(教育学部)
・賛成。その理由は現代では臓器移植による治療が進行しドナー制度などが設けられたにもかかわらず臓器の数が足りなかったり、その人に合わずに拒絶反応を示したり・・・だからこそクローン人間が必要だと思う。確かに移植できるくらいまでにクローンも成長しなければいけないわけだがあらかじめ予想のつく病気(生まれつきの持病)においては子供の頃からクローンを作り成長させておけば良いと思う。将来的に特定の臓器だけをクローンとして作れるようになればいいのだが・・・(理学部)
・クローン人間を医療などの分野で、パーツ交換のように使うことに対して私は問題が特にあるようには思いません。怪我をしたときに、我々の細胞が分裂し、部位を修繕していくことを体外でやっているに過ぎないことだと思います。当然、スペアパーツとして生まれてきたクローン人間が意識を持ってしまった場合等、問題は生まれてくるでしょうがパーツごとのクローニング等ができるようになると同時に解決していくことと思います。
しかし、クローン人間が生きていくということに対しては周囲が全く知らないという状況(場合によっては本人も)を作らなければ、現在の人々の倫理観の中で生きていくことは難しいのではないかと思います。これから時代を重ねていき、クローン人間が普通に存在する時代が来れば(来ないかもしれませんが)それも可能となるかもしれませんが・・・。(薬学部)
反対 16人
・クローン人間の誕生について、現時点で私は反対です。というのはディベートでも意見したとおり、体制がしっかり整っていない現在ではいつ自分の知らないところで利用されるか分からないからです。また、不妊治療についてもまだ実現されない方がいいと思います。なぜならクローン人間である子供が全く差別を受けないで生活できる環境は全く保証されていないからです。なじみのないクローン人間に好奇の目が寄せられる事は避けられないでしょう。そのなかでその子供の人格形成が普通の子供のようになされる事はないと思います。本当に子供のことを考えられるのなら、以上のことをカバーできる自信がある夫婦だけが試みるべきだと考えます。ただ子供がほしいというだけでクローン人間という選択を採るのならば、それは親のエゴに過ぎないと私は思います。クローンの技術がある以上、クローン人間を造る技術者は今後もっと増えることでしょう。だからこそ今は法的な対策をとることを急ぐべきだと考えます。(工学部)
・クローン技術を人に適用するなどとんでもないことだと思います。ましてクローン人間の誕生はもってのほかです。人を選別するのはよくないなどという前に、人工的に人間を作り出すことは、とてもおぞましいことなのではないでしょうか。(動物については妥協できますが、基本的には動物であっても同じです。)今回のディベートでは不思議とクローンとして誕生させられるクローン人間の幸福についてはあまり議論されなかったように思います。例えば不妊治療の一手段としてクローン技術が使われた場合、生まれてきた子供は、人並みに幸せになれるでしょうか。差別としてくくってしまうと大袈裟に見られがちですが、子供同士のいじめにあう可能性は極めて高いと思います。秘密が漏れないという保証はありませんし、不確かなまま近所で噂に上ることも十分考えられます。こういう問題はクローン人間が普及すれば、解決されるかもしれませんが、不妊治療といえど、クローン人間を許してはいけないと思います。不妊治療のためというと美談のように聞こえるかもしれませんが、これは親のエゴというものでしょう。もし、不妊治療の場面でクローン人間が許されれば、他の場面でいくら規制しようともクローン人間は誕生すると思います。ですから、何であろうとクローン人間を認めるわけにはいかないのです。科学的研究にしても移植用臓器の作成にしても、どうしてそこまでしなければならないのか、というのが正直なところです。ディベートでの賛成側の理由に、「今までやってきたことと比較するとさほど大袈裟なことではない」とありましたが、とんでもないことです。臓器医療に役立つというのは一理ありますが、前述した通りです。最後に今回のテーマとは少し外れますが、希少動物の保護・再生にクローン技術を応用するのは横暴だと思いました。(薬学部)
・僕はヒトのクローンには反対です。最近、日本人のクローンが誕生したというニュースが話題になっていますが、その子というのは半年前になくなった子のクローンだと言っています。この事に僕は非常に恐怖を感じるんです。これは、ただの親の欲望のように感じます。まるで、死んだ子どもを育て直すようなもの。まるで人生をリセットするようなもの。こんなんじゃ命の大切さなんてものはなくなってしまうのではないでしょうか!? また、ノックアウトのヒトをヒトとみなさないという意見にもかなりの抵抗を感じました。(理学部)
・クローン技術の人への応用において、子供が欲しいのに出来ない夫婦にどちらかの体細胞を使って子供を誕生させたり、臓器移植の必要な患者にその人自身の細胞を使って、必要なクローン臓器を作製するというように、大変望ましことのように思えるが、私は第一に安全面についての問題を考えてしまう。この前の授業でも学んだように、そのクローン技術により生み出された子供が絶対に普通の子と同じように正常に成長していき、何も問題なく生活できるかというとクローン技術が与える影響についてまだまだわからない点が多いため大変不安である。またクローンは遺伝情報の提供者とほとんど同一の遺伝的形質をもつため、クローン技術で生み出された人の容姿や性格もある程度想像でき、むしろこわいものを感じてしまう。近日、「ラエリアン」運動のメンバーのフランス人女性科学者がクローン胎児を妊娠させ、出産させたという事実かどうか疑わしいニュースが話題になっている。私にはクローン人間を造るのはやはり無意味な事にしか思えない。(工学部)
・クローン人間が誕生したというニュースの真否ははっきりしていませんが、そこに感じられるのは親や研究機関のエゴだけで、生まれてきた子供の将来が不安でなりません。前回のディベートの中で、「クローン人間であることを子供に知らせなければよい」という意見がありました。しかし、「事実を知らなければよい」、果たして本当にそれでクローン人間を認めてしまってよいのでしょうか。例えば不治の病を患者に告知しないことは、それが患者にとって幸せな場合も考えられますが、クローン人間の場合はヒトがヒトを恣意的につくり、なおかつその事実を本人に伏せるという、自然な生命の営みから著しく外れた行為であり、本人が幸せかどうかの問題どころではないように思えます。当初は、不妊に悩む夫婦に対してであればクローン技術を応用してもよいと考えていましたが、今は以上の理由で賛成できません。(法学部)
・この前のディベートにて考えさせられたことが幾らかある。クローン人間は何か目的があって誕生させるものだが、不妊治療に使用することはよいが、臓器提供などの理由はよろしくないという考えの人が何人かいた。わたしはこれこそどうかと思う。子供がほしいからといって安易にクローン技術に頼っていいものか?人工受精で生まれた子供でさえその事実を知ったらかなりショックをうけるものだというのに。ましてやクローンならば子供のショックはいかなるものであろう。体の異常で子供ができない人達しかわからない願望だから正常な体の人は口を挟むなという意見の人もいた。しかしそれは違う。自分達の願望は達成されるが、生まれてくる子供が成長したときのことを軽んじて考えてる傾向になる可能性がある。すぐにクローン技術に頼るのは危険だし未だに倫理的に問題がある。最後に、クローンは発達してよいかわからない技術である。あとはクローン人間の研究がもっとも大きなテーマであろうが、この研究をもしやめたとしたら、沢山の研究所が閉まるだろう。私達はもはや引き返せなくなっているかもしれない。(工学部)
・クローン人間の誕生について私が一番心配している点はやはり倫理的な問題です。不妊治療などでクローンを子供として育てるとき、本当の子供と愛情のかけかたが違ってこないかと疑問におもいます。またニュースで最近話題のクローンエイドによって生まれたといわれている日本人のクローンは、小さな子供を亡くした夫婦が、その子供のクローンの誕生を望んだと聞いていますが、もしそれが本当なら亡くなった子供は一体何のために生まれてきたのだろうと思います。(薬学部)
・「クローン」を理解するにあたっては、まずは生命誕生のしくみ・特徴を抑えておくべきだと思う。一番の大きな特徴として、「(哺乳類は)両親のそれぞれから遺伝的特徴を受け継ぐ」というところにある。ここで確認したいことは、同じ親から生まれた子同士でも遺伝的特徴は異なることである。これに対して、クローン技術というのは、同じ遺伝的特徴を持つ子を人工的に誕生させることができる。言うまでもなく、前述の生命誕生のしくみ・特徴に反している。このような技術をビジネス(産業;農業)に生かすのは、今後の発展に期待を託せるが、人間に適用するとなると、話は別になると思う。それは、安全面もあるが、生命倫理問題(具体的なことはディベート中にあった)は避けられないからである。人間として生きていくためには、これを無視するわけにはいかないと思う。
先日、日本でもクローン人間が誕生したというようなことを耳にした。法律で認められていない上での話である。法学より科学が先を行くというのも、今後の論点になるのではないか。(理学部)
・数日前の新聞に「日本人のクロ−ン人間誕生」という記事があった。もしそれが本当なら、新しい生命の誕生として喜ぶべきなのだろうか。クロ−ン技術が発展すると、一方では「子供」として、もう一方では「もの」としてクロ−ン人間が生み出されるのだろう。私はその二通りの目的を区別して受け入れることはできない。同じようにつくられて全く違う扱い方をするのは、不当だと思う。クロ−ン人間がどんなに便利で、人間の欲望を満たす技術でも、そんな結果しか生まないような気がする。(教育学部)
・僕はクローン人間が出来たと聞いてびっくりしました。今、いろいろな技術が高いレベルになってないからクローン人間が生きていけますか。また、そんなことは、どんな理由があれ、絶対にしてはならないことです。いったい何のために作るのですか? ヒツジや牛でクローンを作って家畜産業に役立てるというのは、反対ではありません。しかし、自然界の法則を破って、果たして、その報いが来ないものなのでしょうか?何らかの形で歯車が狂ってとんでもないことになりそうで、私は怖くてたまりません。自然界とは、そんなに甘いものではないと思います。(理学部)
・クローン技術のヒトへの応用について考えた結果、やっぱり反対です。自分に確実に合う臓器を手にいれて生きたいと思う人のためにクローン人間やそれに近いものを作り出した場合、それによってその人の命がたすかったとしても、作り出された命が失われたら、結局は命を救ったことにはならないのではないかと思いました。 また、死んだ子供のクローンを作るような場合、その親は子供が生き返ったように感じて嬉しいかもしれないけど、産まれた子は「代わり」みたいで、良くないと思います。(法学部)
・反対です。クローンを臓器移植などに使うのは賛成ですが、クローン人間として誕生させることは本人にとっても辛いことなのではないでしょうか。もともとクローン人間をつくる意味がわかりません。人間は生きてきた環境によって、性格、人格が変ってきますが、それらが違うということは、遺伝情報が同じでも、別人ということになると思います。別人に会社を継がせてどうするんだって感じです・・・・・。(薬学部)
・臓器移植や科学的研究のためにクローン技術を用いることはまだやむを得ないと思うが、その技術を用いて人間そのものを造り出してしまうことには賛成できない。クローン人間も同じ人間であることにかわりはないし、秘密の保護さえ徹底されていれば、クローン人間が実際に世の中で生活していくことは可能だと思う。しかし、遺伝子さえあれば人間がつくれてしまうということになれば、命に対する考え方が軽くなってしまうのではないかと思う。(法学部)
・技術が悪用・個人の利益目的で使用されるのは誰しも賛成できないであろう。ケースによりけりだと思いますが、クローン人間を本当の子供として成長させる場合には、良い技術だと思います。ただし、全体的に必要である技術とは考え難いので、危険性や、現在までに作られた価値観・倫理観(人間社会において)を考慮すると、反対です。許可される場合には、全世界で同時に行われるべきでしょう。しかし、今回のように秘密にクローン人間を作る組織が発生する可能性があるので、技術全体を凍結しないと意味がないかも知れません。(工学部)
・私はクローン技術の人間への応用にはどっちかといえば反対である。私は今回の授業を受けるまでクローン技術を用いて臓器のみをつくることが出来ると思っていた。だから、この授業を受けるまでは賛成であった。しかし臓器をつくるためには人間の形を持ったものをつくるしかないと知って、それはダメだろうと思った。まるでクローン人間が臓器マシーンのようだからだ。もしいざそれで自分が助かるとするなら、その時私はどうするか分からないが、、、。クローン技術が規則にそって良いことだけに使われるならいい。でも必ず悪用する人が出てくる。これはどうしようもない。だから反対である。しかしいくら反対してもクローン人間は必ず水面下で発展していくと思う。これもどうしようもないことだと思う。(工学部)
・僕はクローン人間の研究について反対だ。クローン人間を普通の人間と同じように扱い、人権を認め、きちんと育てられる親がいるのなら、僕はクローン人間の誕生を許せるかも知れない。しかし、クローン人間の研究が認められ、発展すれば、絶対にヒトの遺伝子組換えの研究と重なることになると思う。なぜなら、ヒトの遺伝子組換えの研究はクローン技術があればより具体的なものになるし、クローン人間を造るにしても、オリジナルの遺伝子を組み換えてよりよいヒトを造ろうとするだろう。(移植用のクローンでも、より機能を上げた臓器を造ろうとするだろうし、不妊治療のためのクローンでも、病気に関する遺伝子を削ったり、様々な能力を上げようとするだろう。)遺伝子組換えの研究とクローンの研究は、明らかにお互いを求め合っている。そしてこの2つは絶対に認められてはいけないと思う。多分、この辺りがヒトの、生物の許されるボーダーラインだと思う。今まで人間は爆発的な勢いでその技術を磨いてきた。自分たちがよりよく生きるために。だけど、このまま進んでいけば、ヒトはヒトでなくなっていく気がする。そろそろ、足を止めてみてもいいんじゃない?
確かに現代の技術では治せない病気に苦しんで死んでゆく人達もいる。だけどそれを追いかけていっても、完全に消すことは無理だと思う。消しても消しても、新しい病気が人間を襲うだろう。だからと言って、その人達を見捨てることはできない。だからきっと、僕たちが足を止めることはないだろう。だからもっと悩んで、もっと考えて、もう少しゆっくりと進んでいけたらいいと思う。(理学部)
どちらとも言えない 3人
・クローン人間の誕生ということを耳にして、事の真実は分からないが、とても驚いた。クローンに対する様々な議論が繰り返されている段階であり、また、未だ倫理的側面や技術的な側面でさえも確立した技術とはいえない段階でのクローン技術のヒトへの応用に対して危険さを感じる。今後もこの問題に関しては特に注目を払って見ていきたいと思う。(工学部)
・私はクローン人間の誕生について賛成できない。現在誕生したと言われているクローン人間(本当かすら疑わしいが)はただ誇示したいだけのように思える。作れる事を証明するためなどの大した理由もないのに(本人には重大かもしれないが)作られたクローン人間のその後が心配であり、倫理問題が生じる。
ただし、全否定するわけではなく、不妊に悩む夫婦への救済策など、相当の目的があれば許可してもいいと思う。不妊治療など相当の苦労を経験した彼らならば誕生したクローン人間を差別するとは思えないし、クローン人間である事を公開しなければ(クローン本人にも)倫理問題が生じることもないと思う。
クローン人間は問題が多すぎるため、クローン技術の応用については賛成の立場であるが、クローン人間については基本的に反対である。私の中でその2つは別物のような気がする。(法学部)
・今、すでにクローン人間を作る技術があり、もう作られていると言われてもあまりぱっとしない。クローンに対するイメージがはっきりしてないからだと思う。世の中の人も私と同じで「言葉」はよく聞くが、ちゃんとイメージしたことはあまりないんじゃないでしょうか?
そんな中、周りと話し合いもせずに勝手に作り始める人達がいる。世界で始めてクローンを作った人!!という名声が欲しいのか? 本当に科学の未来を思ってのことなのだろうか? どっちにしろまだ早すぎる気がする。もう少し間をおいて考えていくべきだと思う。(理学部)
===== レポートについてのコメント (by ARAKI) =====
・クローン人間の話題は、「不妊治療」そのものを見直すきっかけにもなると思います。体外受精、顕微受精、出生前診断、代理母など、社会全体でもっと真剣に考えなければならない問題がいくらでも出てきます。私自身は、人の誕生に人が手を加えることは出来るだけ避けるべきだと考えています。
・「あらかじめ予想のつく病気」つまり『遺伝病』の場合、そのクローンも同じ遺伝病にかかるという現実を無視する訳には行きません。スペアが有効なのは、もともと健康だった人が、感染症や事故などで後天的に障害を持った場合です。仮に特定の臓器だけでも、万が一の保険のために、全員のスペアを造っておく余裕が、今の人類にあるとは思えません。
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