優秀作品(4)

熊本大学
生命資源研究・支援センター
バイオ情報分野
荒木 正健

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2005年 7月18日更新


『時間の分子生物学』(理学部)

(1)この本を選んだ理由を書いて下さい。
 睡眠は人にとって身近な生理現象であり、その睡眠と生物時計との関係をもう一度再確認したいと思い、選んだ。

(2)この本で著者が一番伝えたい事は何だと思いますか?
 生物の睡眠のきっかけは生命時計から送られる覚醒信号が弱まる事によって引き起こされる。また、科学が進歩した現在であっても研究において偶然、閃きといったものが大きく関与しているということ。

(3)この本を読んで感じた事、考えた事を書いて下さい。
 まず、生物時計と言ったものがかなり精巧に24時間を計り続ける存在だという事に改めて驚いた。動物は昼、夜の異なった環境下での生活を繰り返している。一般的にずれた生物時計のリセットを昼の間に降り注ぐ日光が行なっている。しかし、一定の暗所環境下において400世代以上のショウジョウバエに行われた生物時計の周期の結果が24時間であった。これは光を知らない個体にも精巧な時計が存在していることから、初めから遺伝子の中に組み込まれたものであることがわかる。このことから私は地球上に生物が初めて誕生した時、DNAの存在が生まれた時から組み込まれていたものではないかと考えると同時に生物の神秘的な部分も垣間見た気がした。
 私は以前に眠ることのない人の話を聞いたことがある。真偽は定かではないが、その人は何年も寝ることなくずっと起きているそうだ。眠気というものを知らないということは生物時計に何らかの支障があると考えられる。眠気を起こす覚醒物質の分泌の弱まりが起こらないのかもしれない。しかし、そのままでは体や脳に多大なる疲労を与えてしまうだろう。その眠らない人にもしばらくパッと動かなくなることがあるらしい。その時に眠っているのだと考えるのが妥当だろう。だが、眠っているとしてもその睡眠時間があまりに短すぎるのだ。考えられることは通常90分である人の睡眠単位がその数分になってしまったことである。また、ノンレム睡眠やレム睡眠を持たずに、その人特有の原始的睡眠をとっているのかもしれない。専門家でないので詳しいことはわからないが、事実だとしたら非常に興味深いものだ。
 私はこの本を読み、科学の進歩に偶然は欠かせないものだと実感した。この筆者もたまたま1対ずつショウジョウバエを分けて飼育したことから、不眠症のハエを発見することができた。また、文中に登場してくる病気から研究を進めたミニョーグループと遺伝子から研究を進めた柳沢グループの研究結果が同じ結論を導き出したことなど。いくら科学が進歩し、器具や解析方法が新しく生まれたからといってそれが直接進歩に結びつくわけではないのだ。最後に科学を飛躍的に進歩させるものはそれを基盤にした人間の閃きなのだろう。


*****2004年度・優秀作品*****
冬休みの課題レポート・2004
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