優秀作品(1)

熊本大学
生命資源研究・支援センター
バイオ情報分野
荒木 正健

Tel : (096) 373-6501, FAX : (096)373-6502
2006年 5月17日更新


『時間の分子生物学』(薬学部)

(1)この本を選んだ理由を書いて下さい。
 自分自身も毎日行っている睡眠についての本で、課題図書の中で一番科学的説明がされていそうだったから。また熊大の教官ということも興味をそそった。

(2)この本で著者が一番伝えたい事は何だと思いますか?
 遺伝子レベルにおける睡眠についての研究は、まだ解明されていないことも多く、これからの研究に期待が寄せられいる分野であること。また研究というのは偶然の発見がもたらす影響が大きいこと。

(3)この本を読んで感じた事、考えた事を書いて下さい。
 生物時計や睡眠とは関係ないのだがどのように研究課題を決め、新しい発見をし、病気の解明などに研究を発展させていくのかというプロセスが具体的に書かれていたのに興味を持った。私自身、大学院に進学して研究をすることを将来の選択肢の一つとして考えているのだが、もし研究をやることになれば、世界中の誰もまだ発見していないある病気の原因となる遺伝子を見つけたいと思うし、またその研究結果を利用して新薬の開発をしてみたいとも思っていた。しかし、実際には同じような研究対象を生化学的に、分子生物学的に研究している人々が多くいて、様々な角度から研究しており、また、研究対象の伏線として研究していたことが大発見につながったりと、想像していた研究像とは少し違うものだった。ただ誰にでも発見のチャンスはあるし、偶然に現われた事象でも発見につなげる能力があれば結果を出すことができることを実感した。また、研究者に大切な能力についての記述があった。それは一つの事象を様々な視点で捉えることができる能力である。この本の中で不眠症に対する薬を睡眠物質分泌を促す作用(一般的な睡眠薬の作用)に注目するのではなく、覚醒物質分泌を抑制する作用(まだ研究段階であるが可能性としてのオレキシンの作用)に注目すれば、副作用が小さくなるのではないかという記述があった。この視点を変えて様々に考える能力を現在の私は持っていないため、この視点の変換に非常に驚き、またその能力を身につけたいと思った。「ショウジョウバエは眠る」という結果だけ見れば奇妙な話だが、それに起因する事象(DNAから転写、翻訳などを経てタンパク質が合成され、そのタンパク質が相互作用で調整されて眠る行動が起こること)は科学的に道理にかなっている。自分が現在学んでいることは、全て一見すると奇妙に見えるような事象の未知なる道理を見つけ出すための道具だとも言える。そのように考えてみると、生化学や生理学などの教科書や、科学雑誌を読んでみようという気にもなる。そして、自分の頭の中に科学的な道理をより多く入れて、様々に起こる事象をすっきりと頭の中で理解し、新しい道理を発見したいと考える。世の中に存在するもの全てに対してこのようなことを達成すると考えるのは非現実的であるが、少なくとも自分の興味ある分野、あるいは将来の研究分野では達成できる努力をしていかなければならない。この本を読んで、ほとんどの研究者は自分の研究分野においては、起こる事象をすっきりと理解する能力を持っているだろうと感じた。だからこそ研究者たちは、偉大な発見をし続けていく事が出来るのだと考える。


*****2005年度・優秀作品*****
冬休みの課題レポート・2005
教育活動
 MASA Home Page


  遺伝子実験施設ホームページ
熊本大学 生命資源研究・支援センター 遺伝子実験施設,
E-mail: www@gtc.gtca.kumamoto-u.ac.jp