Gene Technology Center

山田泰広

リプログラミング技術によるがん細胞の理解と制御
東京大学 医科学研究所 システム疾患モデル研究センター 
 先進病態モデル研究分野 教授 山田 泰広

 iPS細胞の樹立過程では、遺伝子配列の変化は必要としない一方で、DNAメチル化などのエピジェネティック修飾状態がダイナミックに変化することが知られる。我々は、iPS細胞技術を細胞のエピゲノム制御状態を積極的に改変するツールとして捉え、がん研究に応用することで、発がん過程やがん細胞の維持におけるエピゲノム制御の役割解明を目指している。iPS細胞樹立の初期過程では、体細胞のエンハンサーの抑制が起こり、脱分化が誘導される。iPS細胞技術を脱分化誘導技術として利用して、発がんにおける脱分化の関与を検討した。Kras遺伝子変異による膵がんモデルにおいて、Kras遺伝子変異のみでは発がんに不十分であるものの、一過性の脱分化を誘導することで、わずか10日間で膵臓組織の大部分が腫瘍化することを見出した。脱分化に関わるエピゲノム制御がKras遺伝子変異による膵発がんにおいて中心的な役割を果たすことが示唆された。本発表では、iPS細胞技術を応用した個体レベルでのがん研究を紹介し、発がんにおけるエピゲノム制御の重要性を議論したい。

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