2003年度 レポート第4回 回答集

熊本大学
生命資源研究・支援センター
バイオ情報分野
荒木 正健
Tel : (096) 373-6501, FAX : (096)373-6502
2004年 5月 5日作成

2003年度 生命科学G レポ−ト第4回(2003年11月 5日実施)回答集

[ テーマ ]遺伝子組換え食品について

[ 回答 ](全15人)

・遺伝子組み換え食品は最近あまり目にしなくなったように思います。一時期多くの食品が市場に出回りましたが、消費者運動で「まだ安全性のはっきりしない遺伝子組み換え食品を食べるのは、不安だ。」という声が高まったから、という風に記憶しています。実際に害虫を寄せ付けないように改良された野菜の花粉を食べた虫は死んでいました。いくら現在における安全性は確認されているといっても、食べたいとはだれもが思わないでしょう。また人体に対する影響だけでなく遺伝子組み換え作物による土壌などの生態系への影響も懸念されています。技術が向上しているのはすごくいいことだと思うし、農家も助かるのかもしれませんが生活の中に取り入れることにはまだ抵抗があります。(法学部)

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 これまでの遺伝子組み換え作物(GMO)の開発が、農家の(農薬製造企業の?)利益優先だったことは不幸な事実だと思います。(コメント by ARAKI)

・昨今、遺伝子組み換え食品はあちこちで取り上げられ、表示の義務化など様々な指針等も発表されている。遺伝子組み換え食品はこれから迎えるであろう人口爆発による食糧危機から人類を救うためには大変有効だと思われる。また、ある栄養分の量を増やすことで、薬を使わずに食品だけで治療ができたりして大変便利で理想的なものであると考えられる。しかし、現在、実験において問題が発見されているのも確かではある。私自身としては、絶対反対という立場を取る気は毛頭ないがやはり、表示の義務化、また常なる監視といったものが必要であると思う。これから研究が進み、より安全なものができるこを期待したい。(医学部)

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 遺伝子組換え食品について、表示の義務化と監視体制については、ここ数年でかなり進んでいます。(コメント by ARAKI)

・遺伝子組換え食品について懸念されることは、その食品としての安全性と、組換え作物の栽培による生態系へ及ぼす影響である。例えば、コンタクトレンズといった数十年という長い期間使用した後の影響が分からないのと同じように、組換え食品も、現時点では影響無いとしても、老後に何かしらの障害がでるかもしれない。私は組換え食品に信頼がおけないので、なるべく避けるようにしている。(理学部)

・遺伝子組み換え食品と聞いてまず考えるのは人体にどのような影響を及ぼすのかということです。遺伝子組み換え食品の恐いところは食べてすぐに害が出るのではなく、微量な有害物質を長期間体に採り続けることによってアレルギーやガンの原因となり、それが長期にわたる影響や世代を越えた影響を及ぼす可能性があるということです。これだけのリスクを負ってまで遺伝子組み換え食品を開発させる価値はあるのでしょうか。すべての安全性などを調べ終わってからこそ実用化すべきであると思います。(法学部)

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 「長期にわたる影響や世代を越えた影響」を人体に対して調べることは不可能です。別な言い方をすると、現在私たちが口にしている物で、このハードルを越えられる物がどれだけあるか疑問です。私自身は、出来るだけ人工添加物や農薬を避けるために地域生協に参加しています。 (コメント by ARAKI)

・遺伝子組換え食品についての話題は、私も数年前から耳にするようになりましたが、大抵は遺伝子組換え食品そのものに対する漠然とした不安であるように感じます。本当に悪影響がないのか、などといったマスコミの煽りなどにも原因があるのでしょうが、やはり何よりも、それが多くの人にとって未知のものであり、具体的に何も知らないことが原因だと思います。何も知らないということは、それが自分にとって有益なものか無益なものか、はたまた害悪のあるものなのか、そういった分別すらつかないということです。そういったものに対して、「関わらない方がいい」と考えるのはごく自然なことです。
 しかし、遺伝子組換え食品は、これまでに多くの農作物を自分たちの好みに合わせて品種改良してきた、その延長線上にあるに過ぎないとも思います。農作物の品種改良。より安全な、美味しい食品を提供するため、必要なことだと思います。そして、その改良された農作物などを私たちは何の疑問も持たずに受け入れてきました。
 遺伝子組換え食品も、そういった研究の末に生まれた食品のひとつです。しかし、この食品を摂取することに多くの人々が抵抗を感じているのが実情です。何故抵抗を感じるか、答えは単純で、その名称と性質ゆえでしょう。私たちにとって、遺伝子の領域とは直接触れることのできない領域です。そして、生物の構成においてそれを区別する最小の単位だという認識があります。要するに、遺伝子そのものに神秘性を感じているのではと、思うのです。
 遺伝子組換え食品に対する抵抗については、安全性に対する不安も勿論その大きな理由のひとつでしょう。しかし私が思うに、いまだに添加物豊富な食品を問題なく摂取している人々の方が余程危険です。また、いくら安全性を説いてもそれだけでは、この抵抗や不安は消えないと思います。安全性に対する不安は最大のものではない、そう思うのです。やはり、遺伝子組換え食品という存在そのものに対する不安、不信感が何よりの理由ではないでしょうか。遺伝子に感じる神秘性、というのはつまりそれを知らないために生まれるものともいえるでしょう。
 遺伝子組換え食品、それを広めたいのなら、なによりもまず遺伝子そのものについて、その人々に正しく知ってもらうのが大切だと思います。正しい認識もなく漠然とした不安だけで避けられていては、その食品も浮かばれないというものです。私は人々の先入観や第一印象こそが、商品の売り上げに対して最も影響する要素だと思っています。今現在遺伝子組換え食品に対するそれらを払拭することは難しい話かもしれません。しかもこの場合、食品そのものでなく遺伝子というものに対する先入観からきているものなのですから。しかしいつの時代か、遺伝子組換え食品が、そして遺伝子を操作して人間社会に役立てることが多くの人々に受け入れられる時代がくるかもしれません。正しいものだと、有益なものだと、そう認識されたならば、それは受け入れられるものです。「だから、まずは正しい認識を」そう、思うのです。(法学部)

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 『遺伝子に感じる神秘性』が「好奇心」や「親近感」ではなく、「抵抗」につながっていく理由は何でしょうか? 非常に重要な問題を含んでいると感じます。私を含めて、生命科学の研究を行っている者が忘れている事、見落としている事があるような気がしてきました。(コメント 及び質問 by ARAKI)

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 私が思うに、多くの人々は遺伝子に対して神秘性を感じつつ、またそれゆえに「それは、触れてはいけないもの」と感じているのだと思います。決して「身近な存在」だとは感じていないだろうと。俗な言い方になりますが、「神の領域」だと。だから、「遺伝子を操作すること」には抵抗を感じるのではないかと思うのです。またそうでなくとも、「これまで踏みこまなかった領域」をアピールすることは、たとえ実質的には、広義にはこれまでの品種改良と大差ないことでも、消費者に与えるイメージというものは大きく異なり、「異質のものだ」という抵抗感が増すのではないでしょうか。(質問に対する回答)(法学部)

・ある本で読んだのだが、「性」を持つ生物が子孫をつくるときには必ず遺伝子組み換えが起こっているそうで、しかもそれは種の壁を越えて起こってきたという。難しいことはよく分からないが、遺伝子的に見れば全ての生物は親戚同士であり、遺伝子解析を進めれば生物全体を巻き込む巨大な系統樹が描けるらしい。
 このことは生命の歴史における事実だろうし、受け入れなければならないものだと思う。ということは、遺伝子組み換え食品は自然の摂理に反したものだとは言えなくなる。むしろ農薬まみれのものより安全ということになってしまう。しかしそれでも私は遺伝子組み換え食品は食べたくない。人間にばかり都合が良くても、生態系レベルではどんな現象を併発するかわからないし、人間の知恵もすべての事態を予測できているほど優れたものではないと思う。それに遺伝子技術自体が最近急激に発達したものであって人間はその驚異に圧倒されている感じが強い。もう少し時間が必要だと思う。だけど、外堀が全て埋まれば食べさせられてしまうのだろう。(文学部)

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 通常の細胞は父親から受け継いだ染色体と母親から受け継いだ染色体をセットで持っています。染色体の数は2nで表されます。ところが、生殖系列の細胞だけは、減数分裂という特殊な細胞分裂により、染色体数nの生殖細胞(精子と卵子)になります。その減数分裂の際に、遺伝子組換えという現象で父親由来の遺伝子の一部が母親由来の遺伝子の相当する部分と交換されます。しかしながら、種が異なる場合は正常な子供は生まれません。種の壁を越えて遺伝子組換えが起こることは、通常はありません。ただし、細菌やウイルスのゲノムが、感染した細胞のゲノムに入ることはあります。
 第1回の講義で話した内容なのですが、現在地球上で知られているすべての生物は共通の遺伝暗号表を使用しています。このことは全ての生物が共通の祖先から進化したことを示唆しています。
 遺伝子組換え実験という場合は、異なる種の遺伝子を結合させ、生きている細胞の中で増やすことを意味します。自然界では起こりません。従ってバイオハザードを防ぐために、P1,P2,P3,P4という物理的封じ込めが行われます。しかしながら、遺伝子組換え食品の材料である遺伝子組換え作物(GMO; Gene Modified Organism)は、野外で栽培されます。つまり物理的封じ込めが(ほとんど)行われていません。別の言い方をすると、実験ではなく、既に実用化されているということです。同じことは、遺伝子治療についても言えます。ADA欠損症の遺伝子治療に成功した患者さんは、実験室の中ではなく、ごく普通に生活しています。
 実は、遺伝子組換え食品そのものよりも、むしろその材料となる遺伝子組換え作物の取り扱いが重要なポイントになります。確かに食品そのものは農薬まみれのものより安全です。これは事実だと思います。しかしながら、物理的封じ込めが本当に必要ないのか、まだ疑問が残ります。この疑問を解消するために、筑波大学遺伝子実験センターで、現在基礎的なデータを蓄積する作業が進められています。(コメント by ARAKI)

・遺伝子組み換え食品と聞くと、いつも安全性が問われている話を聞き、何か望ましくないもののようなイメージがありました。しかし、今回調べてみて自分は遺伝子組み換え食品は随分安全なものではないかと思いました。例えば、Btコーンについてですが、害虫の場合、コーンを食べてBtタンパク質を取り入れると、消化管の中でそれが殺虫効果をもつ形に活性化され、受容体と結合し消化管が破壊されて死ぬそうです。しかし人間の場合、胃の中は酸性で消化管内の環境も害虫とは異なるのでBtタンパク質は活性化されず害にならないそうです。そして、食品の製品化にあたっては、必ずそういった試験がされており、問題があれば製品化はされないそうなので、安全の面ではほとんど問題がないように思います。遺伝子組み換え食品のメリットとしては、人口増加に伴う食料危機の対応になることと思います。デメリットとしては人には害はなくてもその他の生物の生態系に影響を及ぼすと思います。最後に自身の意見としては自分の調べた限り科学的根拠で安全が確認されいるので遺伝子組み換え食品には賛成です。(工学部)

・豆腐や納豆に「遺伝子組み換え大豆不使用」という表示をみかける。そこをアピールするということは遺伝子組み換え、という技術への人々の信頼の低さを表している気がしてしまう。(工学部)

・遺伝子組み換え食品は100%安全とはいえないので敬遠する人も多いが、自分は遺伝子組み換え食品だから食べないということはない。そうではない食品が本当に安全かどうかを考えると必ずしもそうは言えないので、遺伝子組み換え食品じゃないからといって安心はできないからである。自分は食品には常に多少の危険が潜んでいると考えているので、どっちにしろ自分にとってはあまりかわらない。アフリカの人口爆発などを考えるとより効率のよい作物が必要になってくると考えられるので、早く実用化されるといいと思う。(法学部)

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 遺伝子組み換え食品は既に実用化されています。しかしながら、2002年に食糧危機に直面 した南部アフリカで支援のGMトウモロコシの受け入れを拒むという事件もありました。とにかく作れば良いという時代ではないということでしょうか。(コメント by ARAKI)

・遺伝子くみかえ技術は、どのような危険があるかわからないということで今まで少しずつ進歩してきたわけだが、表示基準が各国で違うことなどから、まだ色々と進歩の余地があるということだと思う。私は遺伝子くみかえ食品に反対ではないので、科学技術でもって質、値、ともにいいものを開発する努力を続けてほしい。(医学部)

・遺伝子組換えは危険な要因を含んでいると思う。組換えをすることにより昔からある遺伝子の配列などが変わってしまい、突然変異を起こした生物として人類へ危害を与えることになるような気がしてならない。(法学部)

・今、遺伝子組換え食品が広く使用されているが、僕はその使用は決して悪くないと思う。そのもの自体も良くなるし、大量生産も可能になる。だがして欲しくないことは、そのものの自然の姿と言うものを失わない様にするべきだと思う。(工学部)

・遺伝子組換え技術は生物から役に立つ遺伝子を取り出し、改良しようとする他の生物に取り入れる事によって農作物などを短期間で品種改良する技術である。
 まず、生物から役に立つ遺伝子を見つけて、その遺伝子だけをとりだす。この際「制限酵素」と言われる特殊な酵素を使う。この際授業で習ったPCR法を用い、遺伝子を増幅させる。この技術はとても有効であると思う。しかし、厳正な安全検査を行い、遺伝子が正しく働いているかどうか調べないと、危険なものでもある。消費者も表示などを見て、その安全性をきちんと確認しなければならない。(医学部)

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 「制限酵素」も「PCR」も、全く安全な技術です。もっと言えば、「遺伝子組換え技術」そのものも全く安全な技術です。注意しなければならないのはその使い方です。「都市ガス」や「電気」と同じ様に、きちんとルールを守って使用すれば問題ありません。 (コメント by ARAKI)

・遺伝子組換え食品についてですが安全の保障が確立するまでは農業の現場に取り入れるべきではないと思います。研究の場で実験が成功したからといって実際栽培する上で必ずしも成功するとは限りません。また、何年何十年という先に人体への影響が出るかも知れません。可能性が未知数な技術だからこそ慎重な考えが必要だと思います。(教育学部)

・今の世の中では、「遺伝子組み換え食品=危険」というイメージが強いような気がします。確かに、“生命の設計図”と言われる「遺伝子」を「組み換え」して、それを食品として摂取するなんて、一度聞いただけでは想像すらつかないことです。また、遺伝子についての十分な知識は必ずしも皆が持っているわけではないので、漠然とした不安・疑問がおこってしまうのは言うまでもありません。私は「遺伝子組み換え食品」に賛成派ではありますが、もちろん全ての不安や疑問が消えたわけではないので、それはこれからの発展に期待したいと思います。
 「遺伝子組み換え食品」の必要性と安全性を世の中に確信させることが、未来の科学にかかわっていく私達の使命である。私はそう思っています。(工学部)

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