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遺伝子組換え生物等規制法について・Part22 

*GTC On Line News No.818 (2007年4月17日)で配信した内容です*

=== 遺伝子組換え生物等規制法について・Part22 ===
〜〜〜 大腸菌を用いた組換えDNA実験について 〜〜〜
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これまで、レトロウイルスや遺伝子改変マウスの取扱いなど、様々な実例を挙げて説明してきたのですが、一番基本的な大腸菌を用いた組換えDNA実験についての説明が不十分だったと思いますので、簡単にまとめてみました。

(0)どういう場合に規制法の対象になるか?
遺伝子組換え大腸菌を培養したり、保管するだけでも対象になります。

(1)市販されているプラスミドベクターと既知遺伝子の組合せ
「規制法について・Part3」で説明していますが、遺伝子組換え実験に当たって執るべき拡散防止措置の区分は、「宿主」と「核酸供与体」の「実験分類」で決まります。病原性の無い大腸菌の実験分類は「クラス1」です。従って、核酸供与体の実験分類が「クラス1」(ヒトなど)の場合は「P1レベル」の拡散防止措置、核酸供与体の実験分類が「クラス2」(HTLV I など)の場合は「P2レベル」の拡散防止措置が要求されることになります。ただし、供与核酸が同定済核酸であり、哺乳動物等に対する病原性および伝達性に関係しないことが分かっている場合は、宿主の実験分類に従って拡散防止措置を決定します。つまり、たとえHTLV I ゲノムの一部でも、哺乳動物等に対する病原性および伝達性に関係しないことが分かっている場合は、「P1レベル」の取扱いで良いということです。

(2)特定認定宿主ベクター系(B2レベル)を用いる場合
文部科学大臣が定めた「特定認定宿主ベクター系(B2のもの)」を用いる場合は、1ランクレベルダウンすることができます。つまり、HTLV I の病原性または伝達性に関与することが分かっている場合でも、「特定認定宿主ベクター系(B2のもの)」を用いれば「P1レベル」の取扱いで良いということです。ただし、一般的に使用されている大腸菌は「認定宿主ベクター系」で「B1(EK1)」です。「特定認定宿主ベクター系」ではありません。「特定認定宿主ベクター系」(B2、EK2)というのは、宿主である大腸菌とプラスミドまたはファージであるベクターとの組合せが限定されている特殊な系です。

(3)ファージライブラリーについて
「規制法について・Part14」及び「規制法について・Part17」で詳しく書いていますが、平成18年2月6日付けで研究開発2種告示が改正されるまで、自立増殖するファージ(M13など)を用いる実験は、大臣確認申請が必要でした。なぜかというと、研究開発2種告示の別表第2のどこにもファージに関する記載が無かったからです。現在はP1レベルの機関承認実験です。

(4)教育目的組換えDNA実験について
平成14年3月に文部科学省の「組換えDNA実験指針」が改正され、それまで大学や企業の研究室など特殊な設備を有する施設でしか行えなかった「組換えDNA実験」を、中学・高等学校においても条件付きで可能とする「教育目的組換えDNA実験」という枠組みが設置されました。平成16年2月19日付けで施行された規制法では、「教育目的組換えDNA実験」に対応する特別な規定は置かれていません。しかしながら、P1レベルの拡散防止措置を執れば、中学・高等学校の理科教室で「特に安全性の高い実験」を行うことが可能であるとされ、「教育目的組換えDNA実験」の考え方は継承されています。

遺伝子組換え実験に関する情報

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