2003年度 レポート第10回 回答集
熊本大学
生命資源研究・支援センター
バイオ情報分野
荒木 正健
Tel : (096) 373-6501, FAX : (096)373-6502
2004年 5月 5日作成
2003年度 生命科学G レポ−ト第10回(2004年1月14日実施)回答集
[ テーマ ]ヒトES細胞を用いた研究に賛成か反対か
[ 回答 ](全13人)
・ひとのES細胞を用いた実験には基本的に賛成です。拒否反応が出ない臓器移植や、骨髄移植が実験の結果医療現場で利用可能になると思ったからです。しかしそこで思った事なのですが、病気になった人のES細胞に欠点は現れないのでしょうか。その人が冒された病気を再発(?)したりはしないのでしょうか?それについて確固とした保障がされたならとても良い新たな医療技術だと両手を上げて賛成できると思います。(教育学部)
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非常に重要なポイントに気付きましたね。ザブトン3枚あげます。これはクローン人間の話でも言えることなのですが、病気や障害の原因が遺伝子に由来するものであれば、全く同じことの繰り返しになります。そこで、現在マウスES細胞で行われているようなジーンターゲッティング技術により、ES細胞レベルで遺伝子治療を行うということが(理論的には)可能です。また、遺伝病であってもその発病には環境要因も影響を与えていますので、ES細胞を用いた治療に環境因子を絡ませることで再発を防止する試みも考えられると思います。また、大人になってから発病する遺伝病の場合、フレッシュな細胞を供給することでリセットされ、数十年先まで時間稼ぎが出来るかも知れません。つまりいろんな可能性があり、研究が必要ということです。(コメント by ARAKI)
・私はES細胞を用いた研究に賛成です。このES細胞はいわば無限の可能性を秘めており、倫理上の見解では賛否両論あると思いますがこの研究が完成し、人に適用されるようになれば、多くの人の命が救われることは間違いありません。しかし、多くの反対論を唱える人たちの『ES細胞は人となりうる細胞である』と言う意見ももっともだと思うのです。この見地から見ると研究すること自体がその細胞の人になると言う権利を奪っているのですから問題となるわけです。こうみると、この問題は「どこから人と呼ぶか」と言う問題も孕んでいると言えます。(法学部)
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「どこから人と呼ぶか」というのは、とても重要な問題です。正解はありませんが、生物学的には「受精卵から」という答えになると思います。受精した瞬間から発生という現象が始まり、死ぬまでの連続した生命活動がスタートします。「死んだら人ではなくなるのか」という問題もありますが。 (コメント by ARAKI)
・ヒトES細胞を使った研究の論点になるのは「胚を壊す」ということで、それゆえに倫理的な観点から反対が多いそうです。確かに科学の暴走は、もはや文明に発展を通り越して崩壊をもたらす恐ろしい可能性を秘めています。それに対して倫理面からある程度のブレーキをかけることは必要だと思います。しかし、その「倫理」がある特定の考え方に強制された、意図的なものならば、話は別です。強制された「倫理」ではなく、自分達のなかにある倫理でこういう問題は考えなくてはいけないとおもいます。前回の授業を聞いて、そう思いました。で、結局研究には漸進的なものならば、賛成します。(文学部)
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「胚を壊す」行為が殺人になるかどうか。堕胎や、逆に生殖工学を用いた不妊治療をどう考えるか。研究者や医者の倫理観が問われるのはもちろんですが、現代社会で生きている人全てが、自分の問題として考えなければならないことだと思います。 (コメント by ARAKI)
・ヒトES細胞を用いる研究についての賛否に関わる問題として、最も重要なことは生命観、人の命に対する倫理観です。この研究では、いずれは胎児へと成長していく途中の段階である初期胚を利用しますが、この受精卵の段階で人間の命と見るか否かが主な論点となっています。人の価値観は無数にあるのですから、これを踏まえた上でどう扱うかは、今後も課題となり続けるでしょう。
私個人の意見としては、まずヒトの細胞をクローニングすることについて、完全な個体を複製するということには勿論反対です。倫理的な理由もあるのですが、なによりも人権問題でES細胞などとは比較にならない問題が発生しうるからです。オリジナルとの関係性や個人としての扱い、差別問題など、きりがありません。しかし、ES細胞の研究については倫理的に反対するのは、少々潔癖すぎるように感じます。単純に、受精卵の段階で人間と見なす発想に疑問をもつだけなのですが、これは価値観や宗教による倫理観などによって千差万別なので、どちらが正しいとは言いきれないとも思います。
また、なにより私は常に、「医学や遺伝学は、まず現在苦しんでいる人々を助けるために使うべきだ」と考えています。多くの人を救えるもの、それは多少の価値観の違いなどものともしないものだと。しかしこの場合は、それに関わるES細胞についても生命観の問題が絡むために、難しいところではありますが。現在、ES細胞については特にパーキンソン病や糖尿病などの治療に役立てる研究などが進められているそうですが、全ての細胞になりうるES細胞は、研究が更に進めば他にも様々な病気の治療に役立てるといいます。つまり、より多くの人々を助けることができるものなのです。
しかし健康な人間がいくら語っても、どちらの立場であれ持てる者だからこその正論のようにも感じ、結局は対象の病を患う者次第のようにも思えます。勿論、患者の立場であってもES細胞の施しを受けるくらいならこのままでいいという価値観の人もいるとは思いますが。とはいっても、このES細胞が利用されれば誰かが助かるのは事実です。それは一人や二人というわけでもありません。それだけで十分価値のある研究だという考えは、決して間違ってはいないと思うのです。(法学部)
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現在ほど「人の命に対する倫理観」が問われている時代はこれまでに無かったと思います。バイオテクノロジーの進歩がその一因であることは間違いありません。その一方で悲惨なテロが頻発しますし、テロに対抗するという理由で国家による殺人が繰り返されます。正解は無いと思いますが、自分で考えることは重要です。 (コメント by ARAKI)
・どちらとも言えない。そもそも遺伝子や細胞をいじってしまう技術というのは人間の手には余る技術だと思う。が、それによって直る病気、助かる命があることも事実。そのような技術の研究で生きれる人がいる限り、それを禁止してしまうのはその人たちを見殺しにする気がする。でもやはり生は生、死は死だとも思う。故に賛成も反対もできない。(工学部)
・医学部 近藤靖クローン人間を造るというなら私は反対だ。また各国も連携してクローン人間を造る事を禁止する対策をたてるべきだと思う。大人の細胞からクローン人間を造る際に生まれた赤ん坊はすでに細胞が老化しているという事を聞いた事があるが、当然それでは生まれた子はかわいそうであるし、また倫理面から言っても最低の行為であると思う。しかし、ES細胞の研究には賛成であるし、これからも続けるべきだと思う。ES細胞は人間のどの部位にもなり得る細胞であるから、特定の臓器だけを造る技術とそれを移植する技術が確立すれば、ドナーを待つすべての患者が救われるだろう。ES細胞とクローン人間とは表裏一体であるとも思うので、正しい方向に持って行かなければ危険な物にもなるが、そこはしっかり法整備をしていくべきだと思う。(医学部)
・自分と同じDNAを持つ臓器を複製できるというのは拒否反応が起こらないという点でとても良いと思います。しかし、ヒトのクローンを作るのはいけないと言われている中、治療のためとはいえ、ヒトの一部を作り出してよいのだろうかとも思います。どこからどこまでのクローンなら作って良いかという境界線を引くことが重要な問題だと思います。(法学部)
・私は賛成です。まず、ヒトのES細胞を使った研究に対して不道徳で非倫理的であるという意見には疑問をもちます。というのもいくら人の細胞とはいっても細胞は人ではないので研究が非人道的であると言うのは違っているような気がするからです。もう一つの賛成理由は、再生医療です。例えば臓器移植の必要な患者のES細胞をとってそれから移植する臓器をつくれば移植した際、拒絶反応も起きません。以上のことから私は賛成です。(工学部)
・ヒトのES細胞を用いた研究に対して、自分としては賛成である。なぜなら、その研究の結果として与える利益は大変大きいと思われるからだ。例えば、生まれつき、あるいは、事故等によって体の一部を失った人にとっては義足や危険があるかもしれない他人からの移植よりも十分安全で満足できるものであろうし、また、子供を失った人にとってはクローンを作ることによって子供が蘇るということは大変うれしいことであろうと思われる。ただ、利益は大きいとはいえ、様々な問題点を抱えていることも事実である。人間が立ち入るべきではない神の領域であると言った抽象的倫理観からや、ヒトラーといった独裁者を復活させることになり、世界の危機を招くといったこと、また、生物兵器といったことも含めて、国家の権威の拡大に悪用されるといったことでも批判される。とはいえ、実際のところ、良い使われ方あるいは、悪い使われ方といった区別は個人の主観によるし、ヒトだけを特別扱いしたような倫理観にも賛成はしかねる。とはいえ、問題も大きい。であるから、それをどのようにして防ぐかということが重要ではあろう。法は国の利権がからんだものであるし、それは国連で決めても同じことだろう。それぞれ国の代表はそれこそ国を代表して来ているのだから自国に利益がないことには賛成しないだろうからだ。けれども、実際には法以外問題を防げるものもない以上、明確な法を決めてもらうしかないだろう。難しい問題ではあるが、多くの人の納得のいく、明確な規制法が決まることを望むばかりである。(医学部)
・私はES細胞を用いた研究に賛成です。その人自身のES細胞から臓器などをつくれば、臓器移植をするとき拒否反応がなくなるとききます。これは非常に大きなメリットだと思います。人全部のクローンではなく部分的なものなので、倫理的な抵抗もクリアできて欲しいものです。(医学部)
・私はES細胞を用いた研究に賛成です。ES細胞は自分の細胞なので人工的に作られたものよりも安全である可能性が高いし、なにより無限の可能性を秘めていると思います。ただクローン技術を人間に応用するのは絶対反対です。クローン人間にも人権はあるはずだからです。ES細胞は人間のパーツのみを形成するだけなので倫理上問題も少ないと思うのですが、クローン人間の場合は、我々の倫理観を根底から覆すような気がしてならないのです。(法学部)
・ES細胞を使った治療自体には賛成だ。しかし、ES細胞の技術は、クローン人間を作ることも可能になると思う。間違った方向に進歩することは非常に怖いことだと思う。国家、又は世界共通の基準を作り、純粋に治療に使うように方向づけしなければいけないと思う。いくらでも悪用できる技術でもあると思うので、しっかりした基準、法を制定する必要があると思う。(法学部)
・この問題も今まで同様に倫理観念において重視されている。だからこそ中途半端なままでの使用は大変危険であると思うので、しっかり研究して使用すべきだと思う。(工学部)
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