2002年度 教養科目
I 自然と情報 生命科学G
−−夢の技術PCR−−
熊本大学・遺伝子実験施設
助教授 荒木 正健
熊本市本荘2−2−1
Tel : (096) 373-6501, FAX : (096)373-6502
2003年 2月23日更新
回 答 1(教育学部)
(A)
確かにアイデアはすごいと思うけれど、アイデアだけが先走っているという印象を受けました。今の世の中には臓器の提供を心待ちにしている人達がいます。そうした人達が他人の臓器を待たずに自分の細胞から分化させた臓器を使って健康を取り戻すということには反対しませんが、それと人を造り出すということは全く話が違います。倫理的なことをもっと考える必要があると思います。
(B)
私は『臓器を印刷する技術』に賛成できません。まず第1に「細胞と細胞がくっつくお話」にある様に細胞間の接着がおかしくなると癌細胞になってしまうという危険があります。もっと詳しく調べれば、癌細胞になってしまうということの他にも危険があるかも知れません。
ES細胞や組織幹細胞を分化させても出来ない臓器が出来るということですが、ES細胞や組織幹細胞ではなぜ出来ないかを研究する方が良いと思います。
最後に、人間の体が機械のように造られていくというこの技術に私は恐怖を感じてなりません。人間というのは一体何なのでしょうか? 臓器や血管があれば人間と言えるのでしょうか?
(C)
生殖によらない人の創造がすばらしいとは思いません。
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回 答 2(法学部)
(A)
臓器を印刷するなんて、とんでもなく奇抜なアイデアだなと思った。インクの代わりに生きた細胞を充填するという発想なんかは、漫画にでも出てきそうだけど、実際、血管を形成することに成功したということで、とてもびっくりした。血管で実現可能であるということは、彼が言うようにそのうち臓器においても実現されるのではないかという気がしてきた。同時にそんなものを造り出してしまったら、また問題が起きるのではないかと心配になった。アメリカ人はとても発想豊かだが、同時に世の中を大きく変えてしまうような危険性のあるアイデアをよく思いついてしまうと常々思う。
(B)
この技術では、生きた細胞をノズルから射出し、高速度で積み上げていき、積み上げられた細胞同士は接着分子を発現することで連結して1つの臓器を形成するとされている。しかしこの接着分子は、細胞同士を接合するだけでなく、細胞がくっついたことを感じて、細胞の増える速さや細胞の動く方向を調節したりする働きを持つ。さらに細胞間の接着がおかしくなると、細胞はもとと違う性質を持ったり、制限なく増えて癌細胞になってしまう場合もあるという。細胞のこのような働きに着目すれば、もともとばらばらであった個々の細胞を人工的に1つの固まりにしようとするこの技術によって、臓器移植をした人の細胞が逆に異常な症状を示す危険性があるのではないだろうか? もともと人間の体には細胞の1つ1つに様々な働きがあり、またその相互作用もまだ解明されていない部分が多いのではないだろうか。よって、材料さえ同じであれば、同じものが作れるという発想は生物の体には安易に当てはめることは出来ないと思う。
(C)
アイデアとしてはおもしろいけど、そうやって人を創造する行為はすばらしいことだとは思えません。と答えます。
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回 答 3(工学部)
(A)
米国の発想力はすごいものがあると驚くと同時に、臓器などを印刷するという発想はある意味おもしろくもあったり恐ろしくも思えた、このような発想は、現在の多くの人のように固定観念にとらわれていては出来ないと思うし、米国の自由さが印象に残った。それと同時に米国での発想を現実の物へ実現させる日本の高い技術力にも驚かされた。
(B)
”臓器を印刷する技術”には反対である。医療の目的とは患者の病気などを治すことであると思う。しかし、その目的を達成するためには何を行ってもいいとは思わない。何を言いたいのかと言うと、どこまでが”その人”かという問題である。例えば脳だけ同じであれば”その人”は”その人”なのだろか?このような問題を考えると、簡単に臓器などを作り出す技術には賛成出来ない。
このような技術が実現してしまうと、生命の重さがあまりにも軽くなってしまうのではないかと危険さを感じている。今日では生命誕生の道すじが解明されてきているがそれでもやはり、その過程は複雑であり、神秘的なもののように思われる。神秘的ともいえる過程を経て生まれてきた生命の内部を臓器を印刷するといった技術で簡単に変えていいのだろうか、確かにコスト面などを考えると他の方法を考えるよりも低価格であるだろうし、安全かもしれない(他の方法を容認する訳ではない)が、低価格といってもやはり高価な手法であろうし、金持ちだけが利用できるような技術になってしまうのではないだろうか。
”臓器を印刷する技術”の開発が研究者の利益追求のためや、新しいものへの好奇心を満たすためだけのものになってほしくない。
(C)
人間が人工的に人間を作り出すことに対して危険なこととは思いませんか?(アナタハカミヲシンジマスカ?)
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回 答 4(薬学部)
(A)
人体を印刷するなんて信じられないと思った。そうやってできた人間はもはや「人間」というよりもただの細胞の塊である気がします。実際にその研究を行っている人はそういった考えをもっているのではないかと考えると恐ろしくなります。
(B)
「人間」を印刷するのではなく「臓器」を作り出すなら倫理的問題は少なくなるし、そうした研究が人々を健康で快適なものにすると思う。
しかしこの研究は臓器のみならず「人間」をつくりだす研究に必ず発展すると思う。「人間」をつくりだすことは倫理的に問題があるので、そうした研究につながる「臓器」を印刷する技術はできれば使わない方がいいと思う。そしてできた臓器がどの程度有効に働くかはわからないし、そうした不自然で未知の技術を使うよりは、今ある技術でどうにかならないものかと思う。それに本人の知らない所でこの技術が乱用されたりしないだろうかと思う。簡単に臓器がつくれるということは、その細胞内の情報も広まりやすいのではないかと思う。この技術を活用するにしても法の規制、様々な試験が必要ではないかと思う。
(C)
「生命の誕生のすばらしさをどうやって子供たちに教えていいかわからなくなるよ。」
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回 答 5(法学部)
(A)
人体も他の開発物などと同じように扱われているように思えて、少し不気味さを感じている。「できる、できない」に関わらず権利化するのが米国風の発想だとあるが、人体等の生命に関することまで機械的に処理する考え方には疑問を覚えた。
(B)
『臓器を印刷する技術』で、その目的が「臓器の移植のみ」と厳格に限定されているのならば、説明を読んだ限りでは有用な技術であると思う。実用化されれば、ES細胞を用いた技術やクローン技術などよりも効率的で便利な技術として、臓器移植を待ち望む患者や医師らから大歓迎されることになるのだろう。しかし、第一印象で感じた不気味さが暗示しているように、この技術も便利な反面、大きな危険性をはらんでいる。それは、一言でいうと、「生命尊重意識の希薄化」である。左記文章中の男性研究者の発言に人体創造を示唆するものが含まれていることからもうかがわれるし、『臓器を印刷する技術』が実用化された社会を想定してみると、「印刷すればいいのだから平気」という意識で、自己や他人の生命を軽々しく考える人が増えることが懸念されるのだ。「それでも生命の危機と対面している人々には必要な技術だ」という反論も予想されるが、人々の生命尊重意識が希薄化してしまったら、病気を治療して「生きよう」とする姿勢すら失われてしまう可能性を考えると、効率的ではなくともより生命倫理に合致する他の技術の発展を待つ方が望ましいだろう。よって私は、最終的には反対の立場である。
(C)
私は、「どんなに便利なアイデアであったとしても、人の生命を機械的に創ろうとすることは生命倫理に明らかに反することだ。」と答える。
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回 答 6(教育学部)
(A)
なんだか物寂しい気分になった。人体を『印刷する』というような物みたいな扱いをして、人間の価値というものがとても薄れているように感じた。確かに、人工的に臓器を作ることができれば、助かる人が数多く出てくるだろうが、そのような技術も行きすぎるとどうかと思う。やはり私の考えとしては、自然の原理に逆らった人工的なことには反対である。
(B)
私は『印刷』という言葉が嫌です。いかにも物扱いをしているようで、人工的な感じがする。この技術が臓器だけに使われるのならば私は賛成です。自分の正常な臓器をもとに、移植ができるのなら、なかなか現れないドナーを待ったり、外国に渡ったりしなくてよいので、それによって命が助かる人が増えればよいことだと思います。しかし問題は、この技術が進歩して、ある解剖学者が言うように人体まで簡単にできるようになってしまったときです。そうなると行き過ぎだと思います。一部分ならまだしも人の命を作るということには問題があると思います。簡単に人の命が作られるということは、人の命の重みが軽視されることにつながります。人間の価値が薄れているということは恐ろしいことだと思います。冷たい世の中になってしまいます。生命の創造というものの本当の意味をもう少し考えるべきです。便利さばかり追求し、そこに何が生まれるのでしょう。恐らく、臓器の段階でとどめておくことはできないと思う。エスカレートしていって、取り返しのつかない事態になってしまってからでは遅い。それを利用して商売にする団体がでてくる可能性も否定できない。こんなに進歩した世界になってしまったことに悲しさと物寂しさを覚えました。
(C)
「人を創造するのに生殖がいらないことがすばらしいアイデアだとは思いません。『人と人とのつながりが生命を作る』という最も根本にある自然の原理に逆らうことには賛成できません。」
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