優秀作品(6)
熊本大学
生命資源研究・支援センター
バイオ情報分野
荒木 正健
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2006年 5月17日更新
『イエスの遺伝子』(教育学部)
(1)この本を選んだ理由を書いて下さい。
授業で遺伝子について学んだから。
「イエス」という言葉の壮大なイメージに興味を持ったから。
(2)この本で著者が一番伝えたい事は何だと思いますか?
医学の進歩において、どんな治療が正しくて、正しくないものは何か、という決定を下せる人間はおらず、本来の姿を守り続けようとする神を信じる人々と宗教に頼らず科学のみが正解を導くことを信じて発展を進める人々の対立は避けられないもので、どちらか一方に偏ってしまうことを現在の社会は受け入れることが出来ないという事。
(3)この本を読んで感じた事、考えた事を書いて下さい。
科学者トムらとキリスト教徒エゼキエルらの対立は、理性的かつ感情的、宗教的かつ科学的という矛盾する人間の在り方を原因とする現在の人間社会の抱える問題を反映しており私達は専門家や国のトップの判断に任せて導かれるままの存在になるのではなく、ひとりひとりが真剣に考える必要があると痛感した。
医学の進歩は科学技術の発展とは異なり、人の命を救うものであるがため、マリアも考えるように大衆が歓迎し、称えることで余計に危険だと私も感じた。そして、遺伝子治療のどこまでは許されるのか、などという疑問には誰も答えられる者などおらず、境界を定めることは非常に困難で、仮に定まったとしても、何だか無意味なものに思えるだろう。
自分達の判断を神の判断だとみなし、殺人までも”正義の浄化”と正当化したマリア達の考えや行動は行き過ぎた宗教狂言者と設定されている感じがあるのだが、どんな危険を冒しても得られる利益を求める姿や、自分の探索はテクノロジーの力を見せつけ、自然を征服しようという隠れた意志があるのではないかと自問自答するトムの姿の中にも行き過ぎた科学者の在り方を窺える。
マリアもトムも超人的な力量を持ち、良かれと思ってやっている点は同じだがマリアの、悪党を始末することで解決させるというやり方は、私達人間の多くが望む本当の解決ではないと著者は訴えているように思える。それゆえ、マリアはイエス・キリストと同じ治療能力を持ちながら、滅びてしまった。マリアは、不幸な生い立ちのため、愛情を受けることばかりを求めて自分の力を無駄にしてしまった。このマリアの姿は現代の私達の多くに当てはまる姿なのかも知れないと思った。マリアのやり方が楽かもしれないが生かすというトムのやり方を尊重すべきなのは確かだ。受けるよりも与えることで道は開けるという教訓を大いに感じることができるトムの努力の姿には感動した。ただ、トムのやり方に問題がないとは考えられない。信仰心の強いジャスミンは遺伝学の研究を「神は、人間にみずからの存在の秘密を学ぶだけの知性を与えてかまわないと判断したのだから…」と必死に折り合いをつけようとするが、だからと言って、できることなら全てやれるだけやって良いのかと言われると決してそうではない。それにはれっきとした証拠がある。人間には規制する能力をも与えられていると言うことだ。この探究能力と規制能力によって私達は人格・能力共に優れた、トムが招集した十二人の使徒のようにひとりひとりがなり、発展と規制、感情と理性の調整に努めなければならないと感じさせられた。
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*****2005年度・優秀作品*****
冬休みの課題レポート・2005
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