優秀作品(5)

熊本大学
生命資源研究・支援センター
バイオ情報分野
荒木 正健

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2011年 9月23日更新


『1リットルの涙 難病と闘い続ける少女亜也の日記』(工学部)

(1)この本を選んだ理由を書いて下さい。
 数年前放送されていたテレビドラマは、興味を持ちつつも見る機会が無かった。ここで原作である亜也さんの日記を読んで障害者について考えてみたいと思った。

(2)この本で著者が一番伝えたい事は何だと思いますか?
 この本が出版されたのは、亜也さんの母である潮香さんの「亜也の立派な生き方を多くの人に知ってもらう」という想いだろう。日記の書き手である亜也さん本人は伝えたいというよりは、自分の想い、闘病生活の苦悩、思春期の少女の感情を正直にノートにぶつけたのだと思った。

(3)この本を読んで感じた事、考えた事を書いて下さい。
 まず最初に驚いたのは本当に(というのも変だが)“日記”であったことだ。しかし、下手に加工することはなく、その時を生きた少女の日記を坦々と載せていく方が、どんな言葉、文章よりも説得力を持ち、そして重い。事実、自分がこの日記を読み進め、亜也さんの病気の進行を知っていく内に胸を締めつけられそうになった。この本を読んでいる時に在るものは、自分と、亜也さんの想いが書き綴られた第三者による修飾のない純粋な文章の2つだけであり、他に逃げる場所がない。だからこそ、ダイレクトに心に“来た”のだと思う。その時の自分の感情を上手く説明することはできない。可哀想?確かにそうかもしれないが、単純なものではなかったと思う。
 人は繊細な生き物だ。そして特に多感な時期を闘病生活に費やさなければならなかった彼女。確かに日記には、亜也さんの正直な気持ちが書き綴られていたと思うが、それ以上に考えること、思うことは数えきれない程在ったと思う。特に思春期は男女、恋愛、性を強く意識する時期である。しかし、彼女の日記にはそういったことに関する記述がものすごく少ない。自分は多少なりとも疑問に思った。巻末で分ったのだが、彼女は山本氏に「先生、わたし結婚できる?」という質問をしていた。関心が無い訳ではなかったのだ。健康であれば当り前のように恋愛をし、結婚をし、子供を生み、幸せな家庭を築いていただろう。亜也さんはそんな当り前のことをずっと望んでいたのではないだろうか。テレビドラマ版では話に脚色がされ、恋人、恋愛の描写が追加されていたという。「恋愛をさせてあげたかった」という母の要望によるものだったらしい。
 当り前のことが当り前に出来なくなることが、どんなに恐ろしいか、よく言われることで、この事を理解することは非常に難しい。自分も理解できているとは到底言えない。しかし、理解しようと努力することはできる。この亜也さんの日記を読み終えて、今までよりも理解する努力をしてみようと思った。
 バリアフリー、ユニバーサルデザイン云々と言われている現代であるが、依然として障害を持つ人達を取り巻く環境は生易しいものではないと思う。しかし自分達が少しでも考え方や見方を変えたり、彼らを理解しようとするだけでも、状況は全然変わってくるだろう。この本はそのきっかけに充分成り得ると思った。まずは自分の家族からこの本「1リットルの涙〜難病と闘いつづける少女亜也の日記〜」を読むことを勧めたいと思う。


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