優秀作品(2)

熊本大学
生命資源研究・支援センター
バイオ情報分野
荒木 正健

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2006年 5月17日更新


『変光星 自閉の少女に見えていた世界』(法学部)

(1)この本を選んだ理由を書いて下さい。
 自閉症という名はよく聞いていた(最近聞くようになった)が、詳しくは知らなかったから。

(2)この本で著者が一番伝えたい事は何だと思いますか?
 他の人とは違う自分(自閉症者)の世界観。
 モノに対する見方、考え方は一つではないこと。

(3)この本を読んで感じた事、考えた事を書いて下さい。
 最近ではメディアにより自閉症という名が広まり、以前よりもその理解は高まっていると思う。しかし、それでもその理解は十分なものではないし、私もこの本を読んで初めて知ったことが多くある。筆者が子供の頃は、特に自閉症は知られていなかっただろうし、それにより周囲の理解が足らなかったと思う。普通に考えると、筆者がおかれた状況というのは、全くもって許されないだろう。しかし、その当時の情報量だと、それはなかなか言いきれないように思う。そしてそれが「無知」の恐さのような気がする。もし、その当時、自閉症についての理解があれば、筆者に対する他者からの批判は緩和されていたと思う。学校が教育上協調性を求めるのは当然であるし、ある程度の協調性は必要である。そのため、それを壊す者に対して、怪訝な思いをするのは普通のことだ。(但し、教育者として、筆者に対する接し方、またホームルームでの議論に対して異議を唱えなかったことは、賛同しかねる。)また、いじめについても、筆者がなぜ他の人と違うことをするのかという原因(自閉症であること)を学校が知っていたら、もっと違う状況になっていたと思う。私もこの本を読んだり、ちょうど関連したテレビ番組を見ることで今までの自閉症に対する知識が間違っていることに気付いたし、当時の学友達も、いじめが全くなくなるかは言いきれないが、筆者を理解してくれる人がもっといたはずだ。しかし、絶対的に情報量が増えたことで、また気を付けなければならないことが生じる。それは、情報が多いため、その上っつらだけを見て全てを理解したつもりになってしまうことだ。自閉症という名は広まったけれど、その本質を知る人はどれだけいるだろうか。彼らが癇癪を起こすのは単なるわがままじゃなく、そこに適応しようとした結果だったり、我慢を重ねた上でということを、どれほどの人が知っているだろうか。(実は、私は知らない人の中の1人であった。)無知や誤解というのは、その本人だけでなく周囲にも影響をおよぼす。巻末に、自閉症の子を持つ母親の自殺率が高いことが述べられていたが、これも、その影響の一つだと思う。筆者の母親が周囲から冷ややかな態度を取られてもずっと生活を続けていたのは、当たり前のことではない。中には、それらの態度にたえられない母親もいる。ただでさえ、自分の子供であるのに、意思疎通が出来ず、多くの場面で悩みを抱えているのに、さらに周囲の理解が得られないのはこの上なく苦痛である。そのため、私達は、もっと理解を示し、支えていく必要性がある。それは、このような場合だけではなく、対人関係において、積極的に行うべきであるように思う。人との関わりが希薄になりつつある今日、もっと相手を知ることで、それらから生じる問題は、解消していくのではないだろうかと、筆者が級友をわかろうと努力していた姿勢から学んだ気がした。


*****2005年度・優秀作品*****
冬休みの課題レポート・2005
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