2005年度 レポート第11回 回答集
熊本大学
生命資源研究・支援センター
バイオ情報分野
荒木 正健
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2006年 5月23日更新
2005年度 最前線の生命科学C レポ−ト第11回(2006年 1月25日実施)回答集
[ テーマ ]『治療法が確立されていない遺伝病の出生前診断に賛成か反対か』
[ 回答 ](19人)
賛成 10人
・私はどちらかと言うと賛成です。第一に少しでも早く発見することで病気に対する何らかの対処ができる可能性があるからです。次に産むかどうかの判断の手助けになるからです。確かにどんな難病を持って生まれてこようが不幸だとは限らないし、生命をどうするというより、どんな人でも幸せになれるように社会をどうかすることで解決できればそれが理想だと思いますが、病気に関しては現実的には限界があります。本人や家族が病気に苦しまなければならないという状態は誰もが避けたいことです。また、難病の子どもを育てる自信のない親、苦痛で仕方がないと思う親に望まれない形で生まれてきた子どもはどうだろうか、と考えると診断をすることで中絶ということになっても仕方がないと感じます。ただ、難しい問題だと思います。 (教育学部)
・私は出生前診断に賛成です。私には、子が不治の病を抱えて生まれてきて、その子を親としてきちんと育てる自信はありません。誰かが言った様に、障害を抱えていても、幸せに生活している家族もあると思います。しかし一方で、そのことを乗り越えられず自殺や心中してしまう親がいるのも確かです。私は、自分がそのうちの一人に絶対ならないとは言いきれません。また、精神的だけでなく、経済的にも生活が苦しくなる家庭はあると思います。診断した上で、出産するかどうかは個人の自由だと思うし、中絶が経済的を理由に出来るのなら、出生前診断も行われても良いと思います。 (法学部)
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経済的な理由で中絶が認められるのであれば、出生前診断も認められて良いという意見に私も賛成です。ただし、きちんとしたルールと充分なカウンセリングが必要だと思います。
・・・ (コメント by 荒木)
・私は賛成です。しかし、あくまでも重篤な遺伝病の保因者の受精卵に限って診断すべきだと思います。授業で用いたプリントにも載っていたように、「技術的に可能なことは誰かが実行してしまう」はずです。それならばいっそ、早急に強固な法整備を行ってしまうべきだと私は考えます。 (文学部)
・治療法が確立されていない病なら、出生前診断に賛成である。生まれてくる子を否定するわけではないが、実際に大変なことは目に見えているわけだし、また、死を生まれたときから考えるのは、とてもつらいことだと思った。それがわかっていても、生きようとする命を殺したくないと主張するなら、検査自体を受けなければいいと思う。ようは、母親や家族に選択は任せるべきだと感じた。 (教育学部)
・私は出生前診断には賛成です。なぜかと言うと、授業では障害を持っているからといって不幸なわけではないという意見が出たけど私はやはり本人も周りも辛いと思うし、もし自分に障害を持った子の産まれる可能性があると分かったら産みたくないと思うと思うからです。リスクを負っている=不幸だとは思わないけど、やっぱり自分から進んでリスクを負おうとは思いません。 (文学部)
・着床前診断に限れば賛成である。個人的には運命とは誰かに与えられるものではなく、自分で展開させてゆくものであると考えているから、着床前診断を利用することに抵抗は感じられない。例えば重篤な遺伝病の患者を親族に持つ母親は原因となる遺伝子の保有者である確率は高く、着床前に遺伝子診断しておけば遺伝病の子供ができるのを防ぐことができる。実際、筋ジストロフィーの患者が子供を作る場合、体外受精で数個の受精卵ができると、それについて遺伝子診断を行い、病因遺伝子を持っていないものを選んで着床させるという。やはり障害を持ったまま出生させるのを防ぐことが合理的であると思う。また、日本の母子保護法では胎児に異常があるといった理由では人工中絶ができないので、着床前診断は遺伝病の防ぐ画期的な方法であるように思える。
一方、受精卵であれ、生命の選別を行っていることにはかわりはなく、障害者差別や優生学にも直結した問題でもあると考えられる。重篤な遺伝病を防ぐという目的から遠ざかって、遺伝的に優秀な子供を望むような潮流起こる可能性も懸念される。しかし、そのような危険性を防ぐことが生命倫理の仕事である。倫理委員会のみならず、社会全体で頻繁に議論する必要がある。そのためには学者が密室に集まって、進まない議論にいつまでも時間を費やすのではなく、公共広告機構や特番などを利用して、もっと社会にアピールするべきである。 (医学部)
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「そのためには学者が密室に集まって、進まない議論にいつまでも時間を費やすのではなく、公共広告機構や特番などを利用して、もっと社会にアピールするべきである」という意見に、全く同感です。と同時に、研究の現場に身を置く者としての責任も感じます。
・・・ (コメント by 荒木)
・とても考えさせられる問題だと思います。
とても優しい、菩薩のような考え方だとこの問題に決着はつかないでしょう。やはり全てを救い、全てが幸福で在るようにする、というのは人の世では難しいのだなぁ…と改めて認めさせられます。割り切った、しかも偏りのある意見だとはわかっていますが、私は出生前診断に反対はしません。どちらかと言えば賛成の方です。
異常が見つかったら廃棄する。確かに、自然界の法則や倫理観から考えてみれば、それはあってはならないことだと思います。しかし私が思うに、ある自然界の法則には従っている気がするのです。『弱肉強食』
動物の中では弱いモノが淘汰されるようになっています。その自然界の仕組みが、カタチを変えて人間界(人が作り上げた人間社会)に当てはまっただけではないだろうか、と。
今私たちが生きている社会に、生まれてくる命全てを包み込み、幸せにする力が果たしてあるのでしょうか。私はそこまで完璧ではないと思います。おそらく未熟な社会でしょう。(完璧じゃない人間が作るのだから、完璧な社会などそもそも存在しないとも思うが)
だから、自分らの手にあまるような命は、最初から手にしないのもヒトツの選択だと思うのです。自分達の子供が遺伝的疾患を持っていることがわかって、産める人もいればそうでない人もいます。それでも産みたい人もいるし、産みたくないと思う人もいるでしょう。
私がこのような考えを持つのは、自分が健常者であるからかも知れません。遺伝的差別を受けたことがないからかも知れません。
ただ、進歩し続ける技術があり、その歩みを止められる程人間は強く(賢く)ないと思います。そして、どうせやるなら医学的なことだけに利用して欲しいなあ…。と、私は思うのです。 (文学部)
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とても立派なレポートだと思います。それが良いことかどうかは分りませんが、確かに『弱肉強食』が自然界の基本的な法則のひとつであることは否定できません。人間の世界でも、これは良いことだと思いませんが、富める国と貧しい国の格差は著しく、同じ国の中でも勝ち組・負け組があると言われています。間違いなく未熟な社会です。・・・ (コメント by 荒木)
・私は、出生前診断について、ある程度は賛成である。出生前診断を行って、もし悲しい結果になったとしても、私だったらこれからその子を育てていくためにどうしたら良いかということを夫や父母などと話しあいます。生まれてから障害を持っていることに気づくより、心構えをする時間がある方がいいと思います。ただ、私だったらそうしますが、世の中には中絶してしまう親もいるでしょうが・・・。 (医学部)
・これはやはり夫婦の同意次第だと思います。もし自分の立場であれば診断をするかと思います。もし何の病気になるかが分かればそれを考えて育てることが出来ます、自分の子供なら責任もって愛を持って育てる自信があります。もしも診断法があってそれが治療法がないにしろ対処療法等があるなら私は診断をしたいです。 (医学部)
・私は治療法が確立されていない遺伝病の出生前診断に賛成である。出生前に疾病があることが分かっていれば、生まれてすぐに適切な対応ができるからだ。それによりうまれてくる子供の生存確率の増加や寿命の延長、健康状態をより良くすることができる。また、遺伝病が見つかった場合、胎児の両親が産まないと決めることもできるからだ。 (薬学部)
反対(9人)
・私は反対です。遺伝病が出生前に分かったからと言って何をするのかというと、結局その子を中絶することになると思います。これは命を選別することになり、倫理的に問題があるのではないでしょうか。確かに、自分の子供が病気だと分かったら中絶したくなる気持ちも分かりますが、その子が生きる権利を親だからといってむやみに奪うけんりがあるとは思いません。
また、遺伝子病の出生前診断にはどれくらいの費用がかかるのでしょうか?おそらく安くはないと思います。もしこの診断が一般的に認められたとして、利用するのは経済的に裕福な家庭に限られてくるのと思います。裕福な家庭には出生前診断により遺伝病の子供がおらず、そうでない家庭には遺伝病の子供が生まれてきてしまうという事態になりかねないのではないでしょうか。
遺伝子技術は治療のための技術であるべきであって、差別や産み分けのために利用するのは間違っていると思います。 (法学部)
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遺伝子病の出生前診断にはどれくらいの費用がかかるのかという質問ですが、調べる対象の遺伝子が決まっていますので、PCRや塩基配列の解析にはそれほど費用はかかりません。おそらく数千円だと思います。お金がかかるのはむしろ体外受精などの不妊治療や中絶などの医療行為です。遺伝子技術は治療のための技術であるべきであって、差別や産み分けのために利用するのは間違っているという意見には、私も基本的に賛成です。・・・ (コメント by 荒木)
・私は出生前診断に反対です。賛成の人の意見には、親も子供も辛い思いをするくらいなら生まない方が良いという意見が多かったように思います。しかし私は、生まれもしていない子供を「生んだらこの子は苦労する」などと決めつけることはできないと思います。子供が苦労するか、障害を持っていても良い人生を送れるかは実際の人生を歩んでみないとわからないことです。つまり、出生前診断で子供を生まないと決める人は、建て前は子供のためだと言っていても、本音は自分の負担が大きいから避けたいのだと思います。障害があろうとなかろうと、子供ができたら負担もかかるし苦労するのは当たり前です。胎児であれ胚であれ、生きる力を持っているので、その力を故意に奪ってしまうのは殺人だと思います。 (文学部)
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「胎児であれ胚であれ、生きる力を持っているので、その力を故意に奪ってしまうのは殺人だ」という意見は、とても説得力があります。私もそう思います。しかしながら、世の中の多くの人が違う考え方をしているのも事実です。どちらが正しいかは、私にも判りません。
・・・ (コメント by 荒木)
・私は治療法が確立されていない遺伝病に関しては出生前診断は避けるべきだと思います。ディベートのときに出生前診断の結果によっては子供や自分が苦労するから生まないという意見がありましたが、たとえば障害を持って生まれたからといって、その人の人生が百パーセント不幸であるとは限りません。同じように、遺伝病が発病するとわかっていても、だからといって生まれる前から生命を摘み取っていいことにはならないと思います。
また、いつか発病すると知っている子供に対する態度は、「どうせいつかは病気になる」などといった投げやりな態度につながりかねないからです。治療法が確立されていない遺伝病だからこそ、出生前から診断をしていたずらに不安感をあおるようなことはすべきではないと思います。 (文学部)
・わたしは、反対だ。やはり、出生前に分かると中絶する親が増えると思うし、そうなるとやっぱり差別が強まってくる心配があるからだ。それに、その診断をした時点で治療法が確立されてなかったといっても未来は発見されるという可能性もあるのにせっかく授かった命を絶ってしまうのにわたしは疑問を感じる。また、すぐに発症しないかもしれないのに、生まれる前から分かってそのことを恐れて暮らすのなんてわたしだったらいやだ。今回の問題で技術が進歩してるのは分かるけど、私たちはそれをとりいれる前によく吟味しないといけないなぁと気づかされた。 (医学部)
・いかに治療法が確立されていない遺伝病に限定しても、出生前診断には大反対です。今回は久しぶりにディベートが白熱しましたが、私達の中の多くもこれから数年後には結婚し、子供を作っていくようになると思うので、結構身近な話題であると思います。自分の子供を出生前に遺伝子診断することは、胎児の人権を侵すと思います。たとえ子供に異常があっても自分は中絶したりはしないが、中絶という手段を取る人も、必ず出てしまうと思う。そんなことあってはならないと思います。 (工学部)
・私は、この出生前診断については反対です。たとえ治療法が確立されておらず、治る見込みのない病をもって産まれてきたとしても、その子供の将来を奪ってもよいのか、という疑問が残るからです。先生が授業中に仰ったような、「生後に治療法が見つかるかもしれない」という可能性も否定できないのもまた理由ですし、子供をつくる責任の重さが軽んじられてしまうのではないか(極端に言ってしまえば親の一方的な出生選り好み)という倫理的な恐れもあるからです。 (文学部)
・僕はこの事象にかんしては、あまり賛成はできない。その理由は、命というものをあまりに軽視していると感じるからだ。あくまでも個人的感情で、合理的効率的に考えるなら、生涯を持った子を育てる苦労、数年しか生きられないとわかっている悲しさなど、確かに診断を行ったほうがいぃのは明らかである。農作物や工業製品ならこのように事前に粗悪品を取りのぞくことも普通だと思う。けれど生きているものそれも人間でそれを行うというのは納得できない。今回の授業テーマで今まで以上に遺伝学の光と影をはっきりと痛感させられたきがします。 (理学部)
・治療法が確立されてない遺伝病の出生前診断には反対です。もし出生前に遺伝病であると知ったら、中絶したりするということは胎児の人権を無視していると思うからです。もしかしたら数年後にその病気の治療法が見つかって、治すことができるようになる可能性もあるのに、生まれて来る前から殺してしまうのはどうなのかなぁ…と思うからです。 (工学部)
・出産前の診断は悪いとは思わないけれども、出産後の周りのヒトの対応は必ずしも悪いものがないとは言い切れないので、自分は出生前診断は反対です。 (理学部)
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