優秀作品(8)

熊本大学
生命資源研究・支援センター
バイオ情報分野
荒木 正健

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2011年 9月23日更新


『イエスの遺伝子』(工学部)

(1)この本を選んだ理由を書いて下さい。
 課題図書を図書館で検索したとき、パラパラとページをめくると「100テラバイト」「コンピュータ」という文字が目に入ってきたこの本に興味が一番沸き、借りて読むと非常におもしろかったから。

(2)この本で著者が一番伝えたい事は何だと思いますか?
 科学技術は、利用する人間が一歩道を踏み外すと、どんなに有益な技術であっても生命を脅かす技術になりかねないこと。

(3)この本を読んで感じた事、考えた事を書いて下さい。
 まずキリスト教の知識をかじったくらいしか持っていない自分にも、この話はスッと入ってきて、とても面白かった。屍衣、聖骸布、聖痕、使徒…などと何度となくキリスト教の用語が出てきたので、知識があればもっと楽しめただろう。
 子供を救いたい一心で駆け回り、敵対していた組織とも手を結び、ホリーを助けることができたのは感動だった。だが、その後に残った力は、我々人類全体を不幸にするもの。この「相反性」が、人類の持つ「技術」の悩ましい所だと思う。我々工学技術者にとっても同様なことが起こりうる。どんなに高性能なコンピュータを作り上げても、殺戮兵器に応用され、人類を滅ぼすかもしれない。(逆に殺戮兵器からコンピュータはできたのだが)どのような人に、どう使うか。その倫理も含めて深く考えさせられる作品だと思う。

 しかし、私は、トムに対し、その行動には、賛同することができない。
v 我々は、技術者だ(まだ卵だが)。技術とは、より多くの人間を幸せにするために使われるべきで、一部の人間が占有して良い物だとは思わない。娘を救いたい気持ちは痛いほどわかるが、そのためには、特別な力を用いて、他人には使わない、あるいは選別して使う、という行動は、私は間違っていると思う。
 もともと技術とは、弱者を助け、強者にできるだけ近づけるよう補助するための物だと私は信じている。それを率先して実証すべき立場にあるトムが、私情に駆られてしまったのは、大きな過ちであると思う。公人と私人の立場は明確に区切って対応すべきである。
 つまり、科学技術者である公人としてもトムとホリーの父としてのトムは、混ざりあってはならない。技術の使用には一片の感情も用いてはならないと私は思う。
 このような技術が本当に存在、あるいは実現するのは宋と追い未来のことではないかもしれない。人間はそのナザレ遺伝子によって更なる進化を遂げることができるのかもしれない。だが、そうなると人類は進化の結果としての死、つまりガン細胞のように終末を迎えるのではないか、と強く思う。作中でも最後のほうに書かれていた通り、死なない体となってしまうと食料など現代の問題がより悪化してしまうと考えられる。だが、一部の人間が独占してしまう、というのは、とても容認することはできない。極論になるが、私は一部の人間による技術の占有が起きるくらいならば、人類は「進化の結果としての死」を選択すべきではないかと思う。


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