===== 第68回 遺伝子技術講習会 =====

主 催:熊本大学生命資源研究・支援センター
共 催:拠点形成研究B「新世代生命科学におけるプロテオミクス
    研究・教育システムの構築」
テーマ:『島津ライフサイエンスセミナー (Part3)』
日 時:2006年3月7日(火)16:00〜17:20
場 所:熊本大学 生命資源研究・支援センター
    遺伝子実験施設 6階 講義室(602)
講 師:島津製作所 ライフサイエンス研究所
    大津 厳生氏、山田 真希氏
内 容:
▼演題1;トランスクリプトームとプロテオームの融合
    〜大腸菌の RNase G欠損株における変動タンパク質〜
(1). 大腸菌の RNase Gについて
(2). RNase G の生理的機能を3つの発現比較定量システムを用いて解析
    (differential-2DE/MALDI , RP-HPLC/MALDI, NBS-2DE/MALDI)
  ・16:00〜16:40 講演者:大津 厳生 (島津製作所ライフサイエンス研究所)
<概要>
 mRNA の発現を網羅的に解析するトランスクリプトミクスの進展によって、ゲノム 配列情報と遺伝子発現の変動データの統合が著しく加速されている。一方、生命現象 の多くはタンパク質が担っており、更なる理解を深めるためにはタンパク質の発現挙 動を調べる必要がある。トランスクリプトミクスとプロテオミクスの2つの分野が相 乗的に発展することが望まれる。今回、大腸菌RNase欠損株を対象として、プロテオ ミクスによる解析とゲノミクスで得られた結果との比較を行い、その生理的機能を探 った。また、プロテオミクスの新技術の有用性についても考察した。RNaseは機能性 RNAの成熟やmRNAの分解を行うことが知られているが、個々のRNaseの生理的な役割は 不明なものが多い。我々は、大腸菌に新たに見いだしたエンド型リボヌクレアーゼ RNase Gが、解糖系酵素エノラーゼやアルコールデヒドロゲナーゼといった糖代謝に おいて重要な役割を果たしている酵素のmRNAの安定性を制御していることを報告して いる。また Lee等は RNase G 変異株のマイクロアレイ解析の結果を既に報告してい る。そこで本研究では 、mRNA の変動がタンパク質発現の増減につながっているかを 調べるため、安定同位体標識を行ったRNase G 変異株と野生株のディファレンシャル な二次元電気泳動または液体クロマトグラフィーにより発現比較を行った。その後、 質量分析装置と組み合わせることでタンパク質の同定を網羅的に行った。その結果、 マイクロアレイ解析の結果と良い一致を示した。今回新たに見つかったタンパク質を 含めると、解糖系酵素のほぼ全体の発現制御にRNase G が関与していることが示唆さ れた。

▼演題2;質量分析による糖鎖構造解析の最新のアプリケーション
    〜MSn解析による糖鎖構造解析,ペプチドシークエンス,糖結合位置情報の取 得〜
(1). MALDI-QIT-TOF MSによる糖鎖解析
(2). 異常血清糖タンパク質の質量分析
  ・16:40〜17:20 講演者:山田 真希 (島津製作所ライフサイエンス研究所)
<概要>
 四重極イオントラップ(QIT)と飛行時間型質量分析計(TOF MS)を組み合わせた MALDI-QIT-TOF MSは、MSのn乗解析を可能とするだけでなく、高感度・高イオン選択 能など他にない特徴を持ち、タンパク質の同定は言うまでもなく、糖鎖解析を含めた 翻訳後修飾解析全般に広く応用され始めている。今回、多発性骨髄腫患者の血清から 得られた異常なクリオグロブリンの解析にMALDI-QIT-TOF MSを用い、糖鎖およびペプ チドシークエンスを明らかにしたことについて報告する。本クリオグロブリンは室温 で沈殿化したため、沈殿分画をSDS-PAGEで分離し、CBB染色して得られたゲルバンド をトリプシン消化後、ペプチドマスフィンガープリント法(PMF)によりタンパク質の 同定を行った。また、糖鎖修飾を解析するため、SDS-PAGEで分離する前に Glycopeptidase F(GPaseF)処理を行った。PMFの結果、本クリオグロブリンは腫瘍 性の形質細胞によって産生されたIgGκ型であることがわかった。GPase F処理前後の MSスペクトルにおいて、糖ペプチドの分子イオンおよび糖ペプチドから生じたペプチ ドイオンを検出した。 MALDI-QIT-TOF MSによる解析から、糖鎖組成、糖結合残基を 明らかにした。

 島津製作所では、これまでライフサイエンス分野の発展の一助となるよう、質量分 析装置をはじめとした機器開発に取り組んで参りました。また、研究の加速化を実現 するために前処理法や試薬、研究支援ソフトウェア等のトータルシステムの開発を推 進しております。本セミナーでは、両演題ともこれまで弊社が蓄積してきた技術を実 サンプルに適用して得られたアプリケーションでございます。
 先生のご研究の一助となれれば幸いです。ご来場を心よりお待ちいたしております。

参照ホームページ:SHIMADZU BIOTECH
      http://www.shimadzu-biotech.jp/


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