2007年度 レポート第1回 回答集
熊本大学
生命資源研究・支援センター
バイオ情報分野
荒木 正健
Tel : (096) 373-6501, FAX : (096)373-6502
2008年 1月27日更新
2007年度 最前線の生命科学C レポ−ト第1回(2007年10月 4日実施)回答集
[ テーマ ]『ゲノム科学に期待すること』
[ 回答 ](全28人)
・私がゲノム科学に期待することは、医療への利用です。遺伝情報を調べてのオーダーメイド医療などがなされれば、副作用などもなく、非常に患者への負担の軽くて済む治療ができるし、とても有益なものとなるだろうと期待しています。 (工学部)
・ゲノムの中の設計図はすごいと思った。なぜ体全体に同じ設計図が入っているのに、一つ一つの全く異なる臓器になるのが不思議だなぁと思った。この性質を利用して移植に必要な心臓などの臓器を作れたりしたら、大きく医療に貢献できると思う。 (工学部)
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ES細胞(万能細胞)を筋肉細胞や神経細胞など様々な細胞に分化させる技術は確立しています。しかしながら、今の技術ではまだ臓器は作れません。最先端の研究テーマです。
(コメント by 荒木)
・ゲノムという言葉をこの講義を聞くまではどのようなものかわからなかった。しかし、聞いてみると遺伝情報全体=ゲノムと言うのがわかった。簡単に考えればヒトを作り上げるための設計図という物であった。自分は前期にも生命に関係する講義を受けていたので知っていた内容も時々出て来た。
ヒトにはゲノムが30億塩基対というのはショウジョウバエに比べてもそんなに離れていないということには驚きとショックがあった。
化学の発展によっていろんなことが判明してきているがそれでもわからないことがあるというのが生物の奥深い所だと思う。ゲノム科学が今まで以上に解明が進むことによって今までの医学では治療する事が出来ない物が治るようになれる事を期待したい。もっと欲を出してみれば発病祥前からどうにか出来るようになってほしい。 (工学部)
・クラゲの発光する特性を持つゲノムをガン細胞に移植させることで,ガン細胞自体が発光するようになり,臓器を傷つけることなくガン細胞を正確に摘出できると聞いたことがある。このように、特殊な能力を持つ生物のゲノムを他の生物に取り入れることで様々な場での利用が期待できると思う。 (工学部)
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「ゲノム」という言葉は、その生物が持っているすべての遺伝情報を指しますので、この場合は「遺伝子」または「ゲノムの一部」という言い方をします。 (コメント by 荒木)
・今日の講義を聞いて、ますますヒトゲノムや生命工学に興味が湧いた。ゲノム科学にはやっぱり現時点では治療不可能な病気に対する治療法を見つけるヒントになってもらいたいと思う。 (工学部)
・人のクローンを作りだすことは恐ろしいことだと思います。しかし、臓器提供が不足していたり、体にあうものがないと、重病により死んでいってしまう人達もいるのです。そのような場合のため、体全体ではなく、体内の臓器だけを作り出すことができるなら素晴らしいと思います。 (工学部)
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クローン技術については、是非、後半のディベートのテーマにしたいと思っています。
(コメント by 荒木)
・ヒトゲノムの解読により、その人が後々冒されると思われる病を事前に発見できたり、一人一人にあった薬などが分かるといったような医学的な進歩が期待できる。 (工学部)
・分子遺伝学で複製を習ったので、ビデオがわかりやすくてよかったです。遺伝学は最初は(特に生物をやってなかった自分には)とっつきにくかったけど、おもしろいです。けど、細かいところはまだわかりません。 (医学部)
・ヒトの遺伝子についての研究が医学だけでなく社会にも大きく影響する可能性があることは知らなかった。研究が進むことでかかりやすい病気が分かったりそれによる差別などの問題が生まれるかも知れないが、個人の情報やプライバシーを保護して差別、偏見から守る制度をしっかりと確立しつつ、その人に合った病気の治療が出来るようになればいいなと思った。また、近年牛や鶏などの感染症が食品の安全に大きく関係しているが、病気に強い家畜をつくりそのような問題をなくしてほしい。 (工学部)
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「病気に強い家畜」というのは、非常に重要なキーワードだと思います。特定の病原体に対する抵抗力をつけることも一つの方法ですが、むしろ全体的な免疫力あるいは生命力を高めるという考え方の方が良いような気がします。 (コメント by 荒木)
・ゲノム科学に期待することは、ゲノム科学の技術を医療問題に取り組めたらいいと思う。例えば、遺伝子レベルで人の病気について分析することができればその病気に対する治療法や薬を作り出すこともより精密にすることができると思う。 (工学部)
・昨日の講義で、ゲノムに期待することは病気の治療法が分かればいいと思いました。末期の癌で苦労して亡くなり苦しんでいる人が、たくさんいるのでそういう人たちのためになるような治療法が発見されればいいなと思いました。 (工学部)
・「ゲノム科学に期待すること」
1.患者の症状に応じた個別の薬での治療ができる。
2.再生医療により様々な失われたり臓器や体を構成する部分を再生が可能。
3.クローン人間や動物などが可能になり活用が広がる。
ただし、倫理的な諸問題があり解決を必要としている
質問
今後の講義で説明があると思いますが
1.遺伝子を解読するにはどのような装置が必要ですか。
2.解読した遺伝子は実際に目に見える状態ですか。たとえば「螺旋」などの形。
(生涯学習)
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確かに、ゲノム科学と生命倫理は切り離すことが出来ないテーマです。また、FAXでの体験講座申込ありがとうございました。受講希望者第1号です。
さて、ご質問にお答えします。ひとつめの「遺伝子を解読する」ということですが、単純に「DNAの塩基配列(A, G, C, Tの並び)を読む」だけであれば、シーケンサーという便利な機械があります。予め、PCR(これからの講義で説明します)という方法でDNAを増幅した後、シーケンス反応と呼んでいる化学反応を行い、シーケンサーという機械にかけると、A,G,C,T,,,,の並びを解読することが出来ます。しかしながら、A,G,C,T,,,,の並びを読んだだけでは、その配列が何を意味しているのか判りません。これまでに得られた膨大な情報と、解析ソフトを駆使して、(暗号を)解読する作業が必要です。
もちろんコンピューターの使用が不可欠です。
ふたつめの質問ですが、「解読した遺伝子」というのは、A,G,C,T,,,,の並びを基本とする遺伝情報(データ)と、その遺伝情報が書き込んであったDNAという物質の両方を指していると思います。データに関しては、コンピューターグラフィックスでDNAの2重らせんを描かせることも可能だと思います。物質としてのDNAについては、エタノール沈殿という方法で析出させ、DNAがより集まって出来た糸くずを肉眼で見ることが出来ます。しかしながら、2重らせんを肉眼で見たり、通常の顕微鏡で見るのは不可能です。電子顕微鏡と呼ばれる設備が必要になります。
(コメント by 荒木)
・授業でゲノム科学のビデオを見て、よりゲノム科学に期待が膨みました。
薬の効き目の違いを遺伝子で調べ、その人にあった薬を処方するオーダーメイド医療やDNAチップ、スニップなど知らないことがたくさんありました。
特に遺伝子でなりやすい病気など事前に知っておけば予防することができ、がん治療の際など患者に効きやすい薬を使って治療できるというオーダーメイド医療に驚きました。ゲノム科学がここまで進んでいたことに大変驚きました。ビデオで見たものは少し古いものだったので、今どのくらい進んでいるのか関心がわき、よりゲノム科学に対する期待が膨らんだように思います。またがん治療など不治の病と思われていた病気も治療できる日がいつか来るような気がしました。 (教育学部)
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オーダーメイド医療については、後半のディベートのテーマに入れるつもりです。また、昨年度の遺伝子実験施設セミナー(2007年2月20日開催済み)には、この分野で第1人者である中村祐輔先生に講演して頂きました。その時の要旨をご参照下さい。
[http://gtc.egtc.jp/view/seminar/GTCseminar11] (コメント by 荒木)
・遺伝子研究はまだまだ発展途上の新分野なので、これから医療や農業など様々な方面で画期的な活躍を期待できると思います。オーダーメイド治療は倫理面で問題点が指摘されてますが、私は大賛成です。薬には個人によって効果に大きな差があるなど、実際に重い病気にかかっている人が自分の体質を知ることは切実な意味があると思います。学問として自分の体を作る仕組みの解明に貢献してくれたのも遺伝学です。これからも研究がすすみ、人間の知的財産をより豊かなものにしてくれればと思います。 (医学部)
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遺伝子診断及び遺伝子治療に関しては倫理的に重要な問題がありますが、オーダーメイド医療そのものには倫理的な問題はないのではないかと思います。オーダーメイド医療で問題なのは情報管理です。特に、遺伝子バンクや国民健康データベースなどの話は重要です。昨年度の遺伝子実験施設セミナーで、この分野の第1人者である中村祐輔先生に講演してもらいました。その時の要旨をホームページで公開していますので参考にして下さい。
[http://gtc.egtc.jp/view/seminar/Nakamura] (コメント by 荒木)
・ゲノム技術に期待することに関して、私が興味を持っているのは、医療に関することです。遺伝的な病気を持っている人は、手術や薬で治せない難病の場合が多く、根本的に治療するためにはやはり遺伝子の欠陥をなくす必要があると思います。そうすることによって、治療不能だった病気を治療できるようにでき、今まで助からなかった大勢の人を助けることができます。実際、多くの人がこのような日が来るのを待っていると思います。
しかしながら一方で、不安の声もあがっているのも確かです。プライバシーの問題や、倫理面での問題など、多くの問題を抱えています。だからそのような問題を、少しでもなくせる方向に持って行くこともまた、ゲノム技術に関わる人に期待することの一つです。
医療に関すること以外にも、農業で取り入れられている部分がありますが、そこでも安全性の問題などが指摘されています。それはまだゲノム技術がまだ完璧だとはいいきれないからかもしれないと思います。だから私はゲノム技術が完璧とはいえなくても、より安全で信頼性の高いものになっていってほしいと思うし、私たちの生活の質を向上させていってほしいと思います。 (医学部)
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今回のテーマは「ゲノム科学に期待すること」です。「ゲノム技術」と言うと、少しニュアンスが違う様な気がします。さて、「遺伝子の欠陥をなくす」と言われているのは「遺伝子治療」を想定されていると思います。残念ながら、現在の技術では欠陥のある遺伝子(部位)を修復する(修正する)のは不可能です。今、研究されている遺伝子治療は、欠陥遺伝子を補う新たな遺伝子を別の場所に導入する方法か、遺伝子(DNAまたはRNA)を薬として投与する方法がメインです。「遺伝子治療」については、後半のディベートのテーマに取り上げたいと考えています。
(コメント by 荒木)
・私が、ゲノム科学に期待するのは医療の分野です。ゲノムにより、将来の病気を発見し未然に防ぐこと。また病気の発見による差別も防いで欲しい。 (工学部)
・ゲノムの研究によって、一人一人に合った病気の治療や薬の処方などを的確に行うことが出来るので、副作用の発現をできるだけ抑えることが出来るようになることや、また、遺伝子検査によって病気を正確に診断したり、病気の予防やそれからの治療に役立てられることなどをゲノム科学に期待している。ただこの時、個人情報が漏れないように情報をきちんと管理することが必要だと思う。そして、ゲノム科学は生き物に新たな性質をもたらす技術でもあると聞いたので、生態系に影響を及ぼさないか、人体に悪影響がないかなど、安全面に気を付けて研究を進めてほしい。 (医学部)
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オーダーメイド医療に関しては、昨年度の遺伝子実験施設セミナーで、この分野の第1人者である中村祐輔先生に講演してもらいました。その時の要旨をホームページで公開していますので参考にして下さい。
[http://gtc.egtc.jp/view/seminar/Nakamura]
中村先生の講演の中で特に印象的だったのは、欧米ではオーダーメイド医療を目指すのが常識になっているのに、日本の製薬会社はほとんど関心を示さないということでした。日本の医療はアメリカより10年遅れているという人もいますが、そのギャップはさらに大きくなるのかも知れません。 (コメント by 荒木)
・医療技術に貢献して欲しい。 (医学部)
・犯罪捜査におけるDNA鑑定、がんは遺伝的要素が大、などとのマスコミ報、ちまたの風評には接してきましたが、まことに漠然とした知識しかありません。
初回講義後自分の意識が本件に注目してきたのでしょうか、10月7日の朝日新聞で、ヤマメからニジマスを生ませた(天声人語)、遺伝子研究の現状に対する警告を発した書籍、「NEXT」の書評、に目が行きました。
もしかしたらこの講座を受講することは、「禁断の園」に足を踏み入れることになるのかなと、人間へのロマンと愛着を持つおじさんは不安がっていますが、勇気を持って、「ゲノム科学」に接することにより、生命、人間の、身体的、物質的な成り立ちと原理、進化、未来について学び、生命を深く理解したいと思います。 (生涯学習)
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素晴らしいレポート(文章)だと思います。そこまで(講義に)期待されても・・・という気もしますが、出来るだけご期待に応えられるように頑張ります。よろしくお願いします。
(コメント by 荒木)
・動物、植物、バクテリアのゲノムには同じものがある。したがって、人間以外のゲノムを使い人間の疾病の治療ができるのではないだろうかと考える。また、人間の臓器をつくり、移植に使うことも可能であると考える。特に日本では、欧米などに比べて移植の条件が厳しいことや、国民の移植に対する知識が十分に普及していないことから移植が行われるケースが少ない。したがって、ゲノムからつくる臓器による移植は有効で期待できるものになると考える。 (医学部)
・私が考えるゲノム科学に期待することは、代替の効かない臓器などをそれぞれの人に合った型の臓器を再生し、移植することで疾患の治療に役立ってほしいということである。 (医学部)
・ゲノム科学には医療への応用を期待します。それは遺伝情報を読み取ることで一人一人の病気に対する耐性、薬の効果・副作用などがわかるようになるということなので、自分がどのような病気にかかりやすいかなどがわかるからだ。しかし、この情報を自分が知ってしまった場合どのような対応をすればよいのかわからない。メリットもデメリットもあるのだと思った。 (医学部)
・自分は生物多様性などに最も興味があるので、ゲノム科学が進歩することによって生物の進化経路などが今よりさらに詳しくわかるようになっていくことを望みます。 (理学部)
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「生物多様性」は重要なキーワードです。第10回遺伝子実験施設セミナー(平成18年3月22日開催済み)では、(財)自然環境研究センターの千石正一先生に『種多様性が生態系を支えている』と題した講演をして頂きました
[http://gtc.gtca.kumamoto-u.ac.jp/news/seminar10.html]。
(コメント by 荒木)
・インターネットでゲノム科学について調べていると、「変形性関節症モデルマウス」を開発することができたという記事を見付けました。変形性関節症は日本だけでも約1000万人の患者がいるらしく、モデルマウスの開発の成功により、原因の解明、治療薬の発明につながるとのことです。このように、治療法のみつかっていない病気の解明などが出来るようになることを期待したいと思います。 (工学部)
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「変形性関節症モデルマウス」は、その原因遺伝子であるGdf5 ( growth differentiation factor 5 )の変異によって、重度の変形性関節症症状を早期に示す疾患モデルマウスです。見られた記事は、おそらく理研グループがENU mutagenesisという方法で開発したマウスに関する物だと思います。バイオ情報分野でも、可変型遺伝子トラップ法という別の技術を用いて、様々な疾患モデルマウスの作製及び解析を行っています。 (コメント by 荒木)
・ゲノム科学が発達することによって、遺伝子からどのような病気などにかかりやすいのかなどわかってくるので、これからの医療現場に役立つものになってほしいです。 (医学部)
・ゲノム科学に期待することは、新薬や新しい治療法の開発など医療面での進化です。これが進めば人々にとって住み良い世の中になっていくと思います。 (工学部)
・PCRは新しい技術なので期待感はかなりありますが、まだ、この技術による社会差別などが心配です。しかし、こういった問題を乗り超えれば、私達にとって大変有益なものになると思う。弱者が救われる技術になって欲しい。 (医学部)
・これから今まで以上に研究が進み、人の命を助けたりするなどの面で役立ってくれることに、私は期待します。しかし、クローンなどで、命を人間の手で作り出すことが、良いことなのか、悪いことなのかは、まだ、疑問が残っており、その様な問題点も、解決の方向へ持って行くことにも期待しています。 (工学部)
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