2003年度 レポート第6回 回答集
熊本大学
生命資源研究・支援センター
バイオ情報分野
荒木 正健
Tel : (096) 373-6501, FAX : (096)373-6502
2004年 5月 5日作成
2003年度 生命科学G レポ−ト第6回(2003年11月19日実施)回答集
[ テーマ ]DNAの実物を見た感想
[ 回答 ](全13人)
・何となくこう螺旋状の物を想像していたものでアロエの葉肉みたいな物がぽん、と出てきたので驚きました。伸ばしたら100キロにもなる、という文に一層驚きました。伸ばしてみたいです。(教育学部)
・高校1年の時以来の実験だったので懐かしい感じがした。DNAというと21世紀の科学の主役になるもので、最近では、DNA鑑定など先進技術でよくその名前を耳にするが実際に見てみると、「こんなもんか」という感想を持った。まあ生物には普通に存在するものだろうし、あんまりすごいものでも困るけど、特に色もついてなくて、道に落ちていてもあまり目立たないだろう。視的に訴えるものが少なく、何とも言い難かいものだった。だけど、あの中にものすごい量の情報が入っているのだと思うと不思議な感動を覚える。(文学部)
・今回の講義で、DNAを実際に見てみる実験をしてまず思ったことは、こんな簡単な方法で、DNAを「見る」ことができるのかという驚きでした。私自身が文系なため、こういった実験とはもう縁遠くなってしまったこともあるのでしょうが、世間一般で大抵の人々は私と同じだと思います。以前、教育目的組換えDNA実験についてのレポートの際、まず遺伝学について興味をもってもらうことが大切だと思ったのですが、DNAそれ自体が「普通には目に見えないもの」であるために記号的な概念として馴染みにくいのが問題なのではとも思いました。私が中高生だった頃にはまだ、こういった遺伝学関連の実験を生物の授業で行うことはありませんでしたが、今回の実験のような簡単な方法で分かりやすい視覚的な変化があるものは、この分野に興味をもってもらうためには少なからず役立つのではないかと思います。遺伝学に興味をもってその道に進んだ大学生ならともかく、まだなにも知らない中高生にとっては、その単純さ、分かり易さが重要だと思うのです。勿論この実験も、事前の準備は面倒なこともあると思いますが、そういったところは省略してまず簡単な手順だけで「実際に見てもらう」ことが、一般の人々に遺伝子を身近に感じさせるための第一歩といえるのではないでしょうか。(法学部)
・あのような簡単な操作でDNA本体を見ることができるなんて驚きました。あの小さな白い糸くず状のものの中に、生命の性質を決定する因子が含まれているなんて想像もつきません。「生命の設計図」を直にみて、ただひたすら感動するばかりでした。この実験が中学や高校でも取り入れられて、遺伝子の世界に興味をもつきっかけの1つになれば良いと思います。(工学部)
・今回の実習でDNAを見たが、DNAは綿のような、繊維状の物質のように見えた。DNAは体の設計図であるが、このような糸状のものに本当にネズミの体を構成する設計図が入っているのかと疑いたくなるような気もした。また、それと同時にこのようなものに大量の情報を詰め込んだ生物というものに驚きを感じた。(医学部)
・まず肉眼でみえることに驚いた。DNAは最初は白い固まりの様に見えたがよく見るとすべて白い糸状のもので球をつくっていたことに気付いた。この糸が二重螺旋と思うと何か神秘的なものに思えた。友達にこれをみせたところ精液みたいと言われた。確かにそうみえる。その時ふとDNAの色は基本的に白なのかなとも思った。(工学部)
・DNAを見たが白い苔のようになっていた。これはタンパク質が水で固まったからだと思う。よく理科の教科書等で見るDNAは二本の線が絡まっているものだが、実際に見ると、とてもその中に体の設計図が詰め込まれているとは思えなかった。(法学部)
・実物のDNAを作って見た事はあった。そのときは棒でまきとって見るという物でこうやって塊で見るのははじめてだった。しかし何度見ても人間の生命の設計図と言われるDNAを肉眼で見るのは不思議な気もするし、感動する。(医学部)
・実際のDNAを見てみて、自分が想像していたのとは全く違っておどろいた。でも本物を見ることができてとてもよかった。(法学部)
・専門の実験のときも思ったことですが、実際にDNAを見てみると小さなひもなので、「こんなものでヒトや動物を全て設計しているのか」と、なんどみても不思議と驚きでいっぱいになります。(医学部)
・私が前にみたDNAは遠心分離機を使ってしたものだったのでもっとたこ糸のように撚れていたが授業でやったものは綿みたいで綺麗だった。それから自分で持っているのもこわいし結局学校のゴミ箱にそっと入れといた。いまでもその中から新生物が生まれてきそうで少しこわい。(法学部)
・DNAを目で見れることはまずないと今まで思ってきた私にとってはとても驚きでした。しかも身近な材料とちょっとした技術によってDNAの実物を見れるということはすばらしいと思います。危険がないので中高生の理科の実験でも行えますし、しかもインパクトがあります。これからさらに技術が進み、さらに良い方法での実験が開発されることを期待します。(法学部)
・このような実験を行うのは3回目であったので、少々慣れた感もあったが、生物を作る最小の単位を見るのは悪くはなかった。(理学部)
===== レポートについてのコメント (by ARAKI) =====
・「伸ばしたら100キロになる」というのは、「直径0.2ミリメートルのクモの糸と仮定すると」という話です。実際に、ヌクレオチドという非常に小さな分子が一直線上に並んでいて、46本のDNA (染色体)をつなげると約1メートルになるというのは驚異的ですね。それが折り畳まれて核の中に格納されており、必要な時にはほどけて正確にコピーされるというのですから、とても現在の科学技術ではまねできません。
・DNAがSFの世界ではなく、もっと身近な物だという印象を持ってもらえたとすれば、今回の実習は成功です。
・「DNAのエタノール沈殿」の実験は、どこででも簡単にできますので、いろんなイベントで行われていると思います。今回使用したのはマウスのシッポから抽出したDNAですが、ヒトの細胞から抽出しても同じ様に見えます。もっと言えば、ハエのDNAもゴキブリのDNAも大腸菌のDNAも見た目は同じです。違うのはそこに書き込まれている情報です。
・講義中にも説明しましたが、フェノール・クロロホルム抽出という方法で精製していますので、最初の水溶液に溶けていたのはほぼ純粋なDNAです。タンパク質ではありません。また、糸状あるいは綿状に見えるのは染色体由来の長いサイズのDNAの場合です。制限酵素で切断したDNAや、プラスミドなどもともと短いサイズのDNAは、細かい粒々の沈殿になります。
・棒で巻き取って見る(精製する)方法をスプーリングと言います。DNAの水溶液の上にそっとエタノールを重層し、その界面にガラス棒をさして回転させるとDNAが析出します。ただし、このとき糸状に析出するのは染色体由来の長いサイズのDNAだけです。短いサイズのDNAは析出しません。
・「DNA」は、どこにでもある、あなたも毎日食べているただの「物質」です。こわくありません。また、DNAだけでは生物は生まれません。「細胞」が必要です。
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