2003年度 レポート第5回 回答集

熊本大学
生命資源研究・支援センター
バイオ情報分野
荒木 正健
Tel : (096) 373-6501, FAX : (096)373-6502
2004年 5月 5日作成

2003年度 生命科学G レポ−ト第5回(2003年11月12日実施)回答集

[ テーマ ]続・遺伝子組換え食品について

[ 回答 ](全15人)

・先週に引き続き遺伝子組換え食品についてという事ですが考えは基本的に先週と変わりません。しかし今週の資料とディベートで考えたのは(大筋から外れますが)何らかのトラブルが遺伝子を組変えた植物のせいで起きたとして責任は政府だけに行くのだろうかということです。もしそんな事件が起きたとして研究者は罰せられるのでしょうか。またそういった事態への対応策はあるんでしょうか。起こるかも分からない事ですが良い面だけを見て楽観視するのではなくしっかりした対応策を練るべきではないか。(教育学部)

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 問題が起きた場合の責任ですが、研究者が罰せられることは無いと思います。一般的に(GMOに限らず)、ほとんどの場合、一人の研究者が最初の発明から製品の製造まで関わることはありません。また、ひとつの製品には数多くの発明が利用されています。従って、最終的にそのトラブルを起こした製品を製造した(開発した)者あるいは会社が責任を問われると思います。逆に、政府は責任をとらないような気がします。また「そういった事態への対応策」は無いと思います。一般的に『そういった事態は起こらない』という前提で進められますので、許可した時点で「予期できなかった事態」について責任はとりませんし、対応策も考えていないと思います。(コメント by ARAKI)

・今回の授業を聞くまで、正直、遺伝子組み換え食物の花粉のことまでは考えたことはありませんでした。しかし実際に、知らない内に遺伝子組み換え作物の花粉が入り込み、さらに訴訟まで起こされるということがアメリカで起こっているということを知り、驚きを感じました。私個人としては今まで、遺伝子組み換え作物を作っても、消費者は選ぶことができるし、別に栽培してもいいんじゃないかと思っていましたが、やはりこのようなことが起こるのであれば表示すらあてにできず、消費者は選ぶということはできないということになってしまい、今までの考えを改めなくてはいけないと感じました。ただ遺伝子組み換え食物は「医食同源」と授業でも言っていたように、医学的面から患者さんに選択の幅を広げるといった面でインフォームドコンセントが大事となってくるこれからの世代に必要だと思われます。筑波大で花粉の飛び方等を研究しているらしいので、これからはそういった研究が進み、周りへの影響が分かり、そして、周りに影響を与えるのであれば、隔離施設中で栽培をするなどの工夫をして欲しいと思います。(医学部)

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 『隔離施設中で栽培をする』というのは、以外に現実的な選択肢ではないかと思います。既に多くの(天然の)植物が、クリーンな環境の中で土を使わずに栽培されていますので、遺伝子組換え体による環境汚染を防ぐという意味だけでなく、害虫やウイルスなどの害を防ぐという意味からも検討する価値はあると思います。(コメント by ARAKI)

・遺伝子組み換え食料の是非について私は賛成の立場に立った。今は安全性についてはっきりしていないが将来需要の面からも必要になると思ったからだ。また将来必ず安全なものを生み出せるとおもう。しかし反対の方の意見を聞いて感じることも多くあった。まだ完全に安全なものではないし、現在問題が色々あるのも確かだからだ。討論が終わって賛成か反対かはっきり言えなかった。いま答えを出せる問題ではないのだろう。答えを出すにはまだ長い時間が必要だが、他の遺伝子技術についてもこれから考えていきたい。(医学部)

・何事にも、それにメリットとデメリットがある以上、賛否両論どちらも必ず生じ、対立が生まれるものです。遺伝子組換えのケースも例外ではなく、またそれ以上の根本的な対立、例えば自然と科学、農家と企業などといった背景も感じました。それらの問題の大きさゆえに様々な意見が飛び交いますが、賛否以前に現状を見る限り、遺伝子組換え食品の商品化、実用化は時期尚早だったと考えるのは私だけではないでしょう。この点においては少なくとも、遺伝子組換え食品は失敗したといっても過言ではないと思います。販売戦略やタイミングなど、商品を売るために必要な要素はいくつかありますが、それ以前の問題があります。それを受け入れるための最低限の土壌のようなものです。それが消費者の間に浸透しないかぎり、どんな商品も受け入れられるのは困難です。しかも今回のケースでは、土壌が「ない」という問題ではなく、その土壌が「受け入れられにくい」というネガティブなものだったために尚更です。また、単純に遺伝子組換え食品自体が発展途上だという理由もあるでしょう。完全な安全性の確保といった基本的な部分から、消費者へのアピールポイントの乏しさといった商品としての側面まで、市場に出回るために十分な条件を満たしていたとは考えにくいところが多すぎます。何故受け入れられない土壌が育ったのか、またどうすれば受け入れられるのか、それを私なりに考えてみようと思います。

 遺伝子組換えに賛成か反対かといっても多くの主張があげられますが、どちらにおいてもまず、人間の科学技術に対する信用の問題のように思えます。要するに、期待か不安か、ということです。この場合でいえば、遺伝子組換え技術の発展による有用な食品開発に賭けるか、現状の食文化に科学のメスを入れて壊されることを避けるかといったところでしょうか。私としては科学技術の発展には、有益な産物に期待したいと思っていますが、当然人間の作り出すものに完璧なものなどなく、不安が生じるのも分かります。ただ、私はそれゆえに留まることよりも、可能性を信じて進む方が少しは有意義なことだ、そう考えるだけです。

 遺伝子組換え食品は、それがあくまでも「食品」であることも大きなポイントだと思います。人が摂取するもの、人の一生とは切っても切り離せないもの、これまでに様々な文化や産業と結びついてきたものだからこその問題です。食次第で身体から精神まで、人間の状態はいかようにも変化します。だからこそ、食には慎重にもなり、その他のケース、例えば電化製品の新商品を選ぶときとは事情も異なります。
 また、電化製品があくまで人間が生み出した科学技術であることに対し、食品、特にこの場合は作物ですが、その作物は元々自然にあったものであり、そこでは遺伝子技術は、根源的な部分における自然物への介入に他ならないのです。農作物においてはこの問題は大きく、人工的な介入が増せば増すほど、宗教的観念や倫理問題から自然食主義、スローフード推進派まで、その改変行為や安全性への反発や疑惑が増し、そういった人々の主張は決して途絶えることはありません。
 食という点のみでいえば、単純に食文化が発達した国々、更に加工食品の氾濫を経験した先進国では特に、食における贅沢さにおいて人工のものや加工食品よりも、天然のものや産地に伝統や独自性をもつ生産物を奢侈品と見なすことが多いものです。食が人々に欠かせない要素であるゆえに生まれた文化であり、日々の必須事項であるために充実さを求めることも頷けますが、逆にいえば全ての人間が避けられないということは、つまりそれだけ需要のある要素に多様性が生じるということでもあります。例えば、材料のひとつから拘る人もいれば、効率性を重視して既製の食品ばかりを摂ったり、食べられるなら最低限の質で構わない人もいます。食を最重視して金に糸目をつけない人もいる反面、できるだけ節約する人もいるのです。遺伝子組換え食品が受け入れられるようにするなら、そこを狙わなければ無理だと思います。需要の多様性のひとつを。しかし、売れる新食品にはそれ相応のメリットがあるために売れているのであって、しかも遺伝子組換え食品のようにマイナスイメージが付きまとう場合には、それを相殺し更に上回るほどのメリットを感じさせなければならないはずです。それを殆ど感じさせないのが現状といえます。これをどう改善して新しい商品を生み出すか、それが遺伝子組換え食品の研究における大きな課題だと思っています。必ず、遺伝子組換えという技術でなければ生み出せないメリットがあるはずです。そうすれば、新しい需要が生まれるのは必然だと思うのです。

 また、棲み分けということを私は重視して欲しいと思います。生産者の面でいえば、旧来の様式や作物を維持する人もいれば、新しい技術や品種を積極的に取り入れる人もいるでしょう。しかし、新しいものに古いものが取って代わられるというものは、他の科学技術では当たり前で自然な流れのことなのでしょうが、食品や生産物においては大きく異なると思います。古き良きもの、というつもりはありませんが、どちらの需要も必ず一定以上存在するのです。発展途上の分野と熟しきった分野、混同しないことです。新しいものを開発しただけで受け入れられる場所ではないのです。そして、遺伝子組換え作物による他作物の遺伝的な汚染といった直接的なものから、企業の介入による農業関連業者への侵食などまで、新しいものによって置き換えられる危険性は生産者にとっては深刻なものです。研究が進み有益な作物が誕生し、その需要が増えたとしても、問題はその需要は一部に過ぎないということであり、ゆえに棲み分けることを忘れないで欲しいのです。

 遺伝子組換え食品が受け入れられるためには、一食品一作物としての視点も重要ですが、それ以上に考慮すべき点があります。「遺伝子」を扱う技術そのものに対する理解と関心です。先に挙げた受け入れられない土壌の最たる原因は、遺伝子技術に対して現在多くの人がもつイメージ、不安と抵抗感だと思います。それらを拭い去り、マイナスイメージをプラスに塗り返ることこそ、遺伝子組換え食品が、そして全ての遺伝子関連の技術や製品が受け入れられる土壌を作ることの第一歩だと思うのです。そのための理解を、未知であったものに対する正しい認識を、人々に深く広めるべきだと思います。勿論、全ての人々に受け入れられることはないでしょう。
 これに限ったことではありませんが、正確な知識と認識の上で批判されることも少なくないはずです。道は険しいかもしれません。ゼロからではなくマイナスから始める道なのですから。それでも、私は期待します。遺伝子組換えだからこそできた、様々なメリットをアピールした新食品、いつの日か、それもひとつの在り方だとして、人々に受け入れられる日を。(法学部)

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 『現状を見る限り、遺伝子組換え食品の商品化、実用化は時期尚早だったと考える』という意見に私も賛成します。また、どうすれば受け入れられるのかという疑問に対する3つのキーワード(1)需要の多様性のひとつを狙う、(2)棲み分けを重視、(3)未知であったものに対する正しい認識、についても同意します。非常に前向きな意見だと感じました。 (コメント by ARAKI)

・私は以前は「遺伝子組み換え食品」の製造に反対の立場を取っていました。しかし高校で生物を学んだり、課外研究を行ったりしていくうちに、「遺伝子組み換え食品」に対する不安や疑問が少しずつ解消されていきました。農家の人たちや実際に消費する私たちが「遺伝子組み換え食品」を良いものとしてとらえることができないのは、遺伝子についての正しい知識とその理解がなされていないからだと思います。だからといって、遺伝子に対して先についてしまったイメージをそう簡単に払拭することは難しいでしょう。ここで私は、今回のディベートの賛成派の資料にあったように、「きっかけをもつことが大事」という考えを強く推します。講義でも発言しましたが、一部の国・地域が「遺伝子組み換え食品」の安全性を実体験をもって確かめることができたら、おそらく他の国でも導入しやすくなると思います。消費者にとっても、生産者にとっても、今まで漠然としていたものが目に見えてわかるわけですから。
 とにかく、「きっかけ」が大事だと思います。無理に導入しようとせず、きっかけがつかめたときに広めていくようにすれば、もっと多くの人に「遺伝子組み換え食品」が受け入れられていくのではないでしょうか。(工学部)

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 「きっかけをもつことが大事」という考え方には賛成します。しかしながら、一部の国・地域が先行すれば良いという意見は少し甘いような気がします。現実にアメリカが先行して壮大な実験を行っている訳ですが、アメリカ政府および国民がどんなに安全ですと宣伝しても、他の国の人間は信用しないのではないでしょうか?(コメント by ARAKI)

・自分は遺伝子組み替え食品についてマスコミが報道している内容しか知らなかった。そこで、自分なりに調べていくうちに組み替え食品のデメリットだけでなく、少なくともメリットもあるということも知った。だから、自分は組み替え食品は単に危険とだけ認識するのではなく、自分で調べ、どのようなものであるかということを認識しなければいけないと思う。(法学部)

・今回のディベートをとおして遺伝子組みかえについて多くのことを学べました。 以前は生産者側の問題については考えていませんでしたが、他への遺伝子組みかえ種の混入、農薬の増量など申告な問題もあると知って驚きました。今は、開発研究自体は賛成だが、現在の開発の仕方を変えるべきだと思っています。(医学部)

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 開発の仕方を変えるためには、民間ではなく、政府がもっとリーダーシップをとる必要があるかも知れません。大学など、アカデミック機関の役割も重要だと思います。 (コメント by ARAKI)

・前回の討議を通じて遺伝子組み換えに対する認識が深まった。アメリカを中心とする多国籍企業の戦略や、遺伝子組み換え品種の優性など深刻な問題を改めて知って衝撃を受けました。私個人は保守的なので反対したいのですが、もう既に遺伝子組み換え品種が広まってしまった以上、その対策のために研究は仕方がないと思います。(文学部)

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 ディベートに参加することで考えが深まったのであれば、前回の講義は成功だったと思います。これからも出来るだけディベートを行いたいと思いますので、ディベートのテーマについて、何かリクエストがあれば歓迎します。(コメント by ARAKI)

・今回、ディベートをして思ったことは、やはり遺伝子組み換え食品の開発は必要でそれに伴う問題にどれだけ取り組めるかが重要だと思った。ディベートをするまでは単に食品そのものだけのことしか頭になく安全のように思えていたが、実験段階での遺伝子組み換え食品の栽培で物理的封じ込めが行なわれていないという事実を知ったときは、非常に驚き、大きな問題だと思った。今回の授業で私が感じた遺伝子組み換え食品の問題となっている内容は、食品そのものよりも周りの環境や人々、特に農家の人たちの反応の方だと思った。それらを解決する方法はもっと遺伝子組み換え食品について人々が知り理解していくことだと思った。(工学部)

・遺伝子組み換え作物については先生がたのような遺伝子を扱っていらっしゃる研究者もずさんな扱いだと思っていらっしゃると聞き、なるほどと思いました。また賛成派も反対派もいずれは必要となると考えていたことが大変興味深かったです。危険で、油断はできないけれどそれに頼らざるを得ないという所は原子力と似ていると思いました。こう考えてみると人間の未来は明るくはないと思えるようで悲しくなりました。(法学部)

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 遺伝子組換え生物(GMO)に関して、「バイオセーフティーに関するカルタヘナ議定書」という国際協定が平成12年に採択され、日本でもこれに対応するために新しい法律が今年6月に公布されました。これまでの「組換えDNA実験指針」が廃止され、新たな規制が始まりますが、これに関しては年明けの講義で説明したいと考えています。(コメント by ARAKI)

・講義中にも述べたが、遺伝子組換え食品はよくも悪くもなると思うので、より一層の研究開発が必要であると思う。(工学部)

・企業が利益を優先して考えるのは、資本主義においては当然であると思うが、やはり安全面には十分に注意をはらってほしい。筑波大学でやっている実験で(後付けにはなってしまうが)安全面に関する確証が得られればと思う。この技術は将来必要となってくるだろうから。(工学部) ・この前のディベートに参加して、少し考え方が変わりました。原則的には遺伝子組換えの研究は反対ですが、外部に漏れ出さないような厳重な管理体制の中でなら研究を続けても良いと思います。しかし研究・実験が多く行われないまま世に出してしまわないようにしっかりと法体制を確立するべきだと思いました。(法学部) ・先週のディベートを行った後の自分の考えは、遺伝子組換え食品自体に反対するのではなく、その途中の研究・開発の過程で、十分な対策ができれば、その考え(GMOに対する否定的な考え)は変わると思った。今まで自分の中でも漠然としたGMOに対する考えしか持ってなかったので、今回の講義は非常に有意義だった。(理学部)
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