2005年度 レポート第10回 回答集

熊本大学
生命資源研究・支援センター
バイオ情報分野
荒木 正健
Tel : (096) 373-6501, FAX : (096)373-6502
2006年 5月29日更新

2005年度 最前線の生命科学C レポ−ト第10回(2006年 1月18日実施)回答集

[ テーマ ]『ES細胞樹立を目的としたヒトクローン胚の作製に賛成か反対か』

[ 回答 ](20人)

賛成 16人

・どちらかといえば賛成です。ヒトクローン胚を作製し、ES細胞を作り出すことで、今は治療が困難な病気を治すためなら作製してもいいと思う。今はまだ倫理的なことなど問題もあるけど、ヒトクローン胚やES細胞の研究を続けていくことは必要だと思う。倫理的なこともとても大事だとは思うが、治りたいと思っている患者の人の方がもっと大切だと思うからです。しかし、クローン人間を作るという目的のためにES細胞を作ることは、倫理的な面や法律の面からもあまり賛成出来ません。 (工学部)

・わたしは、賛成だ。やはり、遺伝子などについての知識高まってきた現在ではもっと先に進む必要があるのではないかと思う。オーダーメイドなES細胞を造ることによって命が救われるかもしれない人々がいるのに、やる前に踏みとどまる必要はないと感じる。困難でも先に進んで新しい発見をし、知識を増やしていくべきだ。もちろん、それに際してはどこまでが許されるのかといったいわゆるルールは必要だろう。ルールを守って研究を進めて人類そしてすべての生物のために役立てて欲しいと思う。 (医学部)

・私は賛成です。人命を尊重した結果の作製だからです。ただ、人命のためなら何をやっても良いとは思いません。様々な規制を設けたりすることで多くの人が納得できるような医療への応用でないといけないと思います。倫理委員会は時代に遅れているというような話もありましたが、どこからが倫理に反するなどという倫理面の考えは人によって様々で境界を引けないからこそ、倫理を考える専門家の研究は、科学者や医学者と同じくらい権威を持ち、頻繁に人々の関心を引くものであってほしいです。 (教育学部)

・私は、人のクローンを作ることは反対です。それは、倫理的にもですが他に、クローンの誕生によって犯罪が増加すると思われるからです。そして、クローンがいることで犯罪者の特定が困難になるからです。しかし、その技術を医学だけに限定するなら、話しは変わってきます。やはり、現在の臓器移植では、拒絶反応という高いリスクがあるからです。長年臓器を待ち続けた患者が、やっと移植したのにも関わらず、拒絶反応によって命を落とすのは、他の患者にとっても前向きな気持ちを失うことに繋がると思います。そのため、少しでもそのリスクが減るのならば、医学の発展に希望を持ちたいです。 (法学部)

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 ES細胞樹立を目的としたヒトクローン胚の作製に賛成、ということですよね? ・・・ (コメント by 荒木)

・私は、基本的には賛成です。もし今まで治らなかった病気が治る可能性を含んでいるのならやってみる価値はあると思うし、私たちの今後の生活がより快適になるのならマイナス面もあるかもしれないけど、その分プラス面も大きくなると思います。ただし、それはもちろんきちんと規制を設けてからの実施でないといけないと思います。安心できる法律を作ることが可能なら、また一つ技術が進歩していくことを妨げることは無意味なことであると感じます。 (医学部)

・私は賛成です。他人に迷惑をかけることなく助かる人が増えるのはイイことだと思うし、もし自分が臓器移植とかを受ける立場になったとしたら、自分の細胞から臓器を作れたらありがたいと思うと思うからです。 (法学部)

・私は、そのような万能細胞が実現できるのなら、作製に反対はしません。もし、私が臓器に異常を持っていて、そのドナーが見つからず、生きる希望がもはやない時に、このES細胞はまさに神様的存在であるだろうからです。 しかし、先生が仰っていたように、自分のクローン胚を作ったとしても、遺伝的にまた問題が発生する恐れがある、という問題があります。ただ問題箇所のコピーを作ってしまっては、この試みの意義は失われます。また、男性患者の場合は、未受精卵の提供についての問題も生じるので、これらの問題処理が達成できるのであれば、私はヒトクローン胚作製には(ES細胞の可能性への希望を込めて)賛成したいと思います。 (文学部)

・授業中にディベートを行ったときと同じく私は作成に賛成です。臓器移植による拒絶反応がなくなるというのはとても魅力的ですし、自分と同じ遺伝子の臓器は精神的にも医療に対する不安が軽減されると思います。 日本は臓器提供のシステムができておらず、臓器不足があるのではないでしょうか? とある国では「臓器提供拒否」のカードを持っていなければ、使える部分は全て提供されると聞いたことがあります。そのような国はともかくも、日本のように臓器提供の体制ができていない国はたくさんあると思います。またそのような体制を作るためには倫理的、宗教的、民族的な問題が複雑に絡み合いシステムが作り上げることができない国があると思います。そんなときにこのクローン胚の作成は絶大な効果を発揮し多くの命を救えるのではないかと思います。 (理学部)

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 確かに臓器提供のシステムとヒトクローン胚の問題は密接に関係していると思います。 ・・・ (コメント by 荒木)

・私は賛成です。確かに、(1)クローン人間をつくることに繋がるかもしれないこと、や(2)自然の流れに逆らっていること、や(3)新たな病気が発現(この表現が正しいかどうかは分かりません)するかもしれないこと、や(4)用いる胚が他人のものであること、などの問題点が挙げられますが、これらそれぞれはすべて反対に値する決定的な理由にはならないと思います。(1)に関しては、クローン人間をつくることそのものが悪であるという前提自体、明確な倫理観に則っていないし、(2)に関しては、そもそもあらゆる科学テクノロジーは自然の流れに逆らってると言えるし、(3)に関しては、新たな病気云々の前にまず治さなければならない病気があるはずだし、(4)に関しては、用いられる胚は放っておけば意味をなさないものだからです。もちろん、あくまでも上述の内容は「“作成”に反対する決定的な理由がない」というものであって、「だから“作成”してよい」と安易に断言はできないはずです。しかし、今まで治らなかった病気が治るかもしれないことや、臓器提供を待たなくて済むことなどの利点を考えると、私は“作成”しても良いと考えます。 (文学部)

・私はこのテーマに賛成する。副作用や拒絶反応がほとんどなく臓器移植をすることができれば患者のQOLは格段に上がると考えられる。移植手術前に自分と型が合う臓器を何年も待つ必要がなく、移植手術後も一生飲み続けなければならない薬を軽い薬で済ますことができるだろうからだ。 (薬学部)

・私は賛成です。これまで、臓器移植でしか治らなかった病気が、拒絶反応がなく、またドナーの提供を待たなくてよくなるということは患者にとって大切だと思うからです。しかし、反対派の意見にあるように、ヒトクローン胚による臓器の割合が多い場合、クローン人間との問題があるのも事実だと思います。あるいは、脳をクローン胚によって移植した場合や、逆に脳だけを自分のクローン胚によって作られた肉体に移植するなどは、問題があると思います。  ただこの点に対しては、法律などの整備により、どこまでが許される行為なのかという境界線をはっきりさせることにより対応できるのではないでしょうか。その際に大切なのは、実行される前に法の整備がなされることだと思います。社会的な面と技術的な綿花総合的に問題を解決できるようにすることで、この技術が多くのヒトの役に立つものになるのではないかと思います。 (法学部)

・「条件付き賛成」という立場になります、間違ったことではないと思いますし。丸っきりヘンな例えになるかも知れませんが、発想そのものは、まるで一つ(部分)だけとってそれをまた埋めて収穫する「ジャガイモ」のようなものかと。ただ、野菜さんには悪いですが、「人間」の部分ということになる、倫理的な認識や価値、それに伴う問題が大分違うかと思います。特に、日本人は、日本独自の倫理観・道徳観の立場から体中の隅々にまで「いのち」が宿っていると考える「文化要因論」という立場をとる方が多くいらっしゃいますし、私もそうです。(法学・医学的な視点からは、「脳死」、等の議論の際に問題となります) 「条件付き」というのは、今出ている技術的な右足に、条件を克服できないまでも認識・または新たな考え方・思想が出てくるように、倫理的な左足が追いつき、交互に踏み出して、人が未来に歩いていける、という展望が啓けるところまでは行く、というのが条件でしょうか。 (法学部)

・私は医療に役立てることに限定した上で、賛成します。治療方がない病気で苦しむ人をテレビなどで見ることがありますが、治療方を探ってもないのなら、やはりES細胞を作り出すべきだと思います。ただし、クローン問題にも大きく触れることなので簡単に事は進まないと思うので、早く協議が進むことを願います。 (工学部)

・たしかにヒトクローン胚作成には様々な問題がある。技術的な問題は時間が解決してくれるであろう。一方、倫理的な問題は時間だけではなく、社会が置かれた環境にも影響を受けるので簡単には解決しないであろう。特に宗教的な問題が強く絡んでくるのであろう。しかしこれらの発送は健康な身体をもった強者の理論であり、病床で難病で苦しむ弱者の意見はあまり反映されていない。ES細胞さえあれば助かる可能性が増大する難病が多いことを考慮すると、胚までであれば作成に踏み切るべきではないか?病魔は待ってはくれない。 (医学部)

・私は、作製のことだけに言及すれば賛成です。しかし、周知の通りこの地球上の人間は、全てが善良なわけではありません。そのことを含めて考えると、迷いが生じるわけです。純粋に臓器だけが作られるのならいいのですが、『一人』を作ってしまうとなると、いけないと思うのです。ES細胞株を作るだけでも悪戦苦闘している今ならまだ何の問題もないでしょうが、将来必ずと言っていいほど論争を巻き起こしそうなトピックです。今のうちから真剣な議論を進めていく価値は大きいと思います。私個人としては、悪用されない限り、臓器の不具合で未来を絶たれようとしている人に、未来という可能性を与えてくれるES細胞利用は素晴らしい技術だと思います。それに、医学…という分野には犠牲がつきもの…とも思うのです。 (文学部)

・ES細胞(胚性幹細胞)は、様々な細胞へ分化する能力と高い増殖能力を持つので、失われた細胞を再生して補うという新しい治療法への応用が期待される。しかし、成人性幹細胞はES cellに比べると性能が劣るので、授精した胚、つまりは初期の赤ちゃんをクローンとはいえ殺してから取り出すものであるから、そこに倫理的な問題があるらしい。和つぃはこれに賛成である。「遺伝子組換え技術のペットへの応用に賛成か反対か」の所で自分で調べてから少し考え方が変わったのだが、今まで実験と称して多くのマウス等の生き物を殺してきたはずで、さらには人工中絶なども今は行われているのに、クローン胚だと急に反対するのは少々矛盾しているのではないかと思うからだ。そもそもこれはこれからの医療に大変役立つかも知れない重要な実験課題である。自分にとって不都合だからと中絶して赤ちゃんを殺すのと、これからの未来に役立つ研究のために赤ちゃんを殺すのはどちらが倫理的に悪いのか、自分にもはっきりと答はだせないが・・・。 (医学部)

反対(4人)
・私はヒトクローン胚の作成に反対です。ES細胞を人体に使用しても確実に期待しているような結果がでるかは分からないし、また効果を確認するためには人体に使用してみないといけないというのは危険だと思います。さらに、ES細胞が効果を発揮し、失った臓器が手に入ったとしても、遺伝子が同じだというだけでは、やはり自分自身がもとから持っていた臓器とは異なると思います。もし身体のあちこちの臓器を移植する必要がある人がES細胞を使って新たな臓器を手に入れた場合、その人の体の主要な臓器はすべてヒトクローン胚由来、つまり結果的には自分のクローン由来と変わらないということになってしまいます。そうなったとき、果たしてその人をクローン人間でないと言い切れるでしょうか。特に、ES細胞がその人の脳を修復するにまで至った場合は…。 (文学部)

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 マウスにおいては、ES細胞を用いた研究が非常に盛んです。熊本大学も、この分野における重要拠点のひとつと言えます。これまでに得られたマウスES細胞に関する知識は膨大な量に及びます。しかしながら、あるES細胞株が生殖系列(ジャームライン)に乗るかどうか、つまりそのES細胞を用いてキメラマウスを作製し、正常マウスとかけあわせることでES細胞由来の子供が誕生するかどうかは、実際にやってみないと判りません。そういう意味では、患者さんのクローン胚から作製したES細胞が体内で確実に働くという保証はありません。ただしこの場合は、ヒトES細胞を培養容器の中で神経細胞や血液細胞などに分化させてから使用すると想定されますので、実際に生体内に移植する前にいろんなテストを行うことが出来ます。その分リスクは小さくなり、確実性が増すと期待されます。 それから、ES細胞による治療が進むとクローン人間と同じことになるのではないかという指摘も重要な問題を含んでいます。現在行われている臓器移植をどう考えるかにもつながると思います。その程度や内容によって判断基準が変わるかも知れません。・・・ (コメント by 荒木)

・確かに、自分に適応した臓器であるので、このクローン胚は医療にかなり役立つことは確実である。しかし、完璧な人間だけが存在する世界とはどういうものだろうか? 私は、クローンという面でも賛成しがたい。ただ、実際に臓器提供を待ち望む人を目の前にしては、どうしたらよいのか分からない。 (教育学部)

・反対です。授業中にも意見しましたが、クローン人間につながると思うからです。法的に完全に規制できれば賛成してもいいと思います。 (理学部)

・悩みましたが、やはり反対です。人には越えてはいけない壁というものがあってそれを越えてしまえば何か大きな事件が起きてしまうのではないかと思います。なにより人が人を戯れに作ることにより人のモラルが破壊されていくのが私は怖いです。昔、授業で蛙の受精卵の成長のビデオを見ました。受精後細胞はどんどんとその数を倍加させます、その姿を見るとそれはもう生きているといい切れてしまいます。ヒトクローン胚はすでに生命であり、人だと思います。それを利用するのはやはりなにか自分のモラルを麻痺させねばならず、それは社会を狂わしてしまうと思います。 (医学部)


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