2005年度 レポート第3回 回答集

熊本大学
生命資源研究・支援センター
バイオ情報分野
荒木 正健
Tel : (096) 373-6501, FAX : (096)373-6502
2006年 5月23日更新

2005年度 最前線の生命科学C レポ−ト第3回(2005年10月26日実施)回答集

[ テーマ ]『ゲノム科学に期待すること』

[ 回答 ](16人)

・「ヒトゲノムを解読した!!」と一時期ニュースにゲノムという言葉が使われるようになった時、私はただ漠然と「すごいことを発見したんだろうなあ」くらいにしか思っていませんでした。しかし、今回のビデオ視聴により、科学の進歩がここまで来ていたなんてと、ただただ、驚くばかりです。ゲノム科学にも、「統合ゲノム」「ゲノム生物学」「ゲノム医科学」などの分野があることも初めて知りましたし、これらの研究により、個々人の薬の副作用の出方や、治療の方針決定、オーダーメード医療の実現化がなされること、そしてその反面、入社試験時や保険加入時に差別が生じる等の問題が考えられることなどを知ることができ、科学の可能性と、それが生む不安とを、頭の中で疑似体験できた機会となりました。
 その中でも一番印象深かったのは、「糖尿病の遺伝子を受け継いでいても、必ずしも発症するわけではない」という事実です。遺伝的要因と、環境的要因が重なってはじめて発症する生活習慣病の実態は、以前私が臨床心理学で受けた内容そのままに通じるものがあると、瞬間的に思いました。それは、誰しも精神疾患のスイッチを持ち合わせており、環境という手がこのスイッチを押し、人は精神疾患を表面に現す。だから、精神疾患を持つ人々は決して特異な人々なのではない、私達にも当然起こりうることなのだからということです。私と他人とは、0.1%の違いしかないと聞きました。かなり視点がずれるかとは思いますが、この事実をより多くの人が知り、納得することで「誰でも私と同じ」という認識を持てば、差別や偏見をもたずに おられるのではないか? という一筋の希望が見えたような気がしたのです。大げさかとは思いますが、こうした人間の観念を変えてくれることも、「思考においても科学最優先」の時代だからこそ、できることではないかと、私は思います。 (文学部)

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 精神疾患のケースも、確かに生活習慣病と同様に考えられると思います。また、遺伝子レベルで原因が解明されている遺伝病のケースでも、その多くは両親から受け継いだ遺伝子が共に変異している時に発症する劣性遺伝病です。片方の遺伝子に変異を持っている人(保因者)は、自分自身は健康でもその子供が遺伝病を発症する危険性を秘めています。つまり遺伝病の患者さんも、特別な人ではありません。・・・ (コメント by 荒木)

・わたしがゲノム科学に期待するのは、やはり医療面においてゲノム情報を利用することである。遺伝情報を読み取ることによって、今後その人がなる確率の高い病気を知ることができるなんてとても画期的なことだとわたしは思う。それを知ることによって、十分生活を気をつければ病気を防ぐこともできる。また、SNPを研究することによって、夢のオーダーメイド医療も可能だろう。的確にその人に合った薬を提供できるので投薬ミスなども減るのではないかと思う。しかし、その反面すべてがわかってしまうことに対する不安もあるし、その個人情報について厳重に管理する必要もあるだろう。ゲノム科学が医療の現場で活用される前にこういった問題をしっかり議論し、法整備なども行っていく必要があるとわたしは感じている。 (医学部)

・ゲノム科学(特に医科学)について、もし0.1%しか違わない人間一人一人の遺伝子情報が分かれば、どの病気になりやすいのかということを自分で認識でき、さらにそれに応じて自己管理ができるので、とても有効性があると思う。確かに日常生活の中でも、同じ薬を飲んでも効く人とそうではない人といる。これからオーダーメイド治療ができていけば、さらに的確で速攻性のある薬を個人に与えることができるので、少しでも早く実現し世の中に普及してほしいと思う。 (医学部)

・私自身は自分が遺伝子的にどんな病気の発症をどのくらいの可能性で持っているのか知っておきたい。ゲノム科学はその役を果たすことができると考える。知っていれば日常生活で意識的に予防できるからだ。将来のQOLを高く保つためには、病気にならないことが一番大切だと思う。 (薬学部)

・オーダーメイド医療が発達することで薬による副作用を減らしたり、より確実な治療が行えるようになれば、多くの患者にとってありがたいことだと思います。ゲノム科学が進歩することで、良くない遺伝子を良い遺伝子と交換することができるようになるのだとばかり思っていましたが、遺伝子の操作ではなく、環境に配慮することができるようになるという利点を知り、美容や健康に関する情報番組が現在、流行っていますが、さらに詳しくレベルアップした情報を一般の人が手軽に手に入れられるようになる可能性を感じました。医療以外の目的でヒトの内側を変えるということには抵抗がありますが、ゲノム科学の研究が、外側からの新しい対策を生み出すことにつながることを期待します。 (教育学部)

・この前ちょうど、テレビで遺伝子治療とかの話があってました。妊婦が胎児のゲノムを解読したら、生命の選別につながってしまうかもしれません。しかし虐待などで幼児が亡くなっていることを考えると、ゲノム解読が生命の選別につながるとしても一概にダメとは言えないと思います。だから私はこれからもどんどんゲノム解読によって可能になる医療(私にはどんな医療か分かりませんが)が進んでくれればいいと思います。 (法学部)

・ゲノム科学は医学の分野において最も貢献するのであろう。癌を含めた、現在の医学でも確実な効果があげられない数々の難病に対する治療方の開発において大きなTurning Pointとなるであろう。また、糖尿病などの生活習慣病の予防やアレルギーに対する新薬などの開発がより個人に即したものとなり、OrderMade医療の実現には不可欠である。また、性格と遺伝子の関係が明らかになれば精神科への応用も考えられ、精神科学の発展にも貢献するのではないだろうか。とにかくゲノム科学に期待することは枚挙に暇なしである。 (医学部)

・私がゲノム科学に期待することは、医療面で人々の生活に役立つことです。特に、DVDでも言われていたオーダーメイド医療はとても有意義なものだと思います。薬の効き目などは個人差があるけれど、治療を受ける人の遺伝子を調べることでその人に効果の出やすい物質を使うことができるし、副作用の危険も減らすことができるのではないでしょうか。また、自分がどのような病気になりやすいか(因子を持っているか)ということがあらかじめ分かっていれば、「健康であるためにはどのような点に他人より気を遣えばいいか」ということも分かってくるので、一人一人の健康に関する意識も高まってくるのではないかと思います。
 反対にゲノム科学が進歩することで心配なのは、差別の増加につながらないかということです。イギリスでは、病気になりやすい遺伝子を持つ人の保険加入や保険金の増額が認められないという事例が発生したそうです。日本でもこうしたことが起きる可能性はゼロではありませんし、保険加入だけではなく、就職などの際にも差別につながるのではと不安が残ります。科学の進歩だけではなく、それが社会に及ぼす影響まで予測し、対応策もしっかり進歩させてほしいと思います。 (文学部)

・遺伝子の配列は人とチンパンジーで1%しか違わない。それを聞いた時、たったの1%? と思わず驚いてしまいました。今回のビデオで遺伝子がよく車の設計図に例えられていましたが、たったの1%で車ではそこまでの違いが出るとは思えません。生物の奥深さに触れた気がします。ただ、(操作する場所によって変わってくるでしょうが)少し配列を変えただけでどれだけ人体に変化が起きるのか、ひょっとしたら不老不死なんかも可能になったりするんじゃないかと想像したりしてしまいました。生物なのに死から切り離されたら… 話が飛躍し過ぎましたが僕がゲノム科学に期待するというより希望することはこの研究が生物にとってプラスになって欲しいということです。 (工学部)

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 「ヒトとチンパンジーの遺伝子の違いはたったの1%」と聞いて、驚かない人はいないと思います。しかしながら『何を基準にして、何を比べるか』で見え方は変わってくると思います。例えば、『重さ』1トンの車で1%の違いと言えば10キログラムですが、これだけあればボディーだけでなくパーツすべてを金箔で覆うことも可能だと思います。その他に宝石をちりばめることも可能でしょう。この状態で元の車と『値段』を比べたら・・・ (コメント by 荒木)

・私はヒトゲノムについてのVTRをみて、遺伝子技術の進歩についてやや批判的な意見を持ちました。確かに遺伝子技術が進むことで便利になることもあると思います。しかし、VTRを見ていて感じたのは、便利になることへの期待よりも遺伝子を思うままに組み換えられることへの不安でした。技術が進むと、病気になりにくい遺伝子、顔を決める遺伝子、身長、性別、知能などさまざまな遺伝子が分かってしまうのではないでしょうか。そうなると、自分の思い通りの体にすることができてしまうような気がします。芸能人の顔の遺伝子、学者の知能の遺伝子、アスリートの身体能力の遺伝子、などが取り入れられ、人間が人間を作り出すような社会になってしまうのではないでしょうか。技術を進めることは同時に新たな問題をうみ、それに対する対策を考えないまま技術を開発していくことは、結局成果よりも問題のほうが大きくなってしまうような気がします。 (法学部)

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 「技術を進めることは同時に新たな問題をうみ、それに対する対策を考えないまま技術を開発していくことは、結局成果よりも問題のほうが大きくなってしまう」という意見に賛成です。期待が大きいからこそ、そのマイナス面にも目を向けなければならないと思います。 ・・・ (コメント by 荒木)

・ゲノム科学によって、病気の遺伝子が分かったり、オーダーメイド医療により、その人に最も適した治療が受けられるようになることは、とても喜ばしいことだと思った。ただ、癌などの今の医療では治せない病気になることがあらかじめ分かってしまうことは、病気を遅らせることが可能になるかもしれないが、やはり、死の恐怖が常にあることが本人にとって苦痛であると思う。だからこそ、ゲノム解析によって、どんな病も治り、寿命をまっとうできるような時代が来ることに期待したい。 (教育学部)

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 『どんな病も治り、寿命をまっとうできるような時代』が、本当に幸せなのか? 機会があれば、『イエスの遺伝子』(マイケル・コ−ディ著、徳間文庫)を読んでみて下さい。いろいろ考えさせられると思います。・・・ (コメント by 荒木)

・私がゲノム科学に期待することは、遺伝病の克服と創薬です。しかし、これはあくまでも、人間が生きものとして扱われるという前提があってのことです。病気関連の遺伝子が見つかったからといって、まるで機械の部品でもいじるように人体が扱われる様なことになってはならないと私は考えます。 (文学部)

・遺伝子を分析することで将来かかる可能性のある病気を把握して対処していく事とさらに操作を行って可能性を消去していく事などができればいいと思う。また、太りやすい体質などの変更などもできるといいと思う。また栄養の消費の少ない動物などの遺伝子にならって人間の消費カロリーを減らしたりして飢餓人口を減らしたりできたらすごいと思う。 (理学部)

・現在、ゲノム科学は多いに研究されていて特に医学の分野で大きな期待をされていると思う。特定の病気への特効薬の開発や、病気になりやすい体質などを事前に知ることができ、私たちにとても益になると思う。 (理学部)

・ゲノムは調査にこそ使うもので、何かを生み出すものに使うのはあまりに危険だと思います。なので、厳しい管理の元でのみ使うべきだと思います。 (医学部)

・遺伝子科学のおかげで、医療やその他様々な分野で発展が見られるのはとてもいいことだと思いました。しかし、メリットだけに目を奪われないようにすることが最も大事だと思います。オーダーメイド医療なども普及してくれば、個人の遺伝子情報が明らかになるわけで、病院の方も情報を守るため今まで以上に情報保護に力を注がないといけないと思います。医療の現場に限らず、遺伝子は個人の大切な情報です。発展する反面、その遺伝子情報が悪いことに使われないかが一番心配です。 (文学部)

・ヒトゲノムが解読されたことにより、オーダーメイド治療が可能になるかもしれない。これは世界の医療に劇的な変化をもたらすであろう。薬の副作用に悩まされている人にとっては、まさに夢のようなことである。もちろん、いい面と悪い面を持ち合わせていることはわかっているが、私はこれから先期待をしている。 (工学部)


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