2002年度 レポート第9回 回答集

熊本大学・遺伝子実験施設
熊本市本荘2ー2ー1
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2003年 1月 4日

2002年度 生命科学G レポ−ト第9回(2002年12月 4日実施)回答集

[ テーマ ]福岡県久山町のゲノム疫学調査に賛成か反対か

[ 回答 ](19人)

賛成 7人

・これまでの町をあげての調査協力はすばらしいものだと思う。その調査がもたらしたものもそうだし、その調査を可能にした研究者と住民との関係もそうだ。これからのゲノム疫学調査がもたらすのもがどれほど医学その他にとって有益なものになるかは、はかり知れない。しかしここでも大切なのは研究者と住民の信頼で結ばれた関係だ。この関係が壊されることがない限りわたしはこの久山町の疫学調査に賛成する。(教育学部)

・もし僕が久山町に住んでいたら、ゲノム疫学調査に参加できるかという事ですが、僕は賛成します。しかしこれは自分が町のセキュリティに信頼が出来たらです。しかし、なぜ賛成かと言うと、自分に少し利益があると言う事もあるんですが、それより自分がそんな凄い計画に参加できる事が嬉しいし、世の中へ貢献出来るからです。普通に生きていても、僕は誰かのために役に立つ事は難しいと思うんです。ただ、注意しなくてはならない事は町の全ての人がきちんと危険性を理解して自分の意思で決める事です。(理学部)

・私は賛成だ。個人の情報が漏れる可能性もあまりないようだし、実際に久山町の人たちも多く参加しているので、恐さは感じない。ただ、この前の発言の中にあったように、何かがあったときに無責任な対応をとるのでは困る。もっと緊張感をもって行ってほしい。
 自分自身が参加しようかどうかを考えたとき、私にとって場所が一番の決め手だ。例えば引っ越したばかりの所ではちょっと悩む。出身地など、やはり愛着がある所だと積極的に参加するだろう。結果的には参加することには変わりはないだろうが、それまでの気持ちが違うと思う。 (教育学部)

・私は久山町のような研究には賛成である。賛成する一番の理由は、これは前の授業 の論点だった動物実験とは違うということである。久山町の研究では今の体の状態を 調べるだけで、動物実験のように効くか効かないか分からないことをするのではな い。それで、遺伝学の発展に貢献できるなら私は協力できると思う。久山町の研究で 大きな問題の一つに情報が漏れる危険性があることだろう。しかしどんなことにで も、新しいことに挑戦したり、始めたりする時には少々の危険性はつきものである。 必要なのは、研究者と住民との信頼関係であり、その為には顔の見える研究をするこ とである。(工学部)

・私はこの調査に対して賛成です。福岡県久山町では、長年にわたり精度の高い生活習慣病の疫学調査が行われています。ゲノム疫学調査では、久山町に生活習慣病のゲノム疫学研究のための新たな追跡集団を設定し、過去40年間の臨床・剖検記録および新たに得られる遺伝子情報を一元化したデータベース(DB)を創設します。このDBを基に、バイオインフォマティクスの手法を用いて膨大な臨床・遺伝子情報の解析法を開発し、ゲノム疫学・集団追跡に適したセキュリティーポリシー研究を行います。そして、これまで報告されている生活習慣病の疾患感受性遺伝子や、現在進行中のミレニアムプロジェクトなどで見いだされる関連遺伝子のSNPsの役割・影響力について、日本の一般住民のレベルで検証します。だから、私は賛成です。(理学部)

・私は久山町のゲノム調査についてどちらかと言うと賛成であるし、自分が住民だとしても協力すると思う。理由は、研究自体がとてもおもしろそうだからであるのと、医学の発展に役立つことができるからである。人の一生は遺伝子で決まるというふうに考えていたけど、その人を取り巻く環境も同じぐらい大切な因子であるから、この研究でその辺のことがもっと明らかになればいいと思う。例えば病気にかかりやすい遺伝子を持っている人でも、本人の心がけや、環境etc次第で一生病気にかからないこともあるのではないだろうか。(法学部)

・今回は自分がディベートが苦手だということが分かりました・・・ 自分は賛成です。研究する立場としては、村全部を数世代に渡って調査できるというメリットがあり、研究対象を追い続けて行くことができます。村人としても、自分の疾病を早期に発見することができて、ありがたいのではないかと思います。問題は、村人の遺伝情報が研究員に筒抜けということですが、プリントにも書いてあったように、その問題は何十年という時間をかけて築いてきた信頼関係によって解決されていると思います。(薬学部)

反対 12人

・私は自分がこの疫学調査に協力を求められた場合、反対です。確かに、この調査は医学に多大な貢献するものであるとは思います。調査を行う上での条件など、かなり好都合な事項が多いのも事実です。しかし、やはり最も懸念されるのは個人情報の漏洩です。特に個人の遺伝情報は、住所や電話番号などとは比べ物にならないくらいプライバシー性が高いものだと私は考えており、現在様々な対策がなされて安全性が主張される一方で、万が一卑劣なことをたくらむ他人に自分の遺伝情報が知られてしまったら…と考えると、恐ろしくてなりません。ただ、100%安全など不可能かも知れませんが、そのくらいの信頼性が確立された調査システムであれば、自分から積極的にとまではいかなくても、求められれば協力に応じてみようと思うかもしれません。(法学部)

・私はどちらかといったら反対のほうである。確かにヒトゲノム解読によって今では 不治とされてた病気の謎の解明が進むかもしれないが、かえって発病しない程度の、 表面ではわからない病気の危険性まで判明し、個人のプライバシーの流出を防げない と思う。ひいてはこれが差別や選別の引き金になってしまうことになりかねないから だ。知らないほうがよいことまで分かってしまうことはある意味不幸だからだ。(工学部)

・賛成か反対かと意見を言う前に今回の講義を受けての感想を述べたいと思います。今回の話は聞いた事ない話ばかりでした、久山町だけでもビックリするのに、まさか、国ぐるみで計画を起こしていようとは。。。信じられませんでした。私の意見は”反対です。”確かにこのような調査は必要でしょう! でも、「みんなやってるんだから」みたいな圧力が感じられて、大袈裟に言うとナチスみたいになりそうで怖いんです。いくら何時間もかけても高齢者には理解が出来ない部分も出てくると思うし、情報と言うのはいくら守ってももれるものですし、ましては一町の情報管理の管理能力なら尚更でしょう。ここまで言ってなんですが、それでも研究は必要なんですよねー難しい所です。(理学部)

・僕は自分が実験体になるのは嫌だ。朝御飯が何だったか? とかを聞かれるのは別にかまはないが、死んだ後に内臓とかをサンプルとして取られたりするのは嫌だ。それでも福岡県久山町の人達や、他の人がやってくれるならありがたい。僕には彼らを止める権利はないし。僕は未来の子ども達のために自己犠牲的にはなれない。たとえ僕が特異な遺伝子を持っていたとしても。(理学部)

・今回のテーマについてはどちらかというと反対です。疫学調査について町民の方々は実際のところ好意的に受け入れているのか気になります。受けなかったらどうか思われるのではないかと仕方なく受けるといった人も少なくないのではないのでしょうか。また、町も「健康宣言」と高らかに謳い上げていることもなんだか引っかかります。まだ「健康」を手に入れられる段階でもないのに少し大義名分なような気がします。なにも1つの町に限らずボランティアを募ればよいと思いました。町単位ではなく本当に疫学調査に賛成している人が貢献したらよいのではないでしょうか?(工学部)

・福岡県久山町のゲノム疫学研究について、私は反対です。研究自体は必要だと思うし、オーダーメイド医療も実現してほしいと思っています。しかし私は、久山町の住民の方々が、研究の内容や、研究の対象となることのマイナス面も知ったうえで“本人の”意志によって参加しているのか疑問に思います。周りに流される人もいると思うし、子供など意志能力に欠ける人を対象にするとき、後見人の同意を得たからといって本人の同意が得られたとみなしていいのでしょうか。研究を行う側に関しても、「これから先も久山町の住民なら研究に協力してくれるだろう」と決めつけている部分があるような気がします。研究を行う際にはその都度住民各個人の意志を確認してほしいです。また、住民の個人情報が漏れないようにしてほしいと思います。
 最後に、私自身に置き換えて考えると、私はあまり研究の対象になりたくはありません。個人情報が漏れないとも限らないからです。個人情報をきちんと管理して保護するシステムができあがらない限り、自分の遺伝子情報を提供するのは恐い感じがします。(法学部)

・私は反対である。反対の理由として3つの問題を考える。  まず情報の流出。遺伝情報は本人のみならずその家系の人達にも影響がある。つまり流出した場合、遺伝子情報を知られたくないと思っている遠くの親戚の結婚や保険などに悪影響を及ぼす可能性があるのだ。それなら流出しなければ良いとも考えられる。しかし、マザーコンピュータなどに軽々侵入するハッカーを完全に防げるとは思えないし、場合によれば欧米のように企業がハッカーを雇うという可能性も否定はできない。名前ではなく、番号等のみ載せるということにしても良いのではないだろうか。また、久山町の医局員は町民との関係を深めようとしているようだが、深まれば深まるほど町内での情報流出の可能性は高くなる。親密になる事が良い事だけをうむわけではないのだから、もっと慎重に考えるべきである。
 次に費用。かなりの額なのでいつになるか分からない利益還元よりその時の町民への対策をすべきである。いずれは国から何かしらの補助が出るかもしれないとも考えられるが、今の財政からそれが充分な額とは思えないし、地方自治体が独自に行っていることなのに一部を優遇させるような策を国としてとるかも怪しい。なによりその補助自体がいつになるか分からないものであてにすべきでない。そうなると民間企業の補助になるが、これは情報の流出を助長するおそれがある。
 そして意思の不自由。町として行っているため、参加すべきという風潮になって個人の意思を自由に反映させることが難しくなる。確かに研究する方としては同じような環境での均一な情報の方が便利である。しかし大切なのは研究の成果の前に人権である。研究のためにそれを侵すようなことはあってはならない。広く募集して、その上で地域ごとに情報を整理するとか別のやり方をすべきではないだろうか。(法学部)

・自分が久山町の町民なら多分この医学研究に参加しない思う。住民はこの研究に対し医学の進歩に貢献しているというプライドをもって取り組んでいていて町民のほとんどが検診をうけており、しかもそれが何十年も続いているから、そこで生まれ育ったら、そのような環境があたりまえになっていると思う。しかし昔の研究目的は生活習慣病の原因究明とその予防法の確立であったが最近では遺伝子多型検査も加わり目的が遺伝子データの収集になってきている。今までに収集された臨床データは遺伝子解析に必要不可欠でありその意味で久山町は願ったりかなったりのところだが、今その研究の目的がかわったところで、遺伝子という人間の真のアイデンティティを他人が知ることになる(情報が外に漏れないとしても少なくとも研究員には知られる)。遺伝子情報がその人間のすべてではないが何か自分の体、心まで見透かされているようで嫌だ。もしこれが外に漏れたら最悪である。(工学部)

・村ぐるみでの遺伝子の研究は賛成しかねます。なぜなら自らの意志で参加してるかどうかアヤフヤだからです。村ぐるみで参加していたら参加しないわけにはいかなくなり意志がないにも関わらず強制のような形になってしまうと思ったからです。その場合、自己の意志や研究の知識に乏しい子供までも研究に参加させられることになってしまい人権や自由を束縛してしまう形になってしまうのではないでしょうか? もっと参加者の意識等を明確にさせるべきだと思います。(理学部)

・客観的に観るならば、このような取り組みはこれからの医療に必要なものだと思うので、積極的にやっていかなければならないものだと思います。が、しかし、いざ自分が久山町の住人だったとすると私自身は協力したくはありません。ゲノムの情報は、電話番号や住所とは比べものにならないほどの危険性をはらんでいるからです。絶対に情報が漏れないという保証があれば協力もできるでしょうが、現状の情報管理技術では、それは不可能なものですので、早急に情報技術の発達を望みます。(薬学部)

・個人的には現段階での調査には反対である。きちんとしたセキュリティ対策が、国の指導のもとでそれなりの予算を組んで行われるようにならないと、地方と大学の提携のような状態では自分の究極の情報とも言えるゲノム情報をまかせることは出来ない。将来的には必要なことだとは思うが・・・。(工学部)

・賛成か反対か→村の人たちの立場になれば反対だが、事実を知るためには誰かが犠牲にならなければならない。難しいところだ。村単位でするのではなくいろいろな場所からということはできないのだろうか。(教育学部)
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